順列とは?

順列とは、N個のものを並び替える方法を言います。
(英:permutation 順列を「置換」とも言います。)ここでは、その方法が何通りあるかという「場合の数」について説明します。高校数学で扱うのはその事項です。

結論を先に言うと、N個のものを並び替える順列の総数は次式で表されます。

N個のものを並び替える順列の総数

$$_NP_N=N!$$ $$=N(N-1)(N-2)\cdots 3\cdot 2\cdot 1$$ という表記は、N個のうちN個全てを並び替えるという意味です。
びっくりマークは「階乗」を表します。自然数を1ずつ下げてNから1まで掛けて積の形にする事を指します。例えば5!=5・4・3・2・1=120です。

また、N個のもののうち、M個を並び替え方の総数は次の通りです。

N個のもののうちM個を並び替える順列の総数 $$_NP_M=\frac{N!}{(N-M)!}$$

このようになるわけですが、これらを「暗記」するのはやめましょう。確かに公式の中には暗記してしまったほうが早いものもありますが、この順列の総数に関する式は「理解」できるものです。

N個のものを並び替える方法

初めに、少ない数から具体的に見てみましょう。

2個のものがあったとき、これを並び替える方法は「2通り」です。{A,B} {B,A} の2通りです。他の文字・・例えば {甲,乙}{乙,甲}の2通りと考えても、何でも構いません。
要するに、順番を区別して数えるという事なのです。
これが「2つのものを並び替える順列の総数」=2の意味です。この場合はとても簡単ですね。

では、A,B、Cあるいは甲、乙、丙などの3つを並び替えるにはどうすればよいでしょう?

これを具体的に書くと、
{丙、乙、甲}{丙、甲、乙}{乙、丙、甲}{乙、甲、丙}{甲、丙、乙}{甲、乙、丙}
の6通りあります。

実際これしか順番に並べる方法はないのですが、どのようにしてこれらを書きだしたかを説明します。まず、最初に来る文字が甲、乙、丙の3人のパターンがあります。そしてそれぞれの場合について、続く2人の順番が2通りあります。丙を一番左に置いたとき、続く順番は{乙,甲}と{甲,乙}の2パターンであるという事です。そして次に乙が最初に来る場合を考えて、同様に書きだして上記の6パターンの並びを得ています。

つまり3人それぞれを特定の場所、例えば一番左に置く場合につき2通りあるので3×2=6通りの並び替えの方法があるというわけです。これが=3!=6の意味です。

では4人を並び替える場合はどうするかというと、1つの位置(例えば一番左)に誰かをおくと、そのパターンにつき「3人を並び替える方法がある」事に気付くと分かりやすいかと思います。

誰かが一番左にいるごとに残りの3人を並べる方法が6通りあります。一番左に誰が来るかについては全部で4人いるわけですから4通りになります。よって4人を並び替える方法は全部で4×6=24通りです。

ここで、3人を並び替える方法が3×2=6通りであった事を考えると、4人を並び替える方法は4×3×2=24通りであるとも言えます。これが=4!=24の意味です。

では5人になった場合はどうかというと、考え方は同じです。

まず5人のそれぞれをどこか固定した位置に置きます。例えば上の例と同じく一番左に置きます。すると、残りの4人の並び替えは24通り(4!=4×3×2通り)である事が分かっているので、5人のそれぞれに対して24通りですから5×24=120通りの並び替えの方法があります。これをまとめて5!通りと書く事もできて、これが=5!=120の意味です。わずか5人で、並び替えの方法は意外に多いという事が分かります。

6人の場合も同じで、6×5!=6×120=720通りになります。これもこれまでと同様に6!=720通りとも書けます。非常に数が増えて、1つ1つ手で紙に具体的に書きだすのは困難である事が分かります。

7人の場合は7!=7×6!=7×720=5040通りになります。以降、人数を増やしていくと並べ方の総数は莫大に増えていく一方です。

以下、何人いても考え方は同じで、N人いた場合にはまずN人を選びます。のこりN-1人についてみるとこれは(N-1)×「N-2人の場合」ですから、結局N×(N-1)×(N-2)×・・・×3×2=N!通りという事になるわけです。
=N×N-1N-1=N×(N-1)!=N!のようにも書けます。考え方はある程度自由です。】

これが「N個のものを並び替える順列の総数は=N!である」という事の意味です。

N個のうちM個を並び替える場合

次に、N個のものの中からM個選んで並び替える方法の総数についてです。
これは順列の記号ではと書きます。

公式だけ見ると一見わけがわからない式に見えるかもしれませんが、意味はじつに簡単です。

5人いて、3人を選んで並び替える方法を考えてみましょう。

5人全員を並び替える場合には5!=5×4×3×2通りであったわけですが、意味を考えると3人だけを選ぶ場合には、最後の「2倍」がいらないわけです。誰か3人が並んだ時点で、選ばなかった2人も確定しますからそれで終了というわけです。

結果的には話は単純で、最初に5人のうちの1人を選び、次に残った4人の中から1人、続いて残った3人の中から1人を選びそこで打ち切るという事です。
【この方法でN個全てを並び替える場合を理解しても支障ありません。】

式で書くと=5×4×3=60という事です。

5人中2人だけを選び並び替えるなら=5×4=20通り、5人中1人だけなら=5通りです。

この通り、考え方は単純なのですが一般のNに対して式を書くと多少煩雑になる面があります。

N個のうち3個を並び替えるという場合にはN(N-1)(N-2)通りなどと上から順に3項の積を考えて済みますが、N個のうちM個を並び替える場合にはどう書くのかという話になります。

=N(N-1)(N-2)の場合を見てみると、N-3以降の項がないわけですから、N!を(N-3)!で割るとちょうどうまい具合に同じ数になります。

つまり、(N-M)!を考えて、それでN!を割ればうまく式でも表現できるわけです。これがを表す公式の意味です。

$$_N\mathrm{P}_M=\frac{N!}{(N-M)!}$$

尚、M=N-1を考えると、N-M=N-(N-1)=1ですから、それでN!を割ってもN!のままです。N-1という事になります。これは5人全員を並び替える時、最後の一人については空いている位置に入れるだけなので結局「5人中4人を選んで並び替える」場合と同じである事に対応しています。

順列の考え方は、具体的な人や物の並べ方を考える時だけでなく、種々の理論の中でN個の項を並び替える何らかの操作をする時にその総数を表すために使用されます。

例えば(高校数学の範囲外ですが)線型代数で行列式の定義をする時にはN個の項の積をとって並び替えたものを全て考えるという事をやるので、項数は順列の総数という事になります。(N!という形が出てくる式全てが順列に関係するとは限りません。例えば、単項式に対する微分操作を繰り返す事でN!が出てくるパターンもあります。)

また、順列の他に重要な「組み合わせ」の数え方も順列での考え方を基礎としています。方法の総数を数え上げる事は、確率の理論でも重要です。

行列式の項数を表すn!はn個の番号を並び替える順列の総数です。

必要・十分条件の考え方

必要条件、十分条件、必要十分条件の意味・覚え方・使い方などについて説明します。
必要条件と十分条件は対になっている考え方であり、ともに成立する場合には必要十分条件と言います。
(英:必要条件 necessary condition 十分条件 sufficient condition
 必要十分条件 necessary and sufficient condition)

ここでは高校数学で必要な知識を説明します。

★必要条件や十分条件そのものについて問う出題は高校数学特有のものですが、用語や考え方自体は大学数学でも使います。ただし、物理や工学などでは基本的には使用しません。

考え方と内容

「PならばQ」という関係(「論理式」)が成立する時、PはQの十分条件であると言います。
また、QはPの必要条件であると言います。
記号では矢印記号「⇒」を使って「ならば」の部分を表し、 P ⇒ Qと書きます。

例えば「『ある実数が偶数である』ならば『その実数は自然数である』」といった感じです。
一般の定理などはそのような形をとっています。例えば三平方の定理は「『ある三角形が直角三角形である』ならば『斜辺と残り2辺の長さをそれぞれc、a、bとしてc=a+bである』」という形です。
【※後述しますが三平方の定理に関してはこの逆も成立し、必要十分条件になります。】

この「PならばQ」とは、「Pが成立するなら、必ずQも成立している」という意味です。「必ず」というところがポイントで、例外は1つでもあってはいけないというのが数学での表現上のルールです。

「PならばQ」P ⇒ Q と「QならばP」Q ⇒ P が両方とも成立する時、PはQの必要十分条件であると言います。(この時、QのほうもPの必要十分条件であると言います。)記号は、両方向に向いた矢印の「⇔」を使い、P ⇔ Q と書きます。

