複素数の指数関数表示【オイラーの式】

複素数の指数関数表示について説明します。

これは「オイラーの公式」とか「オイラーの式」とも呼ばれますが、じつは同じ名前・似た名前で全く別の公式や定理が複数存在します。大変紛らわしく、使用する都度に「複素数に関する・・」「実関数の解析学における・・」「幾何学での・・」このように断り書きをつけるのは大変不便なので、
このサイトではeiθを表す語としては「複素数の指数関数表示」という表現を採用します。

複素数の指数関数表示とは次のようなものです。

複素数の指数関数表示

複素数の極形式表示を指数関数の形で書く事ができ、次のように定義します。 $$e^{i\theta}=\cos\theta +i\sin\theta$$ このeは自然対数の底です。eiθを exp(iθ)と書く事もあります。これは実数範囲の指数関数での表現と同じです。(exponential の略)

こういう形なので、eiθの絶対値は1になります。

$$|e^{i\theta}|=|\cos\theta +i\sin\theta|=1$$

さて、このように「指数関数」で書くからには指数関数としての規則を満たしているのかというと、きちんと満たしています。これらの性質、特に微分の演算は表記を簡易にするので便利です。

成立する演算
  1. 積の演算:eiθiω=ei(θ+ω)
    iθiω=(cosθ+isinθ)(cosω+isinω)
    =cos(θ+ω)+isin(θ+ω) 【ドモアブルの定理より】
    =ei(θ+ω)
  2. 微分:(d/dθ)eiθ=ieiθ 【合成関数の微分使用】
    (d/dθ)eiθ=(d/dθ)(cosθ+isinθ)
    =-sinθ+icosθ=i(cosθ+isinθ)
    =ieiθ

見ての通り、この指数関数表示は三角関数の性質に直接的に関わるものです。
(ドモアブルの定理の成立根拠は三角関数の加法定理。)

実際、一見唐突にも見えるこの「指数関数の定義域の拡張」は三角関数をもとに考えられたものです。

「三角関数と指数関数では全然違うではないか?」という話ですが、それらをテイラー展開すると似た形をしているのです。(微分の性質も似ている事に注意:eの指数関数は微分に関して1回周期、三角関数は4回周期でもとの関数に戻ります。さらに正弦関数と余弦関数は微分により符号を変えながら互いに互いの導関数に変化します。)

特にマクローリン展開(x=0でのテイラー展開)の形にすると形は似てきます。

$$e^x=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\cdots$$

$$\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots$$

$$\cos x=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots$$

ここで、正弦関数の場合は「偶数項」が抜けていますが、余弦関数を見るとちょうどそれを補うように項が並んでいるのです。(正弦関数を微分すると余弦関数になる事に対応します。)これを合わせると、ちょうど指数関数のほうで使っている項が並ぶ事になります。

しかしそれでも符号が変わっている箇所は対応しないという話になりますが、ここで指数関数eに「ix」を「形式的に」代入してみるという工夫をしてみます。

$$e^{ix}=1+ix-\frac{x^2}{2!}-i\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+i\frac{x^5}{5!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots$$

これをよく注意して見ると、次の規則があります。

  • 虚数単位iは奇数項にのみつき、偶数項にはつかない。
  • 奇数項と偶数項に分けてみると、それぞれが1項ごとにプラスマイナスの符号が反転する。

そこで、奇数項と偶数項に分けて式を整理すると次のようになります。

$$e^{ix}=\left(1+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots\right)+i\left(x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots\right)$$

$$=\cos x +i\sin x $$

このように「導出」できるわけですが、基本的には複素数の指数関数表示は上記のように「定義」するものになります。複素数の範囲に定義域を拡張する時には上記のようにすると定義するわけです。

しかしそういう事を言うと、定義域の拡張の際に「別のやり方」もあるのではないかという問題も起きます。上記のように定義する必然性がないのではないか、という事にもなります。

この件について複素関数論においては、「正則関数」になるように定義域を拡張する場合には上記のようにeiθ=cosθ+isinθ のようにするしかない、という位置付けになります。(その際にも重要になるのはじつはテイラー展開です。)

コーシーの積分定理

複素関数論の積分の理論における、コーシーの積分定理と、コーシーの積分公式について述べます。両者は名称が似ていて実際極めて近い関係にありますが、式の内容と使い方が少しだけ違うので名称が微妙に分けられているのです。

複素関数の微分複素関数の積分の基本的な考え方は別途にまとめています。

定理の内容 ■ 証明 ■ コーシーの積分公式 

定理の内容

コーシーの積分定理とは、積分経路が閉曲線である場合に成立する次の関係式です。

コーシーの積分定理

閉曲線Cで囲まれた領域内でf(z)が正則である時、$$\int_Cf(z)dz=0$$ ☆ここで、「領域内」とはC上の点も含むものとします。

この定理が適用できる条件として領域内で正則であるという事がじつは重要で、1点でも正則でない部分があれば適用はできないのです。

正則でない・・実質的には「微分可能でない」という点は、多くの場合は分母が0になって関数自体定義できないパターンです。しかし、そのような正則でない点が有限個の場合などは、その周囲だけを除いてあげた領域を考えてコーシーの積分定理を適用できたりしいます。その考え方は後述する「コーシーの積分公式」に深く関わります。

