微分の公式集 【高校の微積分①:忘れたら見てね】

このページでは、高校の微分の公式を、一覧にしてまとめています。具体例や証明についても載せてありますので、公式を忘れてしまった・教わっていないという人は参照してください。

大学数学での極限の定義高階微分・テイラー展開・マクローリン展開については、別のページにて。
このページでは、高校で扱う範囲程度の微分・極限の知識のみを前提とします。

POINT:大学数学と物理で
まず必要な微分の知識は
これだけです。
他の難しい事はなくても
とりあえず進めます。

微分の公式のポイント
  1. 定義:\(f^{\prime}(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\)「傾き」を表す
    • 初等関数の微分公式で覚えておくと便利なもの:
      \((x^a)^{\prime}=ax^{a-1},\hspace{5pt}(e^x)^{\prime}=e^x,\hspace{5pt}(\ln x)^{\prime}=\frac{1}{x}\)
      \((\sin x)^{\prime}=\cos x,\hspace{5pt}(\cos x)^{\prime}=-\sin x,\hspace{5pt}定数の微分=0\)
    • その他の初等関数(逆三角関数など)の微分公式もある
  2. 2つの関数同士で成立する微分の公式:
    ①合成関数の微分、②逆関数の微分、③④積と商の微分
  3. これらに加え、積分との関係もおさえれば完璧。
    微分と積分は逆演算の関係にあります。
コンテンツ:(微分)
微分(導関数)の定義 ■ 初等関数の微分公式(一覧表)■ 微分公式の各論と証明

微分(導関数)の定義式

微分の定義をまず記します。これは数学的には重要ですが、物理などで使う「『具体的な』公式」ではないので、微分に慣れていない人やあまり得意でない人は、飛ばしても差し支えありません。ただ、個々の具体的な微分の公式を証明する時には、この数学の定義式を用いるという事にだけ注意してもらえればと思います。
余裕があれば、微分係数が関数のグラフの「接線の傾き」である事がこの定義式で表現されている事にも注意してみてください。

定義式

微分(導関数)の定義

$$f^{\prime}(x)=\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$

この極限値が x の関数として存在する時にその関数を「導関数(どうかんすう)」と呼び、導関数を計算する操作を「微分する」と言います。導関数に具体的な値を代入して得られる値が「微分係数」です。微分係数は、関数をグラフに描いた時の各点での「接線の傾き」になります。

※上記の微分の定義式において、h を「正の値のまま0に近づけた時」と「負の値のまま0に近づけた時」で収束する値がもし異なる場合、導関数は存在せず「微分不可能」という判定にします。ただし、基本的な初等関数の場合、これはあまり気にしなくても大丈夫です。

微分の表記方法は多くあるが、どれが正しい??

微分の表記方法は、1つではなく複数あり、慣れていないと混乱するかもしれません。$$\frac{dy}{dx},\frac{d}{dx}f(x),\frac{df}{dx},\frac{df(x)}{dx},y^{\prime},f^{\prime}(x),dy/dx, \dot{y}$$などの表記は、全て「y = f(x) という関数を微分して得る導関数」を表し、どれを使っても正しい表現なのです。なので、好きなものを用いて構わない事になっています。
【※ただし、dy/dx は主に文章中で使われ、\(\dot{y}\)は、主に物理で使用されます。】
使い分けとしては、具体的な x の値での微分係数を表記する時などは f'(x) の表記が便利です。
例えば「x = 0 での接線の傾きは f'(0)」のように、表現できるためです。

尚、この定義式から、関数の和と差、定数倍に関しての微分については $$和と差:\frac{d}{dx}(f(x)\pm g(x))=\frac{df}{dx} \pm \frac{dg}{dx}\hspace{15pt}定数倍:\frac{d}{dx}(cf(x))=c\frac{df}{dx}$$ と計算してよい事がじつは分かるのです。(このような性質を「線形性」と言います。)

初等関数の微分公式

「初等関数」というのは、簡単で程度の低い関数・・という事ではなく、大雑把に言うと、指数関数や三角関数などの「高校までに教わるいわゆる『普通の関数』」の事です。ガンマ関数やゼータ関数などの「特殊関数」に対して、初等関数という用語が用いられます。

微分公式の一覧表・・忘れた時に見てください ■ 微分公式の覚え方のコツはある?