十分条件、必要条件、必要十分条件

数学において「PならばQ」 P⇒Q の関係が成立する時、次の呼び方をします。

  1. PはQの「十分条件」
  2. QはPの「必要条件」
  3. P ⇒ Q かつ Q ⇒ Pのとき、
    PはQの「必要十分条件」(QはPの必要十分条件)

★「必要条件」のほうの名称の由来ですが、P ⇒ Q の関係が成立する時、「Qが偽であるならばPも偽である」という関係が成立するためと思われます。つまりPが真であるためには少なくともQは真でなければならず、Qが偽でPが真である場合はあり得ないという事です。(他方P ⇒ Q の時に、Qが真でもPが真である事は確定しません。Qが真でPが偽の場合はあるのです。そこが十分条件と異なります。)
この関係は、後述する図によるイメージで理解が進むかと思います。

論理式の説明

P ⇒ Q の関係が成立する時、「Qが成立するためには、Pが成立すれば十分である」といった表現をする事もあります。また、必要条件のほうに着目して「Pが成立するためには、Qが成立する事が必要である」と言う事もあります。

また文章の表現として、P ⇒ Q の関係について「QはPが成立するために『必要ではあるが十分ではない』」という表現がなされる場合もあります。これは、特に Q ⇒ P は成立しない事が判明している場合に使われる事が多いです。(後にも触れますが、P ⇒ Qが判明しているけれどQ ⇒ Pかどうかはまだ不明であるという場合もあり得ます。)

★このときのPやQは数学的に意味のあるものを考えます。
「今朝は晴れだった」とか「この理論は美しい」とかそういう文章の類は入れないわけです。

もう1つ例を挙げてみます。
Xが自然数の時、「Xが4の倍数である事」は「Xが偶数である事」の十分条件です。

これは、「Xが4の倍数」であれば必ず「Xは偶数」であるからです。
「Xが4の倍数である」 ⇒「Xは偶数である」 は、成立しています。

他方、Xが偶数であっても「必ず」4の倍数とは言えません。これは、例えば偶数であっても2や6といった数は4の倍数ではないからです。このように出てきてしまう「例外」の具体例の事を、数学の用語として反例と言います。

「Xが6の倍数である」事も「Xが偶数である」事の十分条件の1つです。
6の倍数6,12,18,24、・・・は例外なく、必ず偶数であるからです。
つまり「Xが6の倍数である」 ⇒「Xは偶数である」 も成立しています。

このように、十分条件というものは複数あり得ます。

必要条件についても同様で、1つではなく複数あり得ます。
例えばここでの例で「Xが偶数である」を「Xが2以上の自然数である」といったものに変えても同様に
「Xが4の倍数の自然数である」 ⇒「Xは2以上の自然数である」 
は成立するので、Xが自然数の時に「Xが2以上の自然数である」事も「Xが4の倍数である」事の必要条件になります。

【図での覚え方】論理式と集合との関係

これら十分条件と必要条件の上手な捉え方として、ある変数が集合の元(要素)である事に関する論理式を考え、さらに図に描くという方法があります。この方法は、論理式の構造の理解のために大変便利です。

例えば「『xが集合Bに属する(Bの元である)』ならば『そのxは集合Aに属する』」という事が正しいとしましょう。この時、集合Aと集合Bの包含関係は「AがBを含む(A⊃B)」という事になります。これは、この関係が成り立つという事は「xがBに属するのであれば『必ず』そのxはAに属してもいる」という意味であるからです。

これらの集合が例えば平面上の領域(点の集まり)であれば、これは図形に描けます。絵としては、穴などがない領域Aの中に完全に領域Bが含まれてしまっている場合です。この時に、領域Aに完全に含まれてしまっている領域Bが、「十分条件」のイメージです。

逆に、相手方である領域Bを含んでいる大きなほうの領域Aが、「必要条件」のイメージです。

★ここで、もしもx∊B ⇒ x∊A という情報だけがあって領域AとBの実際の様子は分からない場合には、論理式の逆の「x∊A⇒x∊B」が成立するかはその段階では「不明」という事になります。
ただし、その場合でも領域Aが領域Bを含んでいる事は確定しています。しかし、A⊃Bであると同時にB⊃Aでもある可能性、つまり領域AとBが完全に一致している場合も考えられるわけです。

図による説明
P ⇒ Q という事は、「Qがもし偽であればPも偽である」という事で、図で言うと領域Aに含まれていない点(つまり領域Aの外にある点)は領域Bにも含まれていないという意味になります。このような事も図で見ると理解しやすくなるかと思います。

領域ではなくて数直線上の区間で考えても同じで、
例えば実数xが閉区間 [0,1/2] に含まれるならば、xは閉区間 [-1,1]に含まれています。
記号で書くとx∊ [0,1/2] ⇒ x∊ [-1,1] という事であり、
x∊ [0,1/2] は x∊ [-1,1] であるための「十分条件」であり、
x∊ [-1,1]はx∊ [0,1/2]であるための「必要条件」です。
閉区間同士の包含関係については、[-1,1] が [0,1/2] を含んでおり [-1,1] ⊃ [0,1/2] です。

証明問題・計算での使い方

三平方の定理を証明する時は、まずは前提となる「直角三角形である」という条件が正しいとして、その時に必ず3辺の関係がc=a+bとなる事を示すわけです。

すると、その証明によって
『三角形が直角三角形である』⇒『斜辺と残り2辺の長さをc、a、bとしてc=a+bである』
という論理式が真であるという事になるわけです。

しかし逆に、
『三角形の辺の関係式c=a+bが成立する』⇒『三角形が直角三角形である』
という事が正しいかはこの時点では分かりません。
この段階ではこの逆の形の論理式が「真か偽かも分からない」という事です。

★P ⇒ Q が成立している時に矢印の先のほうのQを必要条件と呼ぶわけですが、この時に Q ⇒ P が成立するかどうかが判明しているとは限りません。
一般には特別な条件が明示されていない限りは、P ⇒ Qの成立からQ ⇒ Pの真偽を直ちに判定する事はできないので、その真偽を明確にするために「証明」という作業を行います。

従って、それが真か偽かもまた証明によって調べる必要があります。
今度は辺の長さの関係を前提として(正しいものとして)証明を行うわけです。

結論を言うと三平方の定理の「逆」である
『三角形の辺の関係式c=a+bが成立する』⇒『三角形が直角三角形である』
も、確かに成立します。証明できるという事です。
という事はP ⇒ Q の形に対してQ ⇒ Pの形も成立しているので、三平方の定理は「必要十分条件」である P ⇔ Q の形となるわけです。

このように「必要十分条件である事を証明せよ」という問題の場合(入試問題以外でも)、
まず P ⇒ Q を証明し、次に Q ⇒ P も証明して P ⇔ Q であると結論付けるのが一般的手法です。

このような形で三平方の定理の逆も成立する事を証明できます。

通常の実数や文字式等の計算での式の変形も、じつは細かく言うと「必要十分条件」の関係です。

x-y=0の時、x=yであるわけですが、
細かい事を言うとx-y=0⇒x=yかつx=y⇒x-y=0であり、
x-y=0⇔x=yというわけです。
そのため、式変形をする時に必要十分条件の記号⇔を使う事があります。

注意が必要な例として、平方根と2乗の関係があります。次の関係を見ましょう。xは実数とします。

$$x=\sqrt{2}\Rightarrow x^2=2$$

この論理式は成立します、しかし注意が必要なのは、この場合には「必要十分条件」で結ぶ事はできないという事です。それをやってしまうと、論理式は「偽」になってしまいます。理由は簡単で、2乗して2になる数(実数)は、\(\sqrt{2}\)は確かに当てはまるのですが、もう1つ負の数のほうの\(-\sqrt{2}\)があるためです。

$$特に条件が無い場合、x^2=2\Rightarrow x=\pm\sqrt{2}$$

この関係の逆は成立します。そのため、必要十分条件で結ぶのであれば次のようにする必要があります。

$$x^2=2\Leftrightarrow x=\pm\sqrt{2}$$

これを確実に見るには、x=2 ⇔ (x+\(\sqrt{2}\))(x-\(\sqrt{2}\))=0という因数分解された形にするとよいでしょう。【この「因数分解の形にする」という式変形は、必要十分条件で結ばれます。】

少し話が込み入りますが、もしも「xは正の数」という条件があるのであれば、上記の右方向だけの \(x=\sqrt{2}\Rightarrow x^2=2\) は必要十分条件で結んでも間違いではありません。これは「x>0かつ\(x^2=2\)」という具合に、条件自体が変わるためです。

このように、一般の実数等での式変形であれば必ず必要十分条件になるわけではなく、時々片側にのみ
「ならば」記号の矢印⇒が成立する場合もあります。その点だけは少しだけ注意が必要になります。

