ガウスの積分【閉曲面に対する立体角の積分表示】

位置ベクトル\(\overrightarrow{r}\)=(x,y,z)をベクトルの大きさrで割る事により
単位ベクトル(大きさが1のベクトルを言います)にすると\(\overrightarrow{r}\)/rというベクトルとして書けます。

ベクトル\(\overrightarrow{r}\)/rをさらにrで割ったベクトルを考えると
\(\overrightarrow{r}\)/(r)というベクトルになり、
このベクトルに対する閉曲面上の法線面積分の事をガウスの積分と呼ぶ事があります。
この積分は、閉曲面の形状によらずに閉曲面に対する原点の位置によって3種類の値だけをとります。
また、ガウスの積分は閉曲面に対する立体角の積分表示ともなっています。

ガウスの積分の被積分関数に入っている「距離の3乗」は、見かけ上のものであり、本質的には「距離の2乗」に大きさが反比例するベクトルである事が重要となっています。ただし、具体的な計算では「3乗」の部分が結果に影響してくる部分はあります。

■関連サイト内記事:

立体角の積分表示および球面との関係

立体角は平面角に対応する語で3次元空間的な広がりを表す量で、球の表面積を使って定義されますがその積分の形がガウスの積分と同じものになります。(ただし、ガウスの積分は閉曲面に対する積分を指し、立体角の積分表示は同じ被積分関数に対して開曲面にでも定義されます。)

ではガウスの積分も球の表面積に関連するものなのかというと実際そうであり、
後述するようにガウスの積分が取り得る値は0,2π,4πだけとなっています。
つまり積分の結果は円周率の定数倍の値だけをとるという結果です。
これらの結果は偶然にもそうなるというだけでなく、
円や球に由来して2πや4πといった数値が結果として導出されます。

その結果は物理的な考察にも使用される事があります。
ガウスの積分の被積分関数は\(\overrightarrow{r}\)/(r)ですが、これは大きさが「rに半比例する」ベクトルであり、向きは原点からある点までの向きそのものとなっています。そのようなベクトルは物理的な力や場を表すものとして存在し、具体的には静電気力や万有引力、一部の磁気力などが挙げられます。代表的なものは電場に関するガウスの法則であると言えます。

そして物理での考察で使用する時にも「球面」は重要な要素となります。

立体角とガウスの積分の関係。当サイト記事「立体角の定義と使われ方」より

ガウスの積分の内容

ガウスの積分とは具体的には次のようなものです。

ガウスの積分

\(\overrightarrow{r}=(x,y,z)\)および
\(r=|\overrightarrow{r}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}\) のもとで、
閉曲面Sに対する次の法線面積分をガウスの積分と呼びます。 $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}$$

この時に閉曲面Sは任意の形状ですが、
どのような閉曲面に対してでも、ガウスの積分が取り得る値は3つしかない
事が知られています。

(公式)ガウスの積分の3種類の値

原点と閉曲面の位置関係によって結果が分かれます。

  1. 原点が閉曲面Sの「外側」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0$$
  2. 原点が閉曲面Sの「曲面上」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$
  3. 原点が閉曲面Sの「内側」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=4\pi$$

2番目(閉曲面上)の式は極限値として考える必要があり、
3番目の式もそのように考える事もできます。

物理学では値が無限大になってしまう点を特別扱いできるデルタ関数を使ってガウスの積分により表現される内容を表す事もあります。
あるいはガウスの積分は閉曲面に対しての立体角と同一視できるので立体角の文脈で話を進める事もあります。

ガウスの積分の計算および証明

次の3つの場合分けがあります。

この証明にはガウスの発散定理の結果と、ベクトル場に関する発散(div)の計算を使います。

ここで言う「発散」とは極限における「収束と無限大への発散」の意味ではなく、物理的には「湧き出し」の意味を持ち数式的には偏微分で定義されるスカラー量を作る演算およびその結果を指します。

①原点が閉曲面の「外側」にある場合

対象のベクトル場の発散 \(\mathrm{div}\frac{\Large \overrightarrow{r}}{\Large r^3}\)を直接計算すると、
実は必ず0になるという結果が得られます。

$$公式:\mathrm{div}\left(\frac{\overrightarrow{r}}{ r^3}\right)=0$$

この式は、より一般的な公式である\(\mathrm{div}\left(r^n\overrightarrow{r}\right)=(n+3)r^n\) の結果でもあります。
すなわち、n=3の時は結果が0となるわけで、div\(\overrightarrow{r}\)/(r)を表しています。

次に、ガウスの発散定理によればベクトル場の法線面積分は
ベクトル場の発散を被積分関数とした体積積分」によって表せます。
ここで\(\mathrm{div}\frac{\Large \overrightarrow{r}}{\Large r^3}\)の体積積分を考えるとすれば
被積分関数が定数関数でしかも値は0」なので、考えている領域での積分の結果も0です。

ただし、\(\overrightarrow{r}\)/(r)は原点で定義できない関数である事に注意する必要もあります。

しかしまずは「原点が閉曲面の外側にある場合」を考えているので、
この場合には閉曲面の領域に定義できない点は含まれません。

そのため、発散定理により次のように書けます。

$$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_V\mathrm{div}\left(\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\right)dv【∵ガウスの発散定理】$$

$$=\int_V\hspace{3pt}0\hspace{3pt}dv=0$$

参考:公式の導出計算

②原点が閉曲面の「曲面上」にある場合

原点が閉曲面上にある場合でも、
ベクトル場の発散 div \(\overrightarrow{r}\)/(r)を計算すると0になるという事は同じです。

しかし\(\overrightarrow{r}\)/(r)は原点で定義できず、かつ原点が考えている閉曲面上にある場合には
積分したい領域内で被積分関数が定義できない点を含む
という事を意味します。

従って法線面積分を考える閉曲面Sについて、通常の閉曲面とは違うものを考える必要があります。

具体的には、閉曲面から原点を除いたものを領域として考える必要があります。
ただし、1点だけを除くという考え方だと積分の計算がうまくいかないので、もとの閉曲面から原点付近のわずかな領域を除いた部分を改めて閉曲面Sとします。
さらにこの場合では、原点を含む「面だけ除く」事もできないので
体積を持った領域ごと除く事になります。

そして、除く領域の形状は「半球」とする必要があります。これには理由が2つあります。

取り除く領域を「球状」にする理由
  1. 球面であれば曲面に対する法線とベクトル場\(\overrightarrow{r}\)/(r)の方向が平行になるので、法線面積分を直接計算できる利点があります。
  2. 発散定理により領域内でベクトル場の発散が0であれば「1つの閉曲面を構成する2つの開曲面の法線面積分はそれぞれ等しい事」が示されます。そのため、一番計算しやすい領域で計算すれば十分という事になるので球面を考えます。

上手にきれいな半球を繰り抜けるかどうかは、閉曲面を多面体に近似することで可能になります。法線面積分が成立するの十分細かい分割の多面体で考えた時に、平面状の微小領域よりも半径が小さい球を考えればそこで半球状にくり抜く事ができます。

原点を中心とする微小な半径ρの半球Sを考えて、Sは外縁となっている円周部分(球を2つに割った所の部分)を閉曲面Sと共有するとします。
また、閉曲面S上から半球Sで囲まれる領域を除いた部分をSとします。この時に曲面Sは開曲面であり、閉曲面Sに「穴」が開いて形状をしています。

ここで半球Sと開曲面Sを合わせた領域は「原点が外部にある閉曲面」となっています。(もとの閉曲面Sと同一ではありません。)そこで半球Sと開曲面Sを合わせた閉曲面をS∪ Sとおきます。【「∪」は和集合の記号です。】
この時に、原点を除いて\(\mathrm{div}\frac{\Large \overrightarrow{r}}{\Large r^3}=0\)であり、S∪ Sは原点を含まない事から発散定理を適用すると法線面積分の値は0です。S∪ Sの内部の領域をVとして、次の計算ができます。

$$\int_{S1\hspace{1pt}U\hspace{1pt}S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{V1}\mathrm{div}\left(\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\right)dv=0により、$$

$$\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}-\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0\Leftrightarrow\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}$$

つまり半球Sの法線面積分と開曲面Sの法線面積分の値は一致します。
そして結論から言うと半球S0のほうの積分の値は具体的に計算できます。

半球Sは原点を中心とした半径ρの半球なので、
S上でベクトル場\(\overrightarrow{r}\)/(r)の大きさはどこの点でも等しく1/(ρ)です。
方向については各点で球面に垂直で外側向きなので法線との内積は1となり、
法線面積分は定数関数に対する面積分となります。

この時には面積要素を分割して合計して定数倍を考える事になりますが、面積要素を十分細かい分割のもとで合計した極限値は「表面積」に他ならないので面積分は表面積の計算を意味します。

すると考えている領域が半球なので、その表面積は\(2\pi\rho^2\)です。
これによって法線面積分の結果を出せる事になります。

$$\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\frac{1}{\rho^2}\int_{S0}ds=\frac{1}{\rho^2}\cdot 2\pi\rho^2=2\pi$$

結果を見ると「半径ρ」が消えているので、
実は半径の大きさに関わらず積分の値は一定であるという事になります。

そのため、穴の開いた開曲面Sの法線面積分は
半球S0の法線面積分に等しいという事だったので次のように表せます。

$$\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$

半球Sの法線面積分の値は半径ρによらず同じなので、
上式はρ→0の極限でも成立して次のように書けます。

の法線面線積分の符号を変えているのは
「原点を中心に半球を単独で考察した時」と閉曲面Sを構成する時とで
考えた時の「外側への向き」が逆になるためです。
結果的に引き算する形となります。

$$\lim_{\rho\to 0}\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\lim_{\rho\to 0}\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$

他方でもとの閉曲面Sに対する法線面積分を
穴が開いた曲面Sの法線面積分に対して半球Sの半径が0になる極限値で表すもの
とすると次のようになります。

$$\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\lim_{\rho\to 0}\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$

よって、原点が閉曲面上にある場合のガウス積分値は2πであるという事が言えます。

考えてきた閉曲面を整理すると次のようになります。

曲面原点との位置関係積分計算での意味
S閉曲面
原点が閉曲面上にある
被蹟分関数が定義できない点を含むので
積分はそこを除外して極限値として計算
S開曲面で、原点を内部に含む。
(中心が原点で半径ρ)
法線面積分の値は2πで、
半径ρに関わらず同一の値
S開曲面で穴が開いているSからSの内部を除いた領域
Sの法線面積分はSの半径ρ→0の極限で
Sの法線面積分になると考える

③原点が閉曲面の「内側」にある場合

閉曲面の内部に原点がある場合にも、閉曲面上に原点がある場合と同じ問題が発生します。ただしこの場合は閉曲面内部で体積積分を行う時に除いて考えるべき点が生じる事になります。

閉曲面Sの内部から「原点を囲む微小な球をくり抜いて除いた」領域を考えます。

ガウスの積分において原点で領域を定義できないので、
原点を含む領域を球状に除いて、球の半径を0に近づけた時の極限値として
ガウスの積分の値を計算します。

原点が閉曲面上にある時と類似の計算により、
閉曲面の内部から除いた球面上での法線面積分は球の半径ρにかかわらず一定値になります。
球の表面積4πρをρで割る計算となり、結果は\(4\pi\)です。

より具体的には閉曲面Sと、その内部で原点を中心とする小さい半径ρの球S0を考えてSとSを接続するてきとうな曲面を考えます。(その曲面上では法線面積分は表と裏の両方で計算する事になり、プラスとマイナスの値が打ち消して0になります。)そのようにしてできる全体の閉曲面をSUとします。

この閉曲面SUは原点を含まない閉曲面であり、
内部の領域VUにおける任意の点で\(\mathrm{div}\frac{\Large \overrightarrow{r}}{\Large r^3}=0\)なので発散定理により法線面積分の値は0です。

よって表と裏の関係による符号に注意して、
閉曲面Sと球S0の法線面積分の値は同じです。この場合は球Sの半径ρ→0の極限を考えなくても結果の式が出ますが極限を考えても値は同じになります。(内部の領域まで元の領域に近付けるなら極限を考える必要があります。)

$$\int_{SU}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{VU}\mathrm{div}\left(\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\right)dv=0により、$$

$$\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}-\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0\Leftrightarrow\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}$$

$$(任意の\rho で)\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=4\pi なので、$$

$$\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=4\pi$$

球面Sの法線面積分は球の外側を表としていて、それは閉曲面SUから見ると裏側になるので閉曲面SUの法線面積分の構成要素としては球面Sの法線面積分はマイナス符号をつける事になります。