しかしこの公式が確かに成立すると分かった時点で、あとは比較的速やかに話が進むのです。

積分定理と積分公式の違い
コーシーの「積分定理」と「積分公式」は一応違うものなので注意しましょう。

定理の証明

複素数の積分については「積分経路を閉曲線にとった場合」には次の式が成立します。

グリーンの公式

$$\int_Cf(z)dz=\int\int_D\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)dxdy$$

グリーンの公式
「グリーンの公式」は、コーシーの積分定理に直結するという意味で重要な公式です。

このグリーンの公式が成立する根拠については、別途に詳しく述べています。積分の経路が閉曲線であるという事がポイントです。複素関数論の初歩の中で、ここが一番難しい・理解しにくいという人も多いのではないかと思います。

グリーンの公式が成立するという条件のもとでは、「コーシーの積分定理」の証明はそれほど難しくはないのです。

グリーンの公式において、関数f(z)が「正則である」という条件をつけます。これは、大雑把には領域内の任意の点で微分可能であるという感覚です。

この時には、グリーンの公式に加えて、複素数の微分のほうについて「コーシー・リーマンの関係式」が成立します。f(z)=u(x,y)+ i v(x,y)とした時の、uとvに対する偏微分についての関係式です。

これを使う:コーシー・リーマンの関係式

$$f(z)=u(x,y)+iv(x,y)が正則である時、\frac{\partial u}{\partial x}=\frac{\partial v}{\partial y},かつ\frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{\partial v}{\partial x}$$

グリーンの公式の積分の中身を、uとvで表してみます。

$$\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)=\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)(u+iv)$$

$$=i\frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y}-\frac{\partial v}{\partial x}-i\frac{\partial v}{\partial y}$$

$$=-\left(\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial x}\right)+i\left(\frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial v}{\partial y}\right)$$

こういうふうになるので、経路Cが閉曲線でf(z)が正則という条件なら、関数と経路の形によらず定積分の「積分の中身」の値がうまい具合に必ずゼロになるので、定積分の値もゼロになるという事です。

$$f(z)が正則ならば\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)=-\left(\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial x}\right)+i\left(\frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial v}{\partial y}\right)=0$$

$$したがって、f(z)が正則ならば\int_Cf(z)dz=\int\int_D\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)dxdy【証明終り】$$

この定理は、別に魔法によって不思議に成り立つのではなくて「積分経路Cが閉曲線で領域内でf(z)が正則」という、言ってみれば特殊な条件を課して限定する事によって成立するのです。

コーシーの積分公式

もう1つ重要なものとして、名称が少し紛らわしいのですが「コーシーの積分公式」というものがあります。これは、コーシーの「積分定理」のほうから導出されるものです。

コーシーの積分公式

$$f(z)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta$$ この公式の積分の中身の中のzは、積分変数に対しては定数扱いであり、積分変数(複素数)としては「ゼータ」を文字として使っています。
この関係式の詳細について、次に述べていきましょう。

考え方

コーシーの「積分定理」が適用できる複素関数と領域があったとします。そこで、領域内のてきとうな複素数z=wを考えて、関数をz-wで割ります。

$$\frac{f(z)}{z-w}を考えます。$$

f(z)が微分可能なら、それをz-wで割った関数も微分可能です。

ただし、z=wを除きます。

z=wにおいては、関数が定義されないので、当然微分不可能というわけです。
このように、わざと「微分不可能で正則でない点」を考えて、関数にくっつけているのです。

こういう場合に積分はどう考えるのかというと、もとの積分経路に、z=wを囲む(小さな)円を経路として付け足した別の経路を考えてみるのです。なぜ「円」を考えるのかというと、これは閉曲線の中では最も計算しやすいためです。

その円周の経路をC1としましょう。もとの経路をCとし、合わせた経路をC+C1とここでは書く事にします。積分する時には、次のように経路ごとに項を分ける事ができます。

このとき、小円の経路C1はその円に関して言えば時計回りに積分が行われています。つまり、小円の経路だけで定積分を考えた場合、本来の符号とは逆であり、そのためマイナス符号をつけます。

$$\int_{C+C1}\frac{f(z)}{z-w}dz=\int_C\frac{f(z)}{z-w}dz-\int_{C1}\frac{f(z)}{z-w}dz$$

ここで、経路C+C1に対してコーシーの積分定理を使います。
(その領域においてz=wは除外されていて、含まれていない事に注意します。)

$$0=\int_C\frac{f(z)}{z-w}dz-\int_{C1}\frac{f(z)}{x-w}dz\Leftrightarrow \int_C\frac{f(z)}{z-w}dz=\int_{C1}\frac{f(z)}{x-w}dz$$

ここで、小円の経路C1のほうについて、z=w+reと置きます。これは、z=wを中心とした円周上の点を媒介変数表示したものです。rは何かてきとうな(小さい)実数であり、媒介変数はθです。

