微分の定義と接線

微分の定義とイメージを、図形的な意味と数式の両方の観点から説明します。

微分は積分の逆演算でもありますが、ここでは「関数のグラフの接線の傾き」という図形的な意味に特に着目して説明をします。

■サイト内関連記事:各種の微分に関する公式の証明等です。

微分のイメージと接線

接線の傾き

例えばy=sinxを微分すると、その計算結果の公式としてy’=cosxが得られますが、
実はこれは定義域内のy=sinxのグラフ上の任意の点における接線の傾きを表す関数です。
y’=cosxにx=0を代入すると計算結果は1ですがそれは
「x=0におけるy=sinxのグラフの接線の傾き」に一致するのです。

微分のイメージは「曲線の接線の傾き」であり、
実際にその計算による値は関数を表すグラフ上の特定の点での接線の傾きに一致します。
正弦関数以外の三角関数やy=xやy=x等の関数、あるいは円を式で表した関数も微分する事が可能で、各点での接線の傾きを計算する事ができます。

微分を表す記号は、後述するようにy’ f’(x) dy/dxなどです。
ただしそれらは関数として統一的に考えている接線の傾きであり、
x=0での具体的な接線の傾きを知りたい場合にはx=0の値を代入する必要があります。

正弦関数y=sinxにおいてx=π/2の部分をグラフ上で見ると、
その部分の接線はx軸に平行で「傾きは0」なのではないかと予想ができます。そして実際にそれは正しくて、微分演算により得るy’=cosxにx=π/2を代入するとy’=0であり、それがx=π/2におけるy=sinxの接線の傾きです。

他方で円を座標上に描いたような時には左右に2箇所、接線がy軸に平行になる部分が存在します。そのような時には接線の傾きは∞(無限大)であるとみなす事もできますが、微分によっては傾きを数値として表せないと考える事が多いです。

微分演算(計算)・導関数・微分係数の関係と使い分け

微分を式で考える場合には、
少しややこしいようですが「微分という演算(計算)」と、
演算の結果として得られる「関数」(各点での接線の傾きを表現)と、
それに変数の値を代入した「数値」(具体的な接線の傾き)があります。

接線の傾きを表す関数は数学的には導関数(「どうかんすう」)と呼ばれ、
導関数に具体的な値を代入して得る値(=具体的な接線の傾き)は微分係数と呼ばれます。
微分係数は「x=0における微分係数」とか「x=1における微分係数」といった形で表現されます。

y=sinxに対して微分演算を行う
導関数y’=cosxを公式として得る事になり、
導関数y’=cosxにx=0を代入した時の
cos0=1がx=0における微分係数です。

関数導関数x=0における
微分係数
x=1における
微分係数
x=πにおける
微分係数
y=sinxy’=cosxcos1-1
y=xy’=2x2π
y=xy’=3x3π

「微分」という語の使われ方

ところで導関数の事を指して単に「微分」と呼ぶ事もあります。
例えば「y=sinxの微分はy’=cosxであるから・・・」などといった具合です。
ただしこれは数学よりもむしろ日本語の用法上の問題であるとも考えられて、
「微分する」事を「・・の微分」と言っているとも見れます。いずれにしても「微分」という言葉の使い方は数学上においてもそれほど厳密ではなく、多少緩く扱ってもよい事になっているのが実情と思われます。実質的には「微分」という語は演算を指す事を基本としながらも、便宜的に「導関数」と同義の語としても使われています。

