ガウスの法則【電場と磁場の数学】

ガウスの発散定理およびガウスの積分と直接的な関わりを持つ物理学での応用例としては、
電磁気学における「ガウスの法則」が存在します。
ここでは特に、
数学と電磁気学との、ベクトル解析・微積分的な関わりの観点からの法則の説明をします。

◆関連:法線面積分の定義

音声担当:CeVIOさとうささら 素材一部:pixabay.com

◆下記で詳しく説明いたしますが、「ガウスの法則」には、積分の形で書いたもの(積分形)と、微分の形で書いたもの(微分形)の2つの形があります。数学的に両者は同等の式です。

ベクトルの基本的な考え方も使用します。

ガウスの法則とは?電場と磁場に関する法則

4つの「マクスウェル方程式」のうちの2つを指す
電場に関するガウスの法則 ◆磁場に関するガウスの法則
クーロンの法則の一般形という解釈

マクスウェル方程式
(電場と磁場に関するのガウスの法則・電磁誘導・アンペールの法則)
Eは電場、Bは磁場(「磁束密度」とする考え方も)です。
ρ:電荷密度 j:電流密度 t:時間 
ε:誘電率 μ:透磁率 添え字の0は「真空の」の意味でここでは使っています。
div:ベクトル場の「発散」 rot(curl):ベクトル場の「回転」  ∂:偏微分の記号
∇(ナブラ)記号と内積・外積の記号を組み合わせて div は「∇・」 rot は「∇×」のように書く事もあります。

4つの「マクスウェル方程式」のうちの2つを指す

電磁気学における「ガウスの法則」とは、
電磁気学の基本式である4つの「マクスウェル(Maxwell)方程式」のうち2つを指しており、
静電場(時間変動しない電場)と静磁場(時間変動しない磁場)に関する記述を行う式です。

★ただし時間変動がある場合にも、「ある瞬間について電場や磁場を考察した場合」には、任意の時刻についてガウスの法則が電場と磁場の両方に対して成立します。
他方で、電場や磁場の時間変動そのもの、つまり数式的に言えば電場や磁場の「時間微分」に関しては、マクスウェル方程式の残り2つの式によって考察を行う事になるのです。

ガウスの法則は、微分方程式でも積分方程式でも、どちらの形でも書かれます。(積分方程式とは、積分を含んだ形で書かれる方程式。)
どちらの形でも互いに変形が可能な、数学的に同等な式になります。

微分方程式で書かれた場合を微分形、積分方程式で書かれた場合を積分形とも言います。
数学の「ガウスの積分」との直接的な関わりがすぐに分かるのは積分形です。

電場に関するガウスの法則

電場に関するガウスの法則を式で書くと次のようになります。数学の定理と区別される「法則」なので、変数や定数は何でもよいわけではなく、電気と磁気に関連する量になります。

\(\overrightarrow{E}\) は電場(+1[C]の電荷が他の電荷から受ける電気力。ベクトルです)、
Qは点電荷の電気量、ρは電荷が連続的に分布している場合の電荷密度です。

ガウスの法則(静電場、積分形)

$$点電荷に対して:\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\large{\frac{Q}{\epsilon_0}}$$ $$電荷密度に対して:\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\large{\frac{1}{\epsilon_0}}\int_V\rho dv$$ ※左辺は、法線面積分です。Sは閉曲面、Vは閉曲面内の空間領域です。
閉曲面Sは、電荷あるいは電荷分布を囲む領域とします。
電荷密度は、空間の各位置によって大きさが定まるスカラー関数として考えています。
電磁気学では \(\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}\) を「電気力束」と呼ぶ事があります。

ガウスの法則(静電場、微分形)

$$\mathrm{div}\overrightarrow{E}=\large{\frac{\rho}{\epsilon_0}}$$ ※div はベクトル解析における「発散」です。
ガウスの法則の微分形は、基本的に電荷密度に対する式になります。

◆これらの積分方程式あるいは微分方程式の「解き方」については、
「具体的な電荷の分布の状況や閉曲面」を設定して、電場ベクトルの向きも最初から決定できるような状況のもとで解くというのが1つの例です。
閉曲面は、球、円柱、立方体など、対称性のある図形や分かりやすい図形で考察する事が多いと言えます。(※球面のような任意の点で滑らかな閉曲面だけでなく、円柱などへの適用も可能です。)

電場に関するガウスの法則(積分形)
電磁気学・静電場に関するガウスの法則(積分形):点電荷あるいは電荷が分布する領域を閉曲面で囲った時、その閉曲面の形状に関わらず法線面積分の値は、じつは閉曲面内部の電気量(の総和)に必ず比例するというものです。
静磁場に関しても似た形のガウスの法則が存在します。

微分形で書いた場合には、マクスウェル方程式全体に言える事ですが、電場の2式と磁場の2式のそれぞれについて、「発散(div)」の式と「回転(rot)」の式に分類する事もできます。【回転は curl とも書きます。】

磁場に関するガウスの法則

静磁場の場合にも、電場の場合と似た形の式が成立し、
それも同じくガウスの法則と呼ばれる事が多いです。

ただし、磁場に場合には電場の場合と異なって、「単独の『磁荷』」(「磁気単極子」)が存在しない(磁石で言うと、N極やS極が必ずセットになっていて単独で取り出せない)という事自体が1つの基本法則であると考えられています。

その事に由来して、
「電場の場合の式の右辺に相当する部分がゼロになっている形」が、磁場の場合のガウスの法則になります。

ガウスの法則(静磁場、積分形)

$$\int_S\overrightarrow{B}\cdot d\overrightarrow{s}=0$$ \(\overrightarrow{B}\cdot d\overrightarrow{s}\) は「磁束」と呼ばれる事があります。
\(\overrightarrow{B}\) は「磁束密度」と呼ばれる事があり、そこから別途に「磁場」\(\overrightarrow{H}\) を定義する事もありますが、\(\overrightarrow{B}\) を「磁場」と呼んでしまう事もあります。細かく言うと、それらの違いは「場」を力によって定義するかどうかという事によって生じます。

ガウスの法則(静磁場、微分形)

$$\mathrm{div}\overrightarrow{B}=0$$

静磁場は一定の量の電流の周りに対し、同心円(一定の半径の円)の周上に一定の大きさで発生します(向きは各場所で異なりますが)。
静磁場が同じ大きさで、磁力線がループを作る形で必ず閉じているわけで、この事から「磁場の発散 div\(B\) は必ずゼロになる」つまりガウスの法則の微分形が成立する」という事が実は言えます。
(ベクトル場の「発散」は、ベクトル場の各成分の成分座標による偏微分の合計で、図形的にはある点に流入・流出する何かの量を表します。そのため電磁気学だけではなく流体力学の理論などでも使われるものです。)

具体的な数式変形は後述しますが、数学的には、ガウスの法則の積分形の式を数学上の「ガウスの発散定理」を使って変形する事でガウスの法則の微分形が得られるという関係があります。

クーロンの法則の一般形という解釈

静電場を表す式としてはいわゆるクーロンの法則というものもあり、それは静電気による力と電気量との定量的な関係を表す式です。
ここで「静電気」とは、冬場などでパチパチとしたり、紙片やビニールがくっついたりしてしまう、あの静電気の事です。

ガウスの法則は、クーロンの法則を一般化した形であるという解釈も成立します。
その事を数式的に説明するには数学公式である「ガウスの積分」を使います。

ガウスの法則の1段階前の式とも言えるクーロンの法則の比例定数kは、
一見すると奇怪な形で書かれる事があります。
それは、比例定数が分母に円周率を伴った形で書かれるというものです。

$$k=\large{\frac{1}{4\pi\epsilon_0}}\hspace{10pt}\left(≒8.988×10^9\right)$$

ここでさらに\(\epsilon\)0 という比例定数が登場していますが、
これは電磁気に関する別の現象を表す時にも使う「真空の誘電率」です。

$$\large{\epsilon_0=8.8543×10^{-12}≒ \frac{1}{36\pi}×10^{-9}}$$

さてここで、なぜ円周率が出てくるのか?という話ですが、
これは数学公式のガウスの積分との直接的な関係があるのです。
数式によって後述しますが、実はガウスの法則をクーロンの法則から導出する方法を見る事で理由が分かるのです。

また、ガウスの積分は図形の「球」との直接的な関係がありますから、
上記の「円周率」は、最終的には図形の球に由来するものであるとも言えます。

クーロンの法則

r[m]離れた2つの物体があり、q[C]、q[C]の電気量を持っているという。この時に2つの物体間に働く力の大きさは、実験によれば次のようになります。 $$力の大きさ:F=\large{\frac{kq_1q_2}{r^2}}=\large{\frac{q_1q_2}{4\pi\epsilon_0r^2}}$$ $$ベクトルの場合:\overrightarrow{F}=\large{\frac{q_1q_2}{4\pi\epsilon_0r^2}}\cdot\frac{\overrightarrow{r}}{r}=\large{\frac{q_1q_2}{4\pi\epsilon_0r^3}}\overrightarrow{r}$$

クーロンの法則の比例定数をなぜか「円周率」を使って表す事があります。
その意味は、ガウスの積分を使ってクーロンの法則からガウスの法則を数学的に導出して考察してみると分かりやすいものになります。4という数字に関しては球の表面積の公式が間接的に関わっています。

導出:微分形と積分形の数式変換

電場の場合 ■ 磁場の場合

ガウスの法則の積分形と微分形の式は、数学的にはガウスの発散定理によって変換できます。

ガウスの発散定理

任意のベクトル場\(F\)について【※これは電場でなくともよく、数学的な任意の連続的なベクトル場に関して成立します。】 $$\int_S\overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F}dv$$

これを使用して、積分形から微分形、および微分形から積分形への変換を数式で行う事ができます。

ガウスの法則の積分形と微分形
数学的には、ガウスの発散定理によってガウスの法則の積分形と微分形の変形を行う事ができます。
法則として、より物理的な解釈も可網です。

電場の場合

ガウスの法則の積分形の左辺は、発散定理の左辺の形をしています。ここで、電荷密度を考えた場合の式を見ると、領域内を体積分した形が右辺にあります。

$$電荷密度に対するガウスの法則:\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\large{\frac{1}{\epsilon_0}}\int_V\rho dv$$

$$ガウスの発散定理により\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{E}dv$$

左辺が同一ですから、右辺同士を等号で結びます。

$$\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{E}dv=\large{\frac{1}{\epsilon_0}}\int_V\rho dv=\int_V \large{\frac{\rho}{\epsilon_0}}dv$$

$$\Leftrightarrow \int_V \mathrm{div}\overrightarrow{E}dv=\int_V \large{\frac{\rho}{\epsilon_0}}dv$$

「2つの関数について、領域Vで体積分すると同じ値」という結果になっています。

ここで、「定積分した値が同じ」であるからといって、積分対象になっている関数が同一のものとは限らない事に注意は必要です。簡単な例を挙げると、y=xと、y=-x+1は、xについて0から1まで積分すれば同じ1/2という値ですが、当然積分の中身の関数は別物ですね。

しかしここでの場合は、積分する領域Vが、特定のVではなくて空間上の「任意の領域」です。
1変数関数の積分で言うと「任意の積分区間で」という事になります。
グラフを考えてみると分かりやすいかと思いますが、2つの異なる関数についてある積分区間で偶然定積分の値が等しくなったとしても、区間を変えればすぐに値は変わってしまいます。あらゆる区間で例外なく積分値が同じになるには、そもそも同一の関数でなければならないのです。
その理由により、上記の体積分の関係式についても積分する対象が等しくなければならないのです。

整理しますと次のようになります。

$$\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{E}=\int_V \large{\frac{\rho}{\epsilon_0}}dvであり、「積分領域Vは任意であるから」\mathrm{div}\overrightarrow{E}=\large{\frac{\rho}{\epsilon_0}}$$

と言える事になります。
これは電場に関するガウスの法則の微分形に他なりません。【導出終わり】

逆に微分形から積分形を導出するには、微分形の両辺を領域Vで体積分し、
ガウスの発散定理によって法線面積分と結びつければよい事になります。

ガウスの法則の積分形から微分形を数式的に導出する時の、最後の段階の箇所。
任意の領域Vで成立している事が結論を数学的に導出できる根拠になります。

微分形と積分形の変換の方法は他にも幾つかあります。例えば、より物理学的な手法の1つとして、辺の長さが dx, dy, dz の微小な直方体を考えてガウスの法則の積分形を適用する方法があります。
この方法では dv=dxdydz として、その直方体内では電荷密度ρは「ほぼ一定」と考えます。
直方体の面は座標軸に平行であるとし、原点に一番近い頂点を基準として、面における電場ベクトルと法線ベクトル(大きさは微小面積)との内積を成分で考えます。
直方体の向き合う2つの面について、
法線ベクトルの向きは互いに逆向き(領域の外側を向く)事にも注意すると
例えばx軸に垂直な面の面積としてds=dydzを考えると、次のようになります。$$\large{\left(E_x+\frac{\partial E_x}{\partial x}dx\right)dydz-E_xdydz=E_xdxdydz=E_xdv}$$【Exは原点に最も近い頂点での電場ベクトルのx成分。この考え方では、微分および偏微分は「関数の近似一次式の傾き」という解釈を使っています。】
電場ベクトルと面の法線ベクトルとの内積計算を成分で具体的にすると、
例えば $$\large{(E_x, E_y, E_z)\cdot (-dydz, 0, 0 )=-E_x dydz}$$
残り4面(2組)についても同様の式を立て、合計します。
そして「ほぼ一定」とみなしたρを使って体積分の値は ρdvであると考えて、電場に関するガウスの法則の積分形に適用すると微分形が得られる――という考え方もあったりします。

ガウスの法則の微分形を、より物理学的な考察で導出する方法の1つ。微分係数および偏微分係数は関数の近似一次式の比例定数とみなせるとの解釈を使用します。
直方体の互いに向き合う面において法線面積分で使用する法線ベクトル(外側を向く)を内積の具体的な成分計算で使う時には符号がプラスマイナスで互いに逆になります。【例えば単位法線ベクトルなら(1,0,0)と(-1, 0, 0)、法線ベクトルの大きさを面積元素とすれば(dydz, 0, 0)と(-dydz, 0 ,0)】
直方体は微小であり、1つの面での電場ベクトルは1つに代表させています。

磁場の場合

磁場の場合もやり方は同じです。

$$ガウスの発散定理により\int_S\overrightarrow{B}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{B}$$

$$\int_S\overrightarrow{B}\cdot d\overrightarrow{s}=0 より、\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{B}=0$$

この場合も、「任意の積分領域Vに対して」積分するとゼロという式なので、
積分する前からの話として div\(\overrightarrow{B}\)=0 でなければそれは起こり得ない事になります。
(※磁場が恒等的にゼロなのではなくて、「静磁場としてあり得る任意の形に対して、ベクトル場の発散を考えると必ずゼロになる」という意味です。)

ガウスの法則をクーロンの法則から導出する(電場の場合)

ガウスの積分と発散定理からの導出 
逆にガウスの法則からクーロンの法則は導出可能?の問題 
磁場の場合にもガウスの法則を導出可能?の問題

ガウスの積分と発散定理からの導出

電場とは「+1[C]の電荷が他の電荷から受ける力」と定義して定めた量ですので、クーロンの法則で片方の電荷の電気量を1としたものとして式で表せます。

$$電場の大きさ:E=\large{\frac{kQ}{r^2}}=\large{\frac{Q}{4\pi\epsilon_0r^2}}$$

$$ベクトルの場合:\overrightarrow{E}=\large{\frac{Q}{4\pi\epsilon_0r^2}}\cdot\frac{\overrightarrow{r}}{r}=\large{\frac{Q}{4\pi\epsilon_0r^3}}\overrightarrow{r}$$

さてこれを見ると、「距離の逆2乗に比例するベクトル場」ですから、
法線面積分を考えれば「ガウスの積分」の公式を使用できます。

ここでの場合、電荷を囲む閉曲面を考えますから、公式で言うと「原点が閉曲面の内側にある場合」です。この時にガウスの積分の値は、極限値として\(4\pi\) になります。

ところで、上記の電場ベクトルでは、Q/(\(4\pi \epsilon\)0) という部分は比例定数です。そこで、残りの部分がガウスの積分におけるベクトル場と同じ形という事になります。