計算の導出過程を見ると、原点が「閉曲面内にある時」と「閉曲面上にある時」のガウスの積分の値の2倍の差は「球」と「半球」の表面積の違いを意味しているという考察もできます。

原点と閉曲面の位置関係ガウスの積分の値くり抜いて除外する領域の形状
閉曲面の外側特に無し
閉曲面上\(2\pi\)半球
閉曲面の内側\(4\pi\)

平面曲線の曲率円と曲率半径

曲率円そのものについては高校ではあまり扱いませんが、内容としては高校数学のまとめのような所もあるので、高校数学としても勉強になる題材かもしれません。より一般的には、曲線・曲面論の初歩的な事項の1つになります。

曲線の曲がり具合と曲率円

平面上の曲線について、緩やかに曲がっているものもあれば、急激な曲がり方をしているものもあります。

その曲り方の度合いを定量的に調べる方法としては、まず微分によって傾きを調べる方法が1つあります。

他方で、「曲線のある箇所に接する事のできる円の半径の最大値」によってその曲がり具合を調べる方法もあります。その目的で用意する円の事を「曲率円」と言い、曲率円の半径の事を「曲率半径」と言います。
この曲率円は、調べようとしている点以外の場所で曲線と交わっていても構いません。

曲率円と曲率半径

曲率円の中心座標と曲率半径の公式

曲線上のある点に注目した時には、
「曲率円の中心座標と半径(「曲率半径」)は曲線を表す関数の2階までの導関数(微分)の微分係数を使って表す事ができる」という公式が存在します。

曲率円の公式

曲線がy=f(x)と表される時、x=cでの曲率円の中心座標(a,b)と曲率半径rは次のように表されます。f(c)=f、f'(c)=f’、f”(c)=f”と表記しています。$$中心座標:a=c-\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)f_c’}{f_c’\hspace{1pt}’}\hspace{15pt}b=f_c+\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)}{f_c’\hspace{1pt}’}$$ $$曲率半径:r=\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|f_c’\hspace{1pt}’|}$$ 【これらは、関数の形としてxとy、y’、y”の形で書いても成立します。】
曲率半径の式の分母に絶対値記号がつくのは、単純に半径がプラスの値であるという意味です。
中心座標に関しては、マイナスの値である事もあり得ます。

◆証明:円の式(x-a)+(y-b)=rと、両辺の1階微分および2階微分の3式を使います。

微分なし:(x-a)+(y-b)=r

1階微分:2(x-a)+2y’ (y-b)=0 ⇔ (x-a)+y’ (y-b)=0
【yの所は合成関数の微分公式使用】

2階微分:1+y”(y-b)+y’=0
【yの所は積の微分公式使用】

実は、これらの式からa、b、rについて解くというだけで証明は十分です。

◆上記3式は単独で存在する円のについて成立する式と全く同じ形ですが、ここではx=cで、yの値もy=f(c)で固定されていると考えてa、b、rの値を出そうとしているわけです。
【円の導関数を出す目的であれば、a、b、rが定数であって、y’をxの関数あるいはxとyの関数で表します。】

以下、上記3式に、x=cを代入し、yにはy=f(c)を代入している【煩雑さを避けるためにyのままで表記しておきます】と考えます。

まず、2階微分の式からbをすぐに出せます。

$$1+y’\hspace{1pt}'(y-b)+y’\hspace{1pt}^2\Leftrightarrow y-b=-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\Leftrightarrow b=y+\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}$$

◆ある点で円に接する曲線は直線も含めてたくさんあり得ますが、
曲線の2階微分の微分係数まで決定している状況であれば、その曲線に接する事のできる円の中心のy座標は確定してしまう事を意味します。

次に、y-bを1階微分の式に代入します。

$$(c-a)+y’\left(-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)=0\Leftrightarrow a=c-\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)y’}{y’\hspace{1pt}’}$$

◆円の2階微分の式から中心のy座標は確定していたわけですが、
1階微分の式、つまり「接する」という条件からx座標も任意であるわけではなく、結論は1つに決まるという事です。

この式からc-aも分かるので、y-bと合わせて微分前の式に代入してrを出します。

$$(c-a)^2+(y-b)^2=r^2\Leftrightarrow \left(y’\cdot\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)^2+\left(-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)^2=r^2$$

$$\Leftrightarrow r^2=\frac{y’\hspace{1pt}^2
(1+y’\hspace{1pt}^2)^2+(1+y’\hspace{1pt}^2)^2}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2) (1+y’\hspace{1pt}^2)^2}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^3}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}$$

$$【r>0だから】\Leftrightarrow r=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|y’\hspace{1pt}’|}$$

【途中の箇所では、分子の因数分解をすると結果的に3乗の形になっているという事です。】

◆曲率円の中心座標は確定しており、曲線も具体的に1つ決まっているとすれば、
中心から接点までの距離もただ1つに確定するわけです。

得られたこれらの式のy、y’、y” の所にf(c)、f'(c)、f”(c) を代入すれば公式の形になります。

簡単な例としては、2次関数y=xとその1階微分と2階微分y’=2x、y’=2を考えてみて、
x=0でそれらの値はそれぞれ0、0、2ですから公式に当てはめると曲率円の中心は(0,1/2)で曲率半径は1/2になります。

曲線の「曲率」と公式

さて、曲率半径rの逆数、つまり1/rの事を曲線のある点での「曲率」と呼びます。
なぜわざわざ逆数を考えるのかというと、次の公式が成立し、平面での図形的な意味も持つためです。

曲率の定義と公式

平面上の曲線のある点での「曲率」とは曲率半径の逆数であると定義します。 $$(ある点での曲線の)曲率:k=\frac{1}{r}\hspace{5pt}と定義$$ 曲線上の点が、ある定点から測った弧長sの関数であるベクトル \(\overrightarrow{X}(s)\) として表されるとして、
その点での曲線の長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)(微分はsで行う)と
x軸の正方向との成す角をsの関数としてθ=θ(s)とすると、
曲率との間に成立する次の関係式が成立します。 $$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=k\hspace{5pt}\left(=\frac{1}{r}\right)$$

|dθ/ds|という導関数は、図形的に考えると曲線の「曲がり具合」を表す量になります。
接線ベクトルの導関数も同じく曲がり具合の度合いを表すと考えられますが、それは|dθ/ds|に実は等しくなります。
それが曲率半径の逆数に等しいという事については、逆三角関数を利用して証明します。

◆ベクトルの微分については、ベクトルの各成分を同じ変数で微分したものと定義されます。

証明(前半)

まず次式から証明します。

$$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\left|\frac{d\theta}{ds}\right|$$

証明方法の1つは、図形的な考察をしてから
「角度θが小さい時には sinθ≒θ」という近似式が成立する事を使うものです。

◆この近似式は、次の正弦関数に関する極限の変形として考える事ができます。$$\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1 により、\theta が0に近い時は\sin \theta≒\theta$$あるいは、マクローリン展開で第2項以降の3次以上の項を0に近似するか、正弦関数のθ=0での微分係数が1になる事からθ=0での近似一次式としてy≒θと考える事もできます。

接線ベクトルと角度の関係
sは媒介変数として特に弧長を表すものとしています。

曲線の接線ベクトルは、大きさについては1に揃えるものを考えても角度には影響しません。そこで、曲線上の任意の点において接線ベクトルは長さ1であるとします。

すると、接線ベクトルを\(\overrightarrow{T}(s)\) とした時、\(\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)\) というベクトルを考えた時に、これは二等辺三角形の底辺になっています。【2辺の長さが1で、それらのはさむ角度がθ】

すると、その底辺の長さ |\(\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)\)| は実は簡単な図形的な考察からθで表す事ができます。
それは余弦定理で表す事もできますが、もっと単純に直角三角形の辺の比から正弦で表す事もできます。
結果は2sin(Δθ/2)になります。【長さ1の斜辺の正弦sin(Δθ/2)の2個分を考えただけです。】

$$|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|=2\left|\sin\frac{\Delta\theta}{2}\right|$$

【左辺が絶対値(プラスの値)なので、右辺にも絶対値をつけてあります。】

今、s→0の時にΔθ→0なので、sin(Δθ/2)≒Δθ/2となります。

$$|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|=2\left|\sin\frac{\Delta\theta}{2}\right|≒2\left|\frac{\Delta\theta}{2}\right|=|\Delta\theta|$$

$$\Leftrightarrow \frac{|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|}{\Delta s}≒\frac{\Delta\theta}{\Delta s}$$

$$\Delta s\to 0 の極限を取る事で【その時\Delta\theta \to 0】\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\frac{d\theta}{ds}$$

証明(後半)

次に次式を証明します。

$$\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=\frac{1}{r}$$

証明には逆三角関数とその微分を使います。

変数がxである状況に一度戻ると、導関数は接線の傾きを表すので、
その傾きは正接を使って tan θ = y’ と書けます。

これの逆関数を考えると、θ = arctan y’ と表記できます。
【これらは両辺ともにxの関数であるとします。】

すると、これをさらにxで微分すると次式になります。

$$\frac{d\theta}{dx}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{1+y’\hspace{1pt}^2}$$

逆三角関数の微分公式と、合成関数の微分公式を使用。(d/dx)arctan x=1/(1+x)】

他方で、弧長を積分で表す公式を使うと【三平方の定理を利用した公式】次のように書けます。

$$s=\int_a^x\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}dt$$

【積分の中身のy’ は形式上tの関数として書かれています。また、aはs=0となる点のx座標であるとします。】

このsをxで微分すると、微積分学の基本定理により次式になります。

$$\frac{ds}{dx}=\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}$$

ここで、dx/dsを逆関数の微分公式により次のように表せます。

$$\frac{dx}{ds}=\frac{1}{\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}}$$

ここで合成関数の微分公式を再び考えるとdθ/ds=(dθ/dx)(dx/ds) ですから、得られた関係式を組み合わせると次のように表せます。

$$\frac{d\theta}{ds}=\frac{d\theta}{dx}\cdot\frac{dx}{ds}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{1+y’^2}\cdot\frac{1}{\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}$$

ところで、前述の曲率半径は y’ 等の導関数の形で書くと次のようになります。

$$r=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|y’\hspace{1pt}’|}$$

つまり、絶対値記号さえつければ、dθ/dxとは丁度逆数の関係になっています。

$$よって、\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=\frac{1}{r}が成立します。【証明終り】$$

曲率・接線・法線の関係(フルネー・セレーの公式)

さて、長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)を考える曲線上の点において、長さ1の法線ベクトル\(\overrightarrow{N}(s)\)も同時に考えてみます。(「法線」とはある点で接線に垂直である直線や線分の事。)

前述の曲率k(=1/r)を使うと、接線ベクトルと法線ベクトルとの間に次の関係が成立します。

曲率・接線・法線の関係(フルネー・セレーの公式)

長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)、長さ1の法線ベクトル\(\overrightarrow{N}(s)\)、曲率k(=1/r)の間には
次の2式の関係があります。 $$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=k\overrightarrow{N},\hspace{15pt}\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=-k\overrightarrow{T}$$

この内容の意味を考えてみると、曲率はただのスカラー値(あるいはスカラー関数)ですから、「接線ベクトルのsによる微分」は法線ベクトルに平行であり、「法線ベクトルのsによる微分」は接線ベクトルに平行であるという事を意味します。

証明(第1式)

では、本当にそうなるのかという話です。

これを見るには、「接線ベクトル同士の内積」を微分してみると上手くいきます。

同じベクトルの内積は、単にそのベクトルの大きさの2乗であって、しかもここでは |\(\overrightarrow{T}(s)\)| =1として考えていますから、同じ接線ベクトル同士で内積を考えると次式です。

$$\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{T}=1$$

これをsで微分してみますと、積の微分公式を成分ごとに適用すればスカラー関数同士の積の微分同様の関係になります。右辺は定数ですから微分すれば0です。

$$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}+\overrightarrow{T}\cdot\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=0\Leftrightarrow 2\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0 \Leftrightarrow \frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

【内積は可換(\(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{a}\))であるためにこうできる事に一応注意。】

$$という事は、2つのベクトル\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}と\overrightarrow{T}は互いに垂直であるという事です。$$

そして、\(\overrightarrow{T}\)に垂直な長さ1のベクトルとして\(\overrightarrow{N}\)を考えていたわけですから、\(d\overrightarrow{T}/ds\) と \(\overrightarrow{N}\) は平行であって大きさだけが異なります。

しかし、上述の曲率kに関する公式から$$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=k であったわけです。$$

$$という事は、\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|\overrightarrow{N}=k\overrightarrow{N}$$