しかし「導関数は関数」であり「微分係数は定数」であるため、
「導関数」と「微分係数」の2つの語の使い分けは必要であり重要であるとも言えます。

ところで接線の傾きが分かれば「接線を表す直線の式」も関数として分かる事になります。
x=aにおける微分係数をf'(a)と書くとするとその点での接線の式は
f(x)-f(a)=(x-a)f'(a)であり、
本来「微分」とはむしろそのような接線の式を指して呼ぶという考え方もあります。
この考え方のもとでは、
接線の式の左辺をdyと書き右辺のx-a の部分をdxと書く事があります。
すると接線の式はdy=dxf’ (a)のようになります。
つまり接線の式を指して微分と呼ぶ考え方は、接点を原点とした新たな1次式(直線の式)においてxの変化分dxに対するyの変化分dyを指して「微分」と呼んでいるわけです。
(この場合、置き換えをしているだけなのでdyやdxは必ずしも微小量とは限りません。)
この考え方のもとでは「割り算としてのdy/dx」は微分係数f'(a)に等しい事になり、物理等では微小量においての考察でこれにかなり近い考え方が使われる事があります。
ただしその考え方のもとでも「dy/dx」という記号は1つの塊として導関数f'(x)を指し、「微分する」と言えば微分演算の事を指します。
微小なxとyの変化分の割り算を考えて、極限をとる事で微分演算とする考え方は微分の定義式の1つでもあります。しかし、記号としては割り算を行う時にdyやdxを使う事はなるべく避けられて、代わりにΔy(「デルタy」)やΔxの記号が使用される事が多いです。

微分の定義式

微分の定義式は、次のように極限の形式になっています。
この定義式を使う事により、各種の微分公式を導出する事ができます。

微分の定義式(3パターン)

■2点間の変化率(傾き)の極限値としての微分の定義
【次式の極限値が存在する時、それが f(x) の導関数。】 $$f^{\prime}(x)=\lim_{a \to x}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$$ ■x-a=hとおいた表記
【各種の微分の公式を導出する時にはこれが便利です。】 $$f^{\prime}(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$ ■x-a =Δxと書いて,f(x)-f(a)=Δyと書いた時の表記
【文章中で表記を簡易的に済ませたい時に便利な事もあります。】 $$f^{\prime}(x)=\lim_{\Delta x \to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x}$$ ΔxとΔyを「増分」と呼ぶ事もありますが、マイナスの値の時もあります
特にΔyは、xの増加に対して減少して行く関数では普通にマイナスの値を取り得ます。
また、ΔxとΔyという記号は「微小な変化量」の意味で使われる事も多いです。

また、微分係数は導関数が存在する場合にxに具体的な値を当てはめる事でも計算できますが、上記の定義式とほぼ同じ形を使って書く事も一応可能です。
例えば関数y=f(x)のx=xにおける微分係数は次の式で書く事もできます。

$$x=x_1における微分係数:f^{\prime}(x_1)==\lim_{a \to x_1}\frac{f(x_1)-f(a)}{x_1-a}$$

微分の定義式の極限を考える対象の式は、一般的にはxy平面での座標上の任意の2点を通る直線の傾きを表す式です。その片方の点を、もう片方に一致する寸前まで限りなく近づけて行く事で接線の傾きを算出するというのが微分演算のイメージです。この図では微分を考えている点に向けて左側から近づけて行く形ですが、右側から近付けて考える事もできます。(ただし、対象の関数によってはどちら側から近付けるかで接線の傾きの値が変わってしまい「微分不可能」の判定になる事もあります。)

微分の定義式において、極限を考えている対象の式{f(x)-f(a)}/(x-a) を関数y=f(x)の「平均変化率」と呼ぶ事もあります。その観点からは微分は、平均変化率を限りなく短い区間で考えた極限値であると言う事もできます。

微分の表記方法

微分を表す記号は大きく分けて3種類が使われていて、
①関数を表す文字の右上に「 ’ 」の記号【プライムあるいはダッシュ】を付けるか、
微分演算子 \(\frac{\Large d}{\Large dx}\)(文章中での略記:d/dx)を関数に作用させるか、
③あるいは関数を表す文字の上に「・」【ドット】を付けるかで表します。