微分公式の一覧表

一覧の表では、私見ですが「覚えておくといいかもしれない」ものには色をつけてあります。それらを含めて、忘れた時は公式集を見ればよいと思います。

対象の関数微分公式証明・導出法の概略
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)f(x+h)=f(x)=c より導関数は常に 0
②単項式「x の a 乗」
※定数関数はa=0の場合
\({\large \frac{d}{dx}x^a=ax^{a-1}}\hspace{10pt} a \in \mathbb{R}(実数)\)
※\(x^{\frac{1}{2}}=\sqrt{x},\hspace{10pt}x^{-1}=\frac{1}{x}\)にも適用
対数関数の微分公式を使い証明。
\(a\)が自然数なら定義から計算。詳細
③-1 e の指数関数\({\large \frac{d}{dx}e^x=e^x}\hspace{10pt}e:自然対数の底\) \(\lim_{k \to \infty}\left(1+\frac{1}{k}\right)^k=e\) と対数関数を
使い定義により計算 詳細
③-2 一般の指数関数\({\large \frac{d}{dx}a^x=a^x \ln a}\)定義計算か対数微分を使用 詳細
④-1 自然対数関数[x>0] \({\large \frac{d}{dx}\ln x=\frac{1}{x}}\)【\(\ln x=\log_e x\)】定義計算か、逆関数の微分公式詳細
④-2 一般の対数関数\( {\large \frac{d}{dx}\log_a x=\frac{1}{x\ln a}}\)底の変換公式により
\(\log_a x=\frac{\ln x}{\ln a}\)を微分します。
⑤-1 三角関数—正弦関数\({\large \frac{d}{dx}\sin x=\cos x}\)
正弦も余弦も、三角関数の加法定理と
\(\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1\)を用いて、
定義計算を行います。詳細
⑤-2 三角関数—余弦関数\({\large \frac{d}{dx}\cos x=-\sin x}\)
⑤-3 三角関数—正接関数\({\large \frac{d}{dx}\tan x=\frac{1}{\cos^2 x}}\)
\(\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}\)に商の微分公式を適用
⑤-4 三角関数—その他余接の微分\(\frac{d}{dx}\cot x=\frac{-1}{\sin^2 x}\)
余割の微分\(\frac{d}{dx}\sec x=\frac{-\sin x}{\cos^2 x}\)
余割の微分\(\frac{d}{dx}\mathrm{cosec}\hspace{5pt}x=\frac{\cos x}{\sin^2 x}\)
\(余接\cot x=\frac{\cos x}{\sin x}, 正割\sec x=\frac{1}{\cos x}\)
正割\(\mathrm{cosec}\hspace{5pt}x=\frac{1}{\sin x}\)
に対して商の微分公式を適用
⑥逆三角関数
※三角関数の逆関数の事なので、逆関数の微分も参照
\(\frac{d}{dx}\arcsin x=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\)
\(\frac{d}{dx}\arccos x=\frac{-1}{\sqrt{1-x^2}}\)
\(\frac{d}{dx}\arctan x=\frac{1}{1+x^2}\)
\(\arcsin x は\sin^{-1}x \)とも。
\(\sin y = x,\hspace{10pt} \sin^2x+\cos^2x=1\)
\(\frac{1}{\cos^2x}=1+\tan^2x\) 等に注意して、
逆関数の微分公式を適用。
⑦ 双曲線関数 \(\frac{d}{dx}\sinh x=\cosh x\)
\(\frac{d}{dx}\cosh x=\sinh x\)【符号注意】
\(\frac{d}{dx}\tanh x=\frac{1}{\cosh^2 x}\)
\(\sinh x={\large\frac{e^x-e^{-x}}{2}}\hspace{5pt}\cosh x={\large\frac{e^x+e^{-x}}{2}}\)
\(\tanh x={\large \frac{\sinh x}{\cosh/x}=\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}}\)
の定義により\(\frac{d}{dx}e^x\)の公式を適用
⑧-1 合成関数の微分\(f=f(y),y=y(x)の時\)
\({\large \frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}}\)
合成関数、逆関数、積と商の微分公式の証明方法は大体似ていて、下記にまとめて記しています。詳細
証明のポイントは次の通りです。
  • 合成関数:
    \(f(y(x+h))-f(y(x))\)に対し
    \(y(x+h)にy(x)-y(x)を加算\)
  • 逆関数:\(x=F(y)\)のもとで
    合成関数の微分公式同様
  • 積:次の項(ゼロ)を分子に加算。
    \(f(x+h)g(x)-f(x+h)g(x)\)
  • 商:分母の\(g(x)とg(x+h)\)を
    通分し積の微分公式と同様
⑧-2 逆関数の微分\(y=y(x), x=x(y)の時\)
\(\frac{dy}{dx}={\Large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\)
⑧-3 積の微分\(f=f(x),g=g(x)の時\)
\(\frac{d}{dx}(fg)=\frac{df}{dx}g+f\frac{dg}{dx}\)
\(=f^{\prime}g+fg{\prime}\)
⑧-4 商の微分\(f=f(x),g=g(x)の時\)
\(\frac{d}{dx}\left(\frac{f}{g}\right)={\large\frac{\frac{df}{dx}g-f\frac{dg}{dx}}{g^2}=\frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}}\)
対数微分の公式\(f=f(x)の時、\)
\(\frac{d}{dx}(\ln f)=\frac{1}{f}\frac{df}{dx}=\frac{(f(x))^{\prime}}{f(x)}\)
合成関数の微分公式使用

これらの公式は丸暗記するものではないので、忘れた時に参照する、ひとつひとつじっくり考えてみる時の補助として用いるといった具合に使ってみてください。

この表の中で「xの平方根」と「1/x」の微分については単項式の微分公式を適用します。$$【x の平方根】 \frac{d}{dx}\sqrt{x}=\frac{d}{dx}x^{\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}=\frac{1}{2\sqrt{x}}\hspace{20pt}【x 分の1】 \frac{d}{dx}\frac{1}{x}=\frac{d}{dx}x^{-1}=-x^{-2}=\frac{-1}{x^2}$$

物理などでは、具体的な微分公式は「必要な時に適宜使う」ものです。そのため、単に暗記する事よりも、必要なものを必要な時に出せるような「知識の整理」のほうが重要だと思います。もちろん、覚えてしまったほうが便利なもの(e の指数関数の微分など)や、暗記するつもりはなくても簡単に覚えられる公式(定数関数の微分など)もあります。一方、逆三角関数などは、公式を暗記する必要はないと思いますが、円周率に関するライプニッツ級数などの面白い数式の証明に使えたりするので、気に留めていただくと、いいかもしれません。

微分の公式は多くありますが、頻繁に使うものは限られているので、もしノートなどを作っているのであれば、よく使うものはメモしておくと便利です。

微分の知識は積分の理論でも使える!

積分の公式についてもこのページの後半に記載してありますが、微積分学の基本定理により、計算としての積分は微分の逆演算なので、微分のほうの公式を使えば基本的な部分は大体足りるかと思います。(積分には積分の独特の考え方や計算法も、中にはあります。)
積分の公式(このページ内のコンテンツ)

微分の公式の覚え方のコツはある?・・実際の傾きを考えてみよう

公式を覚えてしまえば、もちろん公式の一覧を見る手間が省けるので、悪い事はありません。下図のように、「覚え方のコツ」がある場合もあるので、よろしければ参考にしてみてください。

公式が必要であれば公式集を見ていただければいいのですが、「覚え方」が一応あるものもあります。例えば正弦関数 sin x は「傾き」(=微分係数)が原点での+1から始まり、変数 x の値が増えていくと傾きはプラス符号のまま減少し0になり、今度はそこからマイナスの値に転じます。導関数(微分)として同じ振る舞いをする三角関数は、符号をかえないままの余弦関数 cos x です。同じように、余弦関数 cos x は原点での傾きが0で、そこから傾きはマイナスの値で減少し続け、-1になります。導関数として同じ振る舞いをする三角関数は、「符号を変えた」正弦関数 「-sin x」というわけです。

関数のグラフを描いてみて、接線の傾きが正(グラフで言うと右上がり)、負(右下がり)、0、無限大など、見て大体分かる部分があるので、微分の公式の導関数との対応を考えると比較的分かりやすいです。

対数関数などは、 微分して得る導関数は 1/x ですが、x がゼロに近づくにつれて無限大の急な傾きになっていく事が表現されています。また、x を無限大にしていくと傾きはどんどん緩やかに0に近づいて行く事になります。
x = 0 付近で傾きが非常に急で無限大に近く、x の値が巨大になるにつれて傾きが緩やかになり次第にほとんど0になるのは、「xの平方根」\(\sqrt{x}=x^{\frac{1}{2}}\)でも同じです。この関数の導関数は\(\frac{1}{2\sqrt{x}}\)となるので(「単項式の微分公式」を適用します)その傾きの様子が表されています。
このように、実際の関数の傾きと関連させると比較的覚えやすかったり、明らかに全く異なる関数として導関数覚えていた時に間違いに気付きやすくなったりします。

