直角三角形の辺の比の関係

三角比とは直角三角形の2つの辺の比の事で、どの2つの辺を考えるかによって
「正弦(sine)」「余弦(cosine)」「正接(tangent)」の3種類があります。
【学校では一般的には高校数学の内容です。】

このページでは三角比の図形的な意味と使われ方について詳しく説明します。

三角比は「三角関数」の変数を平面図形で使用する範囲に限定したものであり(基本は0から90°(\(\pi\)/2) で、鈍角三角形を含む図形問題に適用する時は180°まで広げます。)三角関数の値と諸性質の基本になっています。ただし、三角関数は図形を離れて周期関数として扱う事に1つの大きな意味があり、図形問題を解くツールとしての三角比とはやや区別すべきところがあります。

そのため、数学的に厳密に区分されているわけではないのですが、使う目的を区別する意味で三角比と三角関数は分けておくと整理がしやすくなります。全く関連がないという事ではなくて、目的や考察の着目点が変わってくるという事です。

正弦・余弦・正接は図形的に見れば「直角三角形の辺の長さの比」であり、何と言っても分かりやすい事に利点があります。まず図形的な意味を把握してから、「直角三角形」という図形を離れても考え方を適用できるように工夫をするのが基本的な流れになります。ここでの「三角比」の説明は、その最初の図形的な段階の説明になりまs。

正弦・余弦・正接の図形的な定義

三角比は直角三角形の辺の比ですが、この値は角度によって変わります。そのため、三角比は角度を変数として表されます。

三角形の各辺の比は相似である別の三角形でも同じ値ですから、三角比は直角三角形の大きさにはよらず角度によってのみ確定する値になります。角度によって1つの値が決まるのです。

次のように角度をθ(シータ、テータ)として、
正弦・余弦・正接はそれぞれ「sin(サイン)」「cos(コーサイン、コサイン)」「tan(タンジェント)」の記号を使って表します。

正弦、余弦、正接の定義

$$正弦:\sin \theta$$

$$余弦:\cos \theta$$

$$正接:\tan \theta$$

角度θの部分には具体的な角度を入れたりします。
例えば、角度30°の正弦は sin30°と書き、「サイン30度」のように読みます。
弧度法で書くなら 30°は\(\pi\)/6】

★高校数学では、1次関数のグラフの傾きを正接 tanθ で表す事もあるので知っておくと便利です。
意味としては、図形上の意味と「傾き」の定義(yの増分をxの増分で割った値)を考えてみるとすぐに分かるでしょう。

三角比はまずは図で考えてみるべきものです。直角三角形の斜辺の長さをc、対象の角度を斜辺とともはさむ辺の長さをa、残り1つの辺の長さをbとします。その時の正弦、余弦、正接は辺の長さで表すと次のようになります。

$$\sin \theta=\frac{b}{c}\hspace{20pt}\cos \theta=\frac{a}{c}\hspace{20pt}\tan \theta=\frac{b}{a}$$

【直角三角形なので三平方の定理によりa+b=cですが、これは必要がある場合には使います。】

上記3つの三角比の逆数も、同じく三角比の仲間です。しかし高校数学ではそれほど重要ではありません。特定の計算で逆数の表記が煩雑になる場合などでは、表記法として役に立つ事もあります。
一応記号を書いておくと次の通りです。コーセカント、セカント、コータンジェントと読みます。 $$\mathrm{cosec}\theta=\frac{c}{b}=\frac{1}{\sin\theta}\hspace{20pt}\sec\theta=\frac{c}{a}=\frac{1}{\cos\theta}\hspace{20pt}\cot \theta=\frac{a}{b}=\frac{1}{\tan\theta}$$ 高校数学では正弦 sinθ、余弦 cosθ、正接 tanθ の3つがまずは基本であると考えてよいと思います。

具体的な値(30°、45°、60°)