三角関数の定義・基本公式【周期関数】

三角関数とは、図形上の三角比である正弦、余弦、正接の角度部分を拡張して定義域を実数全体に広げた正弦関数余弦関数正接関数を言います。(正接関数は \(\pi\)/2の奇数倍を定義域から除きます。 )
三角関数の変数は「実数値」であり、度数法ではなく弧度法で表します。(※度数法のまま三角関数を扱っても支障はない場合も多くあります。ただし微積分を扱う時には特に問題が発生するので注意も必要です。)

表記方法自体は三角比の場合と同じで、変数部分の記号としてxを使う事が多いです。
正弦関数 y=sinx 余弦関数 y=cosx 正接関数 y=tanx

三角関数は、代表的な周期関数の1つでもあります。これは、同じ関数の値が等間隔の変数ごとに繰り返し現れるというもので、「1回転」\(2\pi\) ごとの周期性を示します。(比例係数を使う事で、その他の値の周期とする事もできます。)

指数関数や対数関数と同じく、高校で扱われる重要な関数である初等関数の1つです。

三角比との違いは、数学的に厳密な違いが定義されているわけではありませんが、三角比というのはどちらかというと平面の図形に対して0°~180°の範囲で適用するものであって、三角関数は図形問題というよりは周期関数としての性質を強調して使う事が多いです。

定義域の拡張・・角度を拡張する

三角関数の考え方は大体において三角比と同じ考え方を適用できますが、正弦関数等の変数は実数全体です。この場合、単純な直角三角形の角度としては変になる場合はどのように解釈するのか?を説明します。
基本となるのは正弦関数と余弦関数なので、まずはそれらについて見ていきます。
(正接関数についてはそれらの割り算で表されます。)

「0度」と負の角度 ■ \(\pi\)/2【90°】以上の角度 ■ 2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】 

「0度」と負の角度

直角三角形の直角以外の部分の角度は、「もちろん0°より大きく90°より小さい範囲」です。
弧度法だと 0 < x < \(\pi\)/2です。そうでないと三角形ができないためです。
しかし三角関数では、この変数の範囲(定義域)を拡張していきます。

まず変数が0以下の場合はどうするのでしょうか?結論を言うと次のようにします。

変数が0以下の場合の三角関数
  1. sin 0 = 0, sin(-x)=-sinx と定義する。
  2. cos 0 = 1, cos(-x)= cosx と定義する。
  3. tan 0 = 0, tan(-x)=-tanx となる。【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】

ここでx>0であれば-xは負の値で、x<0であれば-xは正の値です。
後述しますがどちらの場合でも統一的にこれらの関係式を適用できます。

これは図で言うと、三角形を底辺に関して対照的にひっくり返したものを考えて「負の角度」としています。角度の方向にも向きを付けて、反時計回りをプラス、時計回りにはマイナスの符号をつけるという意味です。
そのうえで正弦については「下向き」の高さ、余弦については変わらず同じ値と決めています。

負の角度

まずx=0の場合には次のようにしていす。

角度0の場合の定義

x=0とした時の y=sin x と y=cosx の値の定義です。

  • 正弦関数の場合:sin 0 =0 と定義する。
  • 余弦関数の場合:cos 0 =1 と定義する。

これらは「定義」であるとしか言いようがない面もありますが、「なめらかな形の連続関数」になるような定義としての1つの要請であるとも言えるのです。
三角比の範囲においても、角度を0に近づけると正弦の値は0に近づき、余弦の値は1に近づいていくのでx=0において sin 0 = 0, cos 0 = 1 であれば、その「点」において関数は「連続」になるという事です。さらにそこから、なめらかな形で負の部分に続いていく事も考えます。(微分可能になるように。)

また、周期関数になるという要請も加えると、定義の仕方も段々と限定されてくるわけです。意味としては、三角関数における「角度」の拡張の定義にはそのような意味があると捉える事ができるのです。
直交座標上にxを変数とした三角関数のグラフを描くと、ちょうどx=0で正弦関数は原点に対して点対称、余弦関数はy軸に関して軸対称の形になります。

負の角度

ここでは表記としてはxがプラス符号であるとして、それにマイナスをつけた「-x」を負の数として扱っています。

  • 正弦関数の場合:sin(-x)= -sinx【0から始まり-1に向けて関数の値は減少していく】
  • 余弦関数の場合:cos(-x)= cosx【1から始まり0に向けて関数の値は減少していく】

$$例えば\hspace{10pt}\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\frac{\pi}{4}=-\frac{1}{\sqrt{2}},\hspace{10pt}\cos\left(-\frac{\pi}{4}\right)=\cos\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}$$ 正弦の場合と余弦の場合ともに、符号の関係にだけ注意すればよいという事になります。
値の絶対値については変数がプラスの場合のものをそのまま流用するという定義であるからです。
正弦の場合「0から減少していく」、余弦の場合「(最大値)1から減少していく」事を考えると理解はしやすいと思います。

尚、ここでは sin(-x)= -sinx において「xは正の値」を考えて変数が負の場合の説明をしましたが、
そこでx自体に「負の値」・・例えば-\(\pi\)/4を入れたとすると$$\sin\left\{-\left(-\frac{\pi}{4}\right)\right\}=\sin\frac{\pi}{4}=-\left(-\sin\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)$$となり、式の整合性はとれています。余弦関数の場合も同様に整合性がとれます。つまり一般的に、変数部分にマイナス符号がついている時には、上記の定義式の関係を使って機械的に計算してもよいという事です。

\(\pi\)/2【90°】以上の角度

では、変数がプラスの値の時に戻って、変数が\(\pi\)/2以上の場合はどうするのでしょう?
通常の図形問題でも90°以上の角度は考えますが、直角三角形の直角にはそのままでは適用できません。

三角関数において、定義域を\(\pi\)/2以上に拡張する場合は次のようにします。

変数が\(\pi\)/2以上の場合の三角関数
  1. sin(\(\pi\)/2) = 1, sin(x+\(\pi\)/2)=cosx と定義する。
    【sin\(\pi\)=0, sin(3\(\pi\)/2)=-1, sin 2\(\pi\)=0 になる。】
  2. cos(\(\pi\)/2) = 0, cos(x+\(\pi\)/2)=-sinx と定義する。
    【cos\(\pi\)=-1, cos(3\(\pi\)/2)=0, cos 2\(\pi\)=1 になる。】
  3. tan \(\pi\) = 0, tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) となる。
    【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】
    mを整数として tan(\(\pi\)/2+m)は、定義しない!【無限大を避けるためです。】

ここで正弦と余弦についてはxは実数のうち何の値でもよく、負の数や直角を超える値を入れたとしても整合性がとれた定義式になっています。
正接のほうについては、余弦関数の値がゼロになる変数の値は全て「穴」になるような形で定義域から除外する形で考えるという事です。ですから例えば tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) においてはxの値として\(\pi\)の整数倍の時は除外する、という具合に考えます。

また、正弦関数と余弦関数については次式も成立し、これを使うと計算上便利です。

公式
  1. sin(x+\(\pi\))=-sinx, sin(\(\pi\)-x)=sinx
  2. cos(x+\(\pi\))= -cosx, cos(\(\pi\)-x)=-cosx

これらは式としては統一的にまとめる事もできますが、図形的な意味としては別々に捉える事も1つの方法として便利である場合があります。正接関数についても同様の式を作る事は可能です。

さて、この定義を見ると角度が負の場合と比較して、かなり複雑であるようにも見えます。
この場合もやはり式だけで考えるのではなく、図形的に考えたものを式で表現するなら上記のようになると理解すべきでしょう。

変数が直角を考える場合には、今度は直角三角形の高さ部分の辺に関して対照的になるようにひっくり返すのです。この場合も、関数の値の絶対値は直角未満の場合の三角比の値を流用して符号だけをいじるという定義の仕方をします。

90°を超えて180°未満の「鈍角」の範囲における三角関数の具体的な値を調べる時には、鈍角を「180°-鋭角」と考えるか、「90°+鋭角」と考えるかの2通りの計算で便利なほうを使うのが普通です。

鈍角の場合①
鈍角を「180°-鋭角」と捉える場合の三角関数の値の計算方法です。
鈍角の場合②
鈍角を「鋭角+90°」と捉えた場合の三角関数の値の計算方法です。こちらは、通常の三角比の場合に成立する公式を利用して式変形で考える事も可能です。

尚、式として考える場合、「90°+鋭角」の鋭角部分をマイナスにしてさらに90°加算する事で
「180°-鋭角」の三角関数の値の式を導出する事も一応可能です。次のようにします。

$$\sin\left(\pi-\theta\right)=\sin\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin(-\theta)=\sin\theta$$

$$\cos\left(\pi-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\cos(-\theta)=-\cos\theta$$

