2次方程式の「解の公式」

中学でも高校でも2次方程式の「解の公式」は嫌われものだと思いますが、実際、決してきれいな形ではなく覚えやすい部類の公式でもないでしょう。

暗記できる人は暗記してもらって構わないと思いますが、ここでは「暗記しなくても解を出せる」方法を述べます。

数学的にも応用的にも、2次方程式の位置付けは「比較的簡単な操作で解を出せる」というものでしょう。

3次方程式の解の公式も存在しますが、これは2次方程式の場合よりもさらも面倒な形で、応用の場面で手計算で使う事は、基本的にほとんど無いのではないかと思います。

つまり、n次方程式の中で、「手計算で比較的簡単に解ける」ものの限界が2次方程式なのです。できる事なら1次方程式が最も簡単ですが、2次方程式までなら手計算でもじゅうぶん何とかなる、という事なのです。(もちろん。高次の方程式でも容易に因数分解できるようなものであれば手計算で解を出せます。)

2次方程式の解の公式
式変形で解けるようにすると公式を忘れても計算できるので便利です。

解の公式の導出

2次方程式の解を公式として表せる根拠は、一般の2次方程式を加減乗除と累乗の計算によって必ず次の形

$$X^2=C$$

に変形できる事にあります。(同様の操作は3次・4次方程式だと少し面倒で、5次以上になると一般の方程式に対して統一的にそのような操作を行う事はできません。)

$$ax^2+bx+c=0$$

において、本当に大事な事は x = ・・の公式を丸暗記する事ではなく、これを容易に式変形できる事です。

まず、次のように変形します。a はゼロではないとします。

$$a\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+c=0$$

次の変形は少しややこしいと思う人もいるかもしれませんが、これを容易に計算できる事が、中学・高校数学では非常に大事です。

$$a \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2-a \left ( \frac{b}{2a} \right )^2+c=0$$

$$\Leftrightarrow a \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2 =a \left ( \frac{b}{2a} \right )^2 -c$$

$$\Leftrightarrow \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2 = \left (\frac{b}{2a} \right )^2 – \frac{c}{a} =\frac{b^2}{4a^2} -\frac{c}{a} =\frac{b^2 – 4ac }{4a^2}$$

$$ \Leftrightarrow x+\frac{b}{2a} =\pm \frac{\sqrt{ b^2 – 4ac }}{2a} $$

$$ \Leftrightarrow x= \frac{-b\pm \sqrt{ b^2 – 4ac }}{2a} $$

これで、「解の公式」になっていますね。

この計算を、具体的な問題を試験で出されるたびに行うのはかえって大変ではないかと思う人もいると思います。しかし、上記は一般の係数 a, b, c でやっているから少し面倒であるわけで、具体的な数値が係数として与えられている場合にはもっと簡単になります。

具体的な計算問題を解いてみる

具体的な問題を見てみましょう。

$$x^2+7x+11=0$$

もしかすると手計算で因数分解できるかもしれませんが、変形で解いてみましょう。

$$ x^2+7x+11=0 $$

$$ \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right)^2-\frac{49}{4}+11=0$$

$$ \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right)^2=\frac{5}{4} \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right) =\pm \frac{\sqrt{5}}{2}\Leftrightarrow x= \frac{-7\pm \sqrt{5}}{2}$$

もちろん、結果は解の公式を使った場合と同じです。途中の分数計算を手早く済ませる必要は確かにありますが、それさえできれば公式そのものを覚えていなくてもかなり早く解答を出せるはずです。

試験で高得点を取る事が学校の勉強の目的ではありませんが、間違いを減らすポイントの1つとして、解答を出した後の「チェック」の方法を身に付けておくと便利です。正答率は上がるでしょう。

結果が同じなので、公式として覚えてしまったほうが早いという考え方も確かにあります。(覚えられるなら、ですが。)尚、試験での正答率を上げようとするのであれば、式変形で解けるようにして、公式も覚えておくと理想的です。それによって間違いがないか2重にチェックできるためです。
個人的には、まず式変形で解けるように練習してみて、どうしても正答率が上がらないようなら何とか一時的にでも公式も覚えるようにして両方のやり方で解いてみると良いと思います。2つのやり方で解いて答えが一致しなければ、もちろんどこかに計算間違いか何かがあります。

まとめと学ぶ意味

大学数学や物理でも2次方程式を解く場合があります。しかし、そんなにやたらと多く出てくるものではなく、時々、ポッと出てくるようなものです。

そういう時には、中学や高校で教わった公式を明確に覚えている人もいるかもしれませんが、忘れているか曖昧になる人も多いのではないかと思います。そうした場合には、公式を探し出して係数を当てはめるよりは、上記の式変形の方法で自分で解いてしまったほうが多分早いでしょう。

前述の通り、「手計算で簡単に解ける多項方程式は基本的にn=2の時まで」という事が重要です。(3次・4次の方程式の解の公式は、あまり使わないです。)大学数学の代数学では、より抽象的・一般的な視点から多項方程式の解について考察したりします。また、どうしても高次の多項方程式を解く必要になる場合には手計算で解く事は放棄して、コンピュータによる数値計算を行います。