そして何よりも大事なのは、覚えれないようであれば、「暗記する必要はない」という事です。意味や数学的な内容を理解するように努め、忘れた公式や覚えていない公式があれば、適時参照しながら先に進みましょう。

表の中の微分公式を見ると、表の下のほうにある「合成関数の微分公式」や、「積・商の微分公式」を用いて導出できるものがあります。そういったものについては、使用頻度が比較的少ない事もあり、必要な時に「その都度導出する」という事もできるわけです。三角関数のうち、正接関数 tan x などがその例かと思います。公式を暗記するよりも、(たまに)必要になった時にその都度公式を導出するほうが早いかもしれません。
そのように、覚えたほうが便利なものと、そうでないものを分けておくと整理がついて、より記憶しやすいかもしれません。

各公式についてのもう少し詳しい説明・具体的な計算方法・証明などについても確認したい、あるいは新規に学びたい人もいるかと思います。引き続き、このページで各公式ごとにもう少し詳しく説明していますので、必要があれば参照してください。イラストによる説明もあります。

【各論】合成関数の微分など4公式の説明・具体例・証明

上記の微分公式の一覧表の下のほうに、「合成関数」「逆関数」「積の微分」「商の微分」などの、一般的に成立する(特定の初等関数という事ではなくて)4公式が書いてあります。これらについては、証明も記しますが、具体例を見たほうがイメージはしやすいと思います。分かりにくいと感じたら、具体例を見ながら、計算法を見ていただければと思います。

(具体例と説明)
■ ①合成関数の微分公式 ■ ②逆関数の微分公式 ■ ③④積と商の微分公式

(証明)
合成関数、逆関数、積・商の微分公式の証明
初等関数の微分公式の証明

①合成関数の微分公式

$$合成関数の微分:\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}$$

図のように f(x) = cos(2x) のように表される関数の他に、\(e^{2x},\sin^2x(=(\sin x)^2)\hspace{10pt}\frac{1}{1-x},\hspace{10pt}\sqrt{1-x^2}\hspace{10pt}\)なども、みな合成関数の仲間達です。
これらを微分する時には、じつは普通の微分公式をそのままでは適用できません。その代わり、「合成関数の微分公式」で微分をして導関数を計算するのです。

【合成関数の微分公式】この図では、cos(ωx) という形の「合成関数」を例にして考えています。余弦関数の cos の中に、ωxという別の関数が入っていて「合成」されているので、このような形の関数を合成関数と言います。見ての通り、微分をすると、cos が -sin になるだけでなく、ωというオマケがくっついてきます。この形の関数は、物理でもよく使いますので重要だと思います。物理では、「時間(秒)」を変数として、角速度ω[rad/s]を用いて cos(ωt), sin(ωt)といった関数を考えたりします。
合成関数の微分・例①:f(x) = cos(2x)

イラストで述べている cos(ωx) という関数の、さらにより具体的な関数として、
f(x) = cos(2x)という「2x」という形が余弦関数に入っている場合の微分計算を、例として手順を追って見てみましょう。
f(x) = cos(2x) = sin y の「x による微分」は、合成関数の微分公式を利用して計算できるのです。

  1. cos(2x)の 2x を y とおき、cos y を「y で」微分します。
    公式により、これは -sin y になります。
    \(\frac{d}{dy}\cos y=-\sin y\)
  2. 次に、y = 2x を x で微分します。
    これは、x の微分に定数 2 をかければよいので 2 になります。
    \(\frac{d}{dy}2x=2\)
  3. \(\frac{df}{dy}と\frac{dy}{dx}\)の積をつくります。
    これは、本当に「掛け算するだけ」の計算です。
    \(\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-\sin y)\cdot 2 =-2\sin y\)
  4. ・・最後に、y に y = 2x を代入し、x だけの式にします。それがf(x)を x で微分して得られる導関数に等しいわけです。
    \(\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=-2\sin y=-2\sin (2x)\)

このタイプの微分は、イラストでも触れていますように、じつは物理でもよく使う微分計算です。

合成関数の微分・例②:\(f(x) = e^{2x}\)

\(f(x) = e^{2x}\)は、指数関数の変数が「2x」などになった形の関数の例です。このタイプも、微分方程式などを解く関係で、比較的物理でよく使う微分計算だと思います。

2x = y とおきます。
元の関数をyで表すと、\(f(x)=e^{2x}=e^y(=f(y))\)です。

  1. y を x で微分します。
    \(\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(2x)=2\)
    ※少し慣れれば、このへんは暗算でやってしまうくらいになると思います!
  2. f(y)を y で微分します。
    \(\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}e^y=e^y\)
    これは、e の指数関数の微分公式そのままですね。
  3. 合成関数の微分公式を適用します。
    ここでは、y を x の形に直すところまで一緒にやってしまいます。 \(\frac{d}{dx}e^{2x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2\cdot e^y=2e^{2x}\)

この計算方法を見ると、一般に次のように、
「定数 a に対して、\(\frac{d}{dx}e^{ax}=ae^{ax}\)」
という事が言える事も、分かるかと思います。\(f(x) = e^{2x}\)の 2x が、3x でもあっても ax であっても、計算方法は同じだからです。
もっとも、これを新しく公式として「暗記」する必要は、ありません。
必要なのはあくまで普通の指数関数の微分公式と、合成関数の微分公式なのです。

注意点としては、最後に y を x の形に直す必要がある(場合が多い)という事だと思いますが、忘れさえしなければ数学でも物理でも、難しい計算は少ないと思います。

合成関数の微分・例③:\(f(x) = \sin^2x\)

三角関数を「2乗した」\(\sin^2x\)などの場合は、sin x = y と考えて、元の関数が \(f(y)=y^2\)であると考えるのです。従いまして、微分の計算は次のようになります。

  1. まず合成関数の微分公式に必要な材料を計算です。
    \(\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}y^2=2y,\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}\sin x=\frac{dy}{dx}\cos x \)
  2. 2つの材料を、掛け合わせてできあがりです。
    \(\frac{d}{dx}\sin^2x=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2y\cos x=2\sin x \cos x = \sin (2x)\)