変数の値が2直角、つまり\(\pi\)の時には正弦関数の値は0、余弦関数の値は-1です。これは定義として捉えてもよいですし、上記の sin(x+\(\pi\))=-sinxから導出するという形でも同じです。これらも、意味としては関数の増減との対応・周期性・なめらかな連続性を満たす要件として考える事ができます。

さらに変数が\(\pi\)を超える場合には負の角度の時のように底辺に関して対照的にひっくり返します。この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式を使うと把握しやすいでしょう。図を見ながら、図形的に捉えましょう。

点対称になる場合と周期性
角度が2直角を超える場合には、座標上で言う第3・第4象限に三角形を配置する形になります。この時には原点に対して点対称になる三角形を考えて符号を反転するだけと考えると計算が簡単な場合が多いでしょう。

さらに角度の値を大きくすると、今度は再び高さ部分に関してひっくり返り、座標軸上で言うと第4象限の位置に配置された三角形を考える事になります。

2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】

角度を増やして、4直角、つまり360°に達し、それを超えた場合はどうなるでしょう。

この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式の変数にもう一度 \(\pi\) を加えるのです。

すると、再度符号が反転して sin(x+2\(\pi\))=sinx, cos(x+\(\pi\))= cosx となり、
もとの sinx および cosxになる事を導出できます。

これが三角関数の周期性と呼ばれる性質で、以降、角度をどれだけ増やしても延々と周期的に値を繰り返すという事です。これは正接関数についても成立します。

三角関数の周期性 次のように、三角関数は2\(\pi\)ごとに同じ値を繰り返します。
  1. sin(x+2\(\pi\))= sinx
  2. cos(x+2\(\pi\))= cosx
  3. tan(x+2\(\pi\))= tanx

この周期性は、マイナスの向きに角度を減らした場合にも適用できます。つまりマイナス方向にもプラス方向にも、実数全体にわたって2\(\pi\)の周期性があるという事です。

sin(x+2\(\pi\))=sinxの関係から、sin(2\(\pi\)-x)=sin(-x) となり、余弦関数の場合も同様です。これは図形的に見ると、同一の頂点に相当する部分に至る角度を反時計回り(プラス)で測っても時計回り(マイナス)で測っても三角関数の値は同じである事を意味します。

尚、sin2xのような関数を考える場合には、周期性は sin(2x+2\(\pi\))=sin2xのようになります。
するとこの場合には、xに着目するとsin(2x+2\(\pi\))=sin2(x+\(\pi\))のようになりますから、xの変化としては周期は\(\pi\)ごとに発生する事になるのです。xは\(\pi\)だけ変化すれば三角関数の変数全体では2\(\pi\)の変化になるので、それだけで周期が1サイクルしてしまうという事です。
グラフ上では通常の正弦関数よりも「密」になった波の形になります。

単位円による定義方法

さて、以上の三角関数の定義と性質を見ると、式だけで覚えるのは大変複雑で、図形的に見るとそれほど難しい理屈ではない事が分かると思います。

上記の図でもところどころに描いていますが、じつは三角関数を把握するには円を描くと便利です。(三角関数の別名を「円関数」とも言います。)

この円は、原点を中心とした半径を1にした円で、単位円と呼ばれます。

すると、斜辺の長さに相当する「半径」が1ですから、角度の取り方は前述の方法と同じであるとすると、
円周上の点のx座標は余弦関数の値、y座標は正弦関数の値になるのです。

この単位円による方法でも適切に三角関数の値を出せるので、これを定義にしてしまうやり方もあります。

単位円による三角関数の定義

直交座標上の原点を中心とする半径1の円周上の点(X,Y)を考えて、
(1,0)から測った円周の長さ(弧度法の角度に等しい)をxとします。この時、

  1. X=cosx すなわち余弦関数と定義する
  2. Y=sinx すなわち正弦関数と定義する
  3. 正接関数は tanx=(sinx)/(cosx) で定義する

各三角関数には2\(\pi\)の周期性があり、
角度は反時計回りをプラス符号、時計回りをマイナス符号として区別するものとします。

単純な覚えやすさと使いやすさに関しては、この単位円による方法は非常に優れています。

欠点があるとすれば、三角比の拡張として唐突に「円」を持ち出すと、やはり少しばかり飛躍を感じさせるのも事実だと思います。最初から単位円による定義で教え込まれてしまうと結局「わけもわからずに」暗記するだけ・・という事になりがちです。

単位円による定義
単位円を使った三角関数の定義は、覚え方や計算の便宜としては非常に優れています。

重要な公式まとめ

三角関数の公式としては、簡単に4つのグループに分けると次のようなものがあります。

  1. 三角比についても適用できる公式
  2. 定義域を拡張した三角関数に特有なもの(例えば周期性)
  3. 正弦定理と余弦定理
  4. 加法定理と、それから派生する公式

まず、三角比についても成立するいくつかの公式は、三角関数でも成立します。これは三角比範囲の角度でのみ成立するのではなく、負の角度や直角以上の角度を代入してもきちんと成立するところが便利です。

三角関数の公式①

次式は三角比について成立しますが、
定義域を実数全体とする三角関数においても成立します。 $$\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}$$ $$\cos^2 x+\sin^2 x=1$$ $$\cos \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\cos x$$ $$\tan \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\frac{1}{\tan x}$$ 角度についてはここでは弧度法で記しましたが、単純な図形問題にこれらを適用する際には角度を度数法で記しても大きな問題は普通は起きません。

これらの証明は三角比の説明のところで詳しく記しています。

周期性も含めて、三角関数特有の公式・性質も整理しておきましょう。
前述の通り、式だけで覚えるのではなく図形的に理解して覚えるとよいと思います。

三角関数の公式②

これらは特に三角関数において成立する関係式です。 $$\cos \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=-\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=\cos x$$ $$\sin(-x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(-x)=\cos x$$ $$\sin(\pi +x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi +x)=-\cos x$$ $$\sin(\pi -x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi -x)=-\cos x$$ $$\sin(2\pi +x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(2\pi +x)=\cos x$$ 最後の関係式については周期性と呼ばれる事は前述した通りです。
正接関数については、全てtanx=(sinx)/(cosx) の関係から公式を作る事ができます。

図形的に三角形に対して成立する公式で三角関数を使うものには、正弦定理余弦定理というものがあります。(余弦定理のほうがどちらかというと重要かと思います。)それらは基本的には三角比に対して成立しますが、角度として鈍角や直角を適用する場合には三角関数の定義を使用すると図形的な対応もうまくとれるという具合になります。図形的な対応さえきちんとつけるなら、余弦定理に関しては全実数の範囲の角度を適用しても成立します。

三角関数の公式③ 図形的な定理
  1. 正弦定理:三角形の辺a、b、cの対角の大きさをそれぞれA,B、C、三角形に外接する円の半径をRとすると
    a/sinA=b/sinB=c/sinC=2R
  2. 余弦定理:三角形の辺a、b、cと、辺aの対角の大きさAについて次の関係が成立する。
    a=b+c-2bccosA
    【特にAが直角の時は三平方の定理そのもの】

また、三角関数の加法定理というものがあって、これは複素数の理論の一部を構成しており、微積分のほうで計算を進めるために使う事もあるので三角関数の公式の中では重要な部類に入ります。
また、この加法定理から派生するいくつかの小さなグループの公式として積和の公式・和積の公式・倍角の公式と呼ばれるものもあります。それらは本質的にはもともと加法定理そのもので、少し式変形をして形を変えたものになります。

三角関数の公式④ 加法定理

2つの角度の大きさ A, B に関して次式が成立します。

  1. sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinB
  2. sin(A-B)=sinAcosB-cosAsinB
  3. cos(A+B)=cosAcosB-sinAsinB
  4. cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinB
sinAcosB などは、sinA と cosB の積です。
正接関数についても、tan(A+B)=sin(A+B)/cos(A+B) の計算によって加法定理の公式を作る事が可能です。

この他に、高校数学では必要ありませんが、三角関数を使った無限級数によって周期関数を解析する技法があります。そこでも三角関数の基本的な性質や公式は前提として話が進められる事も多いので、基礎事項をよく知っておくと後々の学習が進めやすい事もあろうかと思います。

絶対値記号に関する問題

実数に関する絶対値の意味と、高校数学の範囲で想定される問題について説明します。

絶対値とは?

