微分の公式集

このページでは、高校の微分の公式を、一覧にしてまとめています。

目次

  1. 微分(導関数)の定義
  2. 初等関数の微分公式(一覧表)
  3. 微分公式の証明(各初等関数について)

大学数学での極限の定義高階微分・テイラー展開・マクローリン展開については、別のページにて。
このページでは、高校で扱う範囲程度の微分・極限の知識のみを前提とします。

微分(導関数)の定義式

微分の定義をまず記します。これは数学的には重要ですが、物理などで使う「『具体的な』公式」ではないので、微分に慣れていない人やあまり得意でない人は、飛ばしても差し支えありません。ただ、個々の具体的な微分の公式を証明する時には、この数学の定義式を用いるという事にだけ注意してもらえればと思います。
余裕があれば、微分係数が関数のグラフの「接線の傾き」である事がこの定義式で表現されている事にも注意してみてください。

定義式

微分(導関数)の定義

$$f^{\prime}(x)=\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$

この極限値が x の関数として存在する時にその関数を「導関数(どうかんすう)」と呼び、導関数を計算する操作を「微分する」と言います。導関数に具体的な値を代入して得られる値が「微分係数」です。微分係数は、関数をグラフに描いた時の各点での「接線の傾き」になります。

※上記の微分の定義式において、h を「正の値のまま0に近づけた時」と「負の値のまま0に近づけた時」で収束する値がもし異なる場合、導関数は存在せず「微分不可能」という判定にします。ただし、基本的な初等関数の場合、これはあまり気にしなくても大丈夫です。

微分の表記方法は多くあるが、どれが正しい??

微分の表記方法は、1つではなく複数あり、慣れていないと混乱するかもしれません。$$\frac{dy}{dx},\frac{d}{dx}f(x),\frac{df}{dx},\frac{df(x)}{dx},y^{\prime},f^{\prime}(x),dy/dx, \dot{y}$$などの表記は、全て「y = f(x) という関数を微分して得る導関数」を表し、どれを使っても正しい表現なのです。なので、好きなものを用いて構わない事になっています。
【※ただし、dy/dx は主に文章中で使われ、\(\dot{y}\)は、主に物理で使用されます。】
使い分けとしては、具体的な x の値での微分係数を表記する時などは f'(x) の表記が便利です。
例えば「x = 0 での接線の傾きは f'(0)」のように、表現できるためです。

尚、この定義式から、関数の和と差、定数倍に関しての微分については $$和と差:\frac{d}{dx}(f(x)\pm g(x))=\frac{df}{dx} \pm \frac{dg}{dx}\hspace{15pt}定数倍:\frac{d}{dx}(cf(x))=c\frac{df}{dx}$$ と計算してよい事になります。(このような性質を「線形性」と言います。)

微分係数と接線の傾きの関係
この図で、x=1での接線の傾きは2、x=0での接線の傾きは0です。
これらの接線の傾きを「微分係数」とも言います。
もとの関数を微分して得られた導関数y=2xにx座標の値を値をそのまま代入し計算結果を得ます。

初等関数の微分公式

初等関数」というのは、簡単で程度の低い関数・・という事ではなく、大雑把に言うと、指数関数や三角関数などの「高校までに教わるいわゆる『普通の関数』」の事です。ガンマ関数やゼータ関数などの「特殊関数」に対して、初等関数という用語が用いられます。

微分公式の一覧表 ■ 微分公式の覚え方のコツはある?

微分公式の一覧表

一覧の表では、私見ですが「覚えておくといいかもしれない」ものには色をつけてあります。それらを含めて、忘れた時は公式集を見ればよいと思います。

※これらの微分公式を使う時には、もとの初等関数(例えば三角関数や指数関数)の基本性質は一通り分かっている前提があるのが普通なので、それらの知識があやふやな場合は個々の初等関数論に戻ってみてください。このサイトでも各論については詳しくまとめています。