【\(|\overrightarrow{N}|=1\) であるのでこう書ける事に注意。】

つまり、フルネー・セレーの公式の最初のほうの式が成立するという事です。【証明終り】

証明(第2式)

続いて、フルネー・セレーの公式の2番目のほうの式の証明です。

今度は\(\overrightarrow{N}\)について内積を微分してみると同様に次式になります。

$$\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}=0$$

この式に、\(k\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{N}=0\)を加えます。(ここでスカラーである曲率kはオマケとして、証明のために敢えてくっつけています。kがなくてもこの内積の関係は成立します。)

$$k\overrightarrow{N}\cdot\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}=\Leftrightarrow \left(k\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\right)\cdot\overrightarrow{N}=0$$

ここで出てきた\(k\overrightarrow{T}+\large{\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}}\)というベクトルもまた、法線ベクトルに垂直(従って接線ベクトルに平行)という事になります。他方で、このベクトルは別の式からも出てきます。

それは\(\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{N}=0\)を微分する事によって出てきます。

$$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0\Leftrightarrow (k\overrightarrow{N})\cdot\overrightarrow{N}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

$$\Leftrightarrow k+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0\Leftrightarrow (k\overrightarrow{T})\cdot\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

$$\Leftrightarrow \left(k\overrightarrow{T}+\frac{\overrightarrow{N}}{ds}\right)\cdot\overrightarrow{T}=0$$

【既に得られている関係の代入と、\(\overrightarrow{N}\cdot\overrightarrow{N}=\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{T}=1\)を利用した細工を行っています。】

という事は、\(k\overrightarrow{T}+\large{\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}}\)というベクトルは接線ベクトルにも垂直である事になります。これは、法線ベクトルにも接線ベクトルにも垂直である事を意味しますが、平面上でそのようなベクトルはゼロベクトルしかありませんから、次のようになります。

$$k\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=0\Leftrightarrow \frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=-k\overrightarrow{T}$$

これはフルネー・セレーの公式の2番目のほうの式になっています。【証明終り】

角運動量の数学

物理学で考える「角運動量」は回転運動を表す物理量です。外積ベクトルを使って表します。

◆関連:ベクトルの基本事項と内積

角運動量ベクトル

角運動量ベクトル(angular momentum)の定義

角運動量ベクトルは、次のように外積ベクトルによって定義されます。 $$角運動量ベクトル:\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{p}$$ $$物体の位置ベクトル:\overrightarrow{r}=(x,y)$$ $$運動量ベクトル:\overrightarrow{p}=m\overrightarrow{v}$$ $$\left(物体の質量:m\hspace{10pt}速度ベクトル:\overrightarrow{v}=\left(\frac{dx}{dt},\frac{dy}{dt}\right)\right)$$

◆これに対して、「角速度ベクトル」(あるいは「回転ベクトル」)は
「物体が回転軸周りの同一平面内で回転運動をしている時に、向きは物体の回転方向が右ねじを締める向きに一致するの軸方向で、大きさは角速度ω【rad/s】に等しい」というベクトルです。$$角速度ベクトルの大きさ:|\overrightarrow{\omega}|=\omega【rad/s】$$$$角速度ベクトルの向き:\overrightarrow{\omega}の向きは軸方向で、右ネジを締めた向きが回転方向に一致する向き$$ 回転面の中心を基準点とした場合には、角速度ベクトルと角運動量ベクトルの向きは一致します。

角運動量を外積ベクトルで表す事には幾つかの意味があります。

まず、回転の向きに関しては時計回り(順方向)と反時計回り(逆方向)という事もありますが、回転している「面」の事も含みます。例えば、空間内にxyzの直交座標を考えた時に、同じ速さで同じの形の軌道を描いて回転している場合であっても、「xy平面での回転」「yz平面での回転」は当然「異なる運動」であると言えます。

そこで外積ベクトルの向きは、回転面の「軸」の向きに相当する方向を表す事になります。物体の運動方向が基準点から見て時計回り方向なのか、それとも反時計回り方向なのかも外積ベクトルの向きで表す事ができるわけです。(外積ベクトルの符号が反転すると運動量ベクトルの符号が反転し、全く反対の方向への運動を表す事になります。)

角運動量ベクトルと外積
角運動量ベクトルは外積ベクトル(ベクトル積、クロス積)で表します。
角速度ベクトルと角運動量ベクトル
角速度ベクトルと角運動量ベクトルの違いに注意。

また、ある点を基準として同じ角速度で回転をしていても、その点の近くを回転している時と遠くを回転している時とでは、物体の速度は異なります。
「物体の位置ベクトル」\(\overrightarrow{r}\) は、回転の中心からの「距離」も情報として含むので角運動量ベクトルを構成する要素として使わます。(この事は「力の能率(モーメント)」と関係します。)

外積ベクトルで表されているという事は、2つのベクトルが平行である場合(成す角度が0または \(\pi\)である場合)には値が0である事になります。これは、物体の運動がある点から直線状に遠ざかっていく、あるいは直線状に近寄ってくるような場合であり、「回転」の様子がない事を表しています。

力の能率(モーメント)

力の能率(あるいは「力のモーメント)」moment of force)は角運動量ベクトルの時間微分として表されます。ベクトルに対する微分は、具体的には成分に対する微分として定義されます。

ここで角運動量ベクトルの定義通りの式に時間微分をすると考えると、外積ベクトルに対する微分をするいう事になりますが、これは通常の積の形に対する微分公式と同じ形が成立します。【証明は外積の成分表示を使うと比較的簡単です。】

すなわち、次式のように書けます。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\frac{d}{dt}\left(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{p}\right)=\frac{d\overrightarrow{r}}{dt}×\overrightarrow{p}+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}$$

【ここで、位置ベクトルの時間微分は速度ベクトル\(\overrightarrow{v}\)である事に注意します。】

$$=\overrightarrow{v}×\overrightarrow{p}+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}=m\left(\overrightarrow{v}×\overrightarrow{v}\right)+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}=\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}$$

【最初のtで微分した後の第1項は0になり、第2項だけが残るという事です。】

ところで、運動量ベクトルの時間微分とは何であったかというと「力ベクトル」\(\overrightarrow{F}\)であったわけです。(それが運動方程式が表現している事そのものです。)

という事は、角運動量ベクトルの時間微分は結局「位置ベクトル」と「力ベクトル」との外積という事になるわけです。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}$$

この外積ベクトルの事を、「力の能率」あるいは「力のモーメント」と呼びます。

積の形に対する微分公式と同じ形の公式が外積ベクトルを構成するベクトルにも成立します。

力の能率は、意味としては「大きさを持つ物体に力を働かせる時、ある支点から距離が離れているほど回転させる効果は大きい」というものですが、より詳しくは角運動量ベクトルの時間変化という事になるわけです。

力の能率(モーメント)
「てこ」(レバー)を使う時などに、支点からの距離があったほうが回しやい事を表現します。

角運動量の保存則

物体に働く力が「中心力」で、原点を中心にとった時には角運動量は保存量となります(角運動量保存則)。

この時には、角運動量ベクトルがどちらに向いているかはその時々によって異なりますが、
「力」の向き――つまり「運動量ベクトルの時間微分」の向きは、常に中心を向いている事を意味します。

従って、角運動量ベクトルが具体的にどう表されるかはその時々により異なりますが、
力の能率は中心力のもとでは常にゼロベクトルである」と言えるわけです。

$$中心力が物体に働く時:\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}=0【ゼロベクトル。\overrightarrow{F}=C\overrightarrow{r}と書けるから。】$$

ところで、力の能率は角運動量ベクトルの時間微分であったわけですから、中心力のもとではそれが0になる事を意味します。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}=0$$

時間微分が0であるという事は、「時間によって変化しない」事を意味します。(実際、ベクトルの各々の成分に対して、その形の微分方程式の解は時間に関して「定数」という事になります。「時間に依存しない」形となるわけです。)

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=0\Leftrightarrow \overrightarrow{L}は定ベクトル(時間に依存しない。「保存」する)$$

この事を、「中心力のもとで角運動量は保存する」と表現します。
その事を、力学では角運動量保存則とも言います。

中心力と角運動量の保存

中心力のもとで軌道が円ではなく楕円のようになる場合にでもこの角運動量保存則は成立するので、中心力の発生源に近い場所では物体の運動量(および速さ)が大きくなり、発生源から離れているほど物体の運動量(および速さ)は小さくなる事を表しています。

剛体の角運動量

さて、では大きさを持った立体的な球とか円盤とか(変形しない事を仮定した場合に剛体と呼びます)が、
中心に立てた軸周りに「自転」している形式の回転の場合にはどうなるでしょうか。

この場合には、微小な体積領域で通常の角運動量を考えて、質量を位置の関数としての「密度」で表し、それに体積要素を乗じる事で表現します。それを領域全体で積分する事で「全角運動量」を計算するという形の理論になっています。

$$微小領域の質量:m=\rho dv【mと\rhoは\overrightarrow{r}の関数】$$

$$微小領域の角運動量ベクトル:\overrightarrow{r}×(\rho dv\overrightarrow{v})=\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv$$

ここでは自転的な運動、つまり回転軸の方向が不変である場合を考えます。
その場合は、速度ベクトル\(\overrightarrow{v}\)は「角速度ベクトル」\(\overrightarrow{\omega}\)と位置ベクトル\(\overrightarrow{r}\)の外積として表せるという公式を使えるので、角運動量ベクトルの式を変形できます。

$$公式:\overrightarrow{v}=\frac{d\overrightarrow{r}}{dt}=\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r}を使えるので、$$

$$\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv=\rho\left(\overrightarrow{r}×(\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r})\right) dv$$

この関係式は、より一般的に角速度ベクトルが定ベクトルではなく時間的に変化する関数になっている場合でも成立します。

角速度ベクトルの公式
原点を回転軸上にとった時、角速度ベクトルと位置ベクトルが作る平面と、速度ベクトルとは常に垂直になっています。

外積ベクトルの公式(「ベクトル三重積」)を使うと、もう少し計算を進められます。

$$\rho\left(\overrightarrow{r}×(\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r})\right) dv=\rho\left(|\overrightarrow{r}|^2\overrightarrow{\omega}-(\overrightarrow{\omega}\cdot\overrightarrow{r})\overrightarrow{r}\right) dv$$

これを領域内で積分(体積分)したものが、剛体全体での角運動量の合計(全角運動量)になります。
積分する領域はVと置いておきます。
◆参考:ガウスの発散定理(体積分の考え方と公式)

$$全角運動量:\overrightarrow{L}=\int_V\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv=\int_V\rho\left(|\overrightarrow{r}|^2\overrightarrow{\omega}-(\overrightarrow{\omega}\cdot\overrightarrow{r})\overrightarrow{r}\right) dv$$

内積はスカラーである事に注意して、位置ベクトルの成分表示を(x,y,z)とし、角速度ベクトルの成分表示を(ω,ω,ω)とするとさらに次のように書けます。

$$\overrightarrow{L}=\int_V\rho(x^2+y^2+z^2)\overrightarrow{\omega}dv+\int_V\rho(x\omega_x+y\omega_y+z\omega_z)\overrightarrow{r}dv$$

ここで全角運動量のベクトルも成分ごとに分けると、それら各成分は角速度ベクトルの成分の線型結合で表せるという、ちょっとした規則性を見出せます。全角運動量ベクトルのx成分を例として書いてみると、次のようになります。

$$\overrightarrow{L}のx成分:L_x=\int_V\rho\omega_x(x^2+y^2+z^2)dv-x\int_V\rho(x\omega_x+y\omega_y+z\omega_z)dv$$

$$=\omega_x\int_V\rho(x^2+y^2+z^2)dv-\int_V\rho(x^2\omega_x+xy\omega_y+xz\omega_z)dv$$

$$=\omega_x\int_V(y^2+z^2)\rho dv-\omega_y\int_Vxy\rho dv-\omega_z\int_Vxz\rho dv$$