実数の「絶対値」の意味
文字式に対する絶対値
絶対値記号がついた関数のグラフ 

実数の「絶対値」の意味

絶対値とは、意味としては向きに関わらず正の値として特徴づけられる「大きさ」のようなものです。

実数の場合、正の数の絶対値はその値そのもの負の数の絶対値は符号を取り除いて正の数に直したものを指します。記号は、数を2本の縦棒||で挟んだようなものを使います。例えば次の通りです。

$$実数+3の絶対値\hspace{10pt}|3|=3$$

$$実数-3の絶対値\hspace{10pt}|-3|=3$$

後述もしますが、負の数の「絶対値」は、-1を掛ける事で正の数にしたものでもあります。文字式や関数の絶対値を考える場合は、こちらの考え方のほうが重要になります。

尚、複素数に関しても絶対値というものもあり、ベクトルの場合は絶対値ではなく「大きさ」とか「距離」とか言いますが、記号は実数に関する絶対値と同じ記号を使います。

$$参考:複素数の絶対値\hspace{5pt}|1+2i|\hspace{15pt}ベクトルの「大きさ」|\overrightarrow{AB}|$$

実数に関する絶対値
高校数学での絶対値記号は、意味としては簡単ですが問題を解く時には注意すべき点もあります。

文字式に対する絶対値

さて、という事は実数に関する絶対値というのは要するに正の数だろうが負の数であろうがとにかく符号はプラスにするというものですので、「大した意味を持つものではなく簡単ではないか」という話にもなります。実際、意味自体は簡単である事は事実です。

ただ、高校数学の場合、くせものなのは文字式や関数に絶対値記号をつける場合なのです。

例えば、実数変数xに絶対値記号をつけた |x| については次のように処理せねばなりません。

$$①x≧0 の時、 |x|=x,\hspace{10pt}②x<0 の時、 |x|=-x$$

注意が必要なのは、変数xが「負の数」の範囲にある場合で、絶対値記号を「外す」時にはマイナス記号を添えねばなりません。これは、xが負の数であるのだから、反転して正の数にするためには数学的な操作としてはマイナスを掛ける必要があるという事です。

$$x<0 の時,|x|=-x\hspace{10pt}例えばx=-2なら、|x|=-x=-(-2)=2$$

人間が自分の感覚でやる時には「マイナス記号を取り払う」事で負の数を正の数にできますが、数学的な演算としては負の数を正の数にするには「-1を掛ける」操作が必要であるという事なのです。

より複雑な文字式に絶対値記号をつける場合も考え方は同じで、不等式に関する問題も絡んできます。

$$|A-2B|=A-2B【A≧2B】\hspace{10pt}|A-2B|=-(A-2B)=-A+2B【A<2B】$$

関数に絶対値記号をつける場合は、その関数がどの変数の領域(「定義域」)で正の数になるのか、負の数になるのかという問題が直接的に絡みます。

$$|x^2-3x-4|=|(x-4)(x+1)|から、x^2-3x-4の正負の状況が分かる。$$

$$x≦-1またはx≧4の時、|x^2-3x-4|=x^2-3x-4$$

$$-1<x<4の時、|x^2-3x-4|=-x^2+3x+4$$

このように、絶対値記号とは意味自体は簡単なのですが、出題する問題として話を複雑にしようと思えばいくらでもできるような性質のものでもあるので、いくらか慣れておく必要もあると思います。

絶対値記号がついた関数のグラフ

上記のように関数に絶対値記号をつける事もできるわけですが、この時にグラフを描くと、関数が0の値をとる点を境にx軸に反射するように折れ曲がるグラフになります。

例えば、次の3つの絶対値記号がついた関数のグラフは図のようになります。

$$y=|x|, \hspace{10pt}y=|x-1|, \hspace{10pt}y=|x^2-1|$$

絶対値記号がついた関数のグラフ①
絶対値記号がついた関数をグラフに描くと、このように本来は関数の値がマイナスになる部分がx軸で折り返され反転したような形のグラフになるのです。

2次関数に絶対値符号をつけた関数に関しては、因数分解する(本質的には解を計算する)事でグラフの形が分かります。

$$x^2-1=(x+1)(x-1)から、もとの2次関数の正負の範囲が分かります。$$

高校数学で問われる事は少ないと思いますが、三角関数に絶対値記号をつけた形の波形のグラフというものも想定できます。通常は負の数の部分が反転して周期的に山がいくつも連なるようなグラフになります。

参考までに、この類の波形は、電圧や電流として正弦関数等を考える時には実際に作れるもので、交流を直流に変換するための古典的な技術の1つです。半導体素子を上手に回路に組み合わせると実現可能となります。

応用:どういった出題があるのでしょう?

直線との交点の問題など ■ 微積分との複合問題

直線との交点の問題など

上述の通り、関数に絶対値記号をつけると、グラフ上では形が変わってしまう場合があります。

そうすると、例えば同じ「2次関数と直線の交点の状況を調べる」という問題であっても、関数部分に絶対値記号をつける事で計算の手間が1つ増えてランクが少しだけ上がるわけです。

$$■問い:直線y=x+Cと図形y=|x^2-5x+4|が3点で交わるCの値は何ですか。$$

こういった問いの場合、少し引っかけどころがあって、x軸に対して反転した部分に「接する」ことで3点で交わるパターンと、ちょうどx軸で反転する1点と、突き破るように関数と交わる他の2点と合わせて3点という場合があります。仮にこういう問題が出題された時には、どちらの場合も述べないと完全な正答にならないところがくせものです。

この問いに関しては、図に描いてみると状況を把握しやすいと思います。

絶対値記号がついた関数のグラフ②
直線との交点は0~4個の範囲があり得ます。図に描くと分かりやすいです。

A.まず、2点および接点によって3点で交わるパターンです。

この場合には、接する部分は2次関数の部分が反転していますから、

$$y=x+Cと、y=-(x^2-5x+4)=-x^2+5x-4が接する状況を考えます。$$

$$x+C=-x^2+5x-4\Leftrightarrow -x^2+4x-4-C=0$$

$$\Leftrightarrow -(x-2)^2-C=0$$

よって、ちょうどC=0であればそのような状況になります。これがまず1つです。

B.もう1つの場合。この場合、絶対値記号の中の2次関数が0になる部分の片側(値が小さいほう)を直線が通る事になります。

$$x^2-5x+4=(x-1)(x-4)なのでx^2-5x+4=0\Leftrightarrow x=1またはx=4$$

直線のほうのy=x+Cが、点(1,0)を通ればよいわけです。この場合、y切片であるCを知るのは簡単で、C=-1です。(分かりにくければ図を見てください。)

よって、題意を満たすCの値はC=0,-1です。【解答】

この問いの場合は直線のほうの傾きが固定されているので比較的状況を把握しやすく、逆に傾きのほうが変化する場合には状況はやや複雑になります。さらに、直線の式のほうに絶対値記号がつく場合も同様に複雑になります。いずれにしても、グラフの図形的状況を丁寧・正確に把握する事がポイントとなります。

この問いと同じ部類で、より平易なパターンはx軸に平行なy=Cのような直線と、2次関数が一部反転した関数との交点を調べさせる問題です。その場合、反転した頂点部分より上とx軸で2交点、頂点の座標では3点、x軸から頂点までの間では4点、y座標が負の部分では0点で交わるという事になります。

微積分との複合問題

微積分の問題で、絶対値記号がついた関数の微分や積分を問うという出題も一応あり得るものではあります。いずれの場合も、絶対値記号がついたままでは微分も積分もできません。

まず絶対値の中身の正負の状況を正確に把握して、絶対値記号を外すという操作が必要になります。それから、微積分の操作をします。

上記の2次関数に絶対値記号をつけた関数に直線が接する条件を微分で出す場合には、x軸に対して反転した部分で接するため、マイナスをつけて絶対値記号をはずした2次関数を微分する事になります。微分の場合は、関数の正負が反転する部分は導関数の正負も反転するだけという性質をうまく使える場合もあります。

定積分であれば積分区間を分割する事になります。本来マイナスになる部分の定積分がプラスに転じるので全体の値も当然変わってきます。

いずれにしても、通常の形の関数を微積分するよりも一手間かかる問題になりやすいのです。

参考までに、絶対値記号がついた関数がx軸で反射するように折れ曲がる点は、微積分学では関数が「連続であるけれども微分不可能である」点の例の1つとしてよく取り上げられます。これは、その点に変数xを近づける時に、大きい側から近づける場合と、小さい側から近づける場合とで微分係数に相当する極限値が異なる値になってしまうためです。