という事は、上記の電場ベクトルを電荷を囲む閉曲面で法線面積分すると、次の計算結果になります。

$$\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\large{\frac{Q}{4\pi\epsilon_0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}}\cdot d\overrightarrow{s}=\large{\frac{Q}{4\pi\epsilon_0}}\cdot 4\pi=\large{\frac{Q}{\epsilon_0}}$$

つまり、電場に関するガウスの法則の積分形になります。【導出終わり】

尚、閉曲面の外に電荷があるような場合を考えたとして、同じように法線面積分を考えたとすると、ガウスの積分の公式により、法線面積分の値は0になります。
ただしその場合にはむしろ、物理的には「閉曲面内に電荷は存在しない」という解釈になるでしょう。

★ガウスの積分の公式においては「基準とする原点で関数を定義できない」という事で極限値を考えるわけですが、これはどちらかというと数学的な捉え方であり、
物理学では敢えてそのようには考えずに「デルタ関数」という特殊な関数を使う事で、
原点における電場の扱いの理論的整合性をとるという考え方をする場合もあります。

★「立体角」を使って電場に関するガウスの法則を説明・導出する方法もあります。ただし立体角の数学的な定義は、ガウスの発散定理の成立を前提にしています。その点には注意が必要です。

ガウスの積分の値を計算する公式の証明では、ベクトル場の発散の具体的な計算と、球の表面積の公式を使用します。

逆にガウスの法則からクーロンの法則は理論的に導出可能?の問題

上記の説明は電場に関して「クーロンの法則が成立→ガウスの法則が成立」という事が数学的には導出可能である事を述べたものですが、
物理学的にも数学的にも、もう少しだけ詳しく言うとクーロンの法則は理論的には、
①電場に関するガウスの法則
②静電場の渦無しの法則(電場の「回転」が0、数式だと rot\(\overrightarrow{E}\)=0)
③無限遠でベクトル場の大きさが距離の逆2乗の程度の収束の速さで0に近づく
という3条件が全て成立している事と等価である式になります。

つまり、逆に「ガウスの法則が成立するならクーロンの法則も直ちに成立すると理論的に言えるか?」という問題に関しては、「渦無しの法則と、無限遠での条件を課せばそうである」という事になります。

※静電場に関する渦無しの法則の形は、磁場の時間変動がある場合には電場の回転はゼロ以外の値になるという式に変わります。それは発電機で電気を発生させる原理である電磁誘導の法則であり、マクスウェル方程式の1つになります。$$磁場の時間変動がある場合(電磁誘導):\mathrm{rot}\overrightarrow{E}=-\frac{\partial \overrightarrow{B}}{\partial t}$$この式で静磁場の場合(時間による偏微分がゼロ)であれば、静電場の渦無しの法則と同じ式です。

磁場の場合にもガウスの法則を導出可能?の問題

では磁場の場合はどうでしょうか。
実は磁場に関しても、その大きさが距離の逆2乗に比例するという実験結果があります(それもクーロンの法則とも呼ばれます)。

しかし磁場の場合には実は話が少し変わってきて、
静電場におけるクーロンの法則に対応するものは、ビオ・サバールの法則と言って外積(クロス積)を使って表された形をしており、接線線積分で書かれます(あるいは微小部分に対する形式でも書かれます)。
これは磁石ではなく電流により発生する磁場を記述したものです。(別途にアンペールの法則というものもあります。)
磁場に関するガウスの法則の積分形は、「ビオ・サバールの法則から導出できる」というのが磁場の場合の一般的な理論になっています。

上記でも少し触れましたが、電流により発生する磁場は軸対称(ここで言う軸とは電流の向きを表す直線)で同心円上にて等しい値になる事から、磁場の発散 div\(\overrightarrow{B}\) がゼロになる事、つまり磁場に関するガウスの法則の微分形のほうを先に述べるという事もあります。
磁場の大きさが電流の向きに対して軸対称になる事を使うのは、ビオ・サバールの法則を基本に考える場合も実は同じです。

磁石による磁場を考える場合には、単独の電荷に相当する「磁荷」を実験的に見出せず、
N極とS極の対(「磁気双極子」)が必ず現れるというのが基本認識になっています。
ところで、その磁気双極子が板状の磁石に一様に分布していると仮定すると、
実は「磁石が作る磁場も(微小な)環状電流が作る磁場と同じ形になる」という事を理論的に示せるのです。そこで、磁石が作る磁場に関しても同様に、
磁場に関するガウスの法則が成立する、という理論的な流れがあります。

磁石に関しては、物質の磁性の観点から理論的に話を突き詰めようとすると実は話が結構面倒で、電磁気学だけでなく量子力学の理論もどうしても必要になるというのが物理学の理論の現在の見解になっています。

ガウスの法則が成立する由来に関する、数式的な考察。
理論的には、電場の場合と磁場の場合とでは少しだけ話が違ってくると考えられています。
磁場のほうに関して、この図で、i:電流 l(エル):電線の長さ ×:外積(ベクトル積)の記号
静磁場を囲む閉曲面での法線面積分がゼロになるのは「磁気単極子は単独で存在せず、必ず磁気双極子の形で現れる」という事を表すとも解釈できます。

真空の誘電率に関わる円周率とガウスの法則との関係

さて、最後にクーロンの法則の比例定数を円周率を含んだ形で表す事がある事について、ガウスの法則との関連からの理由を考察してみましょう。

前述の「クーロンの法則からガウスの法則を導出する方法」を見ると、
途中で使っている「ガウスの積分」の公式には球の表面積由来の円周率が含まれていますが、
結果のガウスの法則の式には円周率は含まれていません。

これはもちろん、クーロンの法則のほうの比例定数を「円周率の逆数と別の比例定数の積」の形で表していたので、式の中で円周率が分子と分母で約分されて「1になって消えた」ためです。

逆に、もしクーロンの法則の比例定数を一括でkで表した場合には、ガウスの法則には見かけ上、円周率がくっついて来るわけです。(もちろん、定数の数値的な値自体はどちらの場合でも同じです。)

◆比例定数に円周率を含まなかった場合のガウスの法則の形

$$\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_S\large{\frac{kQ\overrightarrow{r}}{r^3}}\cdot d\overrightarrow{s}=kQ\cdot 4\pi=4\pi kQ$$ 尚、この結果の状態でk=1/(4\(\pi\epsilon_0\)) を代入しても、もちろん一般的なガウスの法則の形になります。

つまり、敢えて「円周率を含んだ比例定数」を考える事により、クーロンの法則からガウスの法則を導出した時に、逆に「円周率を定数として含まない形で記述できる」という、ちょっとした数式上のカラクリがあるわけです。
図形的な球や球面に由来して、円周率が隠れた形で物理学の理論に関わってくる例の1つになります。

ガウスの積分【距離の逆2乗に大きさが反比例するベクトル場】

ガウスの発散定理の応用として、「ガウスの積分」と呼ばれる定積分があります。
また、そのガウス積分の応用例として、電磁気学における「ガウスの法則」をクーロンの法則から数式的に導出する理解の仕方があります。

関連(基本知識):■ベクトルと内積 ■微分の公式集 ■積分の基本計算

関連(応用):■ベクトル解析 ■法線面積分 ■ガウスの発散定理

◆非常に名称が紛らわしいのですが、用語の使い分けは次のようになります。

  • ガウスの発散定理」(ガウスの定理)
    数学の定理で、法線面積分と体積分について成立する一般的な関係
  • ガウスの積分」【このページで説明している公式】
    数学で公式が存在する法線面積分(の定積分)で、対象の関数は
    「大きさが距離の2乗に反比例する3次元のベクトル場」
    (ベクトル場とは成分が座標 x, y, z を変数とする多変数関数であるベクトル関数)」
  • 「ガウスの法則」
    物理上の電荷に対する定量的な法則で、クーロンの法則のより一般的な表現。
    数式的に、上記2つの事項と直接的に関わる。

ガウスの積分(公式)

ガウス積分とは、ベクトル場の大きさが「原点からの距離の逆2乗に比例する」(※)形である場合の、閉曲面全体に対する法線面積分の事を指します。
すなわち、式で書くと次のベクトル場に対する閉曲面全体に対する法線面積分です。(簡単のため、比例定数は1とします。)

※「距離の逆2乗に比例する」=「距離の2乗に反比例する」
いずれも1/(r) が掛け算されている事を意味します。

$$r=\sqrt{x^2+y^2+z^2}\hspace{3pt}のもとで、\overrightarrow{r}=\left(\frac{x}{r^2}\hspace{2pt},\hspace{2pt}\frac{y}{r^2}\hspace{2pt},\hspace{2pt}\frac{z}{r^2}\right)\hspace{2pt}に対して、$$

ガウスの積分

$$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}\hspace{5pt}をガウスの積分と言います。$$

☆ここでの「距離の『3乗』」は、全体のベクトルの向きを単位ベクトルで表す都合上出てくる、見かけ上のものです。中身としては、大きさが1の単位ベクトルを作るための1/rと、考えている対象の関数の1/(r)の積という事になります。

この時に閉曲面Sはどんな形でも、どんな場所にあってもよいのですが、
どのような閉曲面に対してであろうと、ガウス積分が取り得る値は3つしかないという公式があります。

公式:ガウスの積分の計算結果

原点と閉曲面の位置関係によって結果が分かれます。

  1. 原点が閉曲面Sの「外側」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0$$
  2. 原点が閉曲面Sの「曲面上」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$
  3. 原点が閉曲面Sの「内側」にある場合: $$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=4\pi$$

2番目(曲面上)と3番目(曲面の内部)の結果は、より詳しくは、ある極限値としてこの結果が成立します。また、物理学ではこのようには説明せず、値が無限大になってしまう点を「特別扱い」できるデルタ関数という特殊な関数を使ってここで説明する内容を表現する事も多いです。

物理学への応用:電磁気学における「ガウスの法則」

ガウスの積分の応用として代表的なものが、電磁気学における「ガウスの法則」です。クーロンの法則を一般化した法則で、4つのマックスウェル方程式のうちの1つで静電場についての式です。

電磁気学におけるガウスの法則

電荷(※)を囲む閉曲面をSとする時、
法線面積分を計算すると必ず次のようになっているという関係がガウスの法則と呼ばれています。 $$\large{\int_S\overrightarrow{E}\cdot d\overrightarrow{s}=\frac{Q}{\epsilon_0}}$$ $$\epsilon_0 はクーロン力を表す時に使う比例定数で、\epsilon_0=8.8543×10^{-12}$$ ※ここで言う「電荷」は、点電荷でも、分布した電荷でも同じ結果になります。

この法則の内容を言葉で簡単に言うと、静電荷を囲む閉曲面を領域を考えるとき、その閉曲面がどんな形状であろうとも法線面積分の値は「内部の電荷の電気量のみに依存する」という事です。

「ガウスの法則」は物理学上の法則なので「とにかく成立する」で終わり、でもよいのですが、クーロンの法則が電荷同士の距離の逆2乗に比例する形である事から、法線面積分を計算するとガウスの積分の形になっています。

そのため、クーロンの法則から出発して電場(+1[C]の電荷が受ける電気力)の法線面積分を計算するとガウスの法則の形が得られるという論理も成り立つのです。

公式の証明

では、ガウスの積分に関して成立する公式の証明をしてみましょう。

次の3つの場合分けがあります。

原点が閉曲面の「外側」にある場合
原点が閉曲面の「曲面上」にある場合
原点が閉曲面の「内側」にある場合 

この証明にはガウスの発散定理の結果と、ベクトル場に関する発散(div)の計算を使います。

$$以下、対象とするベクトル場を F=\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}とおきます。$$

①原点が閉曲面の「外側」にある場合

この場合、ここで対象のベクトル場の発散 \(\mathrm{div}\overrightarrow{F}\)を強引に計算すると、実は必ず0になるという結果が得られます。

計算は少し込み入って面倒ですが、高校の微積分の知識と、偏微分の定義(1つの変数だけに着目し、他の変数は定数扱いする)だけ知っていれば計算する事ができます。

まず、面倒なのを承知でrをx、y、zでの表現に戻します。

$$r=\sqrt{x^2+y^2+z^2}=\large{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{1}{2}}}ですから、$$

$$\overrightarrow{F}=\large{\frac{\overrightarrow{r}}{ r^3}}=\Large{\frac{1}{ (x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}\overrightarrow{r}}$$

次に、ベクトル場の発散 \(\mathrm{div}\overrightarrow{F}\)を計算します。
この時に、座標成分が具体的にx、y、zで表される必要がさらにありますから、
\(\overrightarrow{r}\)を成分で表します。
しかし、そもそもこのベクトルの座標成分をx、y、zとおいていたのですから、
そのまんま\(\overrightarrow{r}=(x,y,z)\)という形になります。

ですから、考察対象のベクトル場\(\overrightarrow{F}\)を成分で表すと次のようになります。

$$\overrightarrow{F}= \large{ \frac{\overrightarrow{r}} { (x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}} } }\large{ = \left( \frac{x}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}, \frac{y}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}, \frac{z}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}} \right)} $$

これで、ベクトル場の発散 \(\mathrm{div}\overrightarrow{F}\)を計算できる「はず」ですね。
面倒ですが丁寧に計算すると前述の結果を得るのです。

1つずつ、成分を偏微分してみると次のようになります。
商の微分公式と、合成関数の微分公式(※)とを使って丁寧に微分します。

(※この場合は、x、y、zは互いに独立変数ですから、合成関数の公式は偏微分に関する合成関数の公式ではなく、通常の1変数関数の合成関数の微分公式を使います。仮に、x=g(y,z) のように表せるのであれば偏微分の合成関数の公式を使う必要があります。ここでの場合は、そうではなくて3変数が互いに独立であるという事です。)

では計算です。
商の微分公式そのままであり、分母は2乗されて、分子は引き算の形で2つ項ができます。その際の微分する時に(通常の)合成関数の微分公式を使っています。

$$\large{ \frac{\partial}{\partial x} \frac{x}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}= \frac{ (x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}- x\cdot \frac{3}{2}(x^2+y^2+z^2)^{\frac{1}{2}}\cdot 2x } {(x^2+y^2+z^2)^3} }$$

yとzについても同様です。

$$\large{ \frac{\partial}{\partial y} \frac{y}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}= \frac{ (x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}- y\cdot \frac{3}{2}(x^2+y^2+z^2)^{\frac{1}{2}}\cdot 2y } {(x^2+y^2+z^2)^3} }$$

$$\large{ \frac{\partial}{\partial z} \frac{z}{(x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}}= \frac{ (x^2+y^2+z^2)^{\frac{3}{2}}- z\cdot \frac{3}{2}(x^2+y^2+z^2)^{\frac{1}{2}}\cdot 2z } {(x^2+y^2+z^2)^3} }$$

これらを加え合わせたものが div \(\overrightarrow{F}\)であり、
(x+y+z1/2で因数分解できる事に注意すると次のようになります。

$$\mathrm{div}\overrightarrow{F}=\frac{ 3(x^2+y^2+z^2)^ {\large{\frac{3}{2}}} -3x^2(x^2+y^2+z^2)^ {\large{\frac{1}{2}}} -3y^2(x^2+y^2+z^2)^ {\large{\frac{1}{2}}} -3z^2(x^2+y^2+z^2)^ {\large{\frac{1}{2}}} } {(x^2+y^2+z^2)^3}$$

$$=\frac{(x^2+y^2+z^2)^{\large{\frac{1}{2}}}(3x^2+3y^2+3z^2-3x^2-3y^2-3z^2)}{(x^2+y^2+z^2)^3}=0【計算おわり】$$

このように、計算は結構面倒ですが「結果は0」という事になります

さてここで、ガウスの発散定理によればベクトル場の法線面積分は「ベクトル場の『発散』の体積分に等しい」という事でした。
--しかし、となると「計算結果が0になる関数」の積分ですから、これは必ず0になると言えます。(通常の積分でも体積分でもこの点については同じ事が言えます。)
それで証明が完了するのです。

$$\int_S\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_V\mathrm{div}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}dv【∵ガウスの発散定理】$$

$$=\int_V\hspace{3pt}0\hspace{3pt}dv=0【証明おわり】$$

ただしこの結果は、「原点が閉曲面の外側にある」場合の話である事には注意が必要です。
閉曲面上にある場合や、閉曲面の内側にある場合には別の結果になるのです。

②原点が閉曲面の「曲面上」にある場合

原点が閉曲面上にある場合でも、ベクトル場の発散 div \(\overrightarrow{F}\) を計算すると「0」になるという事は同じです。

しかし、1つ問題があって、このベクトル場\(\overrightarrow{F}\)は、「原点 (0,0,0)【つまりx=y=z=0の時】で定義できない」という事があります。