具体的にy=sinxやy=x+xといった関数や、より一般的にy=f(x)で表される関数に対する微分は次のような表記で書かれます。

微分の表記方法の例
関数表記の例(いずれも意味は同じ)備考
y=sinx\(y^{\prime}\) \((\sin x)^{\prime}\) \(\frac{\Large dy}{\Large dx}\) \(\frac{\Large d}{\Large dx}(\sin x)\) \(\dot{y}\)y’ 表記は「xによる微分」
である事が明確な時に使用。
+x\((x^2+x)^{\prime}\) \(\frac{\Large d}{\Large dx}(x^2+x)\)\((x^2)^{\prime}+x^{\prime}\)および
\(\frac{\large d}{\large dx}(x^2)+\frac{\large d}{\large dx}x\)に等しい
y=f(x)\(f^{\prime}(x)\) \(\frac{\Large df}{\Large dx}\) \(\frac{\Large df(x)}{\Large dx}\) \(\frac{\Large d}{\Large dx}f(x)\)f(x)に対するドット表記\(\dot{f}\)や\(\dot{f}(x)\)
は、あまり使われない。
微分演算子を使用する時の文章中の略記はdy/dxや(d/dx) (sinx)などです。

f’(x)は「fプライムx」「fダッシュx」のように読んだりします。
dy/dxなどの記号はそのまま「ディーワイディーエックス」などと読まれて、
\(\dot{y}\) は「ワイドット」のように読まれる事があります。
数学史的にはdy/dx型の表記はライプニッツが使っていたとされる表記で、
ドットによる表記はニュートンが使用していたというのが通説です。

導関数をy’ あるいはf’(x)で表す表記は「y=f(x)というxを変数とする関数があり、xで微分演算を行う」という事が明確である場合に便利な表記です。

微分演算子を使う表記では、変数がxではない場合には変数の部分の記号を変えて使用します。例えばtによる関数y=tを微分する時にはxではなくtで微分するのでdy/dt,d/dt(t)のように表記します。言い換えると、微分演算子による微分の表記は「何の変数で微分しているのか」を明確にできます。

ドットを使った表記は主に物理で使用されて、微分した後にさらに2乗するだとか、その他式が複雑になる時に表記上便利です。例えば導関数の2乗を使う式の場合、(dy/dx)といった表記を長い式の中で何度も繰り返すのは大変ですが、\(\dot{y}^2\) の表記なら比較的簡単に済む場合があります。

微分の表記としてドットを使う場合の使用例としては、サイト内記事で取り扱っている例としては少々複雑な計算ですが古典力学における運動方程式を極座標系の成分で書き直すための計算などがあります。その例では時間tを変数とした微分を考えています。

微分の四則演算

2つの関数f(x)とg(x)をそれぞれf,gと略記します。またcは定数であるとします。

定義式から、
f+g【関数の和】,f-g【関数の差】、cf【関数の定数倍】に対する微分は
それぞれ次のように計算できます。

  • (f+g) ‘=f’+g’
  • (f-g) ‘=f’-g’
  • (cf) ‘=cf’

あるいは、3式をまとめて
(cf±cg) ‘=cf’±cg’
のようにも表現できます。

これらの演算は、定義式に当てはめて丁寧に計算すると証明する事ができます。
(証明は比較的容易ですが、「自明」な事実では無い事に注意は必要です。)

具体的には、例えばx+x+1のような多項式の微分は
+x+1) ‘=(x) ‘+(x) ‘+(1) ‘=2x+1+0=2x+1
のように計算してよい事を意味します。
これは地味ですが微分を利用していくうえで非常に重要な公式であるとも言えます。

他方で、関数同士の積fgや商f/gに対する微分は少し妙な形の公式である
(fg) ‘=f’g+fg’ および (f/g) ‘=(f’g-fg’ )/(g)
が成立します。これら2式も微分の定義式から証明できます。

微分不可能な場合とは

微分の定義式を見ると極限の形になっています。その極限値が存在するなら導関数として扱えるという事であり、極限値が存在しない(収束しない)場合には導関数を表せません。
そのような時、関数は微分不可能であると言います。

また、極限の計算自体は一応できても導関数や微分係数が1つの形に定まらない場合も同様に微分不可能とみなす事が普通です。

逆に導関数が存在する時には微分可能である(もしくは可微分である)と言います。

定義域内のほとんどの点では微分可能であっても、ある特定の点でだけ微分不可能という場合もあります。そのような場合には「例えばx=0では微分不可能」といったようにその特定の点での微分係数を式で表現できない事を表します。

