複素数とは?定義と計算

このページでは、虚数複素数というものについて定義と基本計算説明します。

「2乗してマイナス1になる数」を定義してみるところから始めます。

複素数の基本と初歩的な計算

複素数の定義
複素数の基本的な性質と計算方法
具体的な計算例  

複素数の定義

では、まず複素数の数学的な定義です。

複素数と虚数単位の定義

$$i^2=-1$$を満たす「数」を虚数単位と言い、実数 a,b を使って$$a+bi$$で表される数を複素数と呼びます。

複素数の実数だけの部分を実部と言い、虚数単位 i が掛け算されている部分を虚部と呼びます。

複素数は、実数と同様に加減乗除の計算の中に組み込む事ができて、式の展開や因数分解などもできるものとします。

a + bi において b= 0 の時には複素数は通常の実数 a になるので、数学では「実数全体」という集合が「複素数全体」という集合に含まれている、と考えます。

a+bi に対して a-bi は共役(「きょうやく」)な複素数であると言います。【尚、この共役という用語は一般的には複素数に限定されたものではなく代数学でより広い意味を持ちます。】

共役複素数の定義

$$u=a+bi に対する「共役複素数」\bar{u}=a-bi$$ 文字の上に横線を引きます。

また、a+bi に対して、次の量をその複素数の絶対値と言います。これは必ず正の実数です。記号では、実数に対する絶対値記号と同じものを使います。

複素数の「絶対値」の定義

$$u=a+biの「絶対値」:|u|=|a+bi|=\sqrt{a^2+b^2}$$

複素数の絶対値は r などの文字で表す事もあります。後述もしますが、複素数と共役複素数の積は、その複素数の絶対値の2乗に等しくなります。

これは後述する複素平面で考えると見やすくて、実部を底辺・虚部を高さとする直角三角形の斜辺の長さ、あるいは2点間の距離として捉えられるものです。
つまりこの「2乗して加えたものの平方根」は一体何なのかというと、イメージとしては三平方の定理なのです。これは偶然似ているというだけではなくて、割と本質的なものです。

尚、虚部の実数 b = 0 の時、複素数の絶対値記号は実数の絶対値記号としてきちんと機能します。

複素数の基本的な性質と計算方法

まず、2つの複素数 u と w について、実部同士が等しく、かつ虚部の実数同士が等しい時に限って2つの複素数は等しく u = w であると書きます。

$$u=a+bi, \hspace{5pt}w=c+di\hspace{5pt}のとき、a=cかつb=dの時、u=w \hspace{5pt} です。$$

★「2つの複素数が等しい」ためにの条件は、じつは定義としなくても計算で「導出」する事が可能です。後述します。

複素数の計算をする時には、次の事を踏まえたうえで実数の時と同じように計算します。

  • 足し算と引き算の計算では、実部同士だけ、虚部同士だけで必ず行う。
    (混ぜ合わせないようにします。)
  • 掛け算と割り算の計算では、虚数単位 i は実数にくっついた係数であるようにして扱う。
  • 計算の際に i の2乗が現れたらそこは -1 に置き換える。 (それによって、計算途中で実部と虚部が入れ替わる事もあります。)

具体的な計算例

いくつか簡単な例を記すと次のような感じです。

$$(1+i)+(2+3i)=3+4i$$

$$(1+i)-(2-3i)=1-2+i(1+3)=-1+4i$$

$$(1+i)(2+3i)=2+3i+2i+3i^2=2+3i+2i-3=-1+5i$$

$$\frac{2+3i}{1+i}=\frac{(2+3i)(1-i)}{(1+i)(1-i)}=\frac{2-2i+3i-3i^2}{1-i^2}=\frac{2-2i+3i+3}{1+1}=\frac{5+i}{2}$$

4番目の割り算のところはうまく分母と分子に (1-i) を掛けて、分母を実数だけにしています。この手法は大学数学等で複素数を扱う時にもよく使われます。「複素数と共役複素数の積はその複素数の絶対値の2乗に等しい」という性質を使っています。

2つの複素数が等しいための条件:
「実部同士が等しく、かつ虚部同士も等しい」事は、次のように導出します。

$$a+bi=c+di$$

であるとすると、

$$a-c=i(d-b)$$

両辺を2乗すると、

$$(a-c)^2=-(d-b)^2\Leftrightarrow(a-c)^2+(d-b)^2=0$$

これを満たすためには a = c かつ b = d という事になります。

複素数の極形式

複素数を三角関数で表現したものを複素数の極形式(“極刑”式ではなくて「『極』形式」です)あるいは極表示と呼びます。これは大学数学や物理等で複素数を使う場合に本質的に重要です。

極形式とは?
公式(ド・モアブルの定理)
参考:極形式の「指数関数表示」 

極形式とは?