従って、関数を定義できないその点が閉曲面上にあるという事は、そもそも法線面積分を考える閉曲面Sについて、通常の閉曲面とは違うものを考える必要があります。

具体的には、原点が乗っている点を除いたものをそもそも考えなければならず、もとの閉曲面から原点付近のわずかな領域を除いた部分を改めて閉曲面Sとします。

ただし、この時に除かれる「原点を含む領域」は、その大きさに関わらず、残った閉曲面における法線面積分の値は一定で\(2\pi\)になる
 というのが公式のより詳細な内容です。
つまり、そのような領域の大きさを0にする極限においても値は一定で\(2\pi\)になる、という事です。

$$★この議論は、もちろんベクトル場が F=\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}である前提のもとでの話です。$$

この時に、原点を含む「面だけ除く」事はできなくて、体積を持った領域ごと除く事になります。そして、その領域の形状は「半球」とするのがポイントなのですが、これには理由が2つあります。(上手にきれいな半球を繰り抜けるかどうかは、閉曲面を多面体に近似することで可能になります。)

  1. 球面であれば、曲面に対する法線とベクトル場の方向が同一直線上に重なり、法線面積分を直接計算できる。
  2. どのような形状の領域でも、除いた部分の法線面積分はある一定値である事が示される。つまり、球面で計算した時の値と他の形状で計算した時の値は必ず同じである。

2番目の理由についての根拠は、原点を含む領域を境界を共有する形で2つの形状で取り除いてみた時に、新しくできる「閉曲面」(滑らかでない部分はありますが)から見て原点が「外部」にある事によります。この時に、考えているベクトル場のもとでは法線面積分は0になります。
さらに、その新領域が異なる2つの形状に由来するSとSに分けられるとすると、元々考えていた大きな領域Sから見た時の「外側に向かう方向」が、繰り抜いた部分だけを考えてできた閉曲面においては「SとSの片方は『外側向き』でもう片方は『内側向き』」となります。
つまり、ややこしいですが、法線面積分について片方の符号を変えたものを加えた合計が0、結果的には引き算したものが0になります。
――という事は、2つの法線面積分は等しい値(符号も含めて)になる、という事です。

$$★この議論は、もちろんベクトル場が F=\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}である前提のもとでの話です。$$

$$\int_{SA}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s} -\int_{SB}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0\Leftrightarrow \int_{SA}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{SB}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}$$

さて、そこで除外する微小領域として半球を考えると、原点を中心にする半球を考えるのですから、半径をρとすると球面の各点でベクトル場の大きさは等しく、1/(ρ)となります。方向については、各点で球面に垂直で外側向きですから、法線との内積は1となり、面積sを変数とする通常の定積分になるのです。

通常は、面積sを変数とする関数というのはすごく考えにくいものなのですが、この場合について言えば半径ρというのは何らかの定数を考えているのであり、変数としての面積sに無関係であるから定数扱いです。従って積分の原始関数は「1次関数s」です。これを、0から\(2\pi\rho^2\)(半球の表面積)まで積分すればよく、結果は\(2\pi\rho^2\)です。

$$\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\frac{1}{\rho^2}\int_{S0}ds=\frac{1}{\rho^2}\left[s\right]^{\large{2\pi\rho^2}}_0=\frac{1}{\rho^2}\cdot 2\pi\rho^2=2\pi$$

こういう結果であり、半径の大きさに関わらず値は一定値という事になります。

さて、さらに元の閉曲面Sから半球Sを繰り抜いて原点の周りだけ少しへこんだ形になった閉曲面を改めてSとします。このSから見ると、原点は外部に存在します。従って、Sに対する法線面積分の値は0です。

しかし他方で、Sに対する法線面積分はSの法線面積分(半球部分除く)と符号を変えたSの法線面積分(半球面)の合計値です。

のほうの符号を変えるのは、原点を中心に半球を単独で考察した時と、元々の大きな閉曲面Sで考えた時の「外側への向き」が逆になってしまうためです。結果的に引き算する形となります。

$$\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0かつ、\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}-\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S1}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}$$

$$よって、\int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}-\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=0 \Leftrightarrow \int_{S}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_{S0}\frac{\overrightarrow{r}}{r^3}\cdot d\overrightarrow{s}=2\pi$$

ここで、繰り抜く半円の半径は任意の値でこの事が成立するのでしたから、半球の半径ρ→0の極限でも同じ値であり、その意味においてガウス積分の公式が成立します。

③原点が閉曲面の「内側」にある場合

閉曲面の内部に原点がある場合にも、閉曲面上に原点がある場合と同じ問題が発生します。

法線面積分を考える分には、一見すると「値が無限大になってしまう原点」は積分経路から外れていますが、ガウスの発散定理から法線面積分は体積分で表せる「はず」ですから、
体積分を行う領域内で問題が発生します。

つまり、この場合も定積分を実行するには極限値を考える必要があります。

結論を言うと、本来の全体の領域から「原点を囲む微小な球をくり抜いて除いた」ようなものを領域として考えます。

ガウスの積分において原点で領域を定義できないので、
原点を含む領域を球状に除いて、球の半径を0に近づけた時の極限値として
ガウスの積分の値を計算します。

その原点を囲む球状の領域では、上記の場合と同じ考え方により、法線面積分は球の半径にかかわらず一定値になります。この場合の値は\(4\pi\)です。そこで、半径を限りなく小さくしてもその値として計算できるので、極限値として最初に考えていたガウスの積分の値も\(4\pi\)になる、という事です。

原点が想定している領域の表面上にある時との2倍の差は、「球」と「半球」の違いであるという事になるわけです。

【群論】可解群の性質

可解群(solvable group)とは、群に対して交換子群列を作った時に
(G)={e}【単位元だけからなる】となる自然数kが存在する群Gの事です。以下、D(G)(=D(G))はGの交換子群で、D(G)=D(D(G))、D(G)=D(D(G))、・・・等とします。

◆可解群に関しては、次の定義をする事もあります:
群Gに対して有限個の正規部分群の列Hがあり【jは自然数、H=G】、次のようにGの正規部分群同士でもHはHj-1の正規部分群になっているものとする。$$G=H_0\triangleright H_1 \triangleright H_2\triangleright H_3\triangleright \cdots\triangleright H_{n-1} \triangleright H_n=\{e\}$$さらに剰余群Hj-1/Hは可換であるとする。このような時、Gを可解群と呼ぶ。
この定義は、実は交換子群を使った方の定義と同等のものです。以下の議論では交換子群を使ったほうの定義で話を進めていきます。

可解群の性質7つ

可解群のいくつかの重要な性質をまとめると次のようになります。

可解群とその性質

交換子群列を作った時に$$G\supset D_1(G)\supset D_2(G)\supset D_3(G)\supset \cdots\supset D_k(G)=\{e\}$$ となる自然数kが存在する時にGを可解群と言い、次の性質があります。

  • 可換である群は全て可解群である。
  • 可解群の部分群も可解群である。
  • 可解群の剰余群も可解群である。
  • Gの正規部分群Nに対して、Nと剰余群G/Nが共に可解群ならばGも可解群となる。
  • Gの正規部分群Nに対して、剰余群G/Nが可換群になる必要十分条件は、NがD(G)を含む事【N⊃D(G)】である。
  • 可解群の交換子群列のうち、隣り合うもの同士の剰余群Dj-1(G)/D(G)
    【D(G)/D(G)等】は可換群である。
  • 可換群を交換子群列で定義したものとGの正規部分群の列で定義したものは、必要十分条件で結ばれるので互いに同等である。

言葉として「可換」と「可解」が似ていて紛らわしいので注意。

以下、証明をしていきます。

①可換である群は全て可解群

まず最初は簡単です。
{e}の交換子を作ってもeにしかならないので、交換子群列は一度{e}になるとその先の交換子群はずっと{e}です。可換群はそもそも任意の交換子が単位元eであるわけですから、「可換群は可解群である」と言えます。

②可解群の部分群も可解群

2番目については集合としての包含関係を丁寧に見て行きます。
交換子についてHがGの部分群であれば、Gの交換子群にはHの元で作った交換子も全て含まれるので、D(G)⊃D(H)です。【交換子群列の中ではこれはD(G)およびD(H)】
すると、今度はD(G)の交換子群とD(H)の交換子群についても同じ事が言えるわけですから、D(G)⊃D(H)です。
以下同様にして任意の自然数jについてD(G)⊃D(H)です。
ここで、Gが可解群であればD(G)={e}となるkが存在するので、
その番号において{e}⊃D(H)であり、
それを満たせるのは同じく単位元だけからなる群しかないのでD(H)={e}であり、従ってHも可解群である事を意味します。

③可解群の剰余群も可解群

3番目は、剰余類と剰余群の性質を丁寧に扱う必要があります。
次にNをGの正規部分群として剰余群G/Nの交換子を考えます。
Gの元xとyを使って、交換子群D(G/N)の元は
(Nx)-1(Ny)-1(Nx)(Ny)=N(x-1-1xy) と書けます。
【D(G/N)もまた剰余類を元とする群であり、N=Neを単位元とする。】
ここで2つの元の積を元とする別の群ND(G)={nb|n∈N,b∈D(G)}を考えると、
これはNを正規部分群に持つ群となりNによる剰余群を定義できます。
【※一般に、HがGの部分群で\(G\triangleright N\)である時、NはNHの部分群であり、任意のs∈NH(⊂G)に対してsN=Nsとなる(任意のt∈Gに対してそうだから)ので、NはNHの正規部分群。
このタイプの群に対する剰余群は、(NH)/Nの事をNH/Nのように書きます。】
剰余群ND(G)/Nの元はN(nb)=(Nn)bですが、
Nが群でn∈Nに対してNnは集合としてはNとして全く同じ物になるので、N(nb)=Nb=N(x-1-1xy)
よって、全く同じ元を持つのでD(G/N)=ND(G)/N
他方、D(G/N)の元uとwを使うとD(G/N)=N(u-1-1uw) ですが、
剰余群ND(G)/Nの元は先ほどと同じくn∈Nを考えると
N(nu-1-1uw)=(Nn)(u-1-1uw)=N(u-1-1uw) となり、
(G/N)=ND(G)/N という事にもなります。
全く同じ論法で、任意の自然数jに対してD(G/N)=ND(G)/N が成立します。
すると D(G)={e}となるkにおいて、
ND(G)/N の元はN(ne)=Ne=N【剰余群の単位元】ただ1つという事になり、
(G/N)=ND(G)/N=N となってG/Nも可解群であるという結果になります。

④正規部分群Nと剰余群G/Nが共に可解群 ⇒ Gも可解群

次に4番目の性質ですが、これも1つ1つの式を丁寧に紐解きます。
G/NとNが共に可解群である場合には、
①:Dk1(G/N)=Ne=N かつ
②:Dk2(N)={e}
となる自然数kとkが存在します。
この時、前述において示した事からDk1(G/N)=NDk1(G)/N であるわけですが、
k1(G/N)=NですからN=NDk1(G)/Nという事になり、
実はDk1(G)⊂Nが成立しています。
【※n∈Nおよびb∈Dk1(G)として、NDk1(G)/Nの元N(nb)=Nb は集合としてNに等しくならないといけないので、bはNの元である必要があります。それがDk1(G)⊂Nの意味です。】
すると、Dk2(N)⊃Dk2(Dk1(G)) です。
ここで、Dk2(Dk1(G))とは
「すでにGから始めてk回交換子を作る演算を行ってできた交換子群に対し、
そこを起点として改めてk回交換子を作る演算を行ってできた交換子群」です。
従って、Gから始めて(k+k)回の交換子を作る演算を行ったDk1+k2(G)に等しいという事です。
よってDk2(N)⊃Dk2(Dk1(G))=Dk1+k2(G)であり、
k2(N)={e}でしたから、{e}⊃Dk1+k2(G) であり、
これを満たすにはDk1+k2(G)={e}しかあり得ず、それを満たす自然数k+kが存在する事になります。よって、おおもとの群Gも可解群である事になります。

この4番目の性質について、特に次のような特別な場合には1つの命題が成立します。
以下、Hは群であるとします。

$$H_n\triangleright H_{n-1}\triangleright H_{n-2} \triangleright \cdots H_3\triangleright H_2\triangleright H_1\triangleright \{e\}$$

ここで、もし\(H_{j+1}\triangleright H_j\) が任意の自然数jについて成立し、剰余群Hj+1/Hが可解群であり、
またHも可解群であったとしましょう。

そのような特別な場合が発生する時、Hが可解群であり、H/Hも可解群ですからHも可解群です。
そしてH/Hも可解群なので、Hも可解群です。
同様にして、任意の自然数jについてHは可解群という事になります。
より具体的には、例えば剰余群Hj+1/Hが巡回群であれば可換群ですから可解群という事にもなります。そのようなタイプの群は、ベキ根で解ける多項方程式のガロア群を論じる時に出てきたりします。

⑤剰余群G/Nが可換群 ⇔ NがD(G)を含む事

【これは交換子群一般について言えます。性質として特に可解群に関係が深いです。】
5番目の性質については、まずG/Nの元の積を順番を変えて書いてみます。
xとyをGの元として、
(Nx)(Ny)=N(xy) と(Ny)(Nx)=N(yx) の2パターンありますが、
もしN(xy)=N(yx)であるのなら
【※ここでの括弧は分かりすくするためにつけているだけで、Nxy=Nyxと書いても同じ】
-1-1を右から乗じる事によって
N(xyy-1-1)=N(yxy-1-1) ⇔ N=N(yxy-1-1)
これが成立するためには、yxy-1-1がNの元でなければなりませんが、
yxy-1-1はGの交換子です。
【yxy-1-1の逆元はxyx-1-1
よって、G/Nが可換という事は任意のD(G)の元が例外なくNの元でもある事、
つまりD(G)⊂Nを意味します。
逆にD(G)⊂Nならば
N=N(yxy-1-1) ⇔ N(xyy-1-1)=N(yxy-1-1) のように逆にたどって、
右側からxyを乗じればN(xy)=N(yx)となり、剰余群G/Nは可換である事になります。

⑥交換子群列の隣り合う交換子群の剰余群は可換

6番目の性質については、交換子群列において例えばD(G)⊃D(G)のような包含関係があり、
しかもそれらは群と正規部分群の関係にあって\(D_2(G)\triangleright D_3(G)\) のようになっています。
そこで剰余群D(G)/D(G)の可換性を調べてみると、
(G)とは「D(G)の交換子群」なのでD(G)=D(D(G)) とも書けます。
集合が(群も含めて)等号で結ばれるという事は
「D(G)⊃D(D(G))かつD(G)⊂D(D(G))」という事ですから、
【上述の5番目の性質により】D(G)⊃D(D(G)) ⇔「D(G)/D(G) は可換である」事になります。
同じように任意の自然数jとj+1の交換子群についても
(G)=D(Dj+1(G)) ⇒ D(G)⊃D(Dj+1(G))
⇔「D(G)/Dj+1(G) は可換である」という事が言えます。
可解群の場合、最後{e}になっている部分についても同様に
{e}=D(Dk-1(G)) からDk-1(G)/{e}=Dk-1(G) が可換であるという事が言えます。
【{e}=D(Dk-1(G))という事自体から、
交換子群の性質によりDk-1(G)の任意の要素は可換であるとも言えます。】

あるいは、交換子群の性質により「G/D(G)は可換である」と言えるので、
これをD(G)/Dj+1(G)にも適用して示す事もできます。本質的に同じ証明です。

⑦2つの定義は同等である事

最後に7番目の性質として、2つの定義が同等である事を示します。
まず、交換子群列のほうの定義の場合での性質からDj+1(G)はD(G)の正規部分群であり、
剰余群D(G)/Dj+1(G)は可換であると言えるわけですから、
そのような部分群の列が存在するので
「交換子群列の定義 ⇒ 正規部分群と剰余群の可換性のみの定義」が言えます。