・・他方、「sin(2x)」の微分は2・cos(2x) = 2cos(2x) になりますから、(上の例のcos(2x)と同様の手順です)
\(\sin^2 x\)の微分とは、少々違った結果になる事が分かるかと思います。
一見、「似てるっぽい?」かもしれませんが、計算方法を間違えないようにしたい例のひとつとも言えます。
尚、最後の結果が「x の半角」の正弦の形になる事は、三角関数の加法定理を使って\(\sin^2 x=\frac{1-\cos (2x)}{2}\)である事から、\(\frac{d}{dx}\frac{1-\cos (2x)}{2}=\frac{2\sin (2x)}{2}=\sin (2x)\)となる事と調和しています。

合成関数の微分・例③:f(x) = \(\frac{1}{1-x}\)

続いて、\(\frac{1}{1-x}\)の微分を考えてみましょう。 「これのどこが合成関数?」かと思われるかもしれませんが、分母の 1-x を y と考えて合成関数と見る必要があるのです。この y = 1 – x の微分においては、定数の「1」は微分すると0になって消えます。

  1. 再び、材料作りです。
    \(\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}\frac{1}{y}=\frac{d}{dy}y^{-1}=-y^{-2},\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(1-x)=-1 \)
  2. 合成関数なので掛け合わせます。
    \(\frac{d}{dx}\frac{1}{1-x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-1)(-y^{-2})=y^{-2}=\frac{1}{(1-x)^2}\)
この例の微分計算は単項式の微分公式さえあれば難しくはありませんが、「うっかり合成関数である事を見落とすと」符号を間違えてしまう例です。
似たような関数でも、\(\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x}\) の場合だと\(\frac{d}{dx}(1+x)=1\)ですから、合成関数の公式の中で実質計算を考えなくてもよくて(+1を掛け算する計算になるので)、
\(\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x}=-(1+x)^{-2}=-\frac{1}{(1+x)^2}\)となり、こちらはマイナスの符号がつくわけです。(符号の違いは、xの増加に対して関数が増加するか減少するかに対応しています。)
合成関数の微分・例④:\(f(x)=\sqrt{1-x^2}\)

\(f(x)=\sqrt{1-x^2}\)という関数の場合は、\(1-x^2 = y\)として微分計算をします。

  1. 前の例と同じように材料をまず作りますが、今回再び丁寧に、2つに分けます。
    まず、かんたんなほうからです。
    \(\frac{dy}{dx}=-2x\)
  2. 同じく材料として、「y の平方根」の形の関数の微分を計算します。
    これは単項式の微分公式で「a=1/2」の場合を使えばいいのですが、少し分かりにくいかもしれません。
    \(\frac{df}{dy}=\frac{df}{dy}\sqrt{y}=\frac{df}{dy}y^{\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}\frac{1}{\sqrt{y}}\)
  3. 2つの材料がそろえば、あとは掛け合わせて、yを x の関数の形に戻すだけです。
    \(\frac{d}{dx}\sqrt{1-x^2}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-2x)\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{-x}{\sqrt{y}}=\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}\)

この例で用いている「平方根の微分」は慣れないと、結構とっつきにくいかと思います。
ただ、このタイプの関数は物理でもよく使う例だと思うので、例として挙げさせていただきました。

②逆関数の微分公式

$$逆関数の微分:\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\frac{dx}{dy}}$$

例えば y = 2x のとき、x = y / 2 とも書けます。このように、y = f(x) のとき、逆に x = g(y) と書けるとき、g(y) を f(x) の逆関数と呼びます。(※\(y=x^2 のような場合は x=\pm \sqrt{y}\)のように x を y で表した関数が2つ出てきてしまうので、x の定義域と y の値域を定めて片方に決めます。)

逆関数の他の具体例としては、指数関数と対数関数は逆関数同士の関係にあります。また、三角関数の逆関数を「逆三角関数」と言い、sin x に対して arcsin x(「アークサイン x」)と書きます。
この逆三角関数は一見使いづらい関数なのですが、その微分の性質から、一部の微積分の計算(例えばテイラー展開や不定積分の計算)で有用な働きをする事があります。

逆関数の微分公式の使い方の手順は、おおよそ次のようなものです。

  1. 関数と逆関数を、y=y(x) x=x(y) の形で出しておく
  2. 逆関数のほうについて、\(\frac{dx}{dy}\)を計算する
  3. \(\frac{dy}{dx}={\Large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\)の公式に代入
  4. \({\Large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\)は「y の関数」の形なので、y=y(x)を代入して x の関数にすれば、
    それが y に対して x で微分した\(\frac{dy}{dx}\)の正しい形になっています。
    ※合成関数でもこの「y を x の関数の形に戻す」作業があるわけですが、一般には y = f(x) を代入すればよいというものでした。しかし、逆関数の微分の場合は、この作業について少し工夫がいる場合があります。
【逆関数の微分公式:arcsin x の導関数の導出の例:】この図は、arcsin xの微分を、「sin xの微分公式」と「逆関数の微分公式」から導出する手順を示したものです。 x = sin y の時に「y を変数とする形」で逆関数の微分を出すのは、じつはかなり簡単です。(公式により y で微分し分母に入れるだけなので。)ただ、そのあとで y を x の関数の形にうまく戻すために、工夫が必要な事があるのです。
逆関数の微分の具体例

逆関数の微分公式は、通常の微分計算で多く使うというよりは、特定の微分公式を導出するために使われる事が多いように思います。

  • \(y=e^x, x=\ln y の時、\)
    \(\frac{d}{dx}e^x=\frac{1}{\frac{d}{df}\ln y}=\frac{1}{\frac{1}{y}}=y=e^x\)
  • \(x=\sin y, y=\arcsin x の時、\)
    \(\frac{d}{dx}\arcsin x=\frac{1}{\frac{d}{dy}\sin y}=\frac{1}{\cos y}=\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2y}}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\)
    ※\(\sin^2x+\cos^2x=1\)の関係を使用しています。
  • \(x=\cos y, y=\arccos x の時、\)
    \(\frac{d}{dx}\arccos x=\frac{1}{\frac{d}{dy}\cos y}=\frac{1}{-\sin y}=\frac{-1}{\sqrt{1-\cos^2y}}=\frac{-1}{\sqrt{1-x^2}}\)
  • \(x=\tan y, y=\arctan x の時、\)
    \(\frac{d}{dx}\arctan x=\frac{1}{\frac{d}{dy}\tan y}=\frac{1}{\frac{1}{\cos^2y}}=\cos^2y=\frac{1}{1+\tan^2y}=\frac{1}{1+x^2}\)
※逆三角関数の別の表記方法

あくまで表記方法の問題なのですが、逆三角関数を\(\sin^{-1}x\)とも書きます。
もちろんその場合は\((\sin x)^{-1}=\frac{1}{\sin x}\)とは全く異なる関数・・なのです。
これは慣れてない人にはかなり紛らわしい表記だとも思うので、このサイトでは arcsin x などの表記を使用いたします。