【xの項が引き算で消える形になっています。】

全角運動量ベクトルのy成分とz成分についても同様の形の式になり、全角運動量はある正方行列Iと角速度ベクトルの積で表現できる事が言えます。その行列の成分Iijの事を「慣性テンソル」と呼び、その対角成分【I11,22,I33】は特に「慣性能率」とも呼ばれます。

$$ある3×3行列Iを使って、\overrightarrow{L}=I\overrightarrow{\omega}とも書ける。$$

一様な材質でできた対称性のある剛体の場合(球、円柱、円盤等)、具体的な積分の計算を手計算でも実行する事ができて、慣性能率は比較的簡単な形で表す事ができます。

これらの事は、物理学を専攻する学生さん以外にも、ベクトルやベクトルの外積の応用例を見るのに非常に良い題材の1つになっていると思います。

【証明】ガウスの発散定理

電磁気学などでよく使う「ガウスの発散定理」(「発散定理」「ガウスの定理」とも)の証明をします。
ベクトル解析の分野の中の基礎的で重要な定理の1つになります。

電磁気学の「ガウスの法則」は、「ガウスの発散定理」と関係が深いですが、あくまで静電場に関して成立する事実関係としての「法則」を表すものとして用語の使い分けがなされるのが一般的です。

関連事項(内部リンク)

定理の内容

$$以下、ベクトル場を\overrightarrow{F}=(F_1,\hspace{2pt}F_2,\hspace{2pt}F_3)=(F_1(x,y,z),\hspace{2pt}F_2(x,y,z),\hspace{2pt}F_3(x,y,z))\hspace{2pt}とします。$$

ガウスの発散定理とは次のようなものです。

ガウスの発散定理

ある閉曲面内の体積分と法線面積分について、次の関係式が成立します。 $$\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dv = \int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}$$ $$あるいは、\int\int\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dxdydz = \int\int_S F_1 dzdy + \int\int_S F_2 dzdx+ \int\int_S F_3 dydx$$ $$S:閉曲面 V:閉曲面で囲まれた空間領域 $$ $$d\overrightarrow{s}=(ds_x,ds_y,ds_z)【成分には正負の符号がある事に注意】$$ 法線面積分を考えた時に使う面積要素 dxdy 等は、dsx 等と同じく、符号を持つので注意。曲面に表と裏を必ず決め、「裏→表」の向きに面積要素のベクトル\(d\overrightarrow{s}\) を立てて向きと成分の符号を考えます。

特に、次の3式が同時に成立し、加え合わせる事で定理全体が成立する事になります。$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_S F_1 dydz$$ $$\int\int\int_V\frac{\partial F_2}{\partial y}dxdydz=\int\int_S F_2 dzdx$$ $$\int\int\int_V\frac{\partial F_3}{\partial z}dxdydz=\int\int_S F_3 dydx$$

積分の表記の仕方としては、次のように記す事もあります。これらは書き方を変えているだけで、全く同じ積分を表すという意味です。dxdyなどの表記の場合に積分記号を2つ重ねる表記にするのは、具体的な計算をする時には重積分の形になる事によります。$$\int_SF_1ds_x=\int\int_SF_1dydz$$ $$\int_SF_2ds_y=\int\int_SF_2dzdx$$ $$\int_SF_3ds_y=\int\int_SF_3dxdy$$

基本的な考え方は、複素関数論におけるグリーンの公式に似ています。要するに、ある多変数のスカラー関数について、変数が2つの特定の値の時に差をとったものは「その関数の偏微分の定積分」に等しいはず・・という発想を使います。

「スカラー関数の偏微分」を「微分する変数で定積分」する事により、特定の値のスカラー関数の差を作る事ができます。重積分の中でこの考え方を使う時は、偏微分に対する定積分の積分区間の端は一般には「関数の形」になります(yで積分するなら例えばy1=y1(x)というxの関数)。

発想自体は実はすごくシンプルなのですが、幾つか知っておかないとならない定義や公式がある事が「難しい」要因になります。特に必要になる事項を4つほど簡単に整理しておきます。

使う定義と公式の整理
①ベクトル場の「発散」の定義

ベクトル場\(\overrightarrow{F}\) に対する「発散」は次のようなスカラー関数です。 $$\mathrm{div}\overrightarrow{F}=\frac{\partial F_1}{\partial x}+\frac{\partial F_2}{\partial y} +\frac{\partial F_3}{\partial z}$$

②法線面積分の定義

法線面積分は、次のように計算できるものとして定義されます。 $$\int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_S (F_1 ds_z + F_2 ds_y + F_3 ds_z)=\int_SF_1 ds_x+\int_SF_2 ds_y+\int_SF_3 ds_z$$積分記号に添えてあるSは、「特定の閉曲面S」の表面の全域(あるいはそれに対応する領域)に渡って積分をするという意味です。dsz および dxdy 等を面積要素とも言います。(dsz および dxdy は共にxy平面上の領域の面積要素。)

③ \(d\overrightarrow{s} \)の座標成分と射影面積の関係

$$ d\overrightarrow{s}=( ds_x , ds_y , ds_z ) $$

  • \(|ds_x| \):微小領域の「yz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_y| \):微小領域の「xz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_z| \) :微小領域の「xy平面」への射影領域の面積

特に三角形の微小領域を考えると、外積ベクトルの性質によりこれらの関係が明確になります。

④体積分と重積分の関係

体積分は、特定の空間領域の全域に渡ってスカラー関数を積分するものです $$\int_V G(x,y,z) dv=\int\int\int_V G(x,y,z) dxdydz$$。dv =dxdydz を体積要素とも呼びます。
特別な場合では体積要素 dv のまま具体的な計算もできますが、通常は体積要素を dxdydz の形にして重積分にしないと計算は難しい事が多いです。
具体的な関数があって積分の値を計算する時は、次のように、通常の重積分と同じく累次積分を行います。 $$\int\int\int_V G(x,y,z) dxdydz=\int_{Z1}^{Z2}\int_{Y1}^{Y2}\int_{X1}^{X2} G(x,y,z) dxdydz$$ この時に積分する変数の順番は変えられますが、積分する領域の形状によっては、初めに積分する2つの積分区間は定数ではなくて関数になります。ここでの例だと X1=X1(y,z), Y1=Y1(z) 等です。

発散定理(ガウスの定理)の考え方②

発散定理における閉曲面の扱い

積分する範囲が「閉曲面」である事は定理の性質・証明において重要です。

閉曲面とは球や楕円体などの閉じられた曲面の事です。
(ただし直方体等の「角ばった箇所」がある閉じられた立体においても、定理は成立します。証明の過程を見ると、その事は分かりやすいかと思います。)

閉曲面は、凹んだような箇所がある曲面である場合もあります。
しかし、発散定理の証明においては実は「凹みがない」球のような曲面で成立する事を示せば十分です。それは、面積分に関して曲面は分割するできるからです。

例えば閉曲面を平面で真っ二つにした場合には、切断面の部分(2つに分かれた閉曲面の共有部分)では2つの積分の値が絶対値は同じで逆符号になります。それを加え合わせるとゼロになります。これは、共有される切断面においては「ベクトル場は同じ」で分割された2つの閉曲面同士で「法線ベクトルが絶対値は同じで逆符号」である事に起因します。

そのため、凹みのある閉曲面は出っ張ったところで切断して2つ以上の閉曲面に分けてしまう事により、法線面積分も2つの「凹みのない」閉曲面での法線面積分の和にできるのです。
(体積分に関しても、閉曲面を分割すると分割した領域での体積分を加えれば全体になります。)

つまり、発散定理の証明は「凹みのない」閉曲面で示されれば、凹みのある閉曲面で成立する事も示されるという事です。

発散定理(ガウスの定理)における閉曲面の扱い

証明

まず、次式から証明します。閉曲面は凹みがないものとします。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_S F_1 dydz$$

これ1つが証明できれば、他の2式も同じ形なので全く同様に証明できます。
最後に3式を加え合わせれば発散定理の形になります。

積分する前の段階で微小領域を考えると、\(d\overrightarrow{s}=( ds_x , ds_y , ds_z )\)の第1成分dsの絶対値は微小領域のyz平面への射影面積になります。

ところで、yz平面への「同じ射影の領域」を持つ閉曲面の微小領域は必ず2つ存在し、それらの第1成分は必ず符号のプラスマイナスが異なります。同じ射影の領域を持ちますから\(d\overrightarrow{s}\)の第1成分は「同じ大きさで異符号」です。

しかも、その組み合わせの合計で閉曲面は全て覆える事になります。ベクトル場の第1成分Fとdsの積を合計したものはyz平面上の積分になります。【Fは関数F(x,y,z) である事に注意。】
ただし、yz平面上で積分をすると、対応する閉曲面の領域は2つありますから、dsの符号がプラスになる部分とマイナスになる部分に分けられます。

射影領域と閉曲面の関係
凹みのない閉曲面ではxy平面への同一の射影領域を持つ部分が2つ存在し、それらの微小領域に対する法線ベクトルのz成分は互いに異符号になります。yz平面、xz平面への射影についても全く同様に考える事ができます。

ここで、閉曲面Sのyz平面への射影領域であり、yz平面での積分範囲でもある領域をSyzと置きます。
この平面領域Syzは、「表と裏」に関して次の約束事をしておきます:

◆約束事:平面領域Syz
x方向のプラス方向に面した部分が「表」でx方向のマイナス方向に面した部分が「裏」
と決めます。
つまりこの領域Syz上での面積要素のベクトルは\(d\overrightarrow{s}=(ds_x,0,0)\) であり「ds およびdydzの符号は、必ずプラス符号として考える」という事です。
発散定理(ガウスの定理)の証明
ベクトル場の第3成分とxy平面(の射影)での積分を考えた場合はこの図のようになります。図の下側の領域では「もとの閉曲面Sでの面積要素」の符号が全てマイナスなので、「面積要素がプラス符号の平面領域(図のSxy)」での積分として表記する場合には積分全体に対してマイナス符号をつける形になります。

またyとzの関数X(y,z)とX(y,z)を考えて、
それらは各々「yz平面への同じ射影領域を持つ」2つの微小領域でのx座標であるとします。
(領域を2分割して考える時に「x座標の『yとzによる関数』の形」が違うためにそのように考えます。)
すると、閉曲面全体のベクトル場の第1成分Fのyz平面上の領域Syzでの積分は、
次のように差の形で表せる事になります。

$$\int_SF_1ds_x=\int\int_{Syz}F_1(X_B,y,z)dydz-\int\int_{Syz}F_1(X_A,y,z)dydz$$

第1項目はもとの閉曲面で面積要素のベクトルの成分dsがプラス符号である領域の積分です。
第2項目はもとの閉曲面で面積要素のベクトルの成分dsがマイナス符号である領域の積分であり、
領域Syzでの積分では面積要素はプラス符号で扱うと約束しているので「マイナス」は積分全体につける形をとっているわけです。

ここで、差の形になっている部分を、「x方向の『偏微分の定積分』」として考える事ができます。

$$\int\int_{Syz}F_1(X_B,y,z)dydz-\int\int_{Syz}F_1(X_A,y,z)dydz=\int\int_{Syz}\left(\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dx\right)dydz$$

領域Syzでの積分についてもy方向とz方向の積分区間を書くと次のようになります。

$$\int\int_{Syz}\left(\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dx\right)dydz=\int_{\large{Z_B}}^{\large{Z_A}}\int_{\large{Y_B}}^{\large{Y_A}}\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dxdydz$$

$$=\int\int\int_V\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dxdydz$$

ここで重積分の形にした箇所のdx、dy、dzは全てプラス符号です。つまり「積分変数自体の符号は気にしない」で計算可能な、通常の積分として考えてよい事になります。(体積要素としてdxdydzをdvと置き、1つの塊として見た時も符号はプラスだけで考えます。)

重積分を累次積分する時の積分の順番は入れ替え可能ですが、積分区間は最後に積分するところを除いて一般には関数になります。
例えば上記の場合の重積分の箇所においてx→y→zの順で累次積分をする場合、積分区間に入っているXとXはyとzの関数【定数である事もあり得る】であり、YとYはzの関数、ZとZは何らかの定数という事になります。
累次積分の順番を変えるとどの積分区間が何の変数のどういう関数形になっているかは変わりますが、同じ関数を同じ領域で積分すれば同じ値を得ます。

これで証明の大体の部分は完了しています。

ところで一番最初の積分については、dsをdydzの形で表記する事もできます。(dxdyの形にする時は、積分記号は重積分のように2つ重ねる表記にします。)

$$\int_SF_1ds_x=\int\int_SF_1dydz$$

これらの結果を等号で結ぶと、証明すべき式になります。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_SF_1dydz【証明終り】$$

同様に、Fについてはxz平面上の積分を考えて、差の形をyでの偏微分の定積分で表します。Fについてはxy平面上の積分を考えて、差の形をxでの偏微分の定積分で表します。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_2}{\partial y}dxdydz=\int\int_SF_2dzdx$$

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_3}{\partial z}dxdydz=\int\int_SF_3dxdy$$