次に逆の場合です。$$G=H_0\triangleright H_1 \triangleright H_2\triangleright H_3\triangleright \cdots\triangleright H_{n-1} \triangleright H_n={e}$$の関係のもとで剰余群Hj-1/Hが可換であったとします。
この時には「G/Nが可換群 ⇔ D(G)⊂N」【上記5番目の性質】である事を思い出すと、
「G/Hが可換」なのでD(G)=D(G)⊂Hという事が言えます。
この時D(D(G))⊂D(H) ⇔ D(H)⊃D(G)でもあります。
【A⊂B ⇒ D(A)⊂D(B) 】
同様に「H/Hが可換」なのでD(H)⊂Hであり、先ほどのD(H)⊃D(G)と合わせると
⊃D(H)⊃D(G)が成立します。
以下、同様にH⊃D(G)、H⊃D(G)⊃D(G)⊃D(G)・・・・と続きます。
最後の部分でD(G)⊂H={e}となりますが、これはD(G)={e}を意味します。
よって、交換子群列の中で{e}となる交換子群が存在するので
「正規部分群と剰余群の可換性のみの定義 ⇒ 交換子群列の定義」が言えます。
よって、2つの定義は必要十分条件で結ばれるので同等な定義である事になります。

【群論】交換子・交換子群・交換子群列

交換子群は多項方程式の可解性(ベキ根で解ける事)との関連性が非常に深い群です。

交換子と交換子群

Gがあって、xとyがその元であるとします。
この時、xyとyxは等しいとは限りません。

他方で、x-1-1xy という4つの元の積からなる別の元を考えてみて、
これを [x,y] と書く事にして「交換子」(commutator)と呼ぶ事にすると、
[x,y][y,x]=[y,x][x,y]=e【単位元】となります。
【[y,x]=y-1-1yxで、[x,y][y,x]=x-1-1xyy-1-1yx=e】
つまり、任意の群の交換子[x,y]と[y,x]は互いに逆元の関係にあなります。

また、次のような性質もあります。
yx[x,y]=xyであり、
xy[x,y]-1=yx 【2番目の式はxy[y,x]=yx でも同じ】
であるという関係式が成立します。
【群の逆元の演算規則により、(x-1-1xy)-1=y-1-1yxである事に注意】
つまり、右から乗じる(逆元の形も含めて)事で任意の積の順序が入れ替わる作用も持ちます。

ここで、交換子が「単位元eに等しい」という場合があり、次の事が成立します。

群の任意の元に対してx-1-1xy=eならばxy=yxです。
つまり、群の任意の交換子が単位元に等しいならば群は可換である という事です。
(逆に、群が可換であれば任意の2つの元で作る交換子は単位元に等しい。)
◆証明:
両辺にyxを左から乗じて、x-1-1xy=e ⇒ xy=yx
両辺に (yx)-1=x-1-1 を左から乗じて、xy=yx ⇒ x-1-1xy=e
∴ x-1-1xy=e ⇔ xy=yx

実際、もとから可換であれば xy=yxなので当然xye=yxという、
一般の交換子が持つ作用と同じ形の関係式が成立するわけです。

そのような交換子の形をした元から成る群(これはGの部分群になる)を交換子群と言います。
D(G)={x-1-1xy|x∈G,y∈G}です。

Gの2つの部分群の元を使った交換子群を考える場合には括弧積 [ ] を使った書き方もします。
[A,B]={a-1-1ab|a∈A,b∈B}【A⊂G,B⊂G】

交換子群の性質

交換子群については、群Gの部分群としていくつかの性質があります。

交換子群の性質
  • 交換子群D(G)はGの正規部分群
    \(G\triangleright D(G)\)
  • 剰余群G/D(G)【D(G)が正規部分群なので定義できる】は可換
  • Gの正規部分群Nに対して剰余群G/Nが可換ならば、D(G)はNの部分集合となる。
    \(G\triangleright N \Rightarrow D(G)\subset N\)
  • 交換子群は可換な剰余群を作る正規部分群としては最小のものとなる。

正規部分群とは、Gの任意の元に対してtN=Nt【集合として同じものになる】
が成立するGの部分群Nの事であり、
剰余群とはGが正規部分群Nを持つ時に定義されるもので、Gの元に対する剰余類を元とする群です。
Nx、Nyを考えた時に、剰余群の積は(Nx)(Ny)=N(xy) 、逆元は(Nx)-1=N(x-1)と定義します。

◆交換子群の性質の証明:
tをGの任意の元とします。すると
t(x-1-1xy)t=(t-1-1t)(t-1-1t)(t-1xt)(t-1yt)
=(t-1xt)-1(t-1yt)-1(t-1xt)(t-1yt)∈D(G)
【t-1xtの形の元は交換子の形になっているため】
であり、tD(G)t-1⊂D(G)
【これはD(G)がG正規部分群であるために十分な条件。】
∴\(G\triangleright D(G)\)

次に、剰余群G/D(G)を考えると剰余類【これが剰余群の元】はD(G)x、D(G)yなどと書けますが、
G/D(G)の交換子を考えると
(D(G)x)(D(G)y)=D(G)(xy)【これが剰余群の演算の定義】
また、剰余群の逆元についても同様に考えると、
(D(G)x)-1(D(G)y)-1=(D(G)x-1)(D(G)y-1)=D(G)(x-1-1)
という事は、剰余群G/D(G)に対する「交換子」は
(D(G)x)-1(D(G)y)-1(D(G)x)(D(G)y)=D(G)(x-1-1xy)
しかしx-1-1xy∈D(G)なので、
集合としてD(G)(x-1-1xy)はD(G)に一致します。
D(G)そのものは剰余類としてはD(G)e 【eはGの単位元】であるから、
(D(G)x)-1(D(G)y)-1(D(G)x)(D(G)y)=D(G)e 【D(G)e=D(G)はG/D(G)の単位元】
∴任意の元で作った交換子が単位元に等しいのでG/D(G)は可換。

剰余群G/Hが可換であるなら剰余類【剰余群の元】について
H=He=H(x-1xy-1y)=H(x-1-1xy)【xとyはGの元】
つまり、H(x-1-1xy)は集合としてHに等しく、
Gの交換子群の任意の元はHの要素となるため、D(G)⊂H

Gの交換子群でない任意の可換な正規部分群は交換子群を含むので、交換子群よりも小さな正規部分群は他にはない。交換子群も可換な正規部分群なので、可換な正規部分群のうち最小のものという事になります。

交換子群列

交換子の理論の中でも、特に多項方程式の可解性に関わるのが交換子群列です。

Gの交換子群をD(G)とし、D(G)の交換子群をさらにD(G)とします。そしてさらにD(G)の交換子群を考えてD(G)とし、さらにD(G)の交換子群をD(G)とします。
・・・そういう感じでD(G)の交換子群をDk+1(G)という形で定義していくと、\(D_k(G)\triangleright D_{k+1}(G)\) となるような群の列ができます。その列を交換子群列と言います。

交換子群列

交換子群列とは、交換子群によって作る次のような列の事です。 $$G=D_0\supset D_1(G)\supset D_2(G)\supset D_3(G)\supset D_4(G)\cdots$$ $$D_{k+1}(G)はD_1(k)の交換子群$$

ところで、そのように交換子群列を次々に続けていった時に、無限に続くのか有限で終わるのかという話があります。これは、続けて行った時に単位元のみからなる{e}が現れた時を「終わり」という事にすると、有限で終わるものとそうでないものがあります。

(G)={e}となる自然数kが存在する時、おおもとの群Gを特に可解群と言います。
なぜそのように呼ぶのかというと、その大きな理由は「多項方程式が『ベキ根で解ける』時、解による拡大のガロア群の交換子群列は有限回で{e}で終わる(=可解群である)」という性質によります。

ところが、5次以上の多項方程式においてそのガロア群は対称群(置換群)であり【正確にはそれと同型】、
実は5次以上の対称群は可解群にならないのです。よって、一般の5次以上の多項方程式は「ベキ根で解ける(=係数とベキ根を使った解の公式が存在する)」部類の多項方程式に属さない、という命題が成立します。
一般の1~4次方程式のガロア群は可解群になります。

$$可解群:D_k(G)={e}となるようなkが存在する群G$$

平面曲線の曲率円と曲率半径

曲率円そのものについては高校ではあまり扱いませんが、内容としては高校数学のまとめのような所もあるので、高校数学としても勉強になる題材かもしれません。より一般的には、曲線・曲面論の初歩的な事項の1つになります。

曲線の曲がり具合と曲率円

平面上の曲線について、緩やかに曲がっているものもあれば、急激な曲がり方をしているものもあります。

その曲り方の度合いを定量的に調べる方法としては、まず微分によって傾きを調べる方法が1つあります。

他方で、「曲線のある箇所に接する事のできる円の半径の最大値」によってその曲がり具合を調べる方法もあります。その目的で用意する円の事を「曲率円」と言い、曲率円の半径の事を「曲率半径」と言います。
この曲率円は、調べようとしている点以外の場所で曲線と交わっていても構いません。

曲率円と曲率半径

曲率円の中心座標と曲率半径の公式

曲線上のある点に注目した時には、
「曲率円の中心座標と半径(「曲率半径」)は曲線を表す関数の2階までの導関数(微分)の微分係数を使って表す事ができる」という公式が存在します。

曲率円の公式

曲線がy=f(x)と表される時、x=cでの曲率円の中心座標(a,b)と曲率半径rは次のように表されます。f(c)=f、f'(c)=f’、f”(c)=f”と表記しています。$$中心座標:a=c-\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)f_c’}{f_c’\hspace{1pt}’}\hspace{15pt}b=f_c+\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)}{f_c’\hspace{1pt}’}$$ $$曲率半径:r=\frac{(1+f_c’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|f_c’\hspace{1pt}’|}$$ 【これらは、関数の形としてxとy、y’、y”の形で書いても成立します。】
曲率半径の式の分母に絶対値記号がつくのは、単純に半径がプラスの値であるという意味です。
中心座標に関しては、マイナスの値である事もあり得ます。

◆証明:円の式(x-a)+(y-b)=rと、両辺の1階微分および2階微分の3式を使います。

微分なし:(x-a)+(y-b)=r

1階微分:2(x-a)+2y’ (y-b)=0 ⇔ (x-a)+y’ (y-b)=0
【yの所は合成関数の微分公式使用】

2階微分:1+y”(y-b)+y’=0
【yの所は積の微分公式使用】

実は、これらの式からa、b、rについて解くというだけで証明は十分です。

◆上記3式は単独で存在する円のについて成立する式と全く同じ形ですが、ここではx=cで、yの値もy=f(c)で固定されていると考えてa、b、rの値を出そうとしているわけです。
【円の導関数を出す目的であれば、a、b、rが定数であって、y’をxの関数あるいはxとyの関数で表します。】

以下、上記3式に、x=cを代入し、yにはy=f(c)を代入している【煩雑さを避けるためにyのままで表記しておきます】と考えます。

まず、2階微分の式からbをすぐに出せます。

$$1+y’\hspace{1pt}'(y-b)+y’\hspace{1pt}^2\Leftrightarrow y-b=-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\Leftrightarrow b=y+\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}$$

◆ある点で円に接する曲線は直線も含めてたくさんあり得ますが、
曲線の2階微分の微分係数まで決定している状況であれば、その曲線に接する事のできる円の中心のy座標は確定してしまう事を意味します。

次に、y-bを1階微分の式に代入します。

$$(c-a)+y’\left(-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)=0\Leftrightarrow a=c-\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)y’}{y’\hspace{1pt}’}$$

◆円の2階微分の式から中心のy座標は確定していたわけですが、
1階微分の式、つまり「接する」という条件からx座標も任意であるわけではなく、結論は1つに決まるという事です。

この式からc-aも分かるので、y-bと合わせて微分前の式に代入してrを出します。

$$(c-a)^2+(y-b)^2=r^2\Leftrightarrow \left(y’\cdot\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)^2+\left(-\frac{1+y’\hspace{1pt}^2}{y’\hspace{1pt}’}\right)^2=r^2$$

$$\Leftrightarrow r^2=\frac{y’\hspace{1pt}^2
(1+y’\hspace{1pt}^2)^2+(1+y’\hspace{1pt}^2)^2}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2) (1+y’\hspace{1pt}^2)^2}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^3}{y’\hspace{1pt}’\hspace{1pt}^2}$$

$$【r>0だから】\Leftrightarrow r=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|y’\hspace{1pt}’|}$$

【途中の箇所では、分子の因数分解をすると結果的に3乗の形になっているという事です。】

◆曲率円の中心座標は確定しており、曲線も具体的に1つ決まっているとすれば、
中心から接点までの距離もただ1つに確定するわけです。

得られたこれらの式のy、y’、y” の所にf(c)、f'(c)、f”(c) を代入すれば公式の形になります。

簡単な例としては、2次関数y=xとその1階微分と2階微分y’=2x、y’=2を考えてみて、
x=0でそれらの値はそれぞれ0、0、2ですから公式に当てはめると曲率円の中心は(0,1/2)で曲率半径は1/2になります。

曲線の「曲率」と公式

さて、曲率半径rの逆数、つまり1/rの事を曲線のある点での「曲率」と呼びます。
なぜわざわざ逆数を考えるのかというと、次の公式が成立し、平面での図形的な意味も持つためです。

曲率の定義と公式

平面上の曲線のある点での「曲率」とは曲率半径の逆数であると定義します。 $$(ある点での曲線の)曲率:k=\frac{1}{r}\hspace{5pt}と定義$$ 曲線上の点が、ある定点から測った弧長sの関数であるベクトル \(\overrightarrow{X}(s)\) として表されるとして、
その点での曲線の長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)(微分はsで行う)と
x軸の正方向との成す角をsの関数としてθ=θ(s)とすると、
曲率との間に成立する次の関係式が成立します。 $$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=k\hspace{5pt}\left(=\frac{1}{r}\right)$$

|dθ/ds|という導関数は、図形的に考えると曲線の「曲がり具合」を表す量になります。
接線ベクトルの導関数も同じく曲がり具合の度合いを表すと考えられますが、それは|dθ/ds|に実は等しくなります。
それが曲率半径の逆数に等しいという事については、逆三角関数を利用して証明します。

◆ベクトルの微分については、ベクトルの各成分を同じ変数で微分したものと定義されます。

証明(前半)

まず次式から証明します。

$$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\left|\frac{d\theta}{ds}\right|$$

証明方法の1つは、図形的な考察をしてから
「角度θが小さい時には sinθ≒θ」という近似式が成立する事を使うものです。

◆この近似式は、次の正弦関数に関する極限の変形として考える事ができます。$$\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin \theta}{\theta}=1 により、\theta が0に近い時は\sin \theta≒\theta$$あるいは、マクローリン展開で第2項以降の3次以上の項を0に近似するか、正弦関数のθ=0での微分係数が1になる事からθ=0での近似一次式としてy≒θと考える事もできます。

接線ベクトルと角度の関係
sは媒介変数として特に弧長を表すものとしています。

曲線の接線ベクトルは、大きさについては1に揃えるものを考えても角度には影響しません。そこで、曲線上の任意の点において接線ベクトルは長さ1であるとします。

すると、接線ベクトルを\(\overrightarrow{T}(s)\) とした時、\(\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)\) というベクトルを考えた時に、これは二等辺三角形の底辺になっています。【2辺の長さが1で、それらのはさむ角度がθ】

すると、その底辺の長さ |\(\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)\)| は実は簡単な図形的な考察からθで表す事ができます。
それは余弦定理で表す事もできますが、もっと単純に直角三角形の辺の比から正弦で表す事もできます。
結果は2sin(Δθ/2)になります。【長さ1の斜辺の正弦sin(Δθ/2)の2個分を考えただけです。】

$$|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|=2\left|\sin\frac{\Delta\theta}{2}\right|$$

【左辺が絶対値(プラスの値)なので、右辺にも絶対値をつけてあります。】

今、s→0の時にΔθ→0なので、sin(Δθ/2)≒Δθ/2となります。

$$|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|=2\left|\sin\frac{\Delta\theta}{2}\right|≒2\left|\frac{\Delta\theta}{2}\right|=|\Delta\theta|$$

$$\Leftrightarrow \frac{|\overrightarrow{T}(s+\Delta s)-\overrightarrow{T}(s)|}{\Delta s}≒\frac{\Delta\theta}{\Delta s}$$

$$\Delta s\to 0 の極限を取る事で【その時\Delta\theta \to 0】\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=\frac{d\theta}{ds}$$

証明(後半)