2次関数を表す式と放物線【図形と式】

高校数学での、直交座標上での図形的な性質と関連させた2次関数の式、および問題を解くコツについて説明します。

およそ、センター試験の出題範囲レベルに対応できる程度の問題について解説します。

2次関数と放物線の関係

2次関数を表す図形と高校数学での考察点
2次関数の「頂点」
参考:頂点を調べる別の方法・・2次方程式の解、微分 

2次関数を表す図形と高校数学での考察点

2次関数自体は中学校でも教わるかと思いますが、高校数学だとより自由自在に平面の中での図形的な考察を、式によって(手計算で)進める事が行われます。

2次関数が直交座標上で表す形は「放物線」です。最大値と最小値のどちらか1つを必ず持ち、x軸の無限遠方では必ず+側に無限大になるか-無限大になるのかのどちらかになります。

$$2次関数\hspace{5pt}Ax^2+Bx+C\hspace{5pt}が表す図形:「放物線」$$

この式で、Aの値がプラスであれば「下に凸【とつ】」の形、逆にAがマイナスであれば逆さまの「上に凸」の形になります。

尚、A=0であれば1次関数になってしまうので、その場合に限っては図形は放物線にならず直線になります。

このように、式の中での性質や特徴が、図形的にはどのような意味を持つのかを理解しておく事が問題を解くうえでのポイントになります。

2次関数と放物線①

2次関数の「頂点」

2次関数が、直交座標上でどのような場所にあるかを見るには、「頂点」の位置を調べます。

そのために、2次の項と1次の項を2乗の形に変形します。

★尚これは2次関数であるから必ず、しかも簡単にできる操作で、3次式以上だと一般的にはそううまくはいきません。3次式の場合は高校数学の手計算では多くの場合、微分を用いて調べます。簡単に後述しますように、2次関数でも微分の手法を使う事は可能です。

例えば次のような具体的な2次関数については次のようになります。

$$x^2+4x-6=(x+2)^2-4-6=(x+2)^2-10$$

この時関数はx=-2を代入すると最小値-10を持ちます。これは最後の式にそれを代入して直ちに最小値を得るのですが、間違いのないようにもとの式に代入してみるのもよいでしょう。
(-2)・(-2)+4・(-2)-6=4-8-6=-10ですから確かに合っています。

この時、2次関数が最小値をとる座標である(-2,-10)をこの2次関数の「頂点」と呼ぶのです。

2次の項がマイナスでも同じ操作をします。

$$-x^2+4x-5=-(x-2)^2+4-5=-(x-2)^2-1$$

この時は、2次関数はx=2で最大値-1を取ります。この最大値をとる座標(2,-1)がこの2次関数の「頂点」です。

関数の中の係数が未知数である場合も同様です。

$$x^2+(A-2)x+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{(A-2)^2}{4}+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2-4A+4}{4}+1$$

$$=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2}{4}+A$$

この例の場合、最小値の値もAに関する「2次式」ですから、問題の形式によってはさらに計算が続きます。高校数学だと、この手のタイプの問題のほうが問われやすいかもしれません。応用問題についても後述しているので必要に応じて参照してください。

参考:頂点を調べる別の方法・・2次方程式の解、微分

2次関数で、x軸との交点が2つある場合に限って言えば、x軸との2交点の中点のx座標が頂点のx座標に等しくなります。そのため、ものによっては、2交点を先に出してしまって中点を考えて頂点を出す事もできます。例えば次のような感じです。

$$x^2+2x=x(x+2)より、x=0,-2でx軸(y=0直線)と交わる。よって、頂点のx座標は-1$$

解けるなら何の手法を使ってもよいのですが、複数の手法を知っているとチェックとして使えるでしょう。

参考までに、2次関数の頂点の位置を調べるには、微分を使う事もできます。センター試験では微分を使わなくても問題を解けるように必ず作ってあるので微分を使う必要はないですが、解答が合っているかどうかのチェックなどに使う事ができます。

上記の例だと例えば次のようになります。 $$(x^2+4x-6)^{\prime}=2x+4$$ $$(-x^2+4x-5)^{\prime}=-2x+4$$ $$\{x^2+(A-2)x+1\}^{\prime}=2x+A-2$$ $$(x^2+2x)^{\prime}=2x+2$$ これらの「導関数」が0になる値が、2次関数の場合では最大値あるいは最小値をとるxの値、すなわち放物線の頂点のx座標になります。(他の関数の場合には直ちに最大または最小となる値とは言えないので注意。)
本質的には、2次関数の頂点は手計算では平方完成によっても微分によっても、本来はどちらの方法でも調べる事ができるのです。

2次関数と放物線に関する応用問題

2次関数の最大値・最小値に関連させた問題
定義域が限定された場合の最大・最小
直線と放物線の交点問題
2つの放物線同士の交点 

2次関数の最大値・最小値に関連させた問題

$$■問い:2次関数y= x^2-4x+5はx軸と何個の交点を持ちますか。$$

こういった問題の場合には、式変形して図形の様子を見て調べます。

$$x^2-4x+5=(x-2)^2+1$$

であり、最小値は1です。という事は、x軸(直線y=0)との交点は存在しません。交点の数は0個です。【解答】

こんな具合です。

ただし、大学入試等での問題では、こういったシンプルな問題はあまり出してくれません。もう少し計算の手順が必要な形で出題されると考えるべきでしょう。

例えば、2次関数の係数も未知数である場合には計算はさらに続き得ます。上記でも例に挙げた2次関数を使って見てみましょう。

$$■問い:2次関数y=x^2+(A-2)x+1はx軸と何個の交点を持ちますか。(Aは実数とします。)$$

$$x^2+(A-2)x+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2}{4}+A$$

このように最小値自体がAの値によって変化し、しかもAに関する2次式ですので今度は2次方程式を解く作業になります。

$$-\frac{A^2}{4}+A=-A\left(\frac{A}{4}-1\right)$$

この場合はあっさり因数分解できるので、0と置いた時の解が分かります。A=0または4の場合に、「もとの2次関数の最小値」が0になるわけです。その時、もとの2次関数とx軸との交点は1つだけです。頂点がx軸に接する形になります。

また、0<A<4の時には「もとの2次関数の最小値」がプラスの値になってしまいますから、もとの2次関数とx軸の交点は存在しません。

A<0またはA>4の時には「もとの2次関数の最小値」はマイナスで、xの値を増やすあるいは減らす事で関数の値は大きくなっていきますからx軸と確実にぶつかります。ですからもとの2次関数とx軸との交点は2個です。

ですので、A<0またはA>4のとき交点は2個、A=0またはA=4のとき交点は1個、0<A<4のとき交点は0個という、場合分けを含んだ答えになります。【解答】

2次関数と放物線②
A<0またはA>0の時、最小値がマイナスの値になり、もとの2次関数は下に凸の形の放物線ですから必ずyの値が0になる点が2つ存在する、すなわちx軸と2点で交わるという事です。

この例での2次関数の場合、最小値がAに関する上に凸の2関数なので、「最小値が取り得る値の中にも最大値がある」という性質のものになります。具体的にはA=2の時に「最小値の」最大値が1になり、Aが全実数の中のどの値であってももとの2次関数の頂点に相当する最小値は1を超えない事を意味します。これは1次の項の係数が0の時です。

定義域が限定された場合の最大・最小

もう1つ重要な出題として、定義域(xの範囲)を限定した範囲での最大値や最小値を問うタイプのものがあります。

これはどういうものかというと、例えば下に凸である2次関数の最小値は通常は頂点のy座標ですが、そのx座標が定義域に含まれていない時には定義域の端点で最小値をとります。

■問い:0≦x≦2の範囲で、y=x-2px+4について
①:x=2で最小値をとるためのpの範囲はどのようになりますか。
②:x=2で最大値をとるためのpの範囲はどのようになりますか。

この手の問題における2次関数の性質自体は正直、大学以降の数学であまり重要とは言えないと思いますが、2次関数のグラフの性質の理解度を問う出題という事でしょう。

まず、1次の項に未知の係数pがありますから頂点のx座標もy座標も変化するパターンです。

y=x-2px+4=(x-p)+4-p

①:ここで、通常であればx=pで最小値をとるという事になりますが、「x=2で最小値をとる」という条件があり、さらに0≦x≦2というxの範囲の指定もあるのでp≧2であれば、常に対象の2次関数は定義域の端点であるx=2で最小値をとります。なのでp≧2です。【①の解答】

これは、式だけでは分かりにくいのでグラフを見ながら様子を把握したほうがよいでしょう。

②:次に所定の場所で最大値をとる場合です。通常であれば下に凸の2次関数は無限に大きくなるので最大値はそもそもありませんが、ここでは閉区間としてxの範囲が指定されているので最大値を持つという事です。

頂点の座標x=pが動き、定義域が閉区間[0,2]、x=2で最大値をとるという条件です。

この場合には、逆にp≦2であれば済む話かというとそうでない事が「ひっかけ」です。
頂点が閉区間[0,2]の中点よりも右半分側に来ると、今度は区間の反対側の端点であるx=0でyが最大値になってしまいます。頂点の座標がp=1の時にx=0,2の両方で最大値になります。つまり、x=2で最大値になるにはp≦1という事です。【②の解答】