微分可能であるか微分不可能であるかどうかという事を指して微分可能性とも言います。用語としては「x=0における微分可能性を調べてみると、・・・」のように使います。

初等関数では定義域内のほとんどの点で微分可能であり、
一部の点が微分不可能になっている場合があります。

そもそも定義されていない点

関数y=1/xの「x=0の点」や、正接関数y=tanxの「x=π/2の点」のように、そもそも関数を定義できない点では図形的に接線を引く事もできず、数式的に微分をする事もできません。

それらの点に対して導関数の極限を考える事は可能ですが、反比例の関数や正接関数ではその極限も無限大に発散します。図形的には、そのような点に向かって接線は限りなくy軸に平行な直線に近付いていく事になります。

関数は定義できても導関数だと定義できなくなる領域

考えている点で関数が定義されていても微分できない点が存在する場合もあります。

そのような場合の1つは、もとの関数では定義が可能であっても導関数を計算すると不連続点が発生して微分係数が無限大に発散する場合です。図形的に見ると、大抵はその点での接線はx軸に垂直でy軸に平行になっています。つまり傾きで言うと「無限大」になっている状況です。

この状況を「微分係数が∞(無限大)である」と考える事はできなくは無いですが、基本的にはその時には微分の定義式で極限が収束せず無限大に発散するので微分係数は存在しないと考えます。

具体的には、円を座標上の関数として考えた場合や、xの平方根に対してそのような点が存在します。例えばxの平方根は、もとの関数ではx=0での関数値が存在します。しかし微分して得られる導関数はx=0で無限大になり定義できない事が分かります。

関数導関数微分可能性
\(y=\sqrt{x}\)
【定義域:x≧0】
\(y=\frac{\Large 1}{\Large 2\sqrt{x}}\)
【定義域:x>0】
x=0:微分不可能
x>0:微分可能
\(y=\sqrt{r^2-x^2}\)
【-r≦x≦r】
(原点が中心の半円)
\(y=-\frac{\Large x}{\Large \sqrt{r^2-x^2}}\)
【定義域:-r<x<r】
x=±r:微分不可能
-r<x<r:微分可能
円のほうの式の微分計算には合成関数の微分公式を使用しています。

同じ点で微分係数が2つの異なる値をとる場合

微分の定義式を計算すると極限値が有限の値として存在するけれども、詳しく見ると「値が2通り存在してしまい、1つの値に定まらない」という場合があります。このような場合にもその点では微分不可能であると考えるのが一般的です。

具体的にはy=|x|のような関数が該当します。
これはx≧0の時y=x,x<0の時y=-xという関数であり、
場合分けをして定義するような種類の関数です。
この関数は「x=0で微分不可能、その他の区間では微分可能」になります。

これは図形的に見れば直線を組み合わせた形をしているので微分の定義から計算をしなくても「接線」の傾きはそのまま直線の傾きになります。

そこでx=0での微分可能性を見てみると、「接線」は引く事ができてしかも有限の値であるけれども、傾きは+1と-1の両方があり得てしまう事が分かります。このような時には、x=0での微分係数は「値が1つに定まらない」という意味で微分不可能であると考える事が一般的なのです。

この事は、極限一般の観点から言うとh→0の極限は「hをプラスの値に保ったまま0に近付ける」時と「hをマイナスの値に保ったまま0に近付ける」時とで極限値が変わってしまう事がある場合に該当します。前者を右側極限と呼び、後者を左側極限と呼ぶ事もあります。

  • 右側極限:hをプラスの値に保ったまま0に近付ける。「h→+0」とも書く
  • 左側極限:hをマイナスの値に保ったまま0に近付ける。「h→-0」とも書く
  • y=|x| では、x=0における微分の計算で右側極限と左側極限の値が一致しない。

一般的に「微分可能である」という事は微分の定義式の極限において右側極限と左側極限の値が一致する場合のみ、という判定をします。y=|x|のような場合分けを含まない初等関数では、定義できない点がある場合は除外して考える限りにおいては、右側極限と左側極限の一致・不一致の問題は微分計算でそれほど気にする必要は無いと言えます。

y=|x| に対するx=0における微分については、右側極限と左側極限のそれぞれが無限大に発散するわけでは無い事を考慮して「右側微分可能」かつ「左側微分可能」であるけれども「微分は不可能」であると表現する事もあります。