次に次式を証明します。

$$\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=\frac{1}{r}$$

証明には逆三角関数とその微分を使います。

変数がxである状況に一度戻ると、導関数は接線の傾きを表すので、
その傾きは正接を使って tan θ = y’ と書けます。

これの逆関数を考えると、θ = arctan y’ と表記できます。
【これらは両辺ともにxの関数であるとします。】

すると、これをさらにxで微分すると次式になります。

$$\frac{d\theta}{dx}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{1+y’\hspace{1pt}^2}$$

逆三角関数の微分公式と、合成関数の微分公式を使用。(d/dx)arctan x=1/(1+x)】

他方で、弧長を積分で表す公式を使うと【三平方の定理を利用した公式】次のように書けます。

$$s=\int_a^x\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}dt$$

【積分の中身のy’ は形式上tの関数として書かれています。また、aはs=0となる点のx座標であるとします。】

このsをxで微分すると、微積分学の基本定理により次式になります。

$$\frac{ds}{dx}=\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}$$

ここで、dx/dsを逆関数の微分公式により次のように表せます。

$$\frac{dx}{ds}=\frac{1}{\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}}$$

ここで合成関数の微分公式を再び考えるとdθ/ds=(dθ/dx)(dx/ds) ですから、得られた関係式を組み合わせると次のように表せます。

$$\frac{d\theta}{ds}=\frac{d\theta}{dx}\cdot\frac{dx}{ds}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{1+y’^2}\cdot\frac{1}{\sqrt{1+y’\hspace{1pt}^2}}=\frac{y’\hspace{1pt}’}{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}$$

ところで、前述の曲率半径は y’ 等の導関数の形で書くと次のようになります。

$$r=\frac{(1+y’\hspace{1pt}^2)^{\large{\frac{3}{2}}}}{|y’\hspace{1pt}’|}$$

つまり、絶対値記号さえつければ、dθ/dxとは丁度逆数の関係になっています。

$$よって、\left|\frac{d\theta}{ds}\right|=\frac{1}{r}が成立します。【証明終り】$$

曲率・接線・法線の関係(フルネー・セレーの公式)

さて、長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)を考える曲線上の点において、長さ1の法線ベクトル\(\overrightarrow{N}(s)\)も同時に考えてみます。(「法線」とはある点で接線に垂直である直線や線分の事。)

前述の曲率k(=1/r)を使うと、接線ベクトルと法線ベクトルとの間に次の関係が成立します。

曲率・接線・法線の関係(フルネー・セレーの公式)

長さ1の接線ベクトル\(\overrightarrow{T}(s)\)、長さ1の法線ベクトル\(\overrightarrow{N}(s)\)、曲率k(=1/r)の間には
次の2式の関係があります。 $$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=k\overrightarrow{N},\hspace{15pt}\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=-k\overrightarrow{T}$$

この内容の意味を考えてみると、曲率はただのスカラー値(あるいはスカラー関数)ですから、「接線ベクトルのsによる微分」は法線ベクトルに平行であり、「法線ベクトルのsによる微分」は接線ベクトルに平行であるという事を意味します。

証明(第1式)

では、本当にそうなるのかという話です。

これを見るには、「接線ベクトル同士の内積」を微分してみると上手くいきます。

同じベクトルの内積は、単にそのベクトルの大きさの2乗であって、しかもここでは |\(\overrightarrow{T}(s)\)| =1として考えていますから、同じ接線ベクトル同士で内積を考えると次式です。

$$\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{T}=1$$

これをsで微分してみますと、積の微分公式を成分ごとに適用すればスカラー関数同士の積の微分同様の関係になります。右辺は定数ですから微分すれば0です。

$$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}+\overrightarrow{T}\cdot\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=0\Leftrightarrow 2\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0 \Leftrightarrow \frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

【内積は可換(\(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=\overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{a}\))であるためにこうできる事に一応注意。】

$$という事は、2つのベクトル\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}と\overrightarrow{T}は互いに垂直であるという事です。$$

そして、\(\overrightarrow{T}\)に垂直な長さ1のベクトルとして\(\overrightarrow{N}\)を考えていたわけですから、\(d\overrightarrow{T}/ds\) と \(\overrightarrow{N}\) は平行であって大きさだけが異なります。

しかし、上述の曲率kに関する公式から$$\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|=k であったわけです。$$

$$という事は、\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}=\left|\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\right|\overrightarrow{N}=k\overrightarrow{N}$$

【\(|\overrightarrow{N}|=1\) であるのでこう書ける事に注意。】

つまり、フルネー・セレーの公式の最初のほうの式が成立するという事です。【証明終り】

証明(第2式)

続いて、フルネー・セレーの公式の2番目のほうの式の証明です。

今度は\(\overrightarrow{N}\)について内積を微分してみると同様に次式になります。

$$\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}=0$$

この式に、\(k\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{N}=0\)を加えます。(ここでスカラーである曲率kはオマケとして、証明のために敢えてくっつけています。kがなくてもこの内積の関係は成立します。)

$$k\overrightarrow{N}\cdot\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}=\Leftrightarrow \left(k\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\right)\cdot\overrightarrow{N}=0$$

ここで出てきた\(k\overrightarrow{T}+\large{\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}}\)というベクトルもまた、法線ベクトルに垂直(従って接線ベクトルに平行)という事になります。他方で、このベクトルは別の式からも出てきます。

それは\(\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{N}=0\)を微分する事によって出てきます。

$$\frac{d\overrightarrow{T}}{ds}\cdot\overrightarrow{N}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0\Leftrightarrow (k\overrightarrow{N})\cdot\overrightarrow{N}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

$$\Leftrightarrow k+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0\Leftrightarrow (k\overrightarrow{T})\cdot\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}\cdot\overrightarrow{T}=0$$

$$\Leftrightarrow \left(k\overrightarrow{T}+\frac{\overrightarrow{N}}{ds}\right)\cdot\overrightarrow{T}=0$$

【既に得られている関係の代入と、\(\overrightarrow{N}\cdot\overrightarrow{N}=\overrightarrow{T}\cdot\overrightarrow{T}=1\)を利用した細工を行っています。】

という事は、\(k\overrightarrow{T}+\large{\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}}\)というベクトルは接線ベクトルにも垂直である事になります。これは、法線ベクトルにも接線ベクトルにも垂直である事を意味しますが、平面上でそのようなベクトルはゼロベクトルしかありませんから、次のようになります。

$$k\overrightarrow{T}+\frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=0\Leftrightarrow \frac{d\overrightarrow{N}}{ds}=-k\overrightarrow{T}$$

これはフルネー・セレーの公式の2番目のほうの式になっています。【証明終り】

自乗と累乗・ベキ乗

「乗(じょう)」は数学では掛け算の意味です。掛け算の事を「乗法(じょうほう)」とも言います。
「~を掛け算する」という意味で「~を乗する」とも言います。

2乗(自乗、平方)の意味と表記

2×2=4、3×3=9、4×4=16など、
「同じ数を掛け算する事」を「自乗」あるいは「2乗」と言います。
これを2=4、3=9、4=16のようにも書きます。
「2の2乗(自乗)イコール4」などのように読みます。
また、後に少し触れるように「平方」という言葉も「2乗」の意味で使う事があります。

文字式や関数の場合でも同じで、xは「エックスの2乗(自乗)」もしくは「エックス2乗(自乗)」と読み、x・x(xとxとの掛け算)を表します。

  • (f(x))2 ・・・関数f(x) の2乗
  • 三角比および三角関数については、(sinθ)は sinθと書く。【sin(θ)と区別するため】
自乗とベキ乗

2乗(自乗、平方)の応用・使われ方

正方形の面積は一辺の長さの2乗になります。
面積の単位をcm平方センチメートル】やm【平方メートル】のように書くのはそのためです。
(例えば3cmであれば、1cmの正方形の3個分の広さ【面積】という事。)
また、円の面積は円周率と「半径の2乗」の積で表されます。
(※その公式の証明は、円周の長さの公式を半径で積分する、置換積分で計算する、微小な三角形の面積の合計と考えて「円周の長さ」×半径÷2として出す・・等の方法があります。)

そのように、面積を表すのに頻繁に使われる意味でも「2乗」というものは重要な掛け算になります。
直角三角形の斜辺の長さを表す三平方の定理も、c=a+bという2乗を含む形です。
ここでの「平方」とは「2乗」の意味です。
(※実際、定理の証明の1つでは面積を使います。そこにも2乗が出てくる意味を見出せます。)
これは直交座標上の「距離」を計算するのにも使うので重要な定理です。
それらに関連して、三角比での cosθ+sinθ=1という公式も重要です。

これは、面積を使うほうのタイプの三平方の定理の証明の説明図です。
図のように、「2乗」の項が各辺の長さを持つ正方形の面積という図形的意味を持ちます。

=4という計算に対し、逆にx=4を満たすxの事を「4の平方根と」言います。
(※そのような平方根となるxは、+2と-2の2つが該当します。)
「2乗するとaになる数」をaの「平方根」(あるいは「2乗根」)と言います。

負の数を2乗する場合には、マイナス符号をプラス符号に変えるという計算をします。
つまり、(-1)=+1という計算をするわけです。
マイナスを2乗するとプラスになる理由は、それが計算の定義であるからですが、もう少し考察して説明をする事は可能です。】

つまり正の数だろうと負の数だろうと、「2乗すると正の数になる」事は確定するわけです。
(例外は0で、0=0です。また、「虚数単位」はi=-1を満たすものとして敢えて定義します。)
そのため、絶対値を2乗する場合には単純に絶対値符号を取り払ってよいという計算になります。
|x|=xのように書いてよいという事です。

ax+bx+cの形の式をxに関する「2次式」と言います。
その中のaxの部分の事を「2次の項(=『xが2乗の形になっている項』)」と呼ぶ事もあります。ax+bx+c=0という形の方程式は「2次方程式」です。

(-1)×(―1)=+1になる理由は?
iの2乗はー1であると定義しています。

一般のベキ乗(累乗)と指数

同じ数を「3回掛け算する」事は「3乗」すると言います。

つまり、2×2×2=8、3×3×3=27、4×4×4=64などの事であり、
それらを2=8、3=27、4=64のように表記します。

サイコロのような立方体の体積は「一辺の長さの3乗」で表されます。
それに由来して、単位の体積はm【立方メートル】やcm【立方センチメートル】で表記します。
球の体積は半径の3乗に比例するという公式が成立します。

文字式等に対しても、r=r・r・r 【あるいはr×r×r】のように定義します。

4乗や5乗の場合も同じように表記します。

  • =2×2×2×2=16 【2の4乗】
  • =2×2×2×2×2=32 【2の5乗】

このように一般的にa【nは自然数「aのn乗」】で表された数を、
aの「累乗」あるいは「ベキ乗」と呼んだりもします。

=aを満たすxを、aの「n乗根」と言い、
そのようなn乗根一般の事を「累乗根」「ベキ乗根」と呼ぶ事もあります。
例えばx=5を満たすxは「5の3乗根」と呼ばれます。

無限級数展開のうち、xの形の項が続くものを特に「ベキ級数展開」と呼ぶ事もあります。

$$例えば e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+\frac{x^4}{24}+\cdots 等です。$$

◆この例はマクローリン展開

◆「累(るい)」とは「重なり」「次々に重ねる事」を表す漢字です。
一般には「累積(るいせき)」や「累家(るいか。代々続いてきた家)」のような語で使われます。【野球の「ベース」は「塁」なので区別注意。】
「ベキ」については漢字では「冪」をあてます。
「冪」とは元々は「食物を覆う布」の事を意味します。

やxのようなxの形の単独の式(関数)は「単項式」と呼ぶ事があります。
それらの係数倍を加え合わせた式は「多項式」と呼ばれます。

  • 単項式:x、x、x、x
  • 多項式:1+2x【1次式】、1+x+3x【2次式】、1+x+x【3次式】
    (これらはxの関数とみなす場合には「1次関数」「2次関数」「3次関数」のようにも呼ばれます。)

1+x+x =0のような形の方程式は「3次方程式」です。

1+2x+x+x=0のように、4次の項を含む方程式は「4次方程式」です。

3次方程式の場合には方程式に図形的な意味もあります。

+an-1n-1+an-2n-2+・・・+a+ax+a=0の形の方程式は
「n次方程式」であり、そのようなn次方程式一般を「多項方程式」と呼びます。

というベキ乗の形の単項式に対して、aの部分を「指数」と呼びます。
例えばxの指数は3であり、xの指数は5であるといった具合になります。

この「指数」の部分は、数学的には実は自然数でなくてもよく、実数なら何でもあてる事ができます。【また、定義をきちんとすれば複素数を代入する事もできます。(複素数の指数関数表示)】

指数を全実数の範囲とする時には、次のような定義が行われます。$$x^0=1,\hspace{10pt}x^{-n}=\frac{1}{x^n},\hspace{10pt}x^{\large{\frac{1}{n}}}=^n\sqrt{x}【xのn乗根のうち正の数のもの】$$このような定義をすると、「正の数 x に対して \(x^a\)≦\(x^b\) ならば\(a≦b\)である」という関係が成立します。
指数として無理数を代入する時も、その関係式が成立するようになっています。 $$そのため、例えばx>0に対してx^3<x^{\pi}<x^{3.2}などが成立します。$$

単項式や多項式の場合と違って、ある数の指数の部分が変数になっているものは指数関数と呼ばれます。(高校の初等関数の1つ。指数関数は対数関数と対になっていて、互いに逆関数の関係にあります。)
それは例えば、2【2のx乗】やe【eは「自然対数の底」】といった関数であり、高校数学(特に微積分)や理工系の大学の学問でも重要な関数です。

角運動量の数学

物理学で考える「角運動量」は回転運動を表す物理量です。外積ベクトルを使って表します。

◆関連:ベクトルの基本事項と内積

角運動量ベクトル

角運動量ベクトル(angular momentum)の定義

角運動量ベクトルは、次のように外積ベクトルによって定義されます。 $$角運動量ベクトル:\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{p}$$ $$物体の位置ベクトル:\overrightarrow{r}=(x,y)$$ $$運動量ベクトル:\overrightarrow{p}=m\overrightarrow{v}$$ $$\left(物体の質量:m\hspace{10pt}速度ベクトル:\overrightarrow{v}=\left(\frac{dx}{dt},\frac{dy}{dt}\right)\right)$$

◆これに対して、「角速度ベクトル」(あるいは「回転ベクトル」)は
「物体が回転軸周りの同一平面内で回転運動をしている時に、向きは物体の回転方向が右ねじを締める向きに一致するの軸方向で、大きさは角速度ω【rad/s】に等しい」というベクトルです。$$角速度ベクトルの大きさ:|\overrightarrow{\omega}|=\omega【rad/s】$$$$角速度ベクトルの向き:\overrightarrow{\omega}の向きは軸方向で、右ネジを締めた向きが回転方向に一致する向き$$ 回転面の中心を基準点とした場合には、角速度ベクトルと角運動量ベクトルの向きは一致します。

角運動量を外積ベクトルで表す事には幾つかの意味があります。

まず、回転の向きに関しては時計回り(順方向)と反時計回り(逆方向)という事もありますが、回転している「面」の事も含みます。例えば、空間内にxyzの直交座標を考えた時に、同じ速さで同じの形の軌道を描いて回転している場合であっても、「xy平面での回転」「yz平面での回転」は当然「異なる運動」であると言えます。

そこで外積ベクトルの向きは、回転面の「軸」の向きに相当する方向を表す事になります。物体の運動方向が基準点から見て時計回り方向なのか、それとも反時計回り方向なのかも外積ベクトルの向きで表す事ができるわけです。(外積ベクトルの符号が反転すると運動量ベクトルの符号が反転し、全く反対の方向への運動を表す事になります。)

角運動量ベクトルと外積
角運動量ベクトルは外積ベクトル(ベクトル積、クロス積)で表します。
角速度ベクトルと角運動量ベクトル
角速度ベクトルと角運動量ベクトルの違いに注意。

また、ある点を基準として同じ角速度で回転をしていても、その点の近くを回転している時と遠くを回転している時とでは、物体の速度は異なります。
「物体の位置ベクトル」\(\overrightarrow{r}\) は、回転の中心からの「距離」も情報として含むので角運動量ベクトルを構成する要素として使わます。(この事は「力の能率(モーメント)」と関係します。)

外積ベクトルで表されているという事は、2つのベクトルが平行である場合(成す角度が0または \(\pi\)である場合)には値が0である事になります。これは、物体の運動がある点から直線状に遠ざかっていく、あるいは直線状に近寄ってくるような場合であり、「回転」の様子がない事を表しています。