このように、高校数学だと多少ひねりを入れた計算をさせる場合があります。やっている事自体は難しくないのですが、慣れていないと突然問われた時にとまどってしまうでしょう。

直線と放物線の交点問題

1次関数である直線と、2次関数である放物線の交点を計算させるような問題は、センター試験レベルだと問われる事があります。

考え方は難しくありません。

1次関数と2次関数を等号で結んで方程式を作り、2次方程式の解を出せばよいのです。

解が重解の場合には交点は1つだけで、直線は放物線の接線になります。また、解が複素数解になる場合には交点はないという事に対応します。

$$■問い:直線y=x+2と放物線y=x^2-x-3の交点はいくつありますか。$$

まず、等式で結びます。それから、解の様子が分かるように変形します。

$$x+2=x^2-x-3\Leftrightarrow x^2-2x-5=0$$

$$\Leftrightarrow (x-1)^2-1-5=0\Leftrightarrow (x-1)^2=6$$

のようになるので、これは異なる実数解を2つ持ちますね。したがって、交点は2つ存在します。【解答】

「2乗=正の数」となる事で異なる2つの実数解が存在する事が分かります。「2乗=0」であるなら重解を持ち、「2乗=負の数」であるなら2つの異なる複素数解です。

尚、本当に単に交点の数だけを問う問題であれば2つの図形のグラフを描いてみる事でも答えが分かる場合もあります。上記の例だと2点で交わるので、グラフを描く方法でも分かるでしょう。
ただし、その方法だと交点が1個だけで直線が放物線に「接する」時や、交点を持つのか持たないのか微妙な時の判定が難しい事に注意が必要です。

この手の問題も、式の中の係数に未知数を入れて、「2つの交点を持つ条件は何か」とか「直線が放物線に接するための条件を述べなさい」とか、そういった形でひねった出題がなされる事も多いと思います。やる事は基本的に同じです。

例えば、直線のy切片が変化し得る条件で、直線が放物線に接する条件を考えてみましょうか。

$$■問い:直線y=x+Cが放物線y=x^2-x-3に接するためのCの値は何ですか。$$

ここでもやる事は同じです。2式を等号で結びます。

$$x+C=x^2-x-3\Leftrightarrow x^2-2x-3-C=0$$

$$\Leftrightarrow (x-1)^2-4-C=0$$

ここで、4+C=0になれば重解を持ちますのでC=-4の時に直線は放物線に接します。【解答】

■参考:この問題に関しても、微分を使う事もできます。 $$(x^2-x-3)^{\prime}=2x-1$$ であり、この導関数の値が接線の傾きですから、
2x-1=1⇔x=1
これが、もとの2次関数に対して「傾きが1である接線」が接する点のx座標です。これを2次関数の式に代入するとy座標も得られます。
その点の座標は(1,-3)です。 y=x+Cがこの点を通るとすると、
-3=1+C⇔C=-4【解答】
さらに、x-2x-3-C=0が重解を持つための条件を出す場合にも微分を使えます。左辺を関数とした時にx軸に接する、つまり極小値をとるy座標の値が0であるので、導関数2x-2=0としてx=1、その値を方程式に代入して1-2-3-C=0 ⇔ C=4ともできます。
これらの方法はセンター試験等では不要ですが(出題範囲外なので)、知っていると計算のチェック用に使える事もあります。

2つの放物線同士の交点

出題頻度は低いですが、あり得るパターンとして放物線同士の交点を考える問題もあります。

$$■問い:y=2x^2+2x+1とy=x^2-2x+Cが1点だけで交わるためのCの値は何ですか。$$

等号で2式を結びましょう。

$$2x^2+2x+1=x^2-2x+C\Leftrightarrow x^2+4x+1-C=0$$

$$\Leftrightarrow -(x+2)^2-3-C=0$$

これが重解を持つためにはC=-3です。【解答】

この場合には、1点だけで交わるには接するしかない事が、式からも分かります。仮に、1点で「突き破るように」交点を持った時、別のもう1点で必ず交わってしまうためです。

しかし、放物線同士の場合には、1点だけで「突き破るように」交点を持つ場合もあり得ます。それは、2次の項が等しい場合です。

$$y=x^2+2x+1, y=x^2+x$$

を等号で結んでみましょう。

$$x^2+2x+1=x^2+x\Leftrightarrow x+1=0$$

この場合にx=-1という解が得られますが、2次方程式の重解ではなくて1次方程式の解になっています。これが「突き破って」1点だけで交わっている交点であり、xの値をどれだけ増やしても減らしても、その先の別の点で交わる事はないという事です。

2次関数と放物線③

参考:放物線と円の交点の問題は?

また参考までに、放物線と円の交点を問う問題も高校数学の範囲で、一応あり得るものではあります。

$$放物線y=Ax^2+Bx+Cと円(x-S)^2+(y-T)^2=R^2$$

を考えるわけですが、放物線のyを円のほうの式に代入すると、一般的には4次方程式になってしまいます。

実際、円と放物線を考えると、4点や3点で交わる可能性がある事に対応しています。そのため手計算だと非常に複雑な計算になりがちで、出題する側も調整が面倒と思われるのであまり出ないと思います。

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★尚、大学入試では3次関数については、基本的に微積分(特に微分)での出題になります。

直交座標上の直線

直線と1次関数の関係・用語・公式を説明します。

これは中学校でも扱われますが、ここでは高校数学の範囲の事も説明します。

直線は1次関数になり、放物線は2次関数になります。3次関数や4次関数は、微分を使って形を考察するのが普通です(従って微分を使わない範囲では原則として問われません)。

■高校数学としての難易度:この分野の理屈はそれほど難しくはないので、センター試験程度の問題であれば誰でも満点を狙える分野です。ただし、公式を暗記しようと思うと苦しくなるところでもあります。
式と図形がどのように対応するのか、意味を理解して素早く式を組み立てる事が得意になるためのポイントの1つかと思います。一度式を作れば、あとは式変形を繰り返して図形と対応させていくだけです。

直線を表す式

直線を表す式は1次関数 ■ 2点を通る直線の式 ■ 1点を通る直線の式 

直線を表す式は1次関数

直線は、1次関数で表されます。つまり、y = 2x や y=3x+1のような形の式です。

y =2xの「2」のように、xにくっついている比例定数の部分を「傾き」と呼びます。図形上で見た時、その部分が実際に傾いている度合いを表すためです。y=3x+1の「1」のように完全に定数になっている部分を「切片」または「y切片」などとも言います。これは、その値がy軸(x=0を表す直線)でのyの値を表すためです。

「傾き」は、プラスである場合も、マイナスである場合もあります。直交座標上のグラフだと「右上がり」の形の直線です。直交座標上のグラフで言うと「右下がり」の形の直線になります。

尚、傾きが0の直線はx軸に平行な直線で、y=3のような式です。y=0は、x軸に他なりません。
逆にx=3のような式はy軸に平行な直線になります。この場合には傾きが「無限大」という事でもありますが、傾きとしては「表せない」と考える事が普通です。x=0を表す直線はy軸そのものです。

また、高校数学の場合には図形上の角度を使って「傾き」をタンジェント(正接)で表す事もできます。図形と式の問題と見せかけてじつは三角比や三角関数の問題という事もあり得るので、一応知っておくべきでしょう。

一次関数
高校数学の場合、一次関数が図形上の直線の性質とどう対応するのかを数式で表現する事が重要です。座標、図形上の角度、他の図形との組み合わせ、三角関数やベクトルと組み合わせた色々な出題が考えられます。

2点を通る直線の式

高校数学の場合、座標上のてきとうな2点があって、それを通る直線の式はどのようになるかという事を計算させる問題があります。

その式の表し方は、一応「公式」があって教科書にも書いてあると思うのですが、
これは「意味は理解すべきであるが暗記はすべきでない」公式の1つです。

公式?(正しい式ではある)

$$2点(x_1,y_1)(x_2,y_2)を通る直線の式は次式で表せる:$$ $$y-y_1=\frac{y_2-y_1}{x_2-x_1}(x-x_1)$$ $$あるいはy-y_2=\frac{y_2-y_1}{x_2-x_1}(x-x_2)でも同じです。$$

☆POINT:まず最初にこの式を暗記しない
この式は結果としてはそうなるという式であって、最初から丸暗記する事で問題を解くものではないのです。逆に意味を理解しててきとうにいくらか練習をすれば、この式を自然に書く事もできるようになるのです。