逆関数の微分公式【計算例と証明】

逆関数の微分公式の内容、具体例、証明について述べます。

y = 2x のとき、両辺を2で割って x = y / 2 とも書けます。
このように、y = y(x) のとき、逆に x = x(y) と書けるとき、x(y) を y(x) の逆関数と呼びます。
【この時の関数の記号はfでもFでも何であっても問題ありません。】

高校数学の中で重要な例としては、指数関数と対数関数を挙げる事ができます。
これらは、互いに逆関数同士の関係にあるのです。

y=x2 のような場合に逆関数を考えると x=\(\pm \sqrt{y}\)のように x を y で表した関数が2つ出てきてしまうので、「1つの変数に対して1つの値が定まる」という関数の定義に反し、ちょっとした面倒事が起きます。
こういう場合には x の定義域と y の値域を特定の区間に定めれば逆関数を書けるという形になります。
逆関数の定義に関するそういった細かい事は多くあるのですが、ここでは本質ではないので略します。

高校数学で覚える必要はありませんが三角関数の逆関数を「逆三角関数」と言い、
sin x に対して arcsin x(「アークサイン x」)と書きます。
この逆三角関数は一見使いづらい関数なのですが、
その微分の性質から、一部の微積分の計算(例えばテイラー展開や不定積分の計算)で有用な働きをする事があります。この逆三角関数を微分する時には、逆関数の微分公式を使用します。

公式の内容

逆関数を考えた時、もとの関数を微分して得られる導関数と、逆関数を微分して得られる導関数の間にはある関係式が必ず成立するというのが、逆関数の微分公式です。内容は、次のようになります。

逆関数の微分公式

y=y(x)の時にx=x(y)と表せる時、次の関係式が成立します。 $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}$$ ここで左辺はxの関数で、具体的な計算においては右辺はyの関数ですが、yはxで表せるという前提なので右辺もxだけの関数として表す事ができます。(※ただし後述するように具体的な計算ではyをxに直す作業が面倒である事があります。)
もちろん、分母は0になってはいけないという前提はあります。

ちょっと一見よく分からない公式だと思うかもしれませんが、xをyで表した時に「xをyで微分して得られる導関数」の逆数が、もとのyをxで微分して得られる導関数に必ず等しくなるという関係式です。

式としては単純で互いに逆数であるという関係ですから、dx/dy=・・の形として見ても公式は成立します。つまり基本的には公式を次のように書き換える事もできます。

$$\frac{dx}{dy}={\large\frac{1}{\frac{dy}{dx}}}$$

これは、具体例で見たほうが分かりやすいと思います。

逆関数
このような逆関数の導関数を考える時、もとの関数の導関数との間に常に成り立つ関係式があります。

具体例と計算例

具体的に公式を使うための手順は次のようになります。
もとの関数y=y(x)の導関数を計算したい場合であるとします。

  1. 関数と逆関数を、y=y(x), x=x(y) の形で出しておく。
  2. 逆関数のほうについて、導関数を計算する。【※これが簡単にできる場合でないと、公式を使う意味があまりない事になります。】$$\frac{dx}{dy}を計算$$
  3. 得られた逆関数の導関数(yの関数)を、逆関数の微分公式に代入します。$$\frac{dy}{dx}={\large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\hspace{5pt}に\hspace{5pt}\frac{dx}{dy}\hspace{5pt}を入れる$$
  4. この段階で得られる計算結果は「y の関数」の形になっているので、y=y(x)を代入して x の関数にすれば、
    それが y に対して x で微分したdy/dxの正しい形になっています。 $$式の変数をxだけにすれば\hspace{5pt}\frac{dy}{dx}\hspace{5pt}の結果になる$$
微分公式
指数関数と対数関数の微分は逆関数の微分公式で結ぶ事ができます。

※合成関数でもこの「y を x の関数の形に戻す」作業がありますが、一般には y = f(x) を代入すればよいというものでした。しかし、逆関数の微分の場合は、この作業について少し工夫がいる場合があります。