このとき、z-w=reですから、分母が簡単になるという1つのカラクリがあります。変数変換をしていますので微分も必要になりますが、この場合指数関数の微分ですから計算は容易なのです。

$$\frac{dz}{d\theta}=rie^{i\theta}と合わせて、\int_{C1}\frac{f(z)}{x-w}dz=\int_0^{2\pi}\frac{f(w+re^{i\theta})}{re^{i\theta}}\frac{dz}{d\theta}d\theta$$

$$=\int_0^{2\pi}\frac{f(w+re^{i\theta})}{re^{i\theta}}rie^{i\theta}d\theta =\int_0^{2\pi}if(w+re^{i\theta})d\theta$$

このように上手い具合に分母と、変数変換による微分の項が打ち消して消えます。

ここでr→0の極限を考えます。すると、f(w+re) → f(w)です。(これは、より厳密には上限で上から抑える不等式で示します。)

すると、次のようになるような、じゅうぶん小さいrを必ず考える事ができるという事です。

$$\int_{C1}\frac{f(z)}{x-w}dz=i\int_0^{2\pi}f(w)d\theta=if(w)\left[\hspace{3pt}\theta \hspace{3pt}\right]_0^{2\pi}=i(2\pi-0)f(w)=2\pi if(w)$$

定積分の計算の最後のところは、f(w)が(θに関して)定数であるのでこのようにできるという事です。

整理しますと、結局次のように言えます。

$$\int_C\frac{f(z)}{z-w}dz=2\pi if(w)\Leftrightarrow f(w)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(z)}{z-w}dz$$

ここで、もとの閉曲線Cで囲まれた領域内の点wは、何か特別な点ではなく、領域内の任意の点でよかったわけです。wを変数zに置き換えて、積分の中の変数を何か別のてきとうなものを使っても同じ意味になります。このように、領域内の任意の複素数zにおけるf(z)を積分で表したものがコーシーの「積分公式」です。

改めてコーシーの積分公式

$$f(z)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta$$ この公式の積分の中身の中のzは、積分変数に対しては定数扱いです。
また、上記の「コーシーの積分定理」との違いに注意してみてください。「コーシーの積分公式」は、複素関数の値自体を積分で表す公式です。

積分の中の変数の記号は別に何を使ってもよいのですが、「複素数の」変数である事を強調するためにギリシャ文字の「ゼータ」を使う事が多いようです。ここでもその表記を使っています。tなどを使っても別によいのですが、これは媒介変数として実数の変数を表す事が多いので、積分変数としてゼータを使用する事は、なるべく誤解を避けるための習慣であろうかと思います。

複素数の微積分の理論はこの先も続いていきますが、初歩的な理論としてはここまで理解していればそれほど難解な理論は少ないと思います。

複素数の積分

複素数の微分に続いて、このページでは複素数の積分について述べます。
これは学校での授業としては大学数学の範囲になります。

定義と考え方

積分をどのように定義する?
複素関数の定積分には「積分経路」が必要
複素数の積分・・何に使う? 

積分をどのように定義する?

複素関数の微分は比較的分かりやすいかと思いますが、
では複素関数のの積分は一体どのように定義するのかという話になります。

考え方は、実数関数の積分と同じく、「和」を考えます。

z=x+ i yのときに、dz=dx+ i dyを考えるのです。

そして、複素関数f(z)に対してf(z)dz=f(z)dx+i f(z)dyを考え、加え合わせます。
これが複素関数の積分です。

複素関数の積分(定積分)

$$\int_Cf(z)dz=\int_Cf(z)(dx+idy)=\int_C(u+iv)(dx+idy)=\int_C(udx-vdy)+i\int_C(vdx+udy)$$

f(z)=u(x,y)+iv(x,y)です。
積分記号に添えられているCとは、後述する「積分経路」です。

微小な領域の幅に相当するものを関数に乗じて加え合わせて極限を取るという考えが得方は実関数の積分の場合と同じなのです

xとyが媒介変数t(実数)で結ばれる時は、このtによって複素変数zが定まるので、tによる積分と考える事もできます。

これら2つの複素関数の積分の定義は同等なものとなります。

媒介変数を使った複素関数の積分(定積分)

$$\int_Cf(z)dz=\int_a^bf(z(t))\frac{dz}{dt}$$

この場合、媒介変数tは実数です。
tの積分区間 [a, b] において、あたかも通常の実関数であるかのように定積分を行う事になります。
積分経路が円の時は、媒介変数として弧度法の角度θを使う事が多いです。

複素関数の定積分には「積分経路」が必要

さて、実数関数の場合の定積分には「積分区間」がありました。複素関数の場合にもそれに相当するものがありますが、じつは積分の区間ではなく「経路」が必要になります。

単純にxを動かして次にyを動かした場合、それは多くある積分経路の1つです。

積分経路は、直線であったり、曲線であったり、円のような閉曲線でもあり得ます。

このような積分経路が定められた時、z=x+ i yのxとyには従属関係があります。

$$例えば直線であればy=2x,円であればx^2+y^2=1といった関係です。$$

このような時には媒介変数tでxとyを結ぶ事ができます。円の場合には、媒介変数は角度で考える事が普通です。

積分経路上の1つ1つの点に対して、複素関数f(z)の値が存在する形になります。

積分経路が閉曲線の場合、基本的には「反時計回り」が正の方向です。もう少し詳しく言うと「経路を進む方向に対して領域が常に左側に来るように」正の向きをとります。

この向きの取り方は閉曲線の中に別の閉曲線による「穴が」あるような場合の正の向きの考察に役立ちます。(そのような場合も一番外側の閉曲線を「反時計回り」で考える事で正しく向きを処理する事も可能です。)