複素数を次の形で表したものを複素数の極形式と言います。

複素数の「極形式」

$$u=a+biの「極形式」:u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta)$$ $$\cos \theta=\frac{a}{|u|}=\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\hspace{10pt}\sin \theta=\frac{b}{|u|}=\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}},\hspace{10pt}$$

ここで、三角関数としておいている部分は必ず -1 以上 +1 以下であり、2乗して互いに加えたものは1に等しくなります。そのために、三角関数としてみなせる(対応する角度が必ず存在する)という事です。

この時の角度として新たに設定した実数 θ を、その複素数の偏角と言い、複素数 u に対して「 arg u」 と表記する事もあります。

このように複素数を極形式で表した時、直交座標のxy平面のx軸を複素数の実部、y軸を複素数の虚部(の実数部分)として扱う事があります。これを複素平面と言い、x軸を「実軸」、y軸を「虚軸」と呼んだりします。

このように、複素数を「複素平面」に図示して考える時もあります。
この時、複素数同士の積は「複素平面上の『回転』」を表します。

公式(ド・モアブルの定理)

複素数を極形式で表した時に成立する重要公式があり、これは2つの複素数の積は、「絶対値の積」と「偏角の和」で計算できるというものです。

複素数の積に関して成立する公式(ド・モアブルの定理)

$$u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta),\hspace{10pt}w=|w|(\cos \phi + i\sin \phi)のとき、$$ $$uw=|u||w|\{\cos (\theta+\phi)+i\sin (\theta+\phi)\}$$

割り算をした商の場合は、絶対値の部分を割り算し、割るほうの複素数の偏角にマイナス符号をつけて掛け算します。つまり、割り算の時は偏角部分を引き算するわけです。

割り算の場合

$$u=|u|(\cos \theta + i\sin \theta),\hspace{10pt}w=|w|(\cos \phi + i\sin \phi)のとき、$$ $$\frac{u}{w}=\frac{|u|}{|w|}\{\cos (\theta-\phi)+i\sin (\theta-\phi)\}$$

成立根拠は三角関数の加法定理です。

$$uw=|u|(\cos \theta + i\sin \theta)|w|(\cos \phi + i\sin \phi)$$

$$=|u||w|\{ \cos \theta \cos \phi – \sin \theta \sin \phi +i(\sin \phi \cos \theta + \sin \theta \cos \phi )\}$$

$$=|u||w|\{\cos (\theta+\phi)+i\sin (\theta+\phi)\}【証明終り】$$

割り算のほうは、共役複素数を分母と分子に掛けて証明します。
偏角が θ である複素数の共役複素数の偏角は -θ になりますから、掛け算のほうの公式を使えば割り算のほうの証明が完成します。

尚、この極形式の観点から言うと、虚数単位 i は

$$i = \cos \frac{\pi}{2}+i\sin \frac{\pi}{2}$$

と書く事もできる事は重要です。これによって、虚数単位 i を掛け算する事は、複素平面上では「90°回転」を意味する事が分かります。物理や工学では、その分だけ「『位相』を進める」などといった表現がなされる事があります。

参考:極形式の「指数関数表示」

上記のド・モアブルの定理による計算と同じ結果を得る方法として、複素数の「指数関数表示」というものがあり、この表示が使われる事がよくあります。「オイラーの式(公式)」と呼ばれる事もあります。

$$e^{ix}=\cos x +i\sin x$$

この表示を使った場合、通常の指数関数と同様に積の計算や微分の計算を行っても正しい計算になります。これの導出には、テイラー展開を使います。また、指数関数の定義域を複素数に拡張する時に「正則関数」という種類の関数になるように条件を付けると、拡張の方法はこの表示のみしかないという結論を得ます。

複素数自体の知識について、物理や工学での使用、大学数学の微分方程式論や複素関数論で使うために必要な知識は、おおよそ上記に記した事を把握していればじゅうぶんだと思います。あとは、どのように使われるのかを見ながら慣れていきましょう。