③④積と商の微分公式

$$関数の積の微分:(fg)^{\prime}=f^{\prime}g+fg^{\prime}\hspace{10pt}商の積分\left(\frac{f}{g}\right)^{\prime}=\frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}$$

関数が2つの関数を掛け算した f(x)g(x) の形、2つの関数を割り算したf(x)/g(x)の形になっている時は、積の微分公式と商の微分公式を使えます。
例えば、(sin x)(cos x) などには積の微分公式が使えて、
正弦関数を「x で割った」(sin x)/x などには商の微分公式が使えるわけです。
これらの公式は、必要があれば使用し、式が複雑になる時は別の手段を考える事もあります。

手順としては、f(x) と g(x) のそれぞれについて、
「x で微分した関数」と、「微分してない(もともとの)関数」をパーツとして用意し、公式に当てはめます。
商の微分については、分母にあるのは「『微分してない g(x)』の2乗」です。

積の微分・商の微分の具体例
積の微分の具体例:
  • \(\frac{d}{dx}\{(\sin x)(\cos x)\} =(\sin x)^{\prime}(\cos x)+(\sin x)(\cos x)^{\prime} =\cos^2x-\sin^2x\)
    (=cos(2x) であり、(sin x)(cos x)=(sin 2x)/2 の微分と一致するのです。)
  • \(\frac{d}{dx}\{(\sin x)(\sin x)\} =(\sin x)^{\prime}(\sin x)+(\sin x)(\sin x)^{\prime} =2(\cos x)(\sin x)\hspace{10pt} (= \sin(2x))\)
    (これは\(\sin^2x\)を合成関数の微分公式で微分した結果と一致します。)
  • \(\frac{d}{dx}x\ln x=(x)^{\prime}\ln x + x(\ln x)^{\prime}=1\cdot \ln x + x\cdot \frac{1}{x}= \ln x + 1\)
    ※これを変形すると \(\ln x = \left(\frac{d}{dx}x\ln x \right) – 1\) なので、両辺を積分すると、
    積分のほうの公式 \(\int \ln x dx=x\ln x -x+C \)・・が、得られます。
  • 積分公式の「部分積分」は、積の微分公式を変形して
    \(f^{\prime}g=(fg)^{\prime}-fg^{\prime}\)の両辺を積分したものです。
商の微分の具体例:
  • \({\large\frac{d}{dx}\frac{\sin x}{x} =\frac{ (\sin x)^{\prime}x-(x)^{\prime}(\sin x) }{x^2} =\frac{x\cos x-\sin x}{x^2} }\)
  • \({\large\frac{d}{dx}\frac{\ln x}{x} =\frac{(\ln x)^{\prime}x-(x)^{\prime}\ln x}{x^2} =\frac{x\frac{1}{x}-\ln x}{x^2}=\frac{1-\ln x}{x^2} }\)
  • 正接関数 tan x の微分公式は、じつは商の微分公式で証明できます。
    (■後述の三角関数の微分証明に、正弦と余弦とともに記載しています。)
    \(\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}\)ですから、sin x と cos x の微分公式を用いて丁寧に計算すれば証明できます。
  • 三角関数のマイナー組:余接 (cos x)/(sin x)、正割 1/(cos x)、余割 1/(sin x) の微分公式も、商の微分公式を用いれば証明できます。
    余接の場合:\(\frac{d}{dx}\cot x=\frac{d}{dx}\frac{\cos x}{\sin x}=\frac{(\cos x)^{\prime}\sin x-\cos x(\sin x)^{\prime}}{\sin^2x}=\frac{\sin^2 x+\cos^2 x}{\sin^2x}=\frac{1}{\sin^2x}\)
    正割のように 1/g(x) の形の場合、f(x) = 1 ですから、f'(x) = 0 であり、公式の項が1つ消えるので計算は簡単になります。 $$\left(\frac{1}{g}\right)^{\prime}=\frac{0\cdot g-1\cdot g^{\prime}}{g^2}=\frac{g^{\prime}}{g^2}$$これは数学的に必ずそうなるという事であって、新たに暗記する必要はありません。

合成関数・逆関数・積・商の微分公式の証明

これら4公式の証明について記します。大学数学の解析学の視点からは少し別の証明方法もあるのですが、ここでは微分の定義式に基づいて証明するという、単純な発想による証明を、記します。
ここでの証明のポイントは「隠れている項」を考えてあげる事です。

(証明)
合成関数 ■ 逆関数 ■ 積の微分 ■ 商の微分

【積の微分公式の証明の解説】合成関数の微分などの4公式の証明方法は大体考え方は同じで、1や0の形で「隠れている」項を乗じたり加えたりしてあげる事で証明できます。積の微分公式の場合、f(x+h)g(x) - f(x+h)g(x) という「隠れている項」を考える事で、2つの導関数の和の形が作れるというわけです。この考え方自体は、数学の他のところ(大学数学も含め)でも、割とよく使われます。
証明(合成関数など4公式)
  • 1.合成関数の微分公式の証明
    f(t) = f(g(t)) = f(x), x = g(t) である時、まずf(g(t))の t による微分を定義で考えます。
    \(\frac{d}{dt}f(t)\)
    \(=\lim_{h \to 0}\frac{f(g(t+h))-f(g(t))}{h}\)
    \( =\lim_{h \to 0}{\large\frac{f(g(t+h)-g(t)+g(t))-f(g(t))}{h}} \hspace{10pt}\)・・①
    \( =\lim_{h \to 0}{\large\frac{f(g(t+h)-g(t)+g(t))-f(g(t))}{g(t+h)-g(t)}\frac{g(t+h)-g(t)}{h}}\hspace{10pt}\)・・②
    \( =\lim_{h \to 0}{\large\frac{k+x)-f(x)}{g(t+h)-g(t)}\frac{g(t+h)-g(t)}{h} }\hspace{10pt}\)・・③
    \( =\lim_{h,k \to 0}{\large\frac{f(x+k)-f(x)}{k}\frac{g(t+h)-g(t)}{h}} \hspace{10pt}\)・・④
    \( ={\large\frac{df}{dx}\frac{dg}{dt}=\frac{df}{dx}\frac{dx}{dt} }\)(証明終)
    解説:
    「0や1の形」で隠れているものを加えたりかけたりしています。
    ①・・「-g(t)+g(t)(=0)」を分母のf(g(t+h))の変数部分に加えています。
    ②・・「{g(t+h)-g(t)}/{g(t+h)-g(t)}(=1)」をかけます。
    ③・・ k = g(t+h)-g(t) とおき、もうひとつ残っている g(t) については g(t) = x に。
    ④・・ h→0 の時k→0 なので極限を一緒に考える事ができます。
    証明の最後の所・・dg/dt の g はtの関数 g(t) なので、g(t) = x の関係をもう一度使います。
  • 2.逆関数の微分公式
    x=F(y), y=f(x) として、Δx = F(y+k)-F(y) とすると、k→0 の時Δx→0(その逆も成立)
    これを上手に利用して、同じ極限が2通りの方法で表せる事を示すのです。