対象の関数微分公式証明・導出法の概略
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)f(x+h)=f(x)=c より導関数は常に 0
②単項式「x の a 乗」
※定数関数はa=0の場合
\({\large \frac{d}{dx}x^a=ax^{a-1}}\hspace{10pt} a \in \mathbb{R}(実数)\)
※\(x^{\Large{\frac{1}{2}}}=\large{\sqrt{x}},\hspace{10pt}x^{-1}=\large{\frac{1}{x}}\)にも適用
対数関数の微分公式を使い証明。
\(a\)が自然数なら定義から計算。詳細
③-1 e の指数関数\({\large \frac{d}{dx}e^x=e^x}\hspace{10pt}e:自然対数の底\) \(\lim_{k \to \infty}\left(1+\frac{1}{k}\right)^k=e\) と対数関数を
使い定義により計算 詳細
③-2 一般の指数関数\({\large \frac{d}{dx}a^x=a^x \ln a}\)定義計算か対数微分を使用 詳細
④-1 自然対数関数[x>0] \({\large \frac{d}{dx}\ln x=\frac{1}{x}}\)【ln x は log e x の意味】定義計算か、逆関数の微分公式詳細
④-2 一般の対数関数\( {\large \frac{d}{dx}\log_a x=\large{\frac{1}{x\ln a}}}\)底の変換公式により
\(\log_a x=\large{\frac{\ln x}{\ln a}}\)を微分します。
⑤-1 三角関数
—正弦関数
\({\large \frac{d}{dx}\sin x=\cos x}\)
正弦も余弦も、三角関数の加法定理と
\(\lim_{h \to 0}\large{\frac{\sin h}{h}}=1\)を用いて、
定義計算を行います。詳細
⑤-2 三角関数
—余弦関数
\({\large \frac{d}{dx}\cos x=-\sin x}\)
⑤-3 三角関数
—正接関数
\({\large \frac{d}{dx}\tan x=\frac{1}{\Large{\cos^2 x}}}\)
\(\tan x=\large{ \frac{\sin x}{\cos x}}\)に商の微分公式を適用
⑤-4 三角関数
—その他
余接の微分\(\large{\frac{d}{dx}}\cot x=\Large{\frac{-1}{\sin^2 x}}\)
正割の微分\(\large{\frac{d}{dx}}\sec x=\Large{\frac{-\sin x}{\cos^2 x}}\)
余割の微分\(\large{\frac{d}{dx}}\mathrm{cosec}\hspace{5pt}x=\Large{\frac{\cos x}{\sin^2 x}}\)
余接\(\cot x=\large{\frac{\cos x}{\sin x}}\),
正割\(\sec x=\large{\frac{1}{\cos x}}\)
余割\(\mathrm{cosec}\hspace{5pt}x=\large{\frac{1}{\sin x}}\)
に対して商の微分公式を適用
⑥逆三角関数
※三角関数の逆関数の事なので、逆関数の微分も参照
\(\large{\frac{d}{dx}}\arcsin x=\frac{1}{\Large{\sqrt{1-x^2}}}\)
\(\large{\frac{d}{dx}}\arccos x=\frac{-1}{\Large{\sqrt{1-x^2}}}\)
\(\large{\frac{d}{dx}}\arctan x=\frac{1}{\Large{1+x^2}}\)
\(\arcsin x は\sin^{-1}x \)とも。
sin y = x および三角関数の基本公式に注意して、逆関数の微分公式を適用。
⑦ 双曲線関数 \(\large{\frac{d}{dx}}\sinh x=\cosh x\)
\(\large{\frac{d}{dx}}\cosh x=\sinh x\)【符号注意】
\(\large{\frac{d}{dx}}\tanh x=\frac{1}{\cosh^2 x}\)
\(\sinh x={\large\frac{e^x-e^{-x}}{2}}\hspace{5pt}\cosh x={\large\frac{e^x+e^{-x}}{2}}\)
\(\tanh x={\large \frac{\sinh x}{\cosh/x}=\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}}\)
の定義により\(\frac{d}{dx}e^x\)の公式を適用
⑧-1 合成関数の微分\(f=f(y),y=y(x)の時\)
\({\large \frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}}\)
証明のポイントは次の通りです。
  • 合成関数:
    \(f(y(x+h))-f(y(x))\)に対し
    \(y(x+h)にy(x)-y(x)を加算\)
  • 逆関数:\(x=F(y)\)のもとで
    合成関数の微分公式同様
  • 積:次の項(ゼロ)を分子に加算。
    \(f(x+h)g(x)-f(x+h)g(x)\)
  • 商:分母の\(g(x)とg(x+h)\)を
    通分し積の微分公式と同様
⑧-2 逆関数の微分\(y=y(x), x=x(y)の時\)
\(\large{\frac{dy}{dx}}={\Large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\)
⑧-3 積の微分\(f=f(x),g=g(x)の時\)
\(\frac{d}{dx}(fg)=\frac{df}{dx}g+f\frac{dg}{dx}\)
\(=f^{\prime}g+fg{\prime}\)
⑧-4 商の微分
【積の微分の場合の変形版】
\(f=f(x),g=g(x)の時\)
\({\Large\frac{d}{dx}\frac{f}{g}=\frac{\frac{df}{dx}g-f\frac{dg}{dx}}{g^2}=\frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}}\)
対数微分の公式\(f=f(x)の時、\)
\(\frac{d}{dx}(\ln f)=\frac{1}{f}\frac{df}{dx}=\frac{(f(x))^{\prime}}{f(x)}\)
合成関数の微分公式使用