具体的な計算例を次に記します。
ここでは参考までに、逆三角関数の微分の計算も記してあります【高校では不要】。

逆関数の微分の具体例

逆関数の微分公式は、通常の微分計算で多く使うというよりは、特定の微分公式を導出するために使われる事が多いように思います。

  • 1次関数の例:y=2, x=y/2 の時、 $$\frac{dx}{dy}=\frac{1}{2}\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}={\large\frac{1}{\frac{1}{2}}}=2$$ この場合には直接微分しても、あるいはグラフを見ても分かる結果ではありますが、逆関数の微分公式も確かに成立しているという事です。
  • 2次関数の例:x>0かつ y=\(\sqrt{x}\), x=y2 の時、 $$\frac{dx}{dy}=2y\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}= \frac{1}{2y} =\frac{1}{2\sqrt{x}}$$ ここでは平方根のほうの導関数を計算するために、2次関数を逆関数とみなしています。
    もちろん、この計算はyを直接xで微分しても同じ結果です。
  • 指数関数と対数関数の例:y=ex, x=ln y の時、 $$\frac{d}{dx}e^x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\ln y}}={\large\frac{1}{\frac{1}{y}}}=y=e^x$$ 指数関数と対数関数の微分公式は一見全く異なる形であるようにも見えますが、じつはこうしたつながりもあるというわけです。
  • 逆三角関数と三角関数の例:y= arcsin x, x= sin y の時、$$\frac{d}{dx}\arcsin x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\sin y}}=\frac{1}{\cos y}=\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2y}}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$$ ここでは「逆三角関数の導関数」を知るために、通常の三角関数を逆関数とみなしています。
    計算過程では sin2x+cos2x=1 の関係を使用しています。
  • 余弦の逆三角関数の例:y=arccos x, x=cos y の時、$$\frac{d}{dx}\arccos x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\cos y}}=\frac{1}{-\sin y}=\frac{-1}{\sqrt{1-\cos^2y}}=\frac{-1}{\sqrt{1-x^2}}$$
  • 正接の逆三角関数の例:y=arctan x, x=tan y の時、 $$\frac{d}{dy}\tan y==\frac{1}{\LARGE{\frac{1}{\cos^2y}}}\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{d}{dx}\arctan x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\tan y}}=\cos^2y=\frac{1}{1+\tan^2y}=\frac{1}{1+x^2}$$

高校数学では、指数関数と対数関数の関係あたりを逆関数の関係で結べる事を理解していれば、基本的にはじゅうぶんかと思います。

逆三角関数の微分
【逆関数の微分公式:arcsin x の導関数の導出の例:】arcsin xの微分を、「sin xの微分公式」と「逆関数の微分公式」から導出する手順です。x = sin y の時に「y を変数とする形」で逆関数の微分を出すのは、じつはかなり簡単です。(公式により y で微分し分母に入れるのみ。)
ただ、そのあとで y を x の関数の形にうまく戻すために、工夫が必要な事があるのです。
※逆三角関数の別の表記方法

あくまで表記方法の問題なのですが、逆三角関数を sin-1xとも書きます。
もちろんその場合は(sin x)-1=1/(sin x) とは全く異なる関数・・なのです。
個人的にこれは紛らわしい表記だとも思うので、このサイトでは arcsin x などの表記を使用します。

公式の証明

y=Y(x), x=X(y) として、まず Δx = X(y+k)-X(y) とすると
k → 0 の時に Δx → 0 となります。(その逆である「Δx→ 0 の時 k → 0 」も成立)

X(y+k)-X(y) について Δx という文字でおいたのは、ここでは X(y+k)-X(y) というものが「xの変化」に等しいという事を見やすくするためです。別に他の文字でも支障はありません。

これを上手に利用すると、同じ極限が2通りの方法で表せます。その2通りの方法による結果がdy/dxと1/(dx/dy)であり、それゆえに両者を等号で結べるというのが証明の内容です。
その点で、合成関数の微分公式のように1本の式だけで証明できない点が少しだけ異なります。