さて、これら三角比の値は角度によって1つに定まると前述しましたが、具体的な値については、手計算で簡単に分かるものはじつは数えるほどのものしかありません。

具体的には、30°、45°、60°の三角比については図を描く事で簡単に知る事ができます。
(学校で覚えるようにと言われるのも基本的にはこれらの値です。)

30°、45°、60°の三角比の出し方
三平方の定理を使えば直角三角形の斜辺とその他の辺の長さの関係が分かるので、三角比の値を計算する事ができます。

30°、45°、60°の三角比の具体的な値を表にすると次のようになります。
後述する三角比の公式と合わせると、より分かりやすいでしょう。

正弦(sinθ) 余弦(cosθ) 正接(tanθ)
$$\sin 30°=\frac{1}{2}$$ $$\cos 30°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$ $$\tan 30°=\frac{1}{\sqrt{3}}$$
$$\sin 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{\sqrt{2}}{2}$$ $$\cos 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}=\frac{\sqrt{2}}{2}$$ $$\tan 45°=1$$
$$\sin 60°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$ $$\cos 60°=\frac{1}{2}$$ $$\tan 60°=\sqrt{3}$$

これらの三角比の値を知る方法はごく単純なものであって、まず正三角形を真っ二つにする事によって30°と60°の場合が分かります。

まず60°の場合です。この場合は、1辺が「2」の正三角形を考えると分かりやすく、真っ二つにすると斜辺が2、底辺が1、高さが\(\sqrt{3}\)の直角三角形ができます。斜辺の長さを2とすると、真っ二つにする事でできる底辺の部分は1、切断部分に相当する高さ部分は三平方の定理により3の平方根になるという事です。

$$高さ部分の辺の大きさをhとすると、h=\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt{3}$$

それで、三角比も分かる事になります。得られた値を、定義にそのまま代入するのです。三角比の定義通りに当てはめると次のようになります。

$$\sin 60°=\frac{\sqrt{3}}{2}\hspace{20pt}\cos 60°=\frac{1}{2}\hspace{20pt}\tan 60°=\frac{\sqrt{3}}{1}=\sqrt{3}$$

30°の場合は、直角三角形の残りの角度が90°ー60°=30°である事を使います。三角形の向きを変えてみると分かりやすいでしょう。次のようになります。

$$\sin 30°=\frac{1}{2}\hspace{20pt}\cos 30°=\frac{\sqrt{3}}{2}\hspace{20pt}\tan 30°=\frac{1}{\sqrt{3}}$$

次に45°の場合ですが、これは1つの角が直角であれば直角二等辺三角形になりますので、斜辺の長さをc、残りの辺の長さを1とすればc=1+1=2によって計算できるので三角比も分かるわけです。

$$\sin 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}\hspace{20pt}\cos 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}\hspace{20pt}\tan 45°=\frac{1}{1}=1$$

図に描いてみると分かりやすいと思いますが、sin 45°=cos 45° になります。

参考までに、その他の角度についての三角比の値を知るには、正弦についての無限級数展開(マクローリン展開)を使います。$$\sin \theta=\theta – \frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\frac{\theta^7}{7!}+\cdots$$ただし、この式を使う時には角度は弧度法で表したものでなければなりません。
例として、10° は弧度法で\(\pi\)/18なので、式に代入して四捨五入で小数点第3位まで計算すると sin10° ≒ 0.174 です。
最近の高校ではこの式は扱わないので、高校数学の範囲ではこの計算は覚えなくて差し支えありません。(高校の物理で一部、θが小さい時には sinθ≒θ であるという近似式を使いますが、それが上記の式で高次の項を0とみなしたものです。)

公式と性質

三角比について成立する公式や性質がいくつかあるので、挙げておきます。

まず1つは、公式というか図を見れば分かるかとも思いますが、正弦と余弦は0~90°の範囲において、0より大きく1より小さい範囲の値しかとらないというものです。これに対して0~90°の範囲の角度において、正接はいくらでも大きい正の値をとれます。