どの向きをプラスにとるのかについて、反時計回りに考える方法と「左手側に領域が来るように」という方法は本質的に同じものです。領域内に穴があるような場合には、定積分が打ち消してゼロになる補助線を引いて考えます。

複素数の積分・・何に使う?

複素数の積分は間接的に物理等の理論に関わり、数学上も時折使う事のあるツールの1つとしてところどころで顔を出します。

まず1つは、特定の実数関数の定積分(多くの場合積分区間を無限大にする「広義積分」ですが)の値を出すのに、複素積分を使う事があります。あるいは、そのような手順を踏まないと手計算では値を出せないと言ったほうがよいでしょう。そういった種類の定積分があるわけです。

もう1つは、分母に変数があり、その変数が0になってしまう場合(「極」と言います)の処理のために複素積分の考え方をうまく使える場合があります。これについては「コーシーの積分公式」との関連が深いです。

数学の理論の中では「代数学の基本定理」について、複素数の積分の理論の一部を適用する事によって証明が可能です。(他の方法でも証明はできます。証明の方法は多いです。)

グリーンの公式【複素関数論】

ここでは複素関数論におけるグリーンの公式と呼ばれる式について説明します。
同じ名前の公式はいくつもあって大変紛らわしいのですが、ここでは複素関数論の、複素数の積分に関して成立する関係式について述べます。

この公式は、複素関数論で重要なコーシーの積分定理を証明するのに必要です。

複素数の定義と基本事項については別途に詳しくまとめています。

グリーンの公式とは?

公式の内容 ■ 公式の別の表記法 ■ 複素関数論の中での位置付け 

公式の内容

複素関数論におけるグリーンの公式とは、次の複素数の積分に関する関係式を言います。

グリーンの公式 $$\int_C f(z)dz=\int\int_D\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)dxdy$$ $$z=x+iy,\hspace{5pt}C:閉曲線,\hspace{5pt}D:閉曲線Cで囲まれる領域$$

$$ここで、\left(i\frac{\partial}{\partial x}-\frac{\partial}{\partial y}\right)f(x,y)=\left(i\frac{\partial f(x,y)}{\partial x}-\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}\right)\hspace{5pt}の事です。$$

また、ここでのxやyでの偏微分は、
これらの変数を「独立変数であるように見なした時の」偏微分の計算を指します。

そのように言うのは、ここでは積分の経路として閉曲線を指定しますから、xとyは独立変数ではなく従属関係にあるからです。(例えばy=2xなど。これについてはこのページの後半でも再度触れます。 )

ただし、ここでの偏微分で表される計算は、通常の独立多変数に対する偏微分の時と同じく、「yを固定してxだけで微分操作をする」という意味である・・という事です。

グリーンの公式【複素関数論】1
グリーンの公式とコーシーの積分定理は、複素関数論の積分の理論の中でも重要な箇所の1つですが、いかんせん、少々分かりにくいところでもあるかと思います。
この結果自体が得られると、その後の理論はしばらくの間は割と難しい理屈が少なく進んでいくところがあります。

公式の別の表記法

全く同じ公式を、別の表記で表す事もあります。

これは、形式的には「複素変数zで偏微分する」形で表されますが、じつはこれは普通の意味での偏微分ではなく、複素関数論において特別に定義される記号です。

定義

z=x+iyの時、記号を次のように定義します:

$$\frac{\partial}{\partial \bar{z}}=\frac{1}{2}\left(\frac{\partial}{\partial x}+i\frac{\partial}{\partial y}\right)$$ $$\frac{\partial}{\partial z}=\frac{1}{2}\left(\frac{\partial}{\partial x}-i\frac{\partial}{\partial y}\right)$$

この記号を使うと、上記のグリーンの公式は次のように書けます。

グリーンの公式の別の表記法 $$\int_C f(z)dz=2i\int\int_D\frac{\partial}{\partial \bar{z}}f(x,y)dxdy$$ $$z=x+iy,\hspace{5pt}C:閉曲線,\hspace{5pt}D:閉曲線Cで囲まれる領域$$

どちらの表記法でも問題ないですが、記号の定義を知らないと、「共役複素数で偏微分って何の事・・??」と、思ってしまうかもしれませんね。その記号は、あくまで定義によって特別に意味が約束されているものです。

複素関数論の中での位置付け

冒頭で少し触れていますが複素関数論の複素数の積分論の中で、「コーシーの積分定理」というものがあります。これは、正則関数を閉曲線に沿って定積分すると必ず0になるというもので、これをもとに種々の複素数の積分の理論は組み立てられています。