力の能率(モーメント)

力の能率(あるいは「力のモーメント)」moment of force)は角運動量ベクトルの時間微分として表されます。ベクトルに対する微分は、具体的には成分に対する微分として定義されます。

ここで角運動量ベクトルの定義通りの式に時間微分をすると考えると、外積ベクトルに対する微分をするいう事になりますが、これは通常の積の形に対する微分公式と同じ形が成立します。【証明は外積の成分表示を使うと比較的簡単です。】

すなわち、次式のように書けます。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\frac{d}{dt}\left(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{p}\right)=\frac{d\overrightarrow{r}}{dt}×\overrightarrow{p}+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}$$

【ここで、位置ベクトルの時間微分は速度ベクトル\(\overrightarrow{v}\)である事に注意します。】

$$=\overrightarrow{v}×\overrightarrow{p}+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}=m\left(\overrightarrow{v}×\overrightarrow{v}\right)+\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}=\overrightarrow{r}×\frac{d\overrightarrow{p}}{dt}$$

【最初のtで微分した後の第1項は0になり、第2項だけが残るという事です。】

ところで、運動量ベクトルの時間微分とは何であったかというと「力ベクトル」\(\overrightarrow{F}\)であったわけです。(それが運動方程式が表現している事そのものです。)

という事は、角運動量ベクトルの時間微分は結局「位置ベクトル」と「力ベクトル」との外積という事になるわけです。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}$$

この外積ベクトルの事を、「力の能率」あるいは「力のモーメント」と呼びます。

積の形に対する微分公式と同じ形の公式が外積ベクトルを構成するベクトルにも成立します。

力の能率は、意味としては「大きさを持つ物体に力を働かせる時、ある支点から距離が離れているほど回転させる効果は大きい」というものですが、より詳しくは角運動量ベクトルの時間変化という事になるわけです。

力の能率(モーメント)
「てこ」(レバー)を使う時などに、支点からの距離があったほうが回しやい事を表現します。

角運動量の保存則

物体に働く力が「中心力」で、原点を中心にとった時には角運動量は保存量となります(角運動量保存則)。

この時には、角運動量ベクトルがどちらに向いているかはその時々によって異なりますが、
「力」の向き――つまり「運動量ベクトルの時間微分」の向きは、常に中心を向いている事を意味します。

従って、角運動量ベクトルが具体的にどう表されるかはその時々により異なりますが、
力の能率は中心力のもとでは常にゼロベクトルである」と言えるわけです。

$$中心力が物体に働く時:\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}=0【ゼロベクトル。\overrightarrow{F}=C\overrightarrow{r}と書けるから。】$$

ところで、力の能率は角運動量ベクトルの時間微分であったわけですから、中心力のもとではそれが0になる事を意味します。

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=\overrightarrow{r}×\overrightarrow{F}=0$$

時間微分が0であるという事は、「時間によって変化しない」事を意味します。(実際、ベクトルの各々の成分に対して、その形の微分方程式の解は時間に関して「定数」という事になります。「時間に依存しない」形となるわけです。)

$$\frac{d}{dt}\overrightarrow{L}=0\Leftrightarrow \overrightarrow{L}は定ベクトル(時間に依存しない。「保存」する)$$

この事を、「中心力のもとで角運動量は保存する」と表現します。
その事を、力学では角運動量保存則とも言います。

中心力と角運動量の保存

中心力のもとで軌道が円ではなく楕円のようになる場合にでもこの角運動量保存則は成立するので、中心力の発生源に近い場所では物体の運動量(および速さ)が大きくなり、発生源から離れているほど物体の運動量(および速さ)は小さくなる事を表しています。

剛体の角運動量

さて、では大きさを持った立体的な球とか円盤とか(変形しない事を仮定した場合に剛体と呼びます)が、
中心に立てた軸周りに「自転」している形式の回転の場合にはどうなるでしょうか。

この場合には、微小な体積領域で通常の角運動量を考えて、質量を位置の関数としての「密度」で表し、それに体積要素を乗じる事で表現します。それを領域全体で積分する事で「全角運動量」を計算するという形の理論になっています。

$$微小領域の質量:m=\rho dv【mと\rhoは\overrightarrow{r}の関数】$$

$$微小領域の角運動量ベクトル:\overrightarrow{r}×(\rho dv\overrightarrow{v})=\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv$$

ここでは自転的な運動、つまり回転軸の方向が不変である場合を考えます。
その場合は、速度ベクトル\(\overrightarrow{v}\)は「角速度ベクトル」\(\overrightarrow{\omega}\)と位置ベクトル\(\overrightarrow{r}\)の外積として表せるという公式を使えるので、角運動量ベクトルの式を変形できます。

$$公式:\overrightarrow{v}=\frac{d\overrightarrow{r}}{dt}=\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r}を使えるので、$$

$$\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv=\rho\left(\overrightarrow{r}×(\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r})\right) dv$$

この関係式は、より一般的に角速度ベクトルが定ベクトルではなく時間的に変化する関数になっている場合でも成立します。

角速度ベクトルの公式
原点を回転軸上にとった時、角速度ベクトルと位置ベクトルが作る平面と、速度ベクトルとは常に垂直になっています。

外積ベクトルの公式(「ベクトル三重積」)を使うと、もう少し計算を進められます。

$$\rho\left(\overrightarrow{r}×(\overrightarrow{\omega}×\overrightarrow{r})\right) dv=\rho\left(|\overrightarrow{r}|^2\overrightarrow{\omega}-(\overrightarrow{\omega}\cdot\overrightarrow{r})\overrightarrow{r}\right) dv$$

これを領域内で積分(体積分)したものが、剛体全体での角運動量の合計(全角運動量)になります。
積分する領域はVと置いておきます。
◆参考:ガウスの発散定理(体積分の考え方と公式)

$$全角運動量:\overrightarrow{L}=\int_V\rho(\overrightarrow{r}×\overrightarrow{v}) dv=\int_V\rho\left(|\overrightarrow{r}|^2\overrightarrow{\omega}-(\overrightarrow{\omega}\cdot\overrightarrow{r})\overrightarrow{r}\right) dv$$

内積はスカラーである事に注意して、位置ベクトルの成分表示を(x,y,z)とし、角速度ベクトルの成分表示を(ω,ω,ω)とするとさらに次のように書けます。

$$\overrightarrow{L}=\int_V\rho(x^2+y^2+z^2)\overrightarrow{\omega}dv+\int_V\rho(x\omega_x+y\omega_y+z\omega_z)\overrightarrow{r}dv$$

ここで全角運動量のベクトルも成分ごとに分けると、それら各成分は角速度ベクトルの成分の線型結合で表せるという、ちょっとした規則性を見出せます。全角運動量ベクトルのx成分を例として書いてみると、次のようになります。

$$\overrightarrow{L}のx成分:L_x=\int_V\rho\omega_x(x^2+y^2+z^2)dv-x\int_V\rho(x\omega_x+y\omega_y+z\omega_z)dv$$

$$=\omega_x\int_V\rho(x^2+y^2+z^2)dv-\int_V\rho(x^2\omega_x+xy\omega_y+xz\omega_z)dv$$

$$=\omega_x\int_V(y^2+z^2)\rho dv-\omega_y\int_Vxy\rho dv-\omega_z\int_Vxz\rho dv$$

【xの項が引き算で消える形になっています。】

全角運動量ベクトルのy成分とz成分についても同様の形の式になり、全角運動量はある正方行列Iと角速度ベクトルの積で表現できる事が言えます。その行列の成分Iijの事を「慣性テンソル」と呼び、その対角成分【I11,22,I33】は特に「慣性能率」とも呼ばれます。

$$ある3×3行列Iを使って、\overrightarrow{L}=I\overrightarrow{\omega}とも書ける。$$

一様な材質でできた対称性のある剛体の場合(球、円柱、円盤等)、具体的な積分の計算を手計算でも実行する事ができて、慣性能率は比較的簡単な形で表す事ができます。

これらの事は、物理学を専攻する学生さん以外にも、ベクトルやベクトルの外積の応用例を見るのに非常に良い題材の1つになっていると思います。

【証明】ガウスの発散定理

電磁気学などでよく使う「ガウスの発散定理」(「発散定理」「ガウスの定理」とも)の証明をします。
ベクトル解析の分野の中の基礎的で重要な定理の1つになります。

電磁気学の「ガウスの法則」は、「ガウスの発散定理」と関係が深いですが、あくまで静電場に関して成立する事実関係としての「法則」を表すものとして用語の使い分けがなされるのが一般的です。

関連事項(内部リンク)

定理の内容

$$以下、ベクトル場を\overrightarrow{F}=(F_1,\hspace{2pt}F_2,\hspace{2pt}F_3)=(F_1(x,y,z),\hspace{2pt}F_2(x,y,z),\hspace{2pt}F_3(x,y,z))\hspace{2pt}とします。$$

ガウスの発散定理とは次のようなものです。

ガウスの発散定理

ある閉曲面内の体積分と法線面積分について、次の関係式が成立します。 $$\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dv = \int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}$$ $$あるいは、\int\int\int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dxdydz = \int\int_S F_1 dzdy + \int\int_S F_2 dzdx+ \int\int_S F_3 dydx$$ $$S:閉曲面 V:閉曲面で囲まれた空間領域 $$ $$d\overrightarrow{s}=(ds_x,ds_y,ds_z)【成分には正負の符号がある事に注意】$$ 法線面積分を考えた時に使う面積要素 dxdy 等は、dsx 等と同じく、符号を持つので注意。曲面に表と裏を必ず決め、「裏→表」の向きに面積要素のベクトル\(d\overrightarrow{s}\) を立てて向きと成分の符号を考えます。

特に、次の3式が同時に成立し、加え合わせる事で定理全体が成立する事になります。$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_S F_1 dydz$$ $$\int\int\int_V\frac{\partial F_2}{\partial y}dxdydz=\int\int_S F_2 dzdx$$ $$\int\int\int_V\frac{\partial F_3}{\partial z}dxdydz=\int\int_S F_3 dydx$$

積分の表記の仕方としては、次のように記す事もあります。これらは書き方を変えているだけで、全く同じ積分を表すという意味です。dxdyなどの表記の場合に積分記号を2つ重ねる表記にするのは、具体的な計算をする時には重積分の形になる事によります。$$\int_SF_1ds_x=\int\int_SF_1dydz$$ $$\int_SF_2ds_y=\int\int_SF_2dzdx$$ $$\int_SF_3ds_y=\int\int_SF_3dxdy$$

基本的な考え方は、複素関数論におけるグリーンの公式に似ています。要するに、ある多変数のスカラー関数について、変数が2つの特定の値の時に差をとったものは「その関数の偏微分の定積分」に等しいはず・・という発想を使います。

「スカラー関数の偏微分」を「微分する変数で定積分」する事により、特定の値のスカラー関数の差を作る事ができます。重積分の中でこの考え方を使う時は、偏微分に対する定積分の積分区間の端は一般には「関数の形」になります(yで積分するなら例えばy1=y1(x)というxの関数)。

発想自体は実はすごくシンプルなのですが、幾つか知っておかないとならない定義や公式がある事が「難しい」要因になります。特に必要になる事項を4つほど簡単に整理しておきます。

使う定義と公式の整理
①ベクトル場の「発散」の定義

ベクトル場\(\overrightarrow{F}\) に対する「発散」は次のようなスカラー関数です。 $$\mathrm{div}\overrightarrow{F}=\frac{\partial F_1}{\partial x}+\frac{\partial F_2}{\partial y} +\frac{\partial F_3}{\partial z}$$

②法線面積分の定義

法線面積分は、次のように計算できるものとして定義されます。 $$\int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}=\int_S (F_1 ds_z + F_2 ds_y + F_3 ds_z)=\int_SF_1 ds_x+\int_SF_2 ds_y+\int_SF_3 ds_z$$積分記号に添えてあるSは、「特定の閉曲面S」の表面の全域(あるいはそれに対応する領域)に渡って積分をするという意味です。dsz および dxdy 等を面積要素とも言います。(dsz および dxdy は共にxy平面上の領域の面積要素。)

③ \(d\overrightarrow{s} \)の座標成分と射影面積の関係

$$ d\overrightarrow{s}=( ds_x , ds_y , ds_z ) $$

  • \(|ds_x| \):微小領域の「yz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_y| \):微小領域の「xz平面」への射影領域の面積
  • \(|ds_z| \) :微小領域の「xy平面」への射影領域の面積

特に三角形の微小領域を考えると、外積ベクトルの性質によりこれらの関係が明確になります。

④体積分と重積分の関係

体積分は、特定の空間領域の全域に渡ってスカラー関数を積分するものです $$\int_V G(x,y,z) dv=\int\int\int_V G(x,y,z) dxdydz$$。dv =dxdydz を体積要素とも呼びます。
特別な場合では体積要素 dv のまま具体的な計算もできますが、通常は体積要素を dxdydz の形にして重積分にしないと計算は難しい事が多いです。
具体的な関数があって積分の値を計算する時は、次のように、通常の重積分と同じく累次積分を行います。 $$\int\int\int_V G(x,y,z) dxdydz=\int_{Z1}^{Z2}\int_{Y1}^{Y2}\int_{X1}^{X2} G(x,y,z) dxdydz$$ この時に積分する変数の順番は変えられますが、積分する領域の形状によっては、初めに積分する2つの積分区間は定数ではなくて関数になります。ここでの例だと X1=X1(y,z), Y1=Y1(z) 等です。

発散定理(ガウスの定理)の考え方②

発散定理における閉曲面の扱い

積分する範囲が「閉曲面」である事は定理の性質・証明において重要です。

閉曲面とは球や楕円体などの閉じられた曲面の事です。
(ただし直方体等の「角ばった箇所」がある閉じられた立体においても、定理は成立します。証明の過程を見ると、その事は分かりやすいかと思います。)

閉曲面は、凹んだような箇所がある曲面である場合もあります。
しかし、発散定理の証明においては実は「凹みがない」球のような曲面で成立する事を示せば十分です。それは、面積分に関して曲面は分割するできるからです。

例えば閉曲面を平面で真っ二つにした場合には、切断面の部分(2つに分かれた閉曲面の共有部分)では2つの積分の値が絶対値は同じで逆符号になります。それを加え合わせるとゼロになります。これは、共有される切断面においては「ベクトル場は同じ」で分割された2つの閉曲面同士で「法線ベクトルが絶対値は同じで逆符号」である事に起因します。

そのため、凹みのある閉曲面は出っ張ったところで切断して2つ以上の閉曲面に分けてしまう事により、法線面積分も2つの「凹みのない」閉曲面での法線面積分の和にできるのです。
(体積分に関しても、閉曲面を分割すると分割した領域での体積分を加えれば全体になります。)

つまり、発散定理の証明は「凹みのない」閉曲面で示されれば、凹みのある閉曲面で成立する事も示されるという事です。

発散定理(ガウスの定理)における閉曲面の扱い

証明

まず、次式から証明します。閉曲面は凹みがないものとします。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_S F_1 dydz$$

これ1つが証明できれば、他の2式も同じ形なので全く同様に証明できます。
最後に3式を加え合わせれば発散定理の形になります。

積分する前の段階で微小領域を考えると、\(d\overrightarrow{s}=( ds_x , ds_y , ds_z )\)の第1成分dsの絶対値は微小領域のyz平面への射影面積になります。

ところで、yz平面への「同じ射影の領域」を持つ閉曲面の微小領域は必ず2つ存在し、それらの第1成分は必ず符号のプラスマイナスが異なります。同じ射影の領域を持ちますから\(d\overrightarrow{s}\)の第1成分は「同じ大きさで異符号」です。

しかも、その組み合わせの合計で閉曲面は全て覆える事になります。ベクトル場の第1成分Fとdsの積を合計したものはyz平面上の積分になります。【Fは関数F(x,y,z) である事に注意。】
ただし、yz平面上で積分をすると、対応する閉曲面の領域は2つありますから、dsの符号がプラスになる部分とマイナスになる部分に分けられます。

射影領域と閉曲面の関係
凹みのない閉曲面ではxy平面への同一の射影領域を持つ部分が2つ存在し、それらの微小領域に対する法線ベクトルのz成分は互いに異符号になります。yz平面、xz平面への射影についても全く同様に考える事ができます。

ここで、閉曲面Sのyz平面への射影領域であり、yz平面での積分範囲でもある領域をSyzと置きます。
この平面領域Syzは、「表と裏」に関して次の約束事をしておきます:

◆約束事:平面領域Syz
x方向のプラス方向に面した部分が「表」でx方向のマイナス方向に面した部分が「裏」
と決めます。
つまりこの領域Syz上での面積要素のベクトルは\(d\overrightarrow{s}=(ds_x,0,0)\) であり「ds およびdydzの符号は、必ずプラス符号として考える」という事です。
発散定理(ガウスの定理)の証明
ベクトル場の第3成分とxy平面(の射影)での積分を考えた場合はこの図のようになります。図の下側の領域では「もとの閉曲面Sでの面積要素」の符号が全てマイナスなので、「面積要素がプラス符号の平面領域(図のSxy)」での積分として表記する場合には積分全体に対してマイナス符号をつける形になります。

またyとzの関数X(y,z)とX(y,z)を考えて、
それらは各々「yz平面への同じ射影領域を持つ」2つの微小領域でのx座標であるとします。
(領域を2分割して考える時に「x座標の『yとzによる関数』の形」が違うためにそのように考えます。)
すると、閉曲面全体のベクトル場の第1成分Fのyz平面上の領域Syzでの積分は、
次のように差の形で表せる事になります。

$$\int_SF_1ds_x=\int\int_{Syz}F_1(X_B,y,z)dydz-\int\int_{Syz}F_1(X_A,y,z)dydz$$

第1項目はもとの閉曲面で面積要素のベクトルの成分dsがプラス符号である領域の積分です。
第2項目はもとの閉曲面で面積要素のベクトルの成分dsがマイナス符号である領域の積分であり、
領域Syzでの積分では面積要素はプラス符号で扱うと約束しているので「マイナス」は積分全体につける形をとっているわけです。

ここで、差の形になっている部分を、「x方向の『偏微分の定積分』」として考える事ができます。

$$\int\int_{Syz}F_1(X_B,y,z)dydz-\int\int_{Syz}F_1(X_A,y,z)dydz=\int\int_{Syz}\left(\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dx\right)dydz$$

領域Syzでの積分についてもy方向とz方向の積分区間を書くと次のようになります。

$$\int\int_{Syz}\left(\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dx\right)dydz=\int_{\large{Z_B}}^{\large{Z_A}}\int_{\large{Y_B}}^{\large{Y_A}}\int_{\large{X_B}}^{\large{X_A}}\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dxdydz$$

$$=\int\int\int_V\frac{\partial F_1(x,y,z)}{\partial x}dxdydz$$

ここで重積分の形にした箇所のdx、dy、dzは全てプラス符号です。つまり「積分変数自体の符号は気にしない」で計算可能な、通常の積分として考えてよい事になります。(体積要素としてdxdydzをdvと置き、1つの塊として見た時も符号はプラスだけで考えます。)

重積分を累次積分する時の積分の順番は入れ替え可能ですが、積分区間は最後に積分するところを除いて一般には関数になります。
例えば上記の場合の重積分の箇所においてx→y→zの順で累次積分をする場合、積分区間に入っているXとXはyとzの関数【定数である事もあり得る】であり、YとYはzの関数、ZとZは何らかの定数という事になります。
累次積分の順番を変えるとどの積分区間が何の変数のどういう関数形になっているかは変わりますが、同じ関数を同じ領域で積分すれば同じ値を得ます。

これで証明の大体の部分は完了しています。

ところで一番最初の積分については、dsをdydzの形で表記する事もできます。(dxdyの形にする時は、積分記号は重積分のように2つ重ねる表記にします。)

$$\int_SF_1ds_x=\int\int_SF_1dydz$$

これらの結果を等号で結ぶと、証明すべき式になります。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_1}{\partial x}dxdydz=\int\int_SF_1dydz【証明終り】$$

同様に、Fについてはxz平面上の積分を考えて、差の形をyでの偏微分の定積分で表します。Fについてはxy平面上の積分を考えて、差の形をxでの偏微分の定積分で表します。

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_2}{\partial y}dxdydz=\int\int_SF_2dzdx$$

$$\int\int\int_V\frac{\partial F_3}{\partial z}dxdydz=\int\int_SF_3dxdy$$

3式を加え合わせると次のようになります。

$$\int\int\int_V\left(\frac{\partial F_1}{\partial x}+\frac{\partial F_2}{\partial y}+\frac{\partial F_3}{\partial z}\right)dxdydz=\int\int_S(F_1dydz+F_2dzdx+F_3dxdy)$$

$$\Leftrightarrow \int_V \mathrm{div}\overrightarrow{F} dv = \int_S \overrightarrow{F}\cdot d\overrightarrow{s}【発散定理の形】$$

上記の発散定理における閉曲面の扱いで記したように、閉曲面に凹みがある場合でも領域を切断して分割する事で定理が成立します。

外積ベクトルの定義と公式【3次元】

3次元ベクトルに対しては、「外積」と呼ばれるベクトルを考えます。
外積ベクトルは、物理学で力のモーメントや角運動量、電磁気学での特定の法則などの定式化に使用したりします。また幾何的には「平行六面体」の体積を表す公式に使用もされます。

◆「微分形式」という数学分野の演算でも「外積代数」という用語を使います。その3次元版では確かに「外積ベクトル」との共通性がありますが、一般には区別されており、微分形式の外積代数で使う記号【∧】による演算を「ウェッジ積」と呼び、
3次元ベクトルに対して外積ベクトルを作る時の記号【×】による演算は「クロス積」もしくは「べクトル積」と呼ぶ事もあります。
(英語の場合、3次元ベクトルの外積ベクトルを指す語としては、「べクトル積」に該当する vector product という表現を使う事が多いです。)

高校では数学でも物理でも外積を直接計算する事はほとんどないと思いますが、力と磁場と電流の向きの関係などで間接的に関わっています。そういった関係を、数学的にもう少し詳しく定式化したものが外積ベクトルになります。

定義と考え方

外積ベクトルは、3次元空間内の2つのベクトルから作られる別のもう1つのベクトルの事で、次のような定義のもとで使用します。

外積ベクトルの定義

3次元の空間ベクトル \(\overrightarrow{a}と\overrightarrow{b}\) とから作られる外積ベクトル(あるいは単に「外積」)は、次のように$$\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}$$と書き、向きと大きさを次のように定義します:

  • 大きさ:\(\overrightarrow{a}と\overrightarrow{b}\) が作る平行四辺形の面積に等しいとする
  • 向き:\(\overrightarrow{a}と\overrightarrow{b}\) が作る平面に対して垂直
    【\(\overrightarrow{a}から\overrightarrow{b}\)に向けてより小さい角度で「右ねじ」を締める時のネジ回しの先端の方向】
外積(ベクトル積、クロス積)の定義

通常のスカラー値やスカラー関数の場合、掛け算の記号はA×B、A・B、ABのいずれでも同じ計算を表すと約束しますが、ベクトルの場合には、「\(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}\)は必ず内積」「\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)は必ず外積」を表すものと定義します。

外積ベクトルの大きさに関しては、2つのベクトルが作る平行四辺形の面積ですから、ベクトルの成分さえ分かれば一応計算できる事になります。

外積ベクトルの「向き」については、2ベクトルが作る平面(平行四辺形も含めて)に「垂直」という定義ですが、この時に表側の方向への垂直なのか、裏側の方向への垂直なのか2パターン存在します。
そのどちらかに必ず1つに決めるための基準が「右ネジを回す方向」というわけです。(これは少し直感的な説明の仕方ではあるのですが、物理学でもよくなされます。)

ネジを締める時に、時計回りにネジ回しを回せば締まっていくタイプのネジを考えます。
(反時計回りに回すと締まる「逆ネジ」も存在しますが、それは考えない。)
普通は上から見下ろしてネジを回しますが、仮に天井に向けてネジを回して締める時には「下から見れば時計回り」ですが、「上から見ると反時計回り」に見える事に注意します。

右ねじと外積ベクトルの向き①

外積ベクトル\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)の始めに書かれているほう(ここでは\(\overrightarrow{a}\)のほう)から、「時計回りに回せば『より小さい角度で』もう1つのベクトルに辿り着く」視線の方向を考えます。2つベクトルが作る平面の「表」から見るか、「裏」から見るかという事です。z軸のプラスマイナスを基準として上側(プラス方向)から見るか、下側(マイナス方向)から見るかの違いとも言えます。

z軸を基準にした時に上から見た時に、\(\overrightarrow{a}\)から時計回りに(ネジを締める方向に)回して「より小さい角度」で\(\overrightarrow{b}\)に至る状況だったとしましょう。この時は、外積ベクトル\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)の向きは、斜めになりながらもz軸の上から下に向かう方向に向いています。(実際、外積ベクトルのz成分の符号はマイナスになります。)

右ねじと外積ベクトルの向き②
画面や紙面に対して「奥→手前」「手前→奥」を表す記号は、
弓矢の「矢」の矢先が眼前に飛んでくるイメージで「丸に点・」の記号で「奥→手前」を表し、
矢の後部についている「羽」が後ろから見えているイメージで「丸にバツ×」の記号で「手前→奥」の向きを表します。

演算と基本公式

外積ベクトルに関しては、幾つかの簡単な公式が成立します。

公式
  • \(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{a}=0\) 【一応「ゼロベクトル」。平行四辺形が潰れてしまうので】
  • 2つのベクトルが平行であれば\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=0\) 
  • 2つのベクトルが直角であれば \(|\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}|=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\) 【平行四辺形が長方形となるためです。】
  • k を実数として、\((k\overrightarrow{a})×\overrightarrow{b}=\overrightarrow{a}×(k\overrightarrow{b})=k(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b})\) 【ベクトルの定数倍に対する扱い】
  • \(\overrightarrow{a}×(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}×\overrightarrow{c}\) 【分配則】
  • \(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=-\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}\) 【交代性。可換でない(交換則が成立しない)事に注意】

これらのうちの交代性と分配則については、もう少し詳しく述べます。

外積ベクトルの交代性

外積ベクトル\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\) に対して、外積を構成するベクトルの配置は全く同じで式の中の順番だけ入れ替えた\(\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}\) という外積を考えると考えるとどうなるでしょうか?

この場合は、下から見て時計回りにネジを締めようとする事で条件を満たすので、向きは\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)と同一直線にあって「逆向き」になります。

言い換えると、ベクトルの外積は、演算に使う2つのベクトルの順番を変えると符号が逆転します。【内積は2つのベクトルの順序はどちらでもよい事に注意。】

公式:外積ベクトルの交代性

$$\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=-\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}$$

この時に外積ベクトルの成分も各々符号が反転します。
例えば簡単な例で言うと、\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)=(1,-2,5)であったとしたら、
\(\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}\)=-\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)=(-1,2,-5)になるという事です。

外積ベクトルの分配則【証明】

分配則については、一見「当たり前」のようですが、外積ベクトルの定義が多少込み入ったものである事や、可換性については成立していない(代わりに交代性が成立)事から、実はそれほど自明な事ではないとも言えます。

証明は、空間の幾何を考える方法があります。

まず、\(\overrightarrow{b}と\overrightarrow{c}と(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})\) の3つのベクトルで作られる三角形を考えます。そして、その三角形の各点から\(\overrightarrow{a}\) が伸びているような図を考えます。

次に、\(\overrightarrow{b}の始点から伸びる\overrightarrow{a}\)に対して\(\overrightarrow{b}\) の終点から垂線を引き、その足となる点をHとします。
同様に、\(\overrightarrow{c}の終点から伸びる\overrightarrow{a}\)に対して\(\overrightarrow{b}\) の終点(\(\overrightarrow{c}\) の始点)から垂線を引き、
その足となる点をHとします。
また、\(\overrightarrow{b}\) の終点であり\(\overrightarrow{c}\) の始点でもある点をAと置きます。

外積ベクトルの分配則

この時、AH、AH、Hはそれぞれ平行四辺形の高さになっています。
は\((\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})と\overrightarrow{a}\)が作る平行四辺形の高さです。
(\(\overrightarrow{AH_B}と\overrightarrow{AH_C}がともに\overrightarrow{a}\)に垂直なので辺Hも\(\overrightarrow{a}\)に垂直です。内積を考えると少し分かりやすい。)

そこで、3つの外積ベクトルの「大きさ」をそれらの辺の長さで表す事ができます。
(単純に「平行四辺形の面積=底辺×高さ」で計算します。)

  • \(|\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}|=|\overrightarrow{a}||AH_B|\)
  • \(|\overrightarrow{a}×\overrightarrow{c}|=|\overrightarrow{a}||AH_C|\)
  • \(|\overrightarrow{a}×(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})|=|\overrightarrow{a}||H_BH_C|\)

ここで、これら3つの外積ベクトルがぴったり「三角形」を作れるかが実は自明ではありません。
しかしこの計算結果から、3つの外積ベクトルの大きさの比は、三角形AHの辺の比に全く等しい事になります。つまりそれらは互いに相似な三角形になっている事を意味し、従って3つの外積ベクトルはきちんと「三角形」を形成する事になります。
さらに、\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)と\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{c}\)の2つのベクトルに対する斜辺は\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}×\overrightarrow{c}\)と(常に)表せるので、\(\overrightarrow{a}×(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}×\overrightarrow{c}\) という事になります。【証明終り】

成分表示の方法(外積ベクトルの成分と射影面積の関係)

外積ベクトルはベクトルですので【内積はスカラー】、通常のベクトルと同様にx、y、z座標の成分を持ちます。そして2つの空間ベクトル\(\overrightarrow{a}と\overrightarrow{b}\) の成分が分かっていれば、外積ベクトル\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}\)の成分も一意的に決定します。

まず結論は、次のようになります。

外積ベクトルの成分表示

$$\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3),\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=(b_1,b_2,b_3)である時$$ $$\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=(a_2b_3-b_2a_3,\hspace{5pt}a_3b_1-a_1b_3,\hspace{5pt}a_1b_2-b_1a_2)$$ ここで、
第1成分の絶対値は平行四辺形のyz平面への射影面積、
第2成分の絶対値は平行四辺形のxz平面への射影面積、
第3成分の絶対値は平行四辺形のxy平面への射影面積
になります。
(※絶対値が「面積」に必ず等しいという事であり、外積ベクトルの各成分の符号はプラスの場合もマイナスの場合もある事には注意。各成分の符号が外積ベクトルの向きも決定します。)

外積ベクトルの成分と射影面積の関係について、空間上の平行四辺形の各平面への射影もまた「平行四辺形」になっている事は、ベクトルによる平行四辺形の面積公式の形から分かります。
例えば外積ベクトルのz成分 a-aは、xy平面上の平面ベクトルが作る平行四辺形の面積公式の形そのものです。

平行四辺形の射影面積

外積ベクトルの交代制から、外積を構成するベクトルの順序を入れ替えると(ベクトルの配置自体は同じ)、次のような差の順番が入れ替わったような形の成分表示になります。$$\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}=(b_2a_3-a_2b_3,a_1b_3-a_3b_1,a_2b_1-b_2a_1)$$

成分表示についての証明

このように成分表示できる事の証明は、単位ベクトルによるベクトル表記と分配則を使うと意外と簡単に済みます。

$$\overrightarrow{e_1}=(1,0,0),\hspace{5pt}\overrightarrow{e_2}=(0,1,0),\hspace{5pt}\overrightarrow{e_3}=(0,0,1)\hspace{5pt}のもとで$$

$$\overrightarrow{a}=a_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3},\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=b_1\overrightarrow{e_1}+b_2\overrightarrow{e_2}+b_3\overrightarrow{e_3}\hspace{10pt}と書けます。$$