    \(\frac{dy}{dx}=\lim_{\Delta x \to 0}{\large\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}}\)
    これは定義通りの式です。h でなくとも、
    0 への極限を考えれる変数であれば、微分の定義に使えるのです。
    他方で、同じ極限について

    \( \lim_{\Delta x \to 0}{\large\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x} }\)
    \( =\lim_{k \to 0}{\large\frac{f(F(y)+F(y+k)-F(y))-f(F(y))}{\Delta x}}\hspace{10pt}\)・・(※1)
    \( =\lim_{k \to 0}{\large\frac{f(F(y+k))-f(F(y))} {\Delta x}}\hspace{10pt}\)・・(※2)
    \( =\lim_{k \to 0}{\large\frac{y+k-y}{\Delta x} }\hspace{10pt}\)・・(※3)
    \( =\lim_{k \to 0}{\large\frac{k}{\Delta x} }=\lim_{k \to 0}{\Large\frac{1}{\frac{\Delta x}{k}} }\hspace{10pt}\)・・(※4)
    \( =\lim_{k \to 0}{\Large\frac{1}{\frac{F(y+k)-F(y)}{k}} } ={\Large\frac{1} {\frac{dF(y)}{dy}}}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }\)
    解説:
    (※1)の箇所では、関数を y 変数に直し、Δx→0 の時 k→0 なので k の極限にしています。
    (※2)の箇所では、単純に F(y) + F(y+k) – F(y) = F(y+k) と計算しています。(F(y)が消える)
    (※3)の箇所では、逆関数の重要な性質「f(F(y))=f(x)=y 」(F(y)=xに注意)を使って、f(F(y+k)) = y + k としています。
    (※4)の箇所は、例えば2/3=1÷(3/2)=1/(3/2)などと、同じ計算です。
    ①②の結果から、
    \(\lim_{\Delta x \to 0}{\large\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}}=\frac{dy}{dx}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }\)(証明終)
  • 3.積の微分公式
    分母に「f(x+h)g(x) – f(x+g)g(x) ( = 0)」という項が隠れていると考える事で証明できます。
    上記で、イラストでも解説しています。
    \( \lim_{h \to 0}{\large\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}}\)
    \(=\lim_{h \to 0} {\large\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x+h)g(x)+f(x+h)g(x)-f(x)g(x)}{h} } \)
    \( =\lim_{h \to 0}f(x+h){\large\frac{g(x+h)-g(x)}{h} }+\lim_{h \to 0}g(x){\large\frac{f(x+h)-f(x)g(x)}{h} }\)
    \( =f(x){\large\frac{dg}{dx} }+g(x){\large\frac{df}{dx}}\)
    \(=f(x)g^{\prime}(x)+f^{\prime}(x)g(x) \)
    \( =f^{\prime}g+fg^{\prime}\)(証明終)
    証明の最後のところは、f(x)をf と略して和の順番を変えただけです。
    足し算なので順番はどっちでもよいのですが、 「f’g +fg’」の順番にしたほうが、商の微分公式との関係で「覚えやすい」かとは思います。
  • 4.商の微分公式
    まず分母のg(x+h)とg(x)を通分します。その後で「-f(x)g(x)+f(x)g(x) (=0)」を分子に加えるという、積の微分公式同様の考え方をします。 \(\lim_{h \to 0}{\large\frac{\frac{f(x+h)}{g(x+h)}-\frac{f(x)}{g(x)}}{h} } =\lim_{h \to 0}{\large\frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{h\hspace{2pt}g(x)g(x+h)} }\)
    \( =\lim_{h \to 0}{\large\frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x)+f(x)g(x)-f(x)g(x+h)}{h\hspace{2pt}g(x)g(x+h)} } \)
    \( =\lim_{h \to 0}g(x){\large\frac{f(x+h)-f(x)}{h\hspace{1pt}g(x)g(x+h)}}-\lim_{h \to 0}f(x){\large\frac{g(x+h)-g(x)}{h\hspace{2pt}g(x)g(x+h)} }\)
    \( =g(x){\large\frac{df}{dx}\frac{1}{(g(x))^2} }-f(x){\large\frac{dg}{dx}\frac{1}{(g(x))^2} }\)
    \( ={\large \frac{\frac{df}{dx}g(x)-f(x)\frac{dg}{dx}}{(g(x))^2} } ={\large \frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}} \)(証明終)

初等関数の微分公式の証明

では次に、個々の関数の微分公式の「証明」を記します。一応、これらの証明は別に覚えてなくても支障はないです。ただし、突き詰めて考えると大学数学の微積分学の重要な考え方が見えてくるものもあります。

(証明)
単項式 ■ 一般2項定理 ■ e の指数関数
一般の指数関数 ■ 自然対数関数 ■ 三角関数(正弦、余弦、正接)

単項式の微分公式の証明

定義式に直接単項式を代入すると、\(\frac{(x+h)^a-x^a}{h}\)となりますが、
\((x+h)^a\) について、\(a\) が自然数であれば二項定理で展開する事によって\(\frac{ahx^{n-1}}{h}=ax^{n-1}\)の項だけが h→0 で 生き残るので公式の証明が終わります。

$$2項定理:(x + h)^n=x^n+{}_n \mathrm{C} _1x^{n-1}h+{}_n \mathrm{C} _2x^{n-2}h^2+{}_n \mathrm{C} _3x^{n-3}h^3+\cdots+{}_n \mathrm{C} _{n-1}xh^{n-1}+h^n$$ $$ =x^n +nx^{n-1}h+\frac{n(n-1)}{2}x^{n-2}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^{n-3}h^3+\cdots+nxh^{n-1}+h^n\hspace{10pt}n:自然数$$ 直接の因数分解を考えてみて、x と h を何個選ぶかの「組み合わせ」を考えるわけです。(びっくりマークがついている「3!」は「3の『階乗』」で、3! = 3・2・1 = 6 を表します。4 の階乗なら、4!=4・3・2・1 = 24。ここではあまり関係ないですが「ゼロの階乗」は0!= 1 と「定義」します。)