3式を加え合わせると次のようになります。

$$\int\int\int_V\left(\frac{\partial F_1}{\partial x}+\frac{\partial F_2}{\partial y}+\frac{\partial F_3}{\partial z}\right)dxdydz=\int\int_S(F_1dydz+F_2dzdx+F_3dxdy)$$

$$\Leftrightarrow \int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dv = \int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}【発散定理の形】$$

上記の発散定理における閉曲面の扱いで記したように、閉曲面に凹みがある場合でも領域を切断して分割する事で定理が成立します。

法線面積分の定義と性質

ベクトル解析電磁気学の分野で使用する「法線面積分」は、閉曲面に分布するベクトル場に対して定義されるものです。ベクトル場とは、すなわちベクトルの3成分のいずれもがx、y、zのスカラー関数になっているベクトルです。

閉曲面と閉曲線
閉曲面とは、例えば球や楕円体などの、「閉じた」曲面です。(ドーナツ型・うきわ型の「トーラス」なども含みます。)また、閉曲線とは、円や楕円のように、ぐるっと一周つながった曲線を言います。

★書籍の紙面ではベクトルを表す表記として文字をボールド体にする方法が多く使われますが、このページではベクトルは一貫して文字の上に矢印を添える表記方法を採用します。
スカラー関数に対する「面積分」は似ていますが別物なので注意。具体的な計算方法も異なります。

ベクトルの内積の考え方を使用します。

法線面積分を表す式には幾つかの表記方法がありますが、次のようになります。いずれも等号で結ぶ事ができ、計算すれば同じ値になります。

「法線面積分」の定義

$$\int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_S (F_1 ds_1 + F_2 ds_2 + F_3 ds_3)=\int_SF_1 ds_1+\int_SF_2 ds_2+\int_SF_3 ds_3$$ $$\overrightarrow{F}=(F_1(x,y,z),F_2(x,y,z),F_3(x,y,z))$$ $$\int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}を、\int_S \overrightarrow{F}\cdot \overrightarrow{n}dsとも書きます。$$ 積分記号に添えてあるSは、surface(表面)からの記号として一般的に使われる記号です。
特定の閉曲面の表面全体(表側あるいは裏側のいずれかの全体)を表します。

また、二重積分で表して計算する事も可能です。その場合、各項の具体的な計算をする時には2方向の積分区間をきちんと指定します。 $$\int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=\int\int_S (F_1 dydz + F_2 dzdx + F_3 dxdy)$$ $$=\int_{Y1}^{Y2}\int_{Z1}^{Z2}F_1 dydz+\int_{Z1}^{Z2}\int_{X1}^{X2}F_2 dzdx+\int_{X1}^{X2}\int_{Y1}^{Y2}F_3 dxdy$$

\(\overrightarrow{n}\) は、曲面の各点に対する単位法線ベクトルを表し、長さは1で曲面に対し垂直な向きのものです。また、\(d\overrightarrow{s}=ds\overrightarrow{n}\) になります。詳しくは次のようになります。

法線ベクトル

$$ d\overrightarrow{s}=( ds_1 , ds_2 , ds_3 ) $$ $$|\overrightarrow{n}|=1,\hspace{10pt}|d\overrightarrow{s}|=ds=\sqrt{ds_1^2 + ds_2^2 + ds_3^2},\hspace{10pt}d\overrightarrow{s}=ds\overrightarrow{n}$$ \(d\overrightarrow{s}\) および単位法線ベクトル\(d\overrightarrow{n}\) は、閉曲面上の各点から曲面の「裏側→表側」に向かう向きに伸びると約束します。
各成分は、微小面積の平面への「射影」になっています。

  • \(|ds_1| \)=「yz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_2| \)=「xz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_3| \) =「xy平面」への射影領域の面積
証明:微小面積として三角形を考えた場合、\(d\overrightarrow{s}\) は2辺を成すベクトルで作られる外積ベクトルの半分として表されます。
外積ベクトルの成分の大きさ(絶対値)はyz平面、xz平面、xy平面への三角形の射影の面積に等しくなりますから、\(d\overrightarrow{s}=( ds_1 , ds_2 , ds_3 )\) の各成分の大きさも、垂直な3つ平面への微小面積の射影面積に等しくなる事が示されます。

法線ベクトルの成分ds、ds、dsには通常のベクトルと同じく符号があります。
式としては、法線ベクトルと射影平面に垂直な軸がなす角の余弦の符号と同じプラスマイナスの符号を持つと定義します。例えば、dsであれば対応する射影平面がyz平面で、それに垂直な軸はx軸ですから、法線ベクトルとx軸がなす角を見ます。それが鋭角であればdsの符号は+で、鈍角であれば-の符号になります。その符号は、座標上の図に描いてみた時の向きから判定したものともちろん一致します。

図で状況を見ながら式の意味を考えると分かりやすいでしょう。
つまり、球面などの閉曲面の各点にベクトル場がぎっしり詰まっている感じです。それを曲面全体に渡って積分します。その際に、ベクトル場の「曲面の法線ベクトルの向きの成分だけ」を内積によって取り出したものを考えているわけです。

曲面に垂直な法線ベクトル(大きさは微小面積)を考え、ベクトル場との内積を考えます。法線ベクトルのうち、長さを1としたものを「単位法線ベクトル」と言います。

微小面積を大きさに持つ法線ベクトル\(d\overrightarrow{s}=ds\overrightarrow{n}\)と微小面積の射影面積との関係も、図に描いて外積ベクトルとして捉えると見通しがよいです。

法線ベクトルと外積の関係
平行四辺形で考えても本質は同じです。外積を使うと少見通しはよくなります。内積がスカラーであるのに対し、外積はベクトルである事に注意。微小な三角形の面積を外積ベクトルの大きさで表すと、そのベクトルの各成分は微小三角形のyz、xz、xy平面への射影面積になります。

法線ベクトル\(d\overrightarrow{s}\)の成分の符号については、個々の法線ベクトルについて例えば(-1,2,1)といった成分表示となる事からプラスマイナスの符号を持ちます。各成分の「大きさ」については、微小面積のyz平面、xz平面、xy平面への射影面積に等しくなるという事です。

法線ベクトルの成分の符号
法線ベクトルの向きは「閉曲面の裏から表に向かう方向」にとります。その成分は法線ベクトルの具体的な向きによって+か―の符号があります。式で書く場合は、法線ベクトルと軸とのなす角の余弦によって符号を判定します。

積分内の内積の部分については、余弦を使ったほうの内積の定義として書く場合もあります。

$$\overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=|\overrightarrow{F}||\overrightarrow{s}|\cos \theta$$

ただし、電磁気学などで法線面積分を考える場合では、特別な形のモデルで最初から考える場合も多いのです。例えば、ベクトル場が曲面に全て垂直であれば公式を使わなくても角度は0とすぐに判断できて、余弦は1になります。

【証明】自然対数の底 e は無理数である

自然対数の底 e(ネイピア定数)が無理数である事の証明を述べます。マクローリン展開を使うと、背理法によって比較的平易に証明できます。

まず、e の指数関数 ex のマクローリン展開は次のような無限級数になります。

$$e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\cdots$$

これは任意の実数xで成立する事に少しだけ注意して(収束半径は∞)、x=1の時を考えれば e という定数そのものを表す式になります。

$$e=1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}+\cdots$$

尚、e = 2.718・・・という具体的な数値はこの式で計算すれば手計算ですぐに得られます。(第6項まで計算すれば2.718を得ます。)

さて、これが有理数なのかというと「結論は違う」わけですが、背理法で示すには敢えてこれを有理数と置く事によって矛盾が生じる事を見ます。

ただ、その前にその「仮定」なしで成立する式変形をする必要があるので先にそれを見るほうが見通しがよくなります。

まず e を無限級数展開で表示し、途中の項まで引いたものを考えます。これを上手く変形して「0を超えて1未満」の実数になるようにします。(図中で、ゼロの階乗は1と定義されます。)

e の無限級数表示の「途中の項から無限大まで」の形の無限級数を考えます。つまり次式です:

$$\frac{1}{(s+1)!}+\frac{1}{(s+2)!}+\frac{1}{(s+3)!}+\frac{1}{(s+4)!}+\cdots$$

これは e から、その無限級数表示の1~s項までの和(有理数)を引いたものです。

$$e-\left(1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\cdots+\frac{1}{s!}\right)=\frac{1}{(s+1)!}+\frac{1}{(s+2)!}+\frac{1}{(s+3)!}+\frac{1}{(s+4)!}+\cdots$$

この式の両辺に 自然数sを使ってs!という量を掛けます。それによって1つの不等式を作れます。

この時に、右辺のほうは各項について約分ができます。
さらに、各項について1/2のベキ乗よりも小さい事が証明のポイントです。
例えば1/(3・4・5)<1/(2)という具合です$$\frac{s!}{(s+n)!}=\frac{1}{(s+1)(s+2)(s+3)\cdots(s+n)}<\left(\frac{1}{2}\right)^n$$

$$s!e-s!\left(1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\cdots+\frac{1}{s!}\right)=s!\left(\frac{1}{(s+1)!}+\frac{1}{(s+2)!}+\frac{1}{(s+3)!}+\frac{1}{(s+4)!}+\cdots\right)$$

$$=\frac{1}{s+1}+\frac{1}{(s+1)(s+2)}+\frac{1}{(s+1)(s+2)(s+3)}+\frac{1}{(s+1)(s+2)(s+3)(s+4)}+\cdots$$

$$<\frac{1}{2}+\left(\frac{1}{2}\right)^2+\left(\frac{1}{2}\right)^3+\cdots+\left(\frac{1}{2}\right)^n=\frac{\large{\frac{1}{2}}}{\large{1-\frac{1}{2}}}=1$$

不等式で抑え込んだ後の計算は幾何級数(等比級数)の計算によります。

つまり、右辺が1未満でプラスの実数ですから自然数ではありません。すると当然、左辺にもそのような性質があります。ここまでは、矛盾は一切ありません。

ここで左辺のほうを計算してみると、第2項は自然数になります。

$$s!e-s!\left(1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\cdots+\frac{1}{(s-1)!}+\frac{1}{s!}\right)$$

$$=s!e-\{s!+s!+(3\cdot4\cdot5\cdots s)+(4\cdot5\cdots s)+\cdots + (s-2)(s-1)s+(s-1)s+s+1\}$$

ここで、e が無理数であればこの左辺の全体も有理数ではなく、
従って自然数ではあり得ないのでやはり矛盾はありません。

しかし、ここで e が有理数であると仮定(これが誤り)してみましょう。

つまり、e = N/M と置いてみます。NとMは自然数です。(e の定義から、プラスの数である事は確定しています。)さらに、前出のs!に使っているsという自然数は特に数を特定したものではなく任意ですから、例えばMでもよいわけです。

すると、s!e=M!N/M=(M-1)N!ですから、さきほどの計算結果は次のように書けます:

$$(M-1)!N+{s!+s!+(3\cdot4\cdot5\cdots s)+(4\cdot5\cdots s)+\cdots +(s-1)s+s+1}<1$$

ところが、左辺は自然数(つまり1以上)のはずですが、それが1未満であるという事になるので矛盾であるわけです。

よって、e が有理数である事はあり得ず、無理数である事になるのです。【証明終】

尚、証明はこの背理法の手順でよいわけですが、

$$任意の自然数 sに対して\hspace{5pt}s!e-s!\left(1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\cdots+\frac{1}{s!}\right)<1$$

を示せた時点で、不等式の左辺の式は「0を超え1未満」であるから自然数ではあり得ず、従って左辺が「e が有理数である事はあり得ない」と言う事もできます。

この証明方法は円周率が無理数である事の証明と似ていて、ある実数が無理数である事や超越数である事を示す時によく使われる手段です。
同じ考え方で、e の有理数乗、例えば e, e, e(1/2) , ・・・なども全て無理数である事を証明できます。(式計算にはもう少し工夫が必要でやや長いものとなります。)

極限値としての自然対数の底 e の定義

「自然対数の底」eの定義の詳しい説明を述べます。(この定数はネイピア定数ネピア定数とも言い、数式中では単に「イー」と読む事が多いようです。)これは、ある数列のn→∞での極限値として定義されます。もちろん、発散してしまうのであれば定数として定義する意味はないのでその数列は収束します。その証明をします。(※高校数学の範囲だけだと証明できません。ただし、証明で肝心になる1つの事項を除くと、使う計算や定理は高校数学のもので足ります。)

$$e=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n=\lim_{n\to0}\left(1+n\right)^{\large{\frac{1}{n}}}$$

nを無限大にする極限と、1/nを0にする極限の2つの表し方がありますが、どちらも同じ値 e に収束します。
具体的な値としては約2.718・・・という無理数に収束します。
(※具体的な値を知る方法も、無理数である事の証明にも、 マクローリン展開を使用します。exという指数関数に対する微分公式の性質もそこで本質的に重要です。)