2点を通る直線の式
図形的な意味を把握してから、覚えられるのであれば公式のような形で覚えるとよいと思います。上記の「公式」では、少なくとも傾きの部分は式を覚えるのではなく図形的に把握したほうが早いと思われます。それ以外の部分は、分かりやすいほうで理解したほうがよいと思います。

まず、てきとうな2点があったとして(1,3)と(2,5)だったとしましょう。図に書くと分かりやすいのですが、まず「傾き」を計算します。これは単純な話で、「xの増分で、yの増分で割ったもの」(それが図形上は正接であるわけですが)を計算すればよいのです。ここでの場合、2になります。

公式に当てはめているのではないのです。
yの増分:5-3=2 xの増分:2-1=1
という計算を(頭の中で)しているだけなのです。

$$この時点で、y=2x+C\hspace{5pt}の形の式になる事が分かります。$$

「では、y切片の情報はどうやって知るのですか。」

これも図に書くと分かりやすいのですが、y切片(0,C)から点(1,3)までのxの増分は、もちろん1です。点(1,3)から見ると、y切片(0,C)に至るまでにxは1減少します。

yの増分は、傾きが分かっているので、点(1,3)から見てxが1減少するのであれば、yは1×2=2減少します。・・という事は、点(1,3)のy座標から逆算すれば、y軸上の点は3-2=1ということになり、これがy切片であるCの値なのです。

上記の「公式」は、じつはこの操作をしているのと同等の式なのです。y軸から1つの点のx軸までの距離に傾きをかけ、その値を点のy座標から差し引く事でy切片を出すのと同等の式であるという事です。。

$$結果:y=2x+1$$

図形的に意味が把握できているのであれば、機械的に手早く計算するために上記の「公式」を1点(A,B)を使って「y-B=(傾き)・(x-A)」として覚えてしまってもよいでしょう。覚え方としては「x=A、y=B を代入すると確かに成立する」のような感じでもいいと思います。

ただし最初からそのように丸暗記するのではなく、まずは図形的な意味を理解する事がおすすめです。

正答率を上げるには、間違いがないかチェックする事も大事です。2点(1,3)と(2,5)を通るわけですから、値を代入してみて等式が成立するかを見ます。

$$2\cdot1 +1=3,\hspace{10pt}2\cdot 2+1=5$$

このようになるので、確かに合っている事が分かります。

全て頭の中で計算できるなら一番それが速いのですが、この手の問題は図形的な意味との関連が問われる事も多い都合上、ごく簡単なものでよいので図を描いて解いたほうが無難かもしれません。

1点を通る直線の式

直線がある1点だけを通る事が分かっている場合、もちろんそのような直線は無数にあり、それだけでは直線を表す式も決定しません。

この場合は、ある1点の座標を(A,B)傾きをT、y切片をCとすると式を次のように書けます。

$$y-B=T(x-A)\Leftrightarrow y=Tx+B-AT$$

$$C=B-AT$$

この式も、ある点から点(A,B)までのy座標の増分とx座標の増分の関係を表しているだけなのです。決して、暗記すべきような公式ではありません。

(x-A)がx座標の増分、それに傾きTを掛けるとy座標の増分(y-B)です。y切片については、(0,C)と(A,B)の間の増分の関係を見ればよいのです。yの増分:B-C xの増分:A-0=A ですから、AT=B-Cであり、変形すると上記のようにy切片であるCを表す事ができるのです。

図に描くと分かりやすいでしょう。

1点を通り傾きが分かっている直線の式
1点を通る事と傾きの値だけが情報として分かっている場合の計算です。

この場合もやはり式を暗記するのではなくて、図形と対応させて意味を理解したうえで、式自体もすぐに書けるように練習しておく事が得意になるポイントの1つです。

応用問題①:平面上での「平行」と「直角」の式での表し方

平行の表し方 ■ 直角の表し方

平行の表し方

2つの直線が平面上で平行になる場合、直角になる場合など、より図形的な直線の状況を表すために式を計算させる問題も存在します。

まず平行の場合ですが、これは簡単で、「傾きが等しい」直線同士は直交座標上で平行になります。もちろん、それでy切片も同じであれば全く等しい直線ですから、異なる平行2直線であれば「傾きは等しくy切片は異なる」という条件になります。

平行という事は、もちろんそれら2直線は交わらないという事です。式で見た時には、連立方程式にしてみるとy切片が異なる値の時は2式を同時に満たす(x,y)の組は存在しないという事でもあります。一応、その事も念頭に置いておくとよいかもしれません。

直線の平行条件と直交条件
平行・直角に交わるという平面上の2直線に関する様子を、傾きが満たす条件で表す事ができます。

直角の表し方

次に直角の場合です。2直線が交わり、なす角が直角であるという場合です。この場合は、「傾き同士の積が-1」になります。こういうものに関しては、1つの「公式」として結果を把握しておいたほうがよいと思います。

公式:直交する2直線の傾き

直交する2直線の「傾き」同士の積は、必ず-1になる。

この「直線同士が直交」する事に関して、高校数学での出題としては図形に対する接線と法線の関係は問われやすく、特に円に対する接線と法線の関係にも注意しましょう。図形問題としてだけでなく、それを式で表現させるという出題が高校数学ではなされる場合があります。

証明:直交する2直線の「傾き」同士の積は-1である

もちろん、傾きの積がー1になれば直角であるという事は、自明ではありませんね。そもそも、個々で言う「直交する」事が図形的な意味で使われているので、これを式ではどう考えるのかを解釈する必要があります。

証明の方法はいくつかありますが、ここでは三角関数を使う方法とベクトルを使う方法を紹介します。

三角関数を使う場合、傾きはタンジェントで表せる事を上記で軽くふれましたが、これを利用します。

【証明①:三角関数を使う方法】

$$\tan \alpha \tan \beta=\frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} \cdot\frac{\sin \beta}{\cos \beta}=\frac{\sin \alpha \sin \beta}{\cos \alpha \cos \beta}$$

$$\alpha -\beta=90° ならば\cos (\alpha -\beta)=0より、\cos \alpha \cos \beta+\sin \alpha \sin \beta=0\Leftrightarrow\cos \alpha \cos \beta=-\sin \alpha \sin \beta$$

$$したがって、\tan \alpha \tan \beta=\frac{\sin \alpha \sin \beta}{-\sin \alpha \sin \beta}=-1【証明終り】$$

べクトルを使う場合は、2直線の交点から直線上の(任意の)点までのベクトルを考えて、内積が0であるして計算します。

【証明②:ベクトルを使う方法】

2つの傾きをS,Tとします。(A,B)からのx座標の(任意の)増分Xを考えて(A+X,B+SX)と(A+X,B+ST)を考えます。これらは直線上の座標点でもありますが、ベクトルとしても考える事ができるのです。

ベクトルとして考えた時、直交するという条件は「内積が0」という条件になります。

この時、内積をとるベクトルは(A+X,B+SX)-(A,B)=(X,SX)と(A+X,B+TX)-(A,B)=(X,TX)です。(ベクトルの考え方で言うと、原点に平行移動させて考えてもよいという事です。)

内積を計算すると、直交する条件のもとでは

$$(X,SX)\cdot(X,TX)=0\Leftrightarrow X^2+STX^2=0\Leftrightarrow X^2(1+ST)=0$$

この式が任意のXについて成立するには1+ST=0⇔ST=-1
すなわち、直交する2直線の傾きの積はー1になるという事です。【証明終り】

参考までに、平行や直角ではなく、特定の30°とか45°で直線同士が交わるという条件が仮に問われた場合は、傾きをタンジェントで表して、三角関数の加法定理で対応するという手法を使えます。これについてもベクトルを使う方法、あるいは複素数を使う方法等、手法はいくつか考えられます。

応用問題②:他の図形と組み合わせる問題

高校数学の範囲ですと、放物線であるとか円であるとかいった他の図形と直線の関係を問う問題があります。これは、何点で交わるかとか、直線が他の図形の接線になる条件は何か等を問う類のものです。

放物線や円の場合、直線の式とそれらを連立させて、二次方程式を作らせる問題が典型的です。その二次方程式が重解を持つ場合は1点のみで交わる接線という事になり、異なる2つの実数解であれば2点で交わり、異なる2つの複素数解の場合には直交座標上で「交わらない」という事になるのです。

「ある1点を通って、かつ円に接する2直線の式は何か」といった類の問いの場合は、前述の1点を通る直線の式と円を表す式を連立させて条件を調べるといった具合の解法になります。

接線について問う問題の場合、微分が使える場合もあります。センター試験の場合は微分の知識がなくても解ける問題しか出題されませんが、問題によっては通常のやり方と微分によるやり方の2通りで解く事で、解答が正しいかのチェックなどに使える場合もあります。

サイト内関連記事【高校数学で扱う関数】