それで、その積分定理は自明な事かというと、そうではありません。その定理の証明のためにグリーンの公式が使用されます。

ですから複素関数論におけるグリーンの公式とは、言ってみれば理論上重要な定理の「補題」的な位置付けにあると言えると思います。

もちろん、必要があれば他の用途に使う事もできます。また、考え方自体は多変数関数の線積分や、ベクトル解析に共通するところがあるのでそれらの分野にも考え方を適用できます。

グリーンの公式の証明

証明のポイント ■ 積分経路と媒介変数 ■ 証明の計算 

証明のポイント

積分の経路として「閉曲線」考えている事と、定積分を行う場合には複素数の実部と虚部に分けて考えてよい事がポイントです。

公式の内容を見ると、曲線上の積分を領域内の重積分で表せるという事であるわけですが、ある関数はその導関数の定積分として上手く表せる事を利用します。この考え方はベクトル解析での定理の一部を示す時にも使用されます。

導関数をうまく使う $$\int_a^b\frac{df}{dx}dx=f(b)-f(a)$$

考え方はシンプルで、微積分学の基本定理をうまく使います。

定積分を考える時には項が2つ出てきてしまいますが、閉曲線を考えている事がポイントで、上手い具合に閉曲線の「上部分」「下部分」等の2つの部分に分けて必要な項を作れるのです。この時、後述しますがxとyによる積分それぞれについてそれらを考えるので、少なくとも4つの経路を考え、最後に合算します。

証明の後半では重積分の結果は積分変数の順序によらない事も使用します。

積分経路と媒介変数

dz=dx+idy において、閉曲線Cを指定する場合はxとyに従属関係があって、
1つの媒介変数tで表す事ができます。

$$x=x(t),\hspace{5pt}y=y(t)$$

複素数の積分と積分経路
積分経路が指定されているという事は、例えばy=3x などの何らかの関係があるという事です。
(より一般的には閉曲線ならg(x,y)=0が成立。例えば円や楕円。)
積分する時にはxとyを別々に考える事ができるのであまり気にしなくてもよいのですが、 補足的に、述べておきます。

そこで、微分についても z=z(x,y) に対して次の関係があるわけです:

$$dz=\frac{\partial z}{\partial x}\frac{dx}{dt}dt+ \frac{\partial z}{\partial y}\frac{dy}{dt}dt $$

ここで、x、yによる偏微分は
「あたかも独立変数であるように、1つの変数のみで微分する」操作の意味です。

tによる微分の部分は、媒介変数が1つだけですので、
偏微分として書かなくてもよく通常の微分になります。

さて、となると、z=x+iy ですから、

$$ \frac{\partial z}{\partial x} =1,\hspace{10pt} \frac{\partial z}{\partial y} =i $$

となるので結局、

$$dz=\frac{dx}{dt}dt+ i\frac{dy}{dt}dt $$

という事になり、tで定積分を行う場合には1変数の合成関数の積分公式がそのまま使えて、結局xとyのそれぞれで積分して加えればよいという事です。

合成関数の積分公式を使える。 $$\int_U^Wf(z)dz=\int_{T1}^{T2}f(z)\frac{dz}{dt}dt=\int_{T1}^{T2}f(x,y)\frac{dx}{dt}dt+ \int_{T1}^{T2}if(x,y)\frac{dy}{dt}dt $$ $$=\int_{X1}^{X2}f(x,y)dx+\int_{Y1}^{Y2}f(x,y)dy$$

定積分においては、積分変数以外の変数は定数扱いで計算するとします。

もともとdz=dx+idyなので最初から積分する時には定積分を2つの部分の和にできると考えてもよいのですが、ここでは積分経路上でyとxには従属関係がある点に注意して説明をしておきました。

証明の計算

【グリーンの公式の証明】

さて、閉曲線上を経路として定積分する時にxとyに分けて定積分すればよいわけですが、ここでさらに、積分経路もxとyの各々について2つ以上に分けます。少なくとも4つの定積分を考える事がポイントです。

まずxについて。
閉曲線を切断するような、yが一定の直線分と、平面図上で閉曲線の上側の部分と下側の部分を考えます。この時、直線分に対して必ず上下に閉曲線の一部が対になって存在するようにします。このような閉曲線の分割を最低でも1つ行い、ものによっては2つ以上行います。

グリーンの公式【複素関数論】2
直線状の補助線(図の Cx 等)は、なくても証明できます。
ただし、ここでは分かりやすくするために入れています。

ここで、f(z)=f(x,y)=f(x+iy) である事に注意します。まず「直線状の線分と閉曲線の下側の経路」(必ずしもつながってなくてもいい)で構成されるxによる定積分を、ぐるりと反時計周りに1周するように考えます。

$$\int_{C1}f(z)dx-\int_{CX}f(z)dx=\int_{X1}^{X2}f(x+iy)dx- \int_{X1}^{X2}f(x+iY_1)dx $$

$$=\int_{X1}^{X2} \left( – \int_ {y(x)}^{Y1} \frac{\partial}{ \partial y}f(x+iy)dy\right)dx = -\int_{X1}^{X2} \left(\int_ {y(x)}^{Y1} \frac{\partial}{ \partial y}f(x+iy)dy\right)dx $$