これらの極限が発散せずに収束する事を示すには「nを無限大にする」極限を考えたほうが簡単です。

証明

2項定理を使って直接展開し、全体を数列として見た時に単調増加で上に有界である事を示します。
「上に有界である」とは「数列の全ての1つ1つの項が、例外なくある値以下になる」という意味です。

  1. 2項定理でn乗を直接的に展開して形を調べる。
  2. 数列として「単調増加で上に有界」である事を示す。
    証明過程で等比数列の和の極限(幾何級数)の公式の考え方を使用します。

※「単調増加で上に有界な数列は収束列である」事の証明は、一般には大学数学の初めに教えられます。自明な事とは言えないので証明が必要です。高校では教えない事が多いです。

極限の式が収束する事を示すには、この場合においては単純に2項定理を使って1つ1つの項に展開します。次に、式全体を数列と見なした時に、単調増加数列である事を証明するのです。

単調増加である事の証明

まず、極限の中身のn乗の形の式に対して2項定理を使います。次のように展開できます。

$$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n=1+_nC_1\frac{1}{n}+_nC_2\left(\frac{1}{n}\right)^2+\cdots+_nC_n\left(\frac{1}{n}\right)^n$$

$$=1+\frac{1}{n}+\frac{n(n-1)}{2}\left(\frac{1}{n}\right)^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}\left(\frac{1}{n}\right)^3+\cdots+\left(\frac{1}{n}\right)^n$$

第k項だけを取り出すと次のような形になっています。

$$_nC_k\left(\frac{1}{n}\right)^k=\frac{n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+2)(n-k+1)}{k!}\left(\frac{1}{n}\right)^k$$

$$=\frac{1}{k!}\left(\frac{n}{n}\cdot\frac{n-1}{n}\cdot\frac{n-2}{n}\cdots\frac{n-k+2}{n}\cdot\frac{n-k+1}{n}\right)$$

$$=\frac{1}{k!}\frac{n}{n}\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\left(1-\frac{3}{n}\right)\cdots\left(1-\frac{k-1}{n}\right)$$

1≦k≦nなので、これはプラスの値です。
(元々、プラスの値をn乗しているものなので予想はつくものですが。)

少し分かりにくければ、具体的な番号の項に着目し、書き出してみるとよいでしょう。
例えば第4項は次のようになります。

$$_nC_4\left(\frac{1}{n}\right)^4=\frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{4!n^4}$$

$$=\frac{1}{4!}\left(\frac{n}{n}\cdot\frac{n-1}{n}\cdot\frac{n-2}{n}\cdot\frac{n-3}{n}\right)=\frac{1}{4!}\frac{n}{n}\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)\left(1-\frac{3}{n}\right)$$

単調増加であるかを調べるには、nをn+1に置き換えた時の状況を調べます。
つまり次の形の数列を同様に2項展開するわけです。

$$\left(1+\frac{1}{n+1}\right)^{n+1}$$

その場合の第k項は次のような形になります。【n+1個からk個を選ぶ組み合わせを使う事に注意】

$$_{n+1}C_k\left(\frac{1}{n+1}\right)^k=\frac{(n+1)n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+3)(n-k+2)}{k!}\left(\frac{1}{n+1}\right)^k$$

$$=\frac{1}{k!}\left(\frac{n+1}{n+1}\cdot\frac{n}{n+1}\cdot\frac{n-1}{n+1}\cdot\frac{n-2}{n+1}\cdots\frac{n-k+3}{n+1}\cdot\frac{n-k+2}{n+1}\right)$$

$$=\frac{1}{k!}\frac{n+1}{n+1}\left(1-\frac{1}{n+1}\right)\left(1-\frac{2}{n+1}\right)\left(1-\frac{3}{n+1}\right)\cdots\left(1-\frac{k-1}{n+1}\right)$$

ここで、「4/5は5/6よりも小さい」…といった具体的な関係からも分かる通り、
一般に有理数に関して、 m/n ≦ (m+1)/(n+1) という不等式が成立します。

nの場合とn+1の場合とで第k項のk個の因数(上記で分母の階乗の項以外のk個)をそれぞれを比較すると、例えば次のような大小関係があります。

$$\left(1-\frac{1}{n}\right)<\left(1-\frac{1}{n+1}\right),\hspace{15pt}\left(1-\frac{2}{n}\right)<\left(1-\frac{2}{n+1}\right),\hspace{15pt}\left(1-\frac{3}{n}\right)<\left(1-\frac{3}{n+1}\right)$$

この大小関係は、上記式中のk+1個の因数のうち3つ目以降のそれぞれについて成立します。初めの2つは1/(k!)と1なので等しいですから、1~nのそれぞれの項についてn+1の場合のほうが大きい事になります。
そして、全体の項数としてはn+1の場合に1つ項が多くてプラスの値の項が加わるので、結局n+1の場合の方が、nの場合よりも大きい事が示されます。

$$任意の自然数nについて\hspace{5pt}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n<\left(1+\frac{1}{n+1}\right)^{n+1}$$

組み合わせの取り方について混乱しやすいので注意。k個を選ぶ各項で比較し、その中で共通の階乗部分以外のk個の因数同士をさらに比較します。n+1の場合のほうが、1~nまでのそれぞれの項についてnの場合よりも大きくなり、さらに、n+1番目のプラスの項があるので単調増加である事を示せます。この時の各項の比較では、分母のnのべき乗の1つnを分子のそれぞれの因数に割り振ると大小関係の比較が分かりやすくなります。

上に有界である事の証明

次に、上に有界である事を示します。これは、等比数列の和の性質を上手に使うとうまく不等式によって示す事ができます。2項定理で展開した時の第k項について再度考察すると、k≧1のとき1/(2)という値以下に必ずなる事が分かります。

$$_nC_k\left(\frac{1}{n}\right)^k=\frac{1}{k!}\left(\frac{n}{n}\cdot\frac{n-1}{n}\cdot\frac{n-2}{n}\cdots\frac{n-k+2}{n}\cdot\frac{n-k-1}{n}\right)≦\frac{1}{k!}≦\large{\frac{1}{2^{k-1}}}$$

【分母の階乗以外のカッコ内の部分が1以下という意味で不等式で抑えています。また、例えば4!=4・3・2・1=24と「2の4乗」2=2・2・2・2=16とでは階乗のほうが大きい値となり、k!≧2という関係があります。これらが分母に来るので、大小関係は逆になっています。
尚この「2」という数自体に特別な意味はなく、あくまでこの数を使うと証明がしやすいという意味でここでは使用しています。

これが各kについて成立するという事は、全体では次の不等式が成立します。

$$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n≦1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^3}+\cdots+\frac{1}{2^n}$$

これの右辺は等比数列の和に1を加えたものですから直接値を計算できるのです。ここでnを無限大にする必要はありませんが、nをどれだけ大きくしてもある値以下になる事の確認は必要です。公比が1未満で、公比がプラスの値の等比数列は単調増加ですから確かに大丈夫という事になります。

$$1+\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^3}+\cdots+\frac{1}{2^n}\right)=1+\frac{1-\left(\frac{1}{2}\right)^{n+1}}{1-\frac{1}{2}}=3-\left(\frac{1}{2}\right)^n<3$$

よって上に有界であり、単調増加である事と合わせて問題の極限値は存在するという事になります。尚、この「3より必ず小さい」という事実は、e = 2.718・・・という値になる事ともちろん調和しているのです。

$$\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n=\lim_{n\to0}\left(1+n\right)^{\large{\frac{1}{n}}}は、収束し、特にeと書きます。$$

意味と使われ方

この自然対数の底 e は、何と言っても微分および積分の性質が、数学の理論上でも物理学や工学での応用でも重要になります。「微分して得た導関数が元の関数に等しいものは存在するか?」という問いの答えは「あります」で、それが e の指数関数 ex です。(もちろんその事は自明ではなく証明が必要。)

$$微分公式:\hspace{10pt}\frac{d}{dx}e^x=e^x$$

その微分の性質は、微分方程式の解法でも直接的に関わります。例えば、線型で定数係数の常微分方程式の解法では「微分すると元の関数に戻る」性質が上手に使われていて解を構成します。

複素数の指数関数表示 eix = cos x + i sin xなども理論・応用上ともに重要です。

円周率は無理数である【証明】

円周率は無理数です。つまり、整数の比(分数)では表せない実数であるという事です。

その証明方法は1つではありませんが、一般的な2つの方法は次の通りです。

2通りの証明の方法
  1. 背理法と部分積分で示す方法:円周率が有理数であると仮定すると矛盾が生じる。
  2. 連分数とライプニッツ級数を使う方法:円周率が無限連分数となる事を示す。

2番目の方法は計算自体は比較的簡単ですが、まず「ライプニッツ級数」「無限連分数」といったものが何なのかという話にもなるので、その意味では分かりにくいかもしれません。
そのため、背理法のほうを先に述べます。背理法での一般的な証明では計算は少しごちゃごちゃしますが、使うものは高校数学の知識で済むのです。

背理法と部分積分による証明

この背理法による証明は、円周率は「有理数ではないでしょう」という予想はあらかじめつけたうえで、矛盾が生じてしまうような関数を敢えて探してくるという方法になります。

まず、円周率そのものを式でどう表すかという問題があります。これには、ライプニッツ級数やマチンの公式をはじめ様々なものがありますが、背理法で示す場合にはむしろ三角関数を使ったほうが比較的簡単である事が知られています。

f(x)sinxで表される関数の定積分の、部分積分を考えます。

$$\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx\hspace{10pt}の部分積分を考えます。$$

$$\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx=-\left[f(x)\cos x\right]_0^{\pi}+\int_0^{\pi}f^{\prime}(x)\cos xdx$$

$$=-\left[f(x)\cos x\right]_0^{\pi}+\left[f^{\prime}(x)\sin x\right]_0^{\pi}-\int_0^{\pi}f^{\prime\prime}(x)\sin xdx$$

$$=-\left[f(x)\cos x\right]_0^{\pi}+\left[f^{\prime}(x)\sin x\right]_0^{\pi}+\left[f^{\prime\prime}(x)\cos x\right]_0^{\pi}-\int_0^{\pi}f^{\prime\prime\prime}(x)\cos xdx=\cdots$$

という感じで、これは延々と続いていくタイプの部分積分です。ここで、sinxに0と円周率を代入する箇所はゼロになる事に注意し、f(n)(\(\pi\))+f(n)(0)=Cとおきます。【f(n)(x)はf(x)のn階導関数です。】

$$-\left[f^{(2n)}(x)\cos x\right]_0^{\pi}=f^{(2n)}(\pi)+f^{(2n)}(0)=C_{2n}$$

$$\left[f^{(2n+1)}(x)\sin x\right]_0^{\pi}=0$$

すると、上記部分積分はてきとうなところで部分積分を止めて次のように表せます:

$$\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx=C_0-C_2+C_4-C_6+\cdots\pm\int_0^{\pi}f^{(n)}(x)\sin xdx$$

今、f(x)の形は特に指定しておらず、円周率がどんな値であるかに関わらずこの式は成立します。

背理法を使う証明

ここで、f(x)がn次の多項式の形で定数項が特定の値のもの、例えばf(x)=axなどといったものであれば、有限回の微分操作で0になり、しかも上記の部分積分の途中の項で円周率が直接式に出てきます。
f(x)がそのような条件を満たす多項式であるとして、まず、有限回の微分操作でf(n+1)(x)=0になるので、
上記の部分積分では最後の積分の形の項が消えて次のように有限項の和として書けます。

$$\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx=C_0-C_2+C_4-C_6+\cdots\pm C_{2n}$$

このCは、上でも定義したようにf(n)(\(\pi\))+f(n)(0)=Cとおいたものです。

ここで、各項はC=f(m)(\(\pi\))+f(m)(0)=a\(\pi\)のように表されるので、円周率のベキ乗に係数を掛けたものの和になっています。さらに、aをてきとうな有理数に選べば、円周率が有理数であると仮定した時に【これが誤りであるわけですが】もとの定積分が整数となるようにできます。
例えばf(x)=axとして、pとqを自然数として\(\pi\)=p/qとおいた時に、aをqの倍数にとってa=mqのようにすれば\(\pi\)a=mpとなり、整数となるわけです。
【※円周率は3.14・・・という正の数である事は確定しているとしています。】
後述しますがそのようにするためのaの値はもっと小さい有理数でもよく、それが証明の根拠になります。