しかし、a が自然数でない場合は、少し証明に工夫がいるのです。a が実数の場合でも同じ形の一般2項定理が成立するのですが、その肝心の一般2項定理の証明が単項式の微分の結果を使って行われる・・というジレンマが、じつはあります。
・・そこで、単項式の微分公式の証明では、強引に一般2項定理の単独での証明を試みるよりは、一般的には対数関数の微分を利用して単項式の微分公式の証明が行われます。

証明

対数の性質\(\ln x^a=a\ln x\)
\(\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{d}{dx}a\ln x=a\frac{d}{dx}\ln x=\frac{a}{x}\)

他方で、合成関数の微分公式を用いると同じ式を別の形で表せます。
\(\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{\frac{d}{dx}(x^a)}{x^a}\)
・・という事は、\({\Large \frac{a}{x}=\frac{\frac{d}{dx}(x^a)}{x^a} }\)
\(\Leftrightarrow {\Large \frac{d}{dx}(x^a)=\frac{a}{x}x^a=ax^{a-1}}\)(証明終)

a が実数の時の単項式の微分公式が証明されると、後述するマクローリン展開を用いて一般2項定理を証明する事ができます。なんとも複雑な関係で、証明も少しややこしいところはあるのですが、記しておきます。

一般2項定理の証明

a が自然数でない時、\((1+x)^a\hspace{5pt}(|x|<1)\)に対して適用して、マクローリン展開を適用すると、 $$(1+x)^a=1+ax+\frac{a(a-1)}{2}x^2+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}x^3+\frac{a(a-1)(a-2)(a-3)}{4!}x^4+\cdots$$ r < s および s ≠ 0 の任意の実数 r と s の組に対して |x|<1 の範囲に x = r/s となる x が存在するので、 $$\left(1+\frac{r}{s}\right)^a=1+a\frac{r}{s}+\frac{a(a-1)}{2}\frac{r^2}{s^2}+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}\frac{r^3}{s^3}+\cdots$$ \({\large\left(1+\frac{r}{s}\right)^a=(\frac{s+r}{s})^a=\frac{(s+r)^a}{s^a}}\)に注意して、上式の両辺に \(s^a\) (これは有限の値)をかけます。 $$(s+r)^a=s^a+ars^{a-1}+\frac{a(a-1)}{2}r^2s^{a-2}+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}r^3s^{a-3}+\cdots$$ というわけで、a が自然数の場合とも合わせて、一般2項定理が成立する事を意味します。(証明終)
※この証明でややこしくて面倒なのは、\((1+x)^a\)のマクローリン展開が可能な x の範囲が |x|<1 という形で限定されているため、最初からマクローリン展開で直接に一般2項定理を示そうとすると話がこじれるところであると思います。

指数関数の微分公式の証明

指数関数の微分は、e に関する微分公式の証明が基本になります。(※一般の指数関数にも ln a =logeaの形で e が関わってくる事に注意してください。)
証明の方法は、微分の定義式に直接関数を当てはめて計算を進める形になります。
その際に、指数と対数との関係を使って式変形をしていきます。

証明 \({\large\frac{e^{x+h}-e^x}{h}=e^x\frac{e^h-1}{h}=e^x\frac{e^h-1}{\ln e^h}}\)

次に、\(e^h-1=k\)とおくと、\(e^h=1+k\)に注意して
\({\large\frac{e^h-1}{\ln e^h}=\frac{k}{\ln (1+k)}=\frac{1}{\frac{1}{k}\ln (1+k)}}\)・・と強引に表す事ができて、これの分母についてさらに
\({\large\frac{1}{k}\ln (1+k)=\ln (1+k)^{\frac{1}{k}}}\) という、e の定義式の形を含んだ式に変形できます。
h→0 の時k→0なので k に関する極限として考えてもよく、 $$\lim_{k \to 0}(1+k)^{\frac{1}{k}}=\lim_{k \to \infty} (1+\frac{1}{k})^k=eなので\lim_{k \to 0}\frac{1}{k}\ln (1+k)=\lim_{k \to 0}\ln (1+k)^{\frac{1}{k}}=\ln e = 1 ですから$$ \(\lim_{h \to 0}\frac{e^{x+h}-e^x}{h}=\lim_{k \to 0}e^x\frac{k}{\ln (1+k)}=\lim_{k \to \infty}e^x\frac{1}{\ln (1+\frac{1}{k})^k}=e^x\frac{1}{\ln e}=e^x\frac{1}{1}=e^x\)(証明終)

自然対数の底 e の存在証明は?

さて、上記の証明で、おそらく「高校数学」の範囲だと少し疑問がある箇所があって、それは $$\lim_{n \to 0}(1+n)^{\frac{1}{n}}=\lim_{n \to \infty} \left(1+\frac{1}{n}\right)^n=e$$ で定義される自然対数の底(ネピア数)e が「本当に有限の値なのか?」という事です。

この e の定義の極限の式が無限大に発散せずに何らかの値に「収束する」という事については、おそらく普通の高校では「とにかく収束する事が知られている」などと強引にたたみかけている箇所かと、思います。

大学数学では、これをちゃんと証明します。肝心な事は、\((1+\frac{1}{n})^n\)という関数が、

  • 単調増加で、
  • ある値未満になる(3未満という事を示せます。「上に有界である」と言います)

という事です。関数が数列の時、その場合に数列は必ず収束する事を証明できるのですが、そのためには極限の定義を見直す事を、一般的な大学の微積分学(解析学)では行います。
微分公式の証明の中では、自然数 n ではなく実数 k についての\((1+\frac{1}{k})^k\)の極限を考えていますが、これの k →∞ での極限値も同じく e です。(まず数列の場合で示してから、実数関数の場合でも同じ極限値になる事を示すという手順をとります。)

このように、中学・高校で少し曖昧になっている部分を、より厳密に考察したり改めて定義を見直したりする事も、大学数学の重要な内容のひとつです。

一般の指数関数の微分

一般の指数関数の微分については、公式としてはそれほど重要ではないと思いますが、数学的事実としては次のように導出できます。定義に当てはめて自然対数の底の場合と全く同様にして計算を進めます。
対数の底の変換公式を用いて\(\log_a(1+\frac{1}{h})^h=\frac{\ln(1+\frac{1}{h})^h}{\ln a}\)となる事を使います。これは h → ∞ で\(\frac{1}{\ln a}\)に収束します。
微分の定義式による計算ではこの式が分母にありますから\(a^x\ln a\)が、微分によって得られる導関数になります。