分割に使う直線分が2つ以上の場合も同様に定積分を考えておきます。

関数f(x,y)=f(x+iy) を、積分変数のみに着目した意味での(偏)導関数を定積分したものと考えるわけです。(プライスマイナスの符号に注意。)この考え方はベクトル解析などでも使います。

次に、 「直線分と閉曲線の上側の経路」で構成されるxによる定積分を、反時計周りに1周するように考えます。この時、直線部分は上記と同じものを共有してますが、積分の方向が逆です。曲線部分も積分の方向が逆なので符号が変わる点がポイントです。

$$-\int_{C2}f(z)dx+\int_{CX}f(z)dx=-\int_{X1}^{X2}f(x+iy)dx+\int_{X1}^{X2}f(x+iY_1)dx $$

$$= -\int_{X1}^{X2} \left( \int_{Y1}^{Y(x)}\frac{\partial}{ \partial y}f(x+iy)dy\right)dx $$

さきほどとは曲線が別のものになるので、y = y(x) ではなく y = Y(x) という形に書いて区別しています。

ここで、上記の2つのxについての「反時計回り」の定積分を加え合わせると、

$$\left( \int_{C1}f(z)dx-\int_{CX}f(z)dx \right)+ \left( -\int_{C2}f(z)dx+\int_{CX}f(z)dx \right) = \int_{C1}f(z)dx -\int_{C2}f(z)dx $$

$$= -\int_{X1}^{X2} \left( \int_ {y(x)}^{Y1} \frac{\partial}{ \partial y}f(x+iy)dy\right)dx -\int_{X1}^{X2} \left( \int_{Y1}^{Y(x)}\frac{\partial}{ \partial y}f(x+iy)dy\right)dx $$

$$= -\int_{X1}^{X2} \int_{y(x)}^{Y1} \frac{\partial f(x+iy) }{ \partial y}dxdy- \int_{X1}^{X2} \int_{Y1}^{Y(x)} \frac{\partial f(x+iy) }{ \partial y}dxdy $$

$$ =-\int_{X1}^{X2} \int_{y(x)}^{Y(x)} \frac{\partial f(x+iy) }{ \partial y}dxdy=-\int\int_D \frac{\partial f(x,y) }{ \partial y}dxdy $$

このように、もとの関数を(1つの変数以外は固定する意味で)偏微分したものの領域内に渡って重積分したものになるわけです。結果的にマイナス符号がついたのは「反時計回り」を考えた事に由来し、仮に「時計回り」を考えるならこの符号は逆になりプラスになります。xが変数の場合、右から左と、左から右に積分する場合では符号は逆になります。

上記のように重積分の形になると、それを「領域全体にわたって行う積分」とみなせます。

重積分についての補足
【重積分】通常の2変数の重積分は「体積」を計算する事に使ったりします。 複素関数の場合には体積を計算しているわけではありませんが、行っている計算と考え方は同じです。

分割が2つ以上の場合でも、定積分を全て加え合わせて閉曲線が全てつながるようにします。(補助的に考えている直線状の線分の部分は、分割がいくつであっても全てプラスマイナスが打ち消し合って定積分の合計は0になります。)

今度は、yについての定積分についても同じ事をやります。途中の計算は全く同じなので少々省きますが、次のようになるのです。

$$\left( \int_{C3}f(z)dy-\int_{CY}f(z)dy \right)+ \left( -\int_{C4}f(z)dy+\int_{CY}f(z)dy \right) = \int_{C3}f(z)dy -\int_{C4}f(z)dy $$

$$ =\int_{Ya}^{Yb} \int_{x(y)}^{X(y)} \frac{\partial f(x+iy) }{ \partial x}dxdy=\int\int_D \frac{\partial f(x+iy) }{ \partial x}dxdy $$

yのほうには i を添えたうえで、得られた結果を合わせると次のようになります。

$$ \int_{C1}f(z)dx -\int_{C2}f(z)dx + i\int_{C3}f(z)dy -i\int_{C4}f(z)dy $$

$$= \int\int_D \left( – \frac{\partial }{ \partial y} +i\frac{\partial }{ \partial x} \right) f(x+iy) dxdy= \int\int_D \left( i\frac{\partial }{ \partial x} – \frac{\partial }{ \partial y} \right) f(x,y) dxdy $$

分割した部分がxとyについて合わせて4つを超える場合でも同じで、全て加え合わせます。

再びdz=dx+ i dyに戻ると、閉曲線C上で反時計周りに定積分を行う場合は次のようになります。

$$\int_Cf(z)dz=\int_Cf(x,y)dx+i\int_Cf(x,y)dy$$

$$= \int_{C1}f(z)dx -\int_{C2}f(z)dx + i\int_{C3}f(z)dy -i\int_{C4}f(z)dy $$

分割の部分が多い場合も同様です。もとの閉曲線の曲線部分が全て入るようにします。

xについては、左→右:+符号 右→左:逆で-符号
yについては下→上:+符号 上→下:-符号 として部分ごとに定積分を対応させます。

これによって、結局公式の通りの関係式が成立する事になります。

$$ \int_Cf(z)dz=\int_Cf(x,y)dx+i\int_Cf(x,y)dy = \int\int_D \left( i\frac{\partial }{ \partial x} – \frac{\partial }{ \partial y} \right) f(x,y) dxdy 【証明終り】$$