ところでもとの定積分は、正弦関数の絶対値が1以下なので、積分区間でf(x)が正の数であれば次の不等式が成立します。

$$0<\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx≦\int_0^{\pi}f(x)dx$$

という事は、もし何らかの関数f(x)でこの定積分の値が「1未満」になるものが存在すれば、もとの定積分は0より大きく1未満という事になって自然数ではあり得ないという事になります。
この事との「矛盾」がこの背理法での証明で使われます。
【こちら側の事実は円周率が有理数・無理数であるかに関わらず常に成立する正しい関係式です。】

問題の定積分をC-C+C-・・・±C2nの形で表すところに戻って、
f(x)としてできるだけ「小さい値」をとるような関数が何かないかと考えます。
【多分あるはずだという予測のもとでそう考えるわけです。】
結論を言いますと、x=0とx=\(\pi\) でゼロの値をとるような2n次の多項式f(x)=ax(\(\pi\)-x)を考えるとうまくいきます。このようなf(x)について、f(0)=0かつf(\(\pi\))=0です。
定義域を [0,\(\pi\)]とすると、a>0であればこの関数f(x)はプラスの値です。

ここでf(x)のk階導関数について、1≦k≦n-1のとき、積の微分公式を考えれば、f(k)(x)はx(\(\pi\)-x)を因数に持つ事が分かります。【因数分解できるという事です。】
という事は、その時にはf(k)(0)=0かつf(k)(\(\pi\))=0という事になります。
について言えば、C=f(k)(\(\pi\))+f(k)(0)でしたから、C=C=C=・・・=Cn-2=0となるという事です。次に、n≦k≦2nの時はどうかというと、この時にはx(\(\pi\)-x)の形の項で全体を因数分解はできません。しかし、ax(\(\pi\)-x)の形の関数をn回以上微分しているので式全体がn!を因数に持ちます。
何らかのn次以下の多項式で、全体がn!を因数に持つという事になります。

よってこの時、
-C+C-・・・±C2n=±(C2m-C2m+2+C2m+4-・・・±C2n)=n!ag(\(\pi\))という形になり
ここでのg(\(\pi\))の部分は、n次以下の整数係数の多項式に円周率を代入した形です。
【n=2mとおいています。符号が入り乱れますがここであまり本質的ではありません。】

$$g(\pi)=b_n\pi^n+b_{n-1}\pi^{n-1}+\cdots+b_2\pi^2+b_1\pi+b_0\hspace{10pt}【係数b_jは全て整数】$$

$$n!ag(\pi)=n!a(b_n\pi^n+b_{n-1}\pi^{n-1}+\cdots+b_2\pi^2+b_1\pi+b_0)$$

さて、とすると、f(x)=ax(\(\pi\)-x)において、
自然数pとqを使って \(\pi\)=p/q で表せるという(誤った)仮定」をすると、
-C+C-・・・±C2n全体を整数にするためには、aをq/n!のようにした場合でも可能です。
この時の分母のn!の階乗がなくてもそれは成立しますが、できるだけ小さい値の関数を考える時に、少なくともここまで小さい物を考える事が確かに可能だという事です。

ところが、f(x)=(q/n!)x(\(\pi\)-x) であるとすると、0≦x≦\(\pi\)においてはx(\(\pi\)-x)≦\(\pi\)・\(\pi\)=\(\pi\)2nとなるのでf(x)≦\(\pi\)2n/n!

という事は、問題の定積分の不等式に再度戻ると次のようになります。

$$0<\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx≦\int_0^{\pi}f(x)dx≦\int_0^{\pi}\frac{\pi^{2n}q^n}{n!}dx=\frac{\pi^{2n+1}q^n}{n!}$$

この最後のところの式は、テイラー展開の剰余項問題のところでも出てくるような形の式ですが、nをじゅうぶん大きくすると極限値を0にできるものであり、1未満になるようなnも確かに存在できます。
【ここでのqがどのような自然数でも、\(\pi\)2n/n!<1になるような自然数nが存在するという事です。また、ここでのnは、てきとうなところで部分積分を打ち切った自然数であり任意にとれるので「じゅうぶん大きいn」を考えてよいという事です。】

つまり結果は次式です。

$$0<\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx≦\int_0^{\pi}f(x)dx≦\int_0^{\pi}\frac{\pi^{2n}q^n}{n!}dx=\frac{\pi^{2n+1}q^n}{n!}<1となる自然数nが存在$$

$$かつ、\int_0^{\pi}f(x)\sin xdx=C_0-C_2+C_4-C_6+\cdots\pm C_{2n}\in \mathbb{Z}【整数】$$

これは「矛盾」なので、円周率は有理数ではあり得ない、という事です。

★この「0より大きく1より小さい整数は存在しない」という事を利用する証明方法は、ある数が無理数である事や超越数である事を示す時によく使われるものです。また、問題となっている数と整数を関連付けるために微積分(特に微分)を使うのも比較的よくある手法です。

一体どこがおかしくて矛盾が出たのかというと、\(\pi\)=p/q とした時に「pとqは自然数」としたところがおかしい事になります。その仮定を設けずに単に\(\pi\)=p/q とおいてf(x)=(q/n!)x(\(\pi\)-x)とする事【そのようなf(x)を考える事】自体には問題はありません。
そのf(x)のもとで問題の定積分を部分積分したものについてC-C+C-・・・±C2n<1となる【そのようになるようなf(x)が存在する】という事自体も正しい式で、「そのような制限が必ず付くので、円周率を有理数とする事はできない」というようにも言えます。

証明において、どこからどこまでが「もともと正しい関係式」であって、どこからが「誤った仮定により導出される間違った式」なのかを整理すると見通しはよくなるでしょう。

ここでは説明のために長く文章も書きましたが、やり方をふまえて式だけ書いていくと、やっている事自体は結構簡単である事が分かると思います。
一番難しいのは、「問題の定積分が0より大きく1未満になり、かつ誤った仮定をするとその定積分が整数になってしまうという関数」を「(自力で)見つける」事だと思います。しかし一般的には、事実としてこうなる事を知っておけばそれでじゅうぶんでしょう。

連分数とライプニッツ級数による証明

もう1つの証明方法は、円周率を連分数で表すと、有限の連分数にならず、無限連分数になってしまう事から「無理数である」と判定するものです。

しかし、まず「連分数」とは何かという話になります。ここでごく簡単に述べると、次のように分母の中に「整数+分数【有理数】」の形を作っていき数を表示するものです。

$$ b_0+ \frac{a_1} {b_1+\Large{\frac{a_2} {b_2+\frac{a_3} {b_3+\frac{a_4} {\Large{\frac{\cdots}{b_{n-1}+\frac{a_n}{b_n}}} } } } }} $$

これは見慣れない人も多いと思います。実際、物理などへの応用では基本的には使わず、数学に特有のものでしかも数学の中でも限られた分野でたまに使うというものです。
特定の有理数を連分数で表す時、その中の数列{a}と{b}は有限で終わります。他方、無理数であると無限に続いてしまうというのが証明の考え方です。
考え方としては「ある実数が有理数」⇒「連分数が有限で終わる」が正しいので、「ある実数を表す連分数が有限で終わらない」⇒「その実数は有理数ではない(=無理数である)」というものです。
【※ある連分数が無理数に収束するための条件は、じつのところもう少し複雑です。】

次に、円周率を何らかの形で分数として表す手段が必要です。ここでの証明では、ライプニッツ級数を使うと比較的簡単です。しかしこの公式がどのように出てくるのかという問題もありますが、ここでは結果のみを使います。
【ライプニッツ級数は、扇形の面積を少し工夫した積分で出す方法や、逆正接関数のマクローリン展開などによって導出できます。】

$$\frac{\pi}{4}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\frac{1}{9}-\cdots$$

これを連分数にしてみようというわけです。有限の数列の和を連分数にするにはじつは公式があって、結論を数列の隣り合う項の比を考えるとうまくいきます。

簡単のため、まず3項目までやってみて、次に一般の場合を記します。

$$1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}=\frac{1}{1+\Large{\frac{\frac{1}{3}}{\frac{2}{3}+\frac{3}{5}\cdot\frac{5}{2}}}}=\frac{1}{1+\Large{\frac{1}{2+\frac{3^2}{2}}}}$$

これは、じつは次のように数列を計算しているのです。
=1【初項】,b=1【必ず1】,
=-(-1/3)/1=1/3【-第2項/第1項】,
=1-a=2/3,
=-(1/5)/(-1/3)=3/5【-第3項/第2項】,
=1-a=2/5

同じ具合に計算して、分母を上手に整理すると、第n項までの結果は次のようになります。

$$ \frac{1} {1+\Large{\frac{1} {2+\frac{3^2} {2+\frac{5^2} {\Large{\frac{\cdots}{2+\frac{(2n-3)^2}{2}}} } } } }} $$

このようになるのは、次のように計算できるためです。
=-{-1/(2m-1)}/{1/(2m-3)}=(2m-3)/(2m-1)
【もしくは-{1/(2m-1)}{-1/(2m-3)}=(2m-3)/(2m-1)】
=1-a=2/(2m-1)となり、
m≧2の時、
+am+1/(・・・)=2/(2m-1)+(2m-1)/{(2m-3)(・・・)}
=2+(2m-1)/{(2m-3)(2m-1)(・・・)}

すると、nを増やしていくとこの連分数は無限に続いていく事になります。そのため、円周率は無理数であると判定されるという具合です。

連分数を使う方法

このように、連分数が「規則正しく」続いていくと、かえってnを増やすごとに延々と続いて終わらないので特定の収束する無限級数が「無理数」であるという事を意味するわけです。
円周率だけでなく、2の平方根や自然対数の底eなどが無理数である事を見るのにも、じつはこの連分数の方法を使う事が可能です。

ここで使っているものは、分数計算とちょっとした数列の計算だけなので、計算自体は前述の背理法の場合よりもずっと簡単だと思います。しかしいかんせん、この連分数というものの表記も理屈も、結構分かりにくいものだと思います。また、ライプニッツ級数で円周率を表せる事を前提にしていますから、その事が確かに成立する事を納得していないと、ここでの証明も少々「腑に落ちない」ものだと思います。

いずれにしても、これらのような形で円周率は確かに「無理数である」という事が言えるという事です。

積分による立体の体積計算

高校数学での範囲での積分による体積計算の方法について説明します。

積分と体積の関係

1変数の関数の積分が基本的にはグラフ上の面積を表すのに対し、2変数関数の2重積分は体積に対応します。(座標上のスカラー関数を体積積分する場合などは3重積分。)【※高校数学の微積分の範囲外。】

他方で、2重積分の最初の積分、「面積」に該当するところが積分以外の方法でS(x)という形の関数で表せるのであれば、これについての1変数の積分として体積を計算する事も可能な場合があります。錐体の体積や球の体積など、基本的な立体図形の体積公式はこの考え方でも導出できます。

例えば、断面の形が三角形、四角形、円などの規則的で容易に面積を計算できる図形であれば断面積を積分によらずに出せるので、それを1変数関数で表し積分すれば体積になるというわけです。

積分による体積計算【高校】

立体の断面がS(x)で表され、変数xの軸が断面に垂直である時、体積Vは次のように表されます:$$V=\int_a^bS(x)dx\hspace{15pt}(a,b\hspace{3pt}はてきとうな定数)$$

三角錐の体積【積分】

計算の注意点としては、明確に「体積」なるものを計算したい場合には、きちんと断面に対する「高さ」に対応するように軸の向きをとる必要があるという事です。そうしないと計算しても変な値になってしまい、正しく体積を計算できません。
積分で体積を計算できる根拠は、「薄い錐体」(三角柱、四角柱、円柱など)を加え合わせ極限をとるという操作を体積計算とみなしているためだからです。

例えばある立体の断面をもとに体積を考えたいときには、基本的に軸はその断面に垂直になるようにとって積分を計算する必要があります。
【※じつは軸は必ずしも直線でなくてもいいのですが、その場合でも断面に垂直である必要があります。】

積分の記号「∫f(x)dx」はこれ全体で1つの意味を表すと捉えるべきですが、もともとの考え方から言うとf(x)と(微小な)区間の幅dxの積を加えて区間の数→無限、dx→0という極限を考えたものでもあります。従って、断面積を関数として積分している時点で、「断面積×微小な高さ」という、微小な柱体の体積を考えている事になります。
しかしそこで本来「高さ」にはならないものを軸にして変数を考えてしまうと、積分の結果もおかしくなってしまい実際の体積を正しく表せない・・という事です。