これらの公式は丸暗記するものではないので、忘れた時に参照する、ひとつひとつじっくり考えてみる時の補助として用いるといった具合に使ってみてください。
大学入試で微積分の出題がある時は覚えていないとまずいですが、覚え方にこつもあります。

この表の中で「xの平方根」と「1/x」の微分については単項式の微分公式を適用します。$$【x の平方根】 \frac{d}{dx}\sqrt{x}=\frac{d}{dx}x^{\Large{\frac{1}{2}}}=\frac{1}{2}x^{\Large{-\frac{1}{2}}}=\frac{1}{2\sqrt{x}}\hspace{20pt}【x 分の1】 \frac{d}{dx}\frac{1}{x}=\frac{d}{dx}x^{-1}=-x^{-2}=\frac{-1}{x^2}$$

物理などでは、具体的な微分公式は「必要な時に適宜使う」ものです。そのため、単に暗記する事よりも、必要なものを必要な時に出せるような「知識の整理」のほうが重要だと思います。もちろん、覚えてしまったほうが便利なもの(e の指数関数の微分など)や、暗記するつもりはなくても簡単に覚えられる公式(定数関数の微分など)もあります。一方、逆三角関数などは、公式を暗記する必要はないと思いますが、円周率に関するライプニッツ級数などの面白い数式の証明に使えたりするので、気に留めていただくと、いいかもしれません。

微分の公式は多くありますが、頻繁に使うものは限られているので、もしノートなどを作っているのであれば、よく使うものはメモしておくと便利です。

微分の知識は積分の理論でも使える

微積分学の基本定理により、計算としての積分は微分の逆演算なので、微分のほうの公式を使えば基本的な部分は大体足りるかと思います。(積分には積分の独特の考え方や計算法も、中にはあります。)

微分の公式の覚え方のコツはある?・・実際の傾きを考えてみよう

公式を覚えてしまえば、もちろん公式の一覧を見る手間が省けるので、悪い事はありません。下図のように、「覚え方のコツ」がある場合もあるので、よろしければ参考にしてみてください。

公式が必要であれば公式集を見ていただければいいのですが、「覚え方」が一応あるものもあります。例えば正弦関数 sin x は「傾き」(=微分係数)が原点での+1から始まり、変数 x の値が増えていくと傾きはプラス符号のまま減少し0になり、今度はそこからマイナスの値に転じます。導関数(微分)として同じ振る舞いをする三角関数は、符号をかえないままの余弦関数 cos x です。同じように、余弦関数 cos x は原点での傾きが0で、そこから傾きはマイナスの値で減少し続け、-1になります。導関数として同じ振る舞いをする三角関数は、「符号を変えた」正弦関数 「-sin x」というわけです。

関数のグラフを描いてみて、接線の傾きが正(グラフで言うと右上がり)、負(右下がり)、0、無限大など、見て大体分かる部分があるので、微分の公式の導関数との対応を考えると比較的分かりやすいです。

対数関数などは、 微分して得る導関数は 1/x ですが、x がゼロに近づくにつれて無限大の急な傾きになっていく事が表現されています。また、逆に x を無限大にしていくと傾きはどんどん緩やかに0に近づいて行く事になります。

x = 0 付近で傾きが非常に急で無限大に近く、x の値が巨大になるにつれて傾きが緩やかになり次第にほとんど0になるのは、「xの平方根」(xの1/2乗)などの関数でも同じです。
このように、実際の関数の傾きと関連させると比較的覚えやすかったり、間違いが合った時に気付きやすくなったりします。

そして何よりも大事なのは、覚えれないようであれば、「暗記する必要はない」という事です。意味や数学的な内容を理解するように努め、忘れた公式や覚えていない公式があれば、適時参照しながら先に進みましょう。