参考:長方形による近似を使う証明の方法

参考までに、積分経路として小さな「長方形」を考えて、これの合計として任意の閉曲線を経路とする時も成立するという証明の仕方もあります。

こちらの考え方だと、長方形ですので最初からxのみ、yのみという考え方が使えて、積分の計算がらくです。積分の方向を反時計回りという事で決めておけば、ぴったり隣り合う長方形同士の接する辺同士は積分が打ち消し合って周囲だけの分が経路として残るというわけです。

ただしこの方法の場合、じつは経路自体の形が「長方形 → 任意の(滑らかな)閉曲線」に移行する段階の時の話が少し面倒です。実際、円のような曲線を多角形で近似するような事は珍しくありませんが、「長方形」で近似するという事は、他の数学の分野ではあまり多くやらない事かと思います。一般の多くの複素関数論の教科書では、この詳細をあまり書きたがらない傾向があるように思います。

本質的には上記で述べた証明方法と比べて、やる事はそんなに変わりません。

グリーンの公式【複素関数論】3
長方形の経路を組み合わせて証明する方法もあります。

前述の通り、複素関数論におけるグリーンの公式は、コーシーの積分定理に結びつく事で、さらなる積分の理論を組み立てる事に使われていきます。

純虚数と複素数と極形式

虚数複素数というものについての定義と基本計算を説明します。

「2乗してマイナス1になる数」を定義してみるところから始めます。

複素数の基本と初歩的な計算

複素数の定義
複素数の基本的な性質と計算方法
具体的な計算例  

複素数の定義

では、まず複素数の数学的な定義です。

複素数と虚数単位の定義

$$i^2=-1$$を満たす「数」を虚数単位と言い、実数 a,b を使って$$a+bi$$で表される数を複素数と呼びます。

複素数の実数だけの部分を実部と言い、虚数単位 i が掛け算されている部分を虚部と呼びます。

複素数は、実数と同様に加減乗除の計算の中に組み込む事ができて、式の展開や因数分解などもできるものとします。

a + bi において b= 0 の時には複素数は通常の実数 a になるので、数学では「実数全体」という集合が「複素数全体」という集合に含まれている、と考えます。

a+bi に対して a-bi は共役(「きょうやく」)な複素数であると言います。【尚、この共役という用語は一般的には複素数に限定されたものではなく代数学でより広い意味を持ちます。】

共役複素数の定義

$$u=a+bi に対する「共役複素数」\bar{u}=a-bi$$ 文字の上に横線を引きます。

また、a+bi に対して、次の量をその複素数の絶対値と言います。これは必ず正の実数です。記号では、実数に対する絶対値記号と同じものを使います。

複素数の「絶対値」の定義

$$u=a+biの「絶対値」:|u|=|a+bi|=\sqrt{a^2+b^2}$$

複素数の絶対値は r などの文字で表す事もあります。後述もしますが、複素数と共役複素数の積は、その複素数の絶対値の2乗に等しくなります。

これは後述する複素平面で考えると見やすくて、実部を底辺・虚部を高さとする直角三角形の斜辺の長さ、あるいは2点間の距離として捉えられるものです。
つまりこの「2乗して加えたものの平方根」は一体何なのかというと、イメージとしては三平方の定理なのです。これは偶然似ているというだけではなくて、割と本質的なものです。

尚、虚部の実数 b = 0 の時、複素数の絶対値記号は実数の絶対値記号としてきちんと機能します。

複素数の基本的な性質と計算方法

まず、2つの複素数 u と w について、実部同士が等しく、かつ虚部の実数同士が等しい時に限って2つの複素数は等しく u = w であると書きます。

$$u=a+bi, \hspace{5pt}w=c+di\hspace{5pt}のとき、a=cかつb=dの時、u=w \hspace{5pt} です。$$

★「2つの複素数が等しい」ためにの条件は、じつは定義としなくても計算で「導出」する事が可能です。後述します。

複素数の計算をする時には、次の事を踏まえたうえで実数の時と同じように計算します。

  • 足し算と引き算の計算では、実部同士だけ、虚部同士だけで必ず行う。
    (混ぜ合わせないようにします。)
  • 掛け算と割り算の計算では、虚数単位 i は実数にくっついた係数であるようにして扱う。
  • 計算の際に i の2乗が現れたらそこは -1 に置き換える。 (それによって、計算途中で実部と虚部が入れ替わる事もあります。)

具体的な計算例

いくつか簡単な例を記すと次のような感じです。

$$(1+i)+(2+3i)=3+4i$$

$$(1+i)-(2-3i)=1-2+i(1+3)=-1+4i$$

$$(1+i)(2+3i)=2+3i+2i+3i^2=2+3i+2i-3=-1+5i$$

$$\frac{2+3i}{1+i}=\frac{(2+3i)(1-i)}{(1+i)(1-i)}=\frac{2-2i+3i-3i^2}{1-i^2}=\frac{2-2i+3i+3}{1+1}=\frac{5+i}{2}$$