錐体の体積公式【積分による導出】

三角錐、四角錐、円錐の体積公式:「体積=底面×高さ÷3」は、積分で導出できます。
【※それとは反対に、積分を使わなくても導出は一応可能です。】

一番下の底面に平行な平面による錐体の断面を考えてみましょう。最も基本的なのは三角錐なので、まずそれで考えます。

断面によってできる側面の線は、底面に平行になります。このとき、もとの側面の三角形と相似な三角形が作れて、相似比はどの側面でも同じ事に注意します。すると、断面の三角形は底面の三角形に相似であって、面積比は相似比の2乗になります【相似比と面積比の関係】。

この相似比はどこの高さで断面を考えているかによって決まります。そこで、高さの範囲を [0,h]とします。hは三角錐全体の高さです。ある高さxでの断面の三角形の1辺は、底面の1辺の1-x/h倍です。例えば3/hの高さであれば2/3倍という事です。4/hの高さなら3/4倍です。

相似比が1-x/hなので、面積比は(1-x/h)です。

底面積をS(定数)とすれば、断面積はS(1-x/h)という事になり、これを0~hで積分すれば体積を得るという仕組みです。

柱体の体積を積分で考える事も可能で、その場合は断面積が一定(定数関数)であるとして0~hで積分すれば「体積=底面積×高さ」を得ます。

$$\int_0^hS\left(1-\frac{x}{h}\right)^2dx=\left[-\frac{h}{3}\cdot\left(1-\frac{x}{h}\right)^3\right]_0^h=\frac{Sh}{3}$$

この通り、結果は「底面積」×「(底面から測った立体的な)高さ」÷3になります。

原始関数を出すところが多少込み入りますが、原始関数を微分すると合成関数の微分で-3/hが掛けられます。そこから逆算して-h/3を係数としてつけているわけです。
代入するところの計算は、hを代入すると1-x/h=0で, 0を代入すると1-x/h=1になる事により結果の式を出しています。【このため、結果の式では「3乗」というものがあった事は見えなくなり、1/3という係数だけが痕跡として残っているような形になります。】

ところでこの計算を見ると、底面積はSという一般的な形をしていて三角形に限っていません。問題は、高さxでの相似比と面積比という事になりますが、これは任意の多角形で成立する性質です【多角形は三角形に分割できるため】。
そのため、この積分計算は多角錐でも適用できる事になります。
また、円錐の場合でも適用できます。円を多角形の近似と考えてもいいですし、三角形の相似から半径が1-x/h倍になり、円の面積は半径の2乗に比例するからと考えても結果は同じです。
そのようにして、三角錐に限らず、他の多角錐や円錐でも体積公式は同じであるという結果を得るのです。

回転体の体積

高校の微積分では、一般的に「関数を軸周りに回転させてできる図形(回転体)の体積」を計算させる問題が多く問われます。

事の本質は「断面積をxの関数で表し、断面に垂直な方向に積分すれば体積」という事です。

軸の周りに回転させるという事は、断面は必ず円になります。y=f(x)で表されている時、これそのものを変数xにおける「半径」と考えて、断面積をxで表すというわけです。

回転体の体積計算【高校】

$$S(x)=\{f(x)\}^2として積分\hspace{20pt}V=\int_a^b\pi{f(x)}^2dx$$

これは、公式を暗記するのではなくて、意味を覚えて普通に計算する方が断然楽である部類の積分の計算の1つです。「要するに断面積を変数で表す事が必要」という事だけ覚えて、あとは図形的に判断すれば計算が可能です。

回転体の体積【積分】

この「回転体の体積」を積分で計算する事の応用例で重要なのは球の体積公式です。この場合は、円の式x+y=rからy=・・の形に直して2乗し、積分するという事になります。

ただ、高校数学の微積分の問題だと、応用上の重要度というのは度外視して、よく分からない関数を回転させて体積計算させるという問題も少なからず見かけます。
高校数学での出題では、あくまで積分の基本計算を正確にできるかを問うていると捉えるべきでしょう。
大学入試の場合には2つのグラフで囲まれる部分を回転させるといった出題もあります。この場合、グラフ同士の交点を出さないと積分区間が分からないので、積分単独ではなく複合的な形の問題になっています。

幾何級数(等比級数)

等比数列の和を無限個で考えたものを、「等比級数」または「幾何級数」と言います。
【有限の項数の和のものを同じ名称で呼ぶ事もありますが、ここでは無限級数の場合を扱います。】

収束・発散の条件と計算の仕方

等比数列の和を考え、項数を無限大にしたものはどのようになるかをまとめると次のようになります。

幾何級数あるいは等比級数とは?

次の形の無限級数を「幾何級数」あるいは「等比級数」と言います。 $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=a\lim_{n\to \infty}(1+x+x^2+x^3+x^4+x^5+\cdots+x^n)$$ $$=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}\hspace{20pt}(r\neq 1)$$ これの収束・発散は次のようになります。

  1. 公比の絶対値が1未満【|x|<1】のとき収束する $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\frac{a}{1-x}$$
  2. 公比の絶対値が1以上【|x|≧1】のとき無限大に発散する
    (r=1のとき、nまでの和はna → ∞) $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\infty$$

この「等比数列の和のn→無限大の極限をとったもの」を「等比級数」と言い、
幾何級数(geometric series)」という呼び方をする時もあります。
【高校ではこの幾何級数という呼び名はあまり使わないのですが、物理などでは使用する場合もあります。】

具体的に、a=(1/2)n-1で表されるような等比数列の和はn→∞の時に収束し、
=3で表される等比数列の和はn→∞の時に無限大に発散します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{2}}}=2$$

$$\sum_{n=1}^{\infty}3^n=+\infty$$

この時に指数の部分がn-1ではなくnで表されている場合には注意が必要で、例えばc=(1/3)などと表されている時には計算にn=1の時の「初項」が必要ですので、c=(1/3)・(1/3)n-1のように考える必要があります。(あるいは、初項c=1/3である事をきちんと把握して計算します。)

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{\large{\frac{1}{3}}}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{1}{3-1}=\frac{1}{2}$$

シグマ記号を使って表す場合には、n=1ではなくてn=0から始めて表記する事も可能なので、
その場合にはn=0を代入したものが初項になります。式の形そのものだけを暗記するというよりは、「初項」と「公比」は何なのかを把握する事が大事になります。$$\sum_{n=0}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{3}{3-1}=\frac{3}{2}$$n=0から始まっているので初項は1であり、c’=(1/3)n-1に対する幾何級数の場合と同じ値に収束します。

公比が負の数である場合にも、公比の絶対値が1未満であれば同じ公式を使えます。
例えば公比が-1/2などの場合にも和を無限大にとったものは収束します。各項はプラスとマイナスが次々と入れ替わりますが、全体の和は一定値に近づいていくという事です。この場合、上記公式の公比の部分にマイナス符号の公比をそのまま代入します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1+\large{\frac{1}{2}}}=\frac{1}{\large{\frac{3}{2}}}=\frac{2}{3}$$

ところで、これらの無限級数を「幾何級数」とも呼ぶと上述しましたが、「幾何」に何か関係あるのかという話になります。一応、式に平面幾何的な意味を持たせる事は可能です。

適当な図形・・例えば長方形を考えた時に、図形の面積の1/2倍、そのさらに1/2倍、
そしてそのさらに1/2倍、・・の図形を加えていくと、全体の面積は無限には大きくならずに一定の範囲内で収まる事を確認できます。

=(1/2)n-1の各項はa=1,a=1/2,a=1/4,a=1/8,a=1/16,・・
のようになりますが、これらの項の和は平面図形で言うと、1つの長方形などの面積に対しておおもとの面積の1倍、1/2倍、1/4倍、1/8倍、1/16倍、・・を加え合わせていく事に対応します。
この時、項数を増やしても全体の面積は必ず「2未満」におさまり、無限個に増やした場合は収束値である「2」に限りなく近づく事になります。

他方、a’=(1/2)に対する幾何級数を考えた時は収束値は1になる事は上述しましたが、これは平面図形ではa=(1/2)n-1に対する幾何級数の収束値2から1を引いた場合に等しく、平面図形では図形の面積の1倍を除いた部分に相当します。

無限小数の級数としての扱い

循環小数を和で表すと?

1÷9=0.111111111・・・や、1÷3=0.33333333・・・などの
無限循環小数は、幾何級数により表す事ができます。

0.1とは1/10の事であり、0.01とは1/100の事、
そして0.11とは0.1+0.01である事を考えると分かりやすいと思います。

循環小数は幾何級数で表せる

小数0.99999999・・・・などは、0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・のように考える事で、$$a+ar+ar^2+ar^3+ar^4+ar^5+\cdots$$ の形、つまり幾何級数の形をしています。
等比数列で言うと、初項が0.9、公比が0.1であるものの幾何級数になっているという事です。
公比の絶対値が1未満なので、これは無限級数として収束します。

無限循環小数には、0.123123123123・・・のように、「123」のような複数の番号の組み合わせが繰り返されるものも含まれるわけですが、このようなものも同様に考える事ができます。

0.123123123=0.123+0.123×0.001+0.123×(0.001)
のようになるので、この場合は公比を0.001と考えればよいわけです。このようにして、小数が循環する限りは、無限小数は幾何級数とみなす事が可能です。

無理数のように循環しない無限小数は、小数点ごとに項を分けて無限級数で表す事は可能ですが幾何級数として表す事はできません。

0.999999・・・は、「1に等しい」?

「無限級数展開」が意外と身近にある例として、ちょっとしたクイズを考えてみます。

クイズ:「無限小数0.99999999・・・・は『1に等しい』ですか?」

もしかすると、意見が割れるかも・・しれませんね。結論を先に言いますと、答えは「1に等しい」、です。

・・すると、「いや、1ではないやろ!???」と、怒られるかもしれません。
では、同じ質問を、表現だけ変えてみます:

$$「無限級数 0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・=\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.9)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}は『1に等しい』ですか」 $$

これだと、幾何級数ですね。
これは、明確に答えは「1」なのです。

どういう事かというと、「1に『収束する』」「『極限値と』して1に等しい」という意味において等しくなるという事です。0.99999999・・・は、1に限りなく近づくという意味です。

0.99999999・・・が1に等しいか・等しくないかで意見が割れてしまうのは、小学校でも教わる無限小数が数学的にはどのような意味を持つかが曖昧な形で教えられている事によります。
前述のように無限小数は正確には無限級数であり、無限循環小数であれば公比の絶対値が1未満の幾何級数になるので1つの値に収束する事になります。

ところで、では例えば1/3=1÷3=0.333333・・・・について、この左辺の分数・割り算の形は本当に幾何級数の公式を使って出てくるでしょうか?試してみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.3)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.3}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{3}{10-1}=\frac{3}{9}=\frac{1}{3}$$

このように、無事に1/3(=1÷3)に収束する結果となります。

1÷9=0.1111111・・・についてもやってみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.1)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.1}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{1}{10-1}=\frac{1}{9}$$

無限級数展開としての位置付け

幾何級数は、数学的には1/(x-1)という関数のマクローリン展開と、本質的に同じ無限級数です。
(|x|<1の範囲でのみ収束するという点まで、本質的に同じです。)

|x|<1の公比、初項が1の幾何級数を考えると、

$$\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)=\frac{1}{1-x}$$

これを逆手にとるというか、逆に1/(1-x)という関数を|x|<1の範囲に限定するという条件付きで無限級数として表すのが、「幾何級数展開」です。本質的には幾何級数の計算と全く同じもので、使い方による名称の違いです。

$$\frac{1}{1-x}=\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)$$

$$無限大まで和をとる事を前提に、\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdotsと書く事も多いです。$$

これは無限級数展開の中では非常に簡単に理解できるものの1つです。にもかかわらず、大学範囲の数学や物理でも要所で使用します。知っておくと、学習がスムーズになり便利です。

幾何級数展開は、数学の複素関数論で用いられたり、物理では黒体放射の理論で「エネルギーが離散的な値をとること」(つまり量子的である事)の根拠のひとつとして用いられたりもします。他にも、使われ方は色々あります。割と重要なところで突然出てくるのが特徴かもしれません。

ただしそれらは教科書等の中では「幾何級数」「等比級数」である事の説明なしに、唐突に「1/(1-x)=1+x+x+x+x+・・・と『展開』すると・・」などと書かれる事が結構多くあるので、その点だけ注意しましょう。

幾何級数は、|x|<1のもとで1/(1-x)という特定の関数のマクローリン展開に一致し、本質的に同じ無限級数です。