このような表された形のもとで外積の公式を使いながら計算して整理すると、外積ベクトルの成分表示が確かに得られます。

使う公式と性質は次の通りです。

  • 「分配則」を使って、通常の展開式のように計算していきます。
    添え字の順番を変えると外積の符号が変わってしまうので注意。
  • 「同じベクトル同士の外積は0」つまり\(\overrightarrow{e_1}×\overrightarrow{e_1}=0\) のようになる事を使うと幾つかの項が0になって消えます。
  • 分配則に従って展開した後で、「交代性」\(\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=-\overrightarrow{b}×\overrightarrow{a}\)も使用して式を整理します。
  • 異なる単位ベクトル同士は、成す角度が直角であり、作る平行四辺形は正方形であって大きさは1です。さらに単位ベクトル同士の位置関係にも注意して、
    \(\overrightarrow{e_1}×\overrightarrow{e_2}=\overrightarrow{e_3}\)
    \(\overrightarrow{e_2}×\overrightarrow{e_3}=\overrightarrow{e_1}\)
    \(\overrightarrow{e_3}×\overrightarrow{e_1}=\overrightarrow{e_1}\hspace{5pt}\) となる事を最後に使います。
単位ベクトルの外積
通常使われる直交座標の「座標軸の向き」は、外積ベクトルの向きの決まり方を把握するうえでも意外と便利です。3つの単位ベクトルの1つ1つは他の2つの単位ベクトルの外積として表せます。

$$\overrightarrow{a}×\overrightarrow{b}=(a_1\overrightarrow{e_1}+a_2\overrightarrow{e_2}+a_3\overrightarrow{e_3})×\overrightarrow{b}=b_1\overrightarrow{e_1}+b_2\overrightarrow{e_2}+b_3\overrightarrow{e_3}$$

$$=a_1b_2(\overrightarrow{e_1}×\overrightarrow{e_2})+a_1b_3(\overrightarrow{e_1}×\overrightarrow{e_3})+a_2b_1(\overrightarrow{e_2}×\overrightarrow{e_1})+a_2b_3(\overrightarrow{e_2}×\overrightarrow{e_3})+a_3b_1(\overrightarrow{e_3}×\overrightarrow{e_1})+a_3b_2(\overrightarrow{e_3}×\overrightarrow{e_2})$$

$$=(a_2b_3-a_3b_2)(\overrightarrow{e_2}×\overrightarrow{e_3})+(a_3b_1-a_1b_3)(\overrightarrow{e_3}×\overrightarrow{e_1})+(a_1b_2-a_2b_1)(\overrightarrow{e_1}×\overrightarrow{e_2})$$

$$=(a_2b_3-a_3b_2)\overrightarrow{e_1}+(a_3b_1-a_1b_3)\overrightarrow{e_2}+(a_1b_2-a_2b_1)\overrightarrow{e_3}$$

$$=
(a_2b_3-b_2a_3,\hspace{5pt}a_3b_1-a_1b_3,\hspace{5pt}a_1b_2-b_1a_2)【証明終り】$$

外積ベクトルの成分表示は、次のように証明する事もできます。
外積ベクトルの成分を(X,Y,Z)とおいて計算してみます。これらの未知数を算出する計算になります。 まず、次のように置いておきます。$$a_2b_3-a_3b_2=S_1,\hspace{5pt}a_3b_1-a_1b_3=S_2,\hspace{5pt}a_1b_2-a_2b_1=S_3$$ 外積ベクトルの定義から、構成する2つのベクトルとの直交性(内積の値が0)と、3次元の場合の平行四辺形の面積公式の3式を書きます。 $$①\overrightarrow{a}との直交性:a_1X+a_2Y+a_3Z=0$$ $$②\overrightarrow{b}との直交性:b_1X+b_2Y+b_3Z=0$$ $$③面積【2乗を計算】:X^2+Y^2+Z^2=(a_2b_3-b_2a_3)^2+(a_3b_1-a_1b_3)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2$$ $$\Leftrightarrow X^2+Y^2+Z^2=S_1\hspace{1pt}^2+S_2\hspace{1pt}^2+S_3\hspace{1pt}^2$$ ①式に\(b_1\)、②式に\(b_1\) を掛けて2つの式を引き算すると、
\((a_1b_2-a_2b_1)Y=(a_3b_1-a_1b_3)Z \Leftrightarrow S_3Y=S_2Z\) となります。
同じ手順で1つの変数を消去する方法を使うと、
\(S_1Y=S_2X\)および\(S_3X=S_1Z\) となります。
ここで、面積のほうの式③の両辺に\(S_1\hspace{1pt}^2\) を掛けると、次のようになります。 $$S_1\hspace{1pt}^2X^2+S_1\hspace{1pt}^2Y^2+S_1\hspace{1pt}^2Z^2=S_1\hspace{1pt}^2(S_1\hspace{1pt}^2+S_2\hspace{1pt}^2+S_3\hspace{1pt}^2)$$ $$\Leftrightarrow S_1\hspace{1pt}^2X^2+S_2\hspace{1pt}^2X^2+S_3\hspace{1pt}^2X^2=S_1\hspace{1pt}^2(S_1\hspace{1pt}^2+S_2\hspace{1pt}^2+S_3\hspace{1pt}^2)$$ $$\Leftrightarrow (S_1\hspace{1pt}^2+S_2\hspace{1pt}^2+S_3\hspace{1pt}^2)X^2=S_1\hspace{1pt}^2(S_1\hspace{1pt}^2+S_2\hspace{1pt}^2+S_3\hspace{1pt}^2)\Leftrightarrow X^2=S_1\hspace{1pt}^2$$ 同様に計算すると、\(Y^2=S_2\hspace{1pt}^2およびZ^2=S_3\hspace{1pt}^2\)となります。
X、Y、Zの値としてそれぞれプラスとマイナスの2つ候補が出てきますが、既に得られているX、Y、Zの関係式と、外積ベクトルの向きの定義に合う組み合わせから、ここでの計算の場合では「全てプラス符号」です。(具体的な値を代入して試してみると分かりやすいです。)
それにより、\(X=S_1=a_2b_3-b_2a_3,\hspace{5pt}Y=S_2=a_3b_1-a_1b_3,\hspace{5pt}Z=S_3=a_1b_2-a_2b_1\) となります。

ベクトル三重積

外積はベクトルなので、
「あるベクトルと、別の外積ベクトルとの『外積』」というのも計算としてはあり得ます。

つまり、\(\overrightarrow{A}\)×(\(\overrightarrow{B}\)×\(\overrightarrow{C}\)) のような計算も可能であるわけです。
このタイプの計算を「ベクトル三重積」と呼ぶ事があります。次の形の計算が可能です。

(公式)ベクトル三重積の計算

$$\overrightarrow{A}×(\overrightarrow{B}×\overrightarrow{C})=(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{B}-(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{B})\overrightarrow{C}$$ また、外積ベクトルを作る順番を変えると計算結果も変わり、次式になります。 $$(\overrightarrow{A}×\overrightarrow{B})×\overrightarrow{C}=-(\overrightarrow{B}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{A}+(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{B}$$

この公式中で、内積はスカラーなので、\((\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{B}\) などは例えば\(3\overrightarrow{B}\) のようなベクトルの定数倍のようなものを表します。(スカラー関数倍という場合もあり得ます。)

◆ベクトルの「内積」の場合は、ベクトルとベクトルからスカラーを作る演算なので、3つ以上のベクトルに対する内積の演算は存在しないわけです。

ベクトル三重積の公式を証明するには、外積ベクトルの成分表示を使うと比較的簡単です。(少しの計算は必要ですが。)

まず、\(\overrightarrow{A}\)×(\(\overrightarrow{B}\)×\(\overrightarrow{C}\)) のx成分から計算すると次のようになります。

$$x成分:a_2(b_1c_2-c_1b_2)-a_3(b_3c_1-c_3b_1)=b_1(a_2c_2+a_3c_3)-c_1(a_2b_2+a_3b_3)$$

$$=b_1(a_1c_1+a_2c_2+a_3c_3)-c_1(a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3)=(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})b_1-(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{B})c_1$$

途中の計算で、a111-a111(=0)を式に加えています。

同様の計算で、y成分とz成分は次のようになります。

$$y成分:(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})b_2-(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{B})c_2\hspace{10pt}z成分:(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})b_3-(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{B})c_3$$

よって、全て合わせると公式の形になるわけです。

ベクトル三重積の括弧の順番を変えたものは、前述の交代性の性質により証明できます。まず、括弧の部分と次の部分を入れ替えてしまいます。すると、既に得られている結果を使えます。

$$(\overrightarrow{A}×\overrightarrow{B})×\overrightarrow{C}=-\overrightarrow{C}×(\overrightarrow{A}×\overrightarrow{B})=-\{(\overrightarrow{C}\cdot\overrightarrow{B})\overrightarrow{A}-(\overrightarrow{C}\cdot\overrightarrow{A})\overrightarrow{B}\}$$

$$=-(\overrightarrow{B}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{A}+(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{C})\overrightarrow{B}$$

ここで、内積の順序に関しては可換なので、書く文字の順番の入れ替えをしただけです。外積の順序の入れ替えをする時には符号が入れ替わります。

外積ベクトルに対する微分

外積ベクトルを微分すると、通常のスカラー関数の積に対する微分公式と似た形の式が成立します。この微分操作は、物理学などでの「時間微分」として使われる事があります。

(公式)外積ベクトルに対する微分演算

$$\frac{d}{dt}(\overrightarrow{A}×\overrightarrow{B})=\frac{d\overrightarrow{A}}{dt}×\overrightarrow{B}+\overrightarrow{A}×\frac{d\overrightarrow{B}}{dt}$$ 外積ベクトルの部分の順番に注意。逆にすると符号が変わってしまいます。
足し算の部分は逆にしても大丈夫。

この式は自明ではないので(スカラー関数の積の微分公式を知っていたとしても)、証明が必要になります。

この公式も、外積ベクトルの成分表示を使う事で示すことができます。ベクトルの微分は、各々の成分に対する微分として定義されます。ここでは、ベクトルの成分は全てスカラー関数であるとします。計算としては通常の積の微分公式を使用します。

$$x成分の微分:\frac{d}{dt}(a_2b_3-a_3b_2)=\left(\frac{da_2}{dt}b_3+\frac{db_3}{dt}a_2\right)-\left(\frac{da_3}{dt}b_2+\frac{db_2}{dt}a_3\right)$$

$$=\left(\frac{da_2}{dt}b_3-\frac{da_3}{dt}b_2\right)+\left(\frac{db_3}{dt}a_2-\frac{db_2}{dt}a_3\right)=\left(\frac{da_2}{dt}b_3-\frac{da_3}{dt}b_2\right)+\left(a_2\frac{db_3}{dt}-a_3\frac{db_2}{dt}\right)$$

これは確かに公式の外積ベクトルの和の形になっています。最後の変形は、外積ベクトルの成分となる事を明確にするために積の部分の順番を入れ替えただけです。(この式中に出てくるのは全てスカラー量なので、積の順序に関して可換です。)

同様にして、y成分とz成分についても示せます。

$$y成分の微分:\frac{d}{dt}(a_3b_1-a_1b_3)=\left(\frac{da_3}{dt}b_1-\frac{da_1}{dt}b_3\right)+\left(a_3\frac{db_1}{dt}-a_1\frac{db_3}{dt}\right)$$

$$z成分の微分:\frac{d}{dt}(a_1b_2-a_2b_1)=\left(\frac{da_1}{dt}b_2-\frac{da_2}{dt}b_1\right)+\left(a_1\frac{db_2}{dt}-a_2\frac{db_1}{dt}\right)$$

このようにして証明ができるわけです。

平行四辺形の面積【ベクトルでの公式】

平行四辺形の面積は「底辺×高さ」です。(参考:台形の面積公式と同じ考え方)
他方で、「直交座標上の2つのベクトルが作る平行四辺形」の面積を、
「ベクトルの大きさと内積」あるいは「ベクトルの成分」で表す方法と公式があります。

(ベクトルが作る「三角形」の面積については、単純に平行四辺形の面積を半分個を考えます。)

ベクトルが作る平行四辺形の面積

原点を始点とする2つのベクトル\(\overrightarrow{a}=(a_1,a_2)\) と \(\overrightarrow{b}=(b_1,b_2)\) があり、なす角度がθであるという。
その時に、2つのベクトルを組み合わせて作られる平行四辺形の面積Sは次の公式で計算できます: $$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}=|a_1b_2-a_2b_1|$$

後述するように、考え方は3次元での2つの空間ベクトルが作る平行四辺形にも適用できます。

平面ベクトルの場合

まず、考え方としては単純に「底辺×高さ」で行きます。

そして、「底辺」の長さについては1つのベクトルの大きさを使います。

次に、もう1つのベクトルの大きさの正弦が「高さ」になるのです。

そこで、三角比の公式 sinθ+cosθ=1を使って正弦を余弦で表します。
(この公式は三角関数の範囲の一般角でも成立します。)

$$底辺:|\overrightarrow{a}|$$

$$高さ:|\overrightarrow{b}|\sin\theta$$

$$公式から【0<\theta <\piの時】:\sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}$$

$$\left(-\pi<\theta <0の時は\sin\theta=-\sqrt{1-\cos^2\theta}ですが、面積を考える時はその絶対値を考えます\right)$$

平面ベクトルが作る平行四辺形の面積

さらに余弦をベクトルの内積と大きさで表せる事に注意すると、
平行四辺形の面積を「ベクトルの大きさと内積」だけで表せます。ここで、もし2ベクトルが成す角が直角であれば直ちに長方形で面積は確定するので、直角でない時を考えます。

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta$$

$$\cos\theta=\frac{\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}}{|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|}$$

以上の事を代入しながら繋げていって、平行四辺形の面積を計算できるわけです。
一見すると無理やり計算しても滅茶苦茶な式になってしまいそうですが、実は分母と分子がうまく噛み合って比較的単純な形になります。(sinθが負になる場合も考慮して絶対値の|sinθ|を考えますが、要するにプラスの値だけ考えるという意味になります。)

$$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\sqrt{1-\cos^2\theta}$$

$$=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\sqrt{1-\frac{(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2}}=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2\left(1-\frac{(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2}\right)}$$

$$=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}$$

平方根の根号(√)の中にベクトルの大きさを2乗の形で入れてしまう事で、このようになるわけです。
この式は、平面でも3次元の空間でも成立します。

ここで、さらにベクトルの成分を使うと別の公式を導出できます。

$$\overrightarrow{a}=(a_1,a_2)\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=(b_1,b_2)のもとで、$$

$$|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2=(a_1\hspace{2pt}^2+a_2\hspace{2pt}^2)(b_1\hspace{2pt}^2+b_2\hspace{2pt}^2)=(a_1b_1)^2+(a_1b_2)^2+(a_2b_1)^2+(a_2b_2)^2$$

$$(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2=(a_1b_1+a_2b_2)^2=(a_1b_1)^2+(a_2b_2)^2+2a_1b_1a_2b_2$$

一見ちょっと面倒な形になっていますが、引き算するとなくなる項が出てきます。

$$|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2=(a_1b_1)^2+(a_2b_1)^2-2a_1b_1a_2b_2=(a_1b_2-a_2b_1)^2$$

このように上手く2乗の形になるので、平行四辺形の面積は次のようにも書けるわけです。

$$S=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}=\sqrt{(a_1b_2-a_2b_1)^2}=|a_1b_2-a_2b_1|$$

最後に絶対値記号をつけているのはabーabという値がプラスかマイナスかはその時々によって違うので、どちらにせよ絶対値を考えれば面積になるという意味です。

この公式は、重積分の変数変換の公式の中で使ったりもします。

空間ベクトルの場合

3次元の空間ベクトルの場合でも、同じくベクトルの成分で平行四辺形の面積を表せます。
この場合にはまとめ方がちょっと面倒で、2乗の形の3つの式の和が平方根の中に入る形になります。

$$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|が空間ベクトルでも成立する事に注意して、$$

$$\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3)\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=(b_1,b_2,b_3)のもとでは、$$

$$S=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}$$

$$=\sqrt{(a_1b_2)^2+(b_1a_2)^2+(a_1b_3)^2+(b_3a_1)^2+(a_2b_3)^2+(a_3b_2)^2-2(a_1b_1a_2b_2+a_1b_1a_3b_3+a_2b_2a_3b_3)}$$

$$=\sqrt{(a_1b_2-b_1a_2)^2+(a_1b_3-b_3a_1)^2+(a_2b_3-a_3b_2)^2}$$

この表示は、3次元ベクトルの外積(ベクトル積、クロス積)を使用する時に使う場合もあります。

◆外積の計算で使う場合には、上記の面積の式は$$S=\sqrt{(a_2b_3-a_3b_2)^2+(a_1b_3-b_3a_1)^2+(a_1b_2-b_1a_2)^2}$$のように順番だけ並び替えたほうが外積ベクトルの成分との対応が明確になります。
平方根の中の2乗になっているそれぞれの項が、実は2次元平面上の「平行四辺形」の形になっている事に注意。これは、3次元空間の中でのちゃんとした幾何的な意味も持っていて、外積ベクトルを使う計算で重要になります。

3次元空間での平行四辺形の面積