4番目の割り算のところはうまく分母と分子に (1-i) を掛けて、分母を実数だけにしています。この手法は大学数学等で複素数を扱う時にもよく使われます。「複素数と共役複素数の積はその複素数の絶対値の2乗に等しい」という性質を使っています。

2つの複素数が等しいための条件:
「実部同士が等しく、かつ虚部同士も等しい」事は、次のように導出します。

$$a+bi=c+di$$

であるとすると、

$$a-c=i(d-b)$$

両辺を2乗すると、

$$(a-c)^2=-(d-b)^2\Leftrightarrow(a-c)^2+(d-b)^2=0$$

これを満たすためには a = c かつ b = d という事になります。

複素数の極形式

複素数を三角関数で表現したものを複素数の極形式(“極刑”式ではなくて「『極』形式」です)あるいは極表示と呼びます。これは大学数学や物理等で複素数を使う場合に本質的に重要です。

極形式とは?
公式(ド・モアブルの定理)
参考:極形式の「指数関数表示」 

極形式とは?

複素数を次の形で表したものを複素数の極形式と言います。

複素数の「極形式」

$$u=a+biの「極形式」:u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta)$$ $$\cos \theta=\frac{a}{|u|}=\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\hspace{10pt}\sin \theta=\frac{b}{|u|}=\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}},\hspace{10pt}$$

ここで、三角関数としておいている部分は必ず -1 以上 +1 以下であり、2乗して互いに加えたものは1に等しくなります。そのために、三角関数としてみなせる(対応する角度が必ず存在する)という事です。

この時の角度として新たに設定した実数 θ を、その複素数の偏角と言い、複素数 u に対して「 arg u」 と表記する事もあります。

このように複素数を極形式で表した時、直交座標のxy平面のx軸を複素数の実部、y軸を複素数の虚部(の実数部分)として扱う事があります。これを複素平面と言い、x軸を「実軸」、y軸を「虚軸」と呼んだりします。

このように、複素数を「複素平面」に図示して考える時もあります。
この時、複素数同士の積は「複素平面上の『回転』」を表します。

公式(ド・モアブルの定理)

複素数を極形式で表した時に成立する重要公式があり、これは2つの複素数の積は、「絶対値の積」と「偏角の和」で計算できるというものです。

複素数の積に関して成立する公式(ド・モアブルの定理)

$$u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta),\hspace{10pt}w=|w|(\cos \phi + i\sin \phi)のとき、$$ $$uw=|u||w|\{\cos (\theta+\phi)+i\sin (\theta+\phi)\}$$

割り算をした商の場合は、絶対値の部分を割り算し、割るほうの複素数の偏角にマイナス符号をつけて掛け算します。つまり、割り算の時は偏角部分を引き算するわけです。

割り算の場合

$$u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta),\hspace{10pt}w=|w|(\cos \phi + i\sin \phi)のとき、$$ $$\frac{u}{w}=\frac{|u|}{|w|}\{\cos (\theta-\phi)+i\sin (\theta-\phi)\}$$

成立根拠は三角関数の加法定理です。

$$uw=|u|(\cos \theta + i\sin \theta)|w|(\cos \phi + i\sin \phi)$$

$$=|u||w|\{ \cos \theta \cos \phi – \sin \theta \sin \phi +i(\sin \phi \cos \theta + \sin \theta \cos \phi )\}$$

$$=|u||w|\{\cos (\theta+\phi)+i\sin (\theta+\phi)\}【証明終り】$$

割り算のほうは、共役複素数を分母と分子に掛けて証明します。
偏角が θ である複素数の共役複素数の偏角は -θ になりますから、掛け算のほうの公式を使えば割り算のほうの証明が完成します。

尚、この極形式の観点から言うと、虚数単位 i は

$$i = \cos \frac{\pi}{2}+i\sin \frac{\pi}{2}$$

と書く事もできる事は重要です。これによって、虚数単位 i を掛け算する事は、複素平面上では「90°回転」を意味する事が分かります。物理や工学では、その分だけ「『位相』を進める」などといった表現がなされる事があります。

参考:極形式の「指数関数表示」

上記のド・モアブルの定理による計算と同じ結果を得る方法として、複素数の「指数関数表示」というものがあり、この表示が使われる事がよくあります。「オイラーの式(公式)」と呼ばれる事もあります。

$$e^{ix}=\cos x +i\sin x$$

この表示を使った場合、通常の指数関数と同様に積の計算や微分の計算を行っても正しい計算になります。これの導出には、テイラー展開を使います。また、指数関数の定義域を複素数に拡張する時に「正則関数」という種類の関数になるように条件を付けると、拡張の方法はこの表示のみしかないという結論を得ます。

複素数自体の知識について、物理や工学での使用、大学数学の微分方程式論や複素関数論で使うために必要な知識は、おおよそ上記に記した事を把握していればじゅうぶんだと思います。あとは、どのように使われるのかを見ながら慣れていきましょう。