表の中の微分公式を見ると、表の下のほうにある「合成関数の微分公式」や、「積・商の微分公式」といったものがあります。これらを利用する事で、特定の関数の微分公式は、覚えていなくてもその場で即座に計算で出すという事も可能になります。

三角関数のうち、正接関数 tan x などがその例です。これは微分の定義からも出せますが、商の微分公式で導出するともっと簡単なのです。ですから、三角関数の場合は覚えておくべきは正弦と余弦の微分公式で、正接については無理に暗記しなくてもよいわけです。
そのようにして「覚えたほうが便利なもの」とそうでないものを分けておく事で、学習の優先事項が明確になり記憶をしやすくなるかもしれません。

微分公式の証明

個々の関数の微分公式の「証明」を記します。意外に結構面倒なものが多いので、初めのうちは微分公式を「使ってみる」事(例えば接線の傾きを調べる)を重視して、慣れてきたら証明についても理解していくようにするとよいかもしれません。

(微分公式の証明)
単項式
e の指数関数
一般の指数関数
自然対数関数
三角関数(正弦、余弦)

単項式の微分公式の証明

定義式に直接単項式を代入すると、$$\frac{(x+h)^a-x^a}{h}$$となりますが、
(x+h)a について、a が自然数 nであれば2項定理で展開する事によって$$\frac{nhx^{n-1}}{h}=nx^{n-1}$$の項だけが h→0 で 生き残り他の項は全てゼロに収束するので公式の証明が終わります。

つまりxの導関数2xや、xの導関数3xにおける、
2とか3とかの係数は2項係数由来(の項)であるというわけです。

しかし、a が自然数でない場合は、少し証明に工夫がいるのです。a が実数の場合でも同じ形の「一般2項定理」が成立するのですが、その肝心の一般2項定理の証明が単項式の微分の結果を使って行われる・・というジレンマが、じつはあります。(マクローリン展開を使います。)
・・そこで、単項式の微分公式の証明では、強引に一般2項定理の単独での証明を試みるよりは、一般的には対数関数の微分を利用して単項式の微分公式の証明が行われます。

証明

対数の性質 ln xa=a ln x に注意して、$$\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{d}{dx}a\ln x=a\frac{d}{dx}\ln x=\frac{a}{x}$$

他方で、合成関数の微分公式を用いると同じ式を別の形で表せます。
$$\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{\large{\frac{d}{dx}(x^a)}}{\large{x^a}}$$ ・・という事は、$$ \frac{a}{x}=\frac{\large{\frac{d}{dx}(x^a)}}{\large{x^a}} $$ $$\Leftrightarrow {\large \frac{d}{dx}(x^a)=\frac{a}{x}x^a=ax^{a-1}}【h→0】$$(証明終)

指数関数の微分公式の証明

指数関数の微分は、e に関する微分公式の証明が基本になります。(※一般の指数関数にも ln a =logeaの形で e が関わってくる事に注意してください。)
証明の方法は、微分の定義式に直接関数を当てはめて計算を進める形になります。
その際に、指数と対数との関係を使って式変形をしていきます。

証明

$${\large\frac{e^{x+h}-e^x}{h}=e^x\frac{e^h-1}{h}=e^x\frac{e^h-1}{\ln e^h}}$$

次に、$$e^h-1=k\Leftrightarrow\hspace{5pt}e^h=1+k\hspace{5pt}$$に注意して$${\large\frac{e^h-1}{\ln e^h}}=\frac{k}{\ln (1+k)}=\frac{1}{\Large{\frac{1}{k}}\large{\ln (1+k)}}$$・・と強引に表す事ができて、これの分母についてさらに$$\frac{1}{k}\ln (1+k)=\ln (1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}$$ という、e の定義式の形を含んだ式に変形できます。
h→0 の時k→0なので k に関する極限として考えてもよく、 $$\lim_{k \to 0}(1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}=\lim_{k \to \infty} \left(1+\frac{1}{k}\right)^k=e$$ なので $$\lim_{k \to 0}\frac{1}{k}\ln (1+k)=\lim_{k \to 0}\ln (1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}=\ln e = 1 $$ですから $$ \lim_{h \to 0}\frac{e^{\large{x+h}}-e^x}{h}=\lim_{k \to 0}e^x\frac{k}{\ln (1+k)} $$ $$=\lim_{k \to \infty}e^x\frac{1}{\ln (1+\large{\frac{1}{k}})^k}=e^x\frac{1}{\ln e}=e^x\frac{1}{1}=e^x$$(証明終)

自然対数の底 e の存在証明は?