三角比の公式・性質①

角度θが0<θ<90°の範囲の時、次式が成立します: $$0<\sin\theta<1\hspace{20pt}0<\cos\theta<1$$ これに対して、0<θ<90°の範囲で正接 tanθ は任意の正の値を取り得ます。

この不等式が成立する理由は、三角形の辺の長さのうち斜辺は必ず3辺の中で最大の長さになるという性質を考えてもいいですし、三角不等式c>a+bを考えてもいいですし、三平方の定理から分母が必ず分子より大きくなると考えてもいずれの方法でもよいと思います。

また、次のいくつかの式が成立します。

三角比の公式・性質②

正弦、余弦、正接について次式が成立します: $$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$ $$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=1$$ $$【\cos^2\theta+\sin^2\theta=1と、一般的に書きます。】$$ $$\cos (90°-\theta)=\sin \theta$$ $$\sin (90°-\theta)=\cos \theta$$ $$\tan (90°-\theta)=\frac{1}{\tan\theta}$$

これらは、式だけで暗記しようと思わず図に描いて意味を理解すると分かりやすいでしょう。結局は直角三角形の辺の比である事を考えれば難しいものではない事はすぐに分かるはずです。

公式

上記の公式の第1式である正接を正弦と余弦で表す関係は、単純に正弦を余弦で割ると出ます。斜辺の部分は消えてしまうわけです。

$$\frac{\sin\theta}{\cos\theta}=\frac{b}{c}\cdot\frac{c}{a}=\frac{b}{a}=\tan\theta$$

2番目の、正弦と余弦のそれぞれの2乗の和が1になるという式は、三平方の定理を使用します。一見奇怪な関係式に見えるかもしれませんが、じつは非常に簡単な意味の公式なのです。

$$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=\frac{a^2+b^2}{c^2}=\frac{c^2}{c^2}=1$$

三角比のn乗の表記

三角比の2乗については、次のように書く習慣があります。 $$\sin^2\theta\hspace{15pt}\cos^2\theta\hspace{15pt}\tan^2\theta$$ また2乗だけでなく、3乗、4乗等でも同じようにします。
これは一応、「ある角度の2乗」θの三角比 sin(θ)と区別するためです。

90°-θ の角度を考えている関係式は、図を見て書いているだけです。直角三角形の θ とは別の角度の三角比は、正弦と余弦の関係をちょうどひっくり返して表せるという事です。

この場合、正接については sin(90°ーθ) を cos(90°ーθ) で割って関係を出しています。
最初の関係式 tanθ=sinθ/cosθ も使っています。

$$\tan (90°-\theta)=\frac{\sin (90°-\theta)}{\cos (90°-\theta)}=\frac{\cos \theta}{\sin \theta}=\frac{1}{\tan\theta}$$

これらの公式は図で理解しながら覚えるとともに、30°、45°、60°の三角比の場合などに適用すると確かに成立するといった事を確かめてみると学びやすいでしょう。例えば sin30°= cos60° という関係が確かに成立しています。

この他に、図形問題を解くための余弦定理正弦定理があります。特に余弦定理のほうは図形問題を解く時に使う頻度が多い場合もあります。

三角比はベクトルの内積の定義においても使用します。内積の定義で使われるのは余弦ですが、平面上の平行四辺形の面積を表すために正弦のほうが使われる事もあります(のちのち重要な場面でこれが出てきます)。

これらの図形に関して三角比を適用する時、90°を超える鈍角に対して三角比を適用したい場合も出てきます。しかし鈍角を含む三角形はどうやっても直角三角形になりません。そこで、三角関数による定義を採用して鈍角の場合も三角比の値を「定義」してあげると整合性がとれた形で適用が可能になります。【その場合、θを鈍角として sinθ=sin(180°-θ)、cosθ=-cos(180°-θ)とする事で上記の余弦定理等を適用できるようになります。】