対数関数の微分公式の証明

直接定義から計算しても証明できますし、指数関数の逆関数が対数関数なので、逆関数の微分公式を用いても証明できます。いずれの方法でも、自然対数の底 e の定義式の極限値の存在が、対数関数の微分公式でも成立の根拠となります。

証明

\(\frac{\ln (x+h)-\ln x}{h}=\frac{\ln \frac{x+h}{x}}{h}=\frac{\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)}{h}=\frac{1}{x}\frac{x}{h}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)=\frac{1}{x}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)^{\frac{x}{h}} \rightarrow \frac{1}{x}\ln e =\frac{1}{x}\)(証明終)

三角関数の微分公式の証明

三角関数のうち正弦関数と余弦関数(サインとコサイン)の微分公式は、まず定義に当てはめて、sin(x+h) の形を三角関数の加法定理によって (sinx)(cos h) +(cosx)(sin h)の形にして計算を進めれば導出する事ができます。
ただし、計算の過程の最後で\(\lim_{h \to 0}\frac {\sin h}{h}=1\)の極限の公式が、必要になります。この公式は、「図で見ると」大体は理解できるものなのですが、きちんと証明しようとすると、「円周の長さ=円の直径×円周率」という公式の正確な証明が必要という事になるので、結構面倒なのです。

証明
正弦関数 sin x の微分

\(\frac{\sin (x+h)-\sin x}{h} =\frac{\sin x \cos h + \cos x\sin h – \sin x}{h}\)
\( =\sin x \frac{(\cos h -1)}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h}\)
\( =-\sin x \frac{\sin^2 \frac{h}{2}}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h}【∵ \cos h-1=\cos^2\frac{h}{2}-\sin^2\frac{h}{2}-1=1-2\sin^2\frac{h}{2}-1=-2\sin^2\frac{h}{2}】\)
\( =-\frac{\sin x}{2} \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \frac{h}{2}}{\frac{h}{2}}+\cos x\frac{\sin h}{h} \rightarrow -\frac{\sin x}{2}(\sin 0) \cdot 1 + (\cos x)\cdot 1=\cos x\)(証明終)

余弦関数 cos x の微分

\(\frac{\cos (x+h)-\cos x}{h} =\frac{\cos x \cos h – \sin x\sin h – \cos x}{h}\)
\( =\cos x \frac{(\cos h -1)}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}\)
\( =-\cos x \frac{\sin^2 \frac{h}{2}}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}【∵正弦の時と同じく \cos h-1=-2\sin^2\frac{h}{2}】\)
\( =-\frac{\cos x}{2} \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \frac{h}{2}}{\frac{h}{2}}-\sin x\frac{\sin h}{h} \rightarrow -\frac{\cos x}{2}(\sin 0) \cdot 1 – (\sin x)\cdot 1=-\sin x\)(証明終)

正接関数 tan x の微分

これに関しては、定義からも計算できますが、商の微分公式を使うほうが簡単です。
\(\frac{d}{dx}\tan x=\frac{d}{dx}\frac{\sin x}{\cos x}=\frac{(\sin x)^{\prime}\cos x-\sin x(\cos x)^{\prime}}{\cos^2x}=\frac{\cos^2 x+\sin^2 x}{\cos^2x}=\frac{1}{\cos^2x}\)(証明終)

正弦・余弦関数の微分公式の証明で肝心となる \(\lim_{h \to 0}\frac {\sin h}{h}=1\) の極限については、図で言うと下図のような関係を作れる事で示されます。ポイントは、弧度法で表した角度が「円弧の長さ」に等しいという事です。

しかし細かい事を言うと、じつは「円周率」について大学数学の解析学的に見る必要も出てくるのです。

h→0で、h/(sin h)の逆数の(sin h)/hも同じ極限値1になります。(1/1 = 1 です。)この証明において、本来は自明ではないのが「円弧の長さが弧度法で表した角度に等しい」という命題であり、これは結局、「円周の長さが直径に比例する(比例定数:円周率)」という事を示さないと、正確に真だとは言えません。(途中までは平面幾何学で進められますが、最後のところで大学の解析学での極限の考え方が必要です。)図で、線分PCは円の「外接正多角形」の一部で、線分ABは円の「内接多角形」の一部です。これらの長さの大小関係は図形的に三角不等式によっても示せますが、円に関する「アルキメデスの公式」を用いて、式で表現する事もできます。 尚、この図では|弧長PA|<|AB|+|PB|もじつは成り立っていますが、それを平面幾何的に正確に示そうと思うとかえって大変なのでここでは用いていません。
(sin h)/h の h→0 の極限問題

\(\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1\)の極限問題が示されれば、上記のように正弦・余弦関数の微分公式を導出したり、円周の長さが内接・外接正多角形の周の長さの極限であるといった事も容易に分かります。しかし、円周率のほうの問題が証明されないと、この極限値を出すのは難しいのです。
弧度法による角度の定義の本来は、角度を円周の弧長に対応させるというものです。(それで、360度が円周率の2倍というわけです。)
では、円の弧長の長さが一定の比例定数のもとで直径に比例する事は「自明」でしょうか?
もちろんそうではありません。それを証明するには、平面幾何を丁寧に紐解く事と、大学数学での解析学の極限の考え方が必要です。そういう意味で、初歩的な微分公式などでさえも、細かく見ると「本当に高校数学の範囲だけの視点」で見る事にはじつは限界があるのです。
「自然対数の底 e」を得るのにも特定の式の極限を考えたわけですが、この正弦関数に関する極限は「円周率」に深く関わる極限という見方もできるかもしれません。

マクローリン展開やロピタルの定理を使えば「極限の値自体」はすぐ分かる

このページでも後述している微分系の公式である「マクローリン展開」や「ロピタルの定理」を使うと、\(\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1\)である事は、すぐに計算できます。なので、それらの公式は極限値を「覚える」のには使えます。

$$マクローリン展開:\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\cdots を「x で割ると」$$ $$\frac{\sin x}{x}=1-\frac{x^2}{3!}+\frac{x^4}{5!}-\cdots\hspace{10pt}\rightarrow\hspace{10pt}1 (x\rightarrow 0)$$

しかしいかんせん、マクローリン展開もロピタルの定理も、正弦関数について見る時は、正弦関数の微分公式が必要です。
そして上記の通り、その肝心の正弦関数の微分公式の成立根拠が\(\lim_{h \to 0}\frac{\sin h}{h}=1\)なのです。
ですから、「証明」としては、マクローリン展開などを使ってしまうと、おかしな事になると思います。