さて、上記の証明で、おそらく「高校数学」の範囲だと少し疑問がある箇所があって、それは $$\lim_{n \to 0}(1+n)^{\Large{\frac{1}{n}}}=\lim_{n \to \infty} \left(1+\frac{1}{n}\right)^n=e$$ で定義される自然対数の底(ネピア数)e が「本当に有限の値なのか?」という事です。

この e の定義の極限の式が無限大に発散せずに何らかの値に「収束する」という事については、おそらく普通の高校では「とにかく収束する事が知られている」などと強引にたたみかけている箇所かと、思います。

大学数学では、これをちゃんと証明します。肝心な事は、問題の関数が、

  • 単調増加で、
  • ある値未満になる(3未満という事を示せます。「上に有界である」と言います)

という事です。関数が数列の時、その場合に数列は必ず収束する事を証明できるのですが、そのためには極限の定義を見直す事を、一般的な大学の微積分学(解析学)では行います。
微分公式の証明の中では、自然数 n ではなく実数 k についての実数のは範囲で k →∞ での極限値も同じく e です。(まず数列の場合で示してから、実数関数の場合でも同じ極限値になる事を示すという手順をとります。)

このように、中学・高校で少し曖昧になっている部分を、より厳密に考察したり改めて定義を見直したりする事も、大学数学の重要な内容のひとつです。

一般の指数関数の微分

一般の指数関数の微分については、公式としてはそれほど重要ではないと思いますが、数学的事実としては次のように導出できます。定義に当てはめて自然対数の底の場合と全く同様にして計算を進めます。
対数の底の変換公式により次のようになる事を使います。$$\log_a\left(1+\frac{1}{h}\right)^h=\frac{\large{\ln(1+\frac{1}{h})^h}}{\ln a}$$ $$これは、h → ∞ で\hspace{5pt}\frac{1}{\ln a}\hspace{5pt}に収束します。$$
微分の定義式による計算ではこの式が分母にありますから微分により得られる導関数は次式です。$$\frac{d}{dx}a^x=a^x\ln a$$

対数関数の微分公式の証明

直接定義から計算しても証明できますし、指数関数の逆関数が対数関数なので、逆関数の微分公式を用いても証明できます。いずれの方法でも、自然対数の底 e の定義式の極限値の存在が、対数関数の微分公式でも成立の根拠となります。

証明

$$\frac{\ln (x+h)-\ln x}{h}=\frac{\ln \large{\frac{x+h}{x}}}{h}=\frac{\ln \left(\large{\frac{h}{x}}\right)}{h}$$ $$=\frac{1}{x}\frac{x}{h}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)=\frac{1}{x}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)^{\LARGE{\frac{x}{h}}}$$ $$ \rightarrow \frac{1}{x}\ln e =\frac{1}{x} 【h→0】$$(証明終)

三角関数の微分公式の証明

三角関数のうち正弦関数と余弦関数(サインとコサイン)の微分公式は、まず定義に当てはめて、sin(x+h) の形を三角関数の加法定理によって (sinx)(cos h) +(cosx)(sin h)の形にして計算を進めれば導出する事ができます。
ただし、計算の過程の最後で$$\lim_{h \to 0}\frac {\sin h}{h}=1$$の極限の公式が必要になります。

この公式は「図で見ると」大体は理解できるものなのですが、きちんと証明しようとすると、「円周の長さ=円の直径×円周率」という公式の正確な証明が必要という事になります。しかしこれが結構面倒なので、大抵の場合は「図により成立する」で済ます場合が多いです。結果は正しいので、もちろん微分公式は使う事ができます。

証明
正弦関数 sin x の微分

$$\frac{\sin (x+h)-\sin x}{h} =\frac{\sin x \cos h + \cos x\sin h – \sin x}{h}$$ $$=\sin x \frac{(\cos h -1)}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h} =-\sin x \frac{\sin^2 \Large{\frac{h}{2}}}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h}$$ $$\left(∵ \cos h-1=\cos^2\frac{h}{2}-\sin^2\frac{h}{2}-1=1-2\sin^2\frac{h}{2}-1=-2\sin^2\frac{h}{2}\right)$$ $$=-\frac{\sin x}{2} \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \large{\frac{h}{2}}}{ \large{\frac{h}{2}}}+\cos x\frac{\sin h}{h}$$ $$ \rightarrow -\frac{\sin x}{2}(\sin 0) \cdot 1 + (\cos x)\cdot 1=\cos x【h→0】$$(証明終)

余弦関数 cos x の微分

$$\frac{\cos (x+h)-\cos x}{h} =\frac{\cos x \cos h – \sin x\sin h – \cos x}{h}$$ $$=\cos x \frac{(\cos h -1)}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}=-\cos x \frac{\sin^2 \Large{\frac{h}{2}}}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}$$ $$\left(∵正弦の時と同じく \cos h-1=-2\sin^2\frac{h}{2}\right)$$ $$=-\frac{\cos x}{2} \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \large{\frac{h}{2}}}{ \large{\frac{h}{2}}}-\sin x\frac{\sin h}{h}$$ $$ \rightarrow -\frac{\cos x}{2}(\sin 0) \cdot 1 – (\sin x)\cdot 1=-\sin x 【h→0】$$(証明終)

正接関数の微分に関しては、定義からも計算できますが、商の微分公式を使うほうがじつは簡単です。

正弦・余弦関数の微分公式の証明で肝心となる$$\lim_{h \to 0}\frac {\sin h}{h}=1$$ の極限については、図で言うと下図のような関係を作れる事で示されます。ポイントは、弧度法で表した角度が「円弧の長さ」に等しいという事です。

しかし細かい事を言うと、じつは「円周率」について大学数学の解析学的に見る必要も出てくるのです。

h→0で、h/(sin h)の逆数の(sin h)/hも同じ極限値1になります。(1/1 = 1 です。)この証明において、本来は自明ではないのが「円弧の長さが弧度法で表した角度に等しい」という命題であり、これは結局、「円周の長さが直径に比例する(比例定数:円周率)」という事を示さないと、正確に真だとは言えません。(途中までは平面幾何学で進められますが、最後のところで大学の解析学での極限の考え方が必要です。)図で、線分PCは円の「外接正多角形」の一部で、線分ABは円の「内接多角形」の一部です。これらの長さの大小関係は図形的に三角不等式によっても示せますが、円に関する「アルキメデスの公式」を用いて、式で表現する事もできます。 尚、この図では|弧長PA|<|AB|+|PB|もじつは成り立っていますが、それを平面幾何的に正確に示そうと思うとかえって大変なのでここでは用いていません。
(sin h)/h の h→0 の極限問題

\(\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1\)の極限問題が示されれば、上記のように正弦・余弦関数の微分公式を導出したり、円周の長さが内接・外接正多角形の周の長さの極限であるといった事も容易に分かります。しかし、円周率のほうの問題が証明されないと、この極限値を出すのは難しいのです。
弧度法による角度の定義の本来は、角度を円周の弧長に対応させるというものです。(それで、360度が円周率の2倍というわけです。)
では、円の弧長の長さが一定の比例定数のもとで直径に比例する事は「自明」でしょうか?
もちろんそうではありません。それを証明するには、平面幾何を丁寧に紐解く事と、大学数学での解析学の極限の考え方が必要です。そういう意味で、初歩的な微分公式などでさえも、細かく見ると「本当に高校数学の範囲だけの視点」で見る事にはじつは限界があるのです。
「自然対数の底 e」を得るのにも特定の式の極限を考えたわけですが、この正弦関数に関する極限は「円周率」に深く関わる極限という見方もできるかもしれません。

マクローリン展開やロピタルの定理を使えば「極限の値自体」はすぐ分かる

このページでも後述している微分系の公式である「マクローリン展開」や「ロピタルの定理」を使うと、(sin h)/h の極限値は、値だけならじつはすぐに計算できます。なので、それらの公式は極限値を「覚える」のには使えます。

$$マクローリン展開:\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\cdots を「x で割ると」$$ $$\frac{\sin x}{x}=1-\frac{x^2}{3!}+\frac{x^4}{5!}-\cdots\hspace{10pt}\rightarrow\hspace{10pt}1\hspace{5pt} (x\rightarrow 0)$$

しかしいかんせん、マクローリン展開もロピタルの定理も、正弦関数について見る時は、正弦関数の微分公式が必要です。
そして上記の通り、その肝心の正弦関数の微分公式の成立根拠が$$\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1$$なのです。
ですから、「証明」としては、マクローリン展開などを使ってしまうと、おかしな事になると思います。