ここで、微分の定義の式を書きます。

$$\frac{dy}{dx}={\large\lim_{\Delta x \to 0}\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x}}$$
これは定義通りの式です。しかし、極限をとる変数としてΔxを使っているところに計算上の工夫があります。ここの極限をとる変数は、h でなくとも何でも成立します。

上記の微分を表す微分を計算すると、次のようにも表せます。

$$ {\large\lim_{\Delta x \to 0}\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x} } =\lim_{k \to 0}{\large\frac{Y(X(y)+X(y+k)-X(y))-Y(X(y))}{\Delta x}}$$
$$ ={\large\lim_{k \to 0}\frac{Y(X(y+k))-Y(X(y))} {\Delta x}} ={\large\lim_{k \to 0}{\large\frac{y+k-y}{\Delta x} }} ={\large\lim_{k \to 0}\frac{k}{\Delta x} }={\large\lim_{k \to 0}\frac{1}{\frac{\Delta x}{k}} }$$
$$ ={\large\lim_{k \to 0}\frac{1}{\frac{X(y+k)-X(y)}{k}} } ={\Large\frac{1} {\frac{dX(y)}{dy}}}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }$$

最初の変形では、分子のところだけΔxをもとの形Δx = X(y+k)-X(y)に直してしまい、
xをx=X(y)で書く事により、x+Δx=X(y+k)としています。

次に、関数を y 変数になるように整理し、Δx→0 の時 k→0 なので k の極限にしています。

そのあとで、少しややこしいのですが逆関数の重要な性質「Y(X(y))=Y(x)=y 」(X(y)=xに注意)を使って、X(Y(y+k)) = y + k としています。
その後の計算は、例えば2/3=1÷(3/2)=1/(3/2)などと、同じ計算です。

これらの結果から、
$$\lim_{\Delta x \to 0}{\large\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x}}=\frac{dy}{dx}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }【証明終り】$$

逆関数の性質
X(y)=x に y=Y(x) を代入して X(Y(x))=x としても同じです。
サイト内関連記事【高校数学の微積分】

合成関数の微分公式【計算例と証明】

合成関数の微分公式の内容、具体例、証明について記します。
(英:chain rule)

微分の定義と公式は別途に詳しくまとめています。

公式の内容

合成関数の微分公式は、f(x)=f(y(x))の形、つまり合成関数の形である時に次のように表されます。

合成関数の微分公式

$$\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}$$ 形としてはあたかも「dy」が分母分子で「約分される」かのような形となっている事が特徴です。これは覚えるコツでもありますが、数学的にも間接的に意味のある形(例えば証明の仕方との関連)になっています。

これはどういう事かというと、次のような手順を踏めば微分ができるという事です。

  1. f(x)=f(y(x)) で y=y(x)とおき、
    f(x)=f(y(x)) =f(y)のように、yが変数であるかのような形にする。
  2. f(y) をyが変数であるとみなしyで微分する。これがdf/dy
  3. y=y(x)を微分する。これがdy/dx
  4. df/dyとdy/dxを掛け算する。
    (この段階では見かけ上の変数としてxとyが混在しています。)
  5. y=y(x)を代入して式の変数をxだけにする。これがf(x)=f((y(x))をxによって微分して得る導関数に一致する。

合成関数とは、例えばf(x) = (2x+3)のような形の関数の事で、y(x)=2x+3のようにおいてf(y(x)) =(y(x))という構造になっています。

これを微分する時に、f(x) = (2x+3)であれば式を展開してから普通にxで微分する事もできますが、y(x)=2x+3のxによる微分と組み合わせて計算できる事もできるというのが合成関数の微分公式です。しかも、その組み合わせ方は「掛け算」するだけでよいというのがこの公式の意味です。

★y=y(x)と実際におくのは丁寧に計算する場合で、この置き換えが簡単な式である場合には頭の中で計算をしてしまう事もできます。
例えばf(x) = (2x+3)のような関数であれば、
yという文字を使わずに「(2x+3)という塊とその2乗」で考えるという事です。

下図のように f(x) = cos(ωx) 【例えば cos 2x】のように表される関数の他に、$$e^{2x},\hspace{10pt}\sin^2x(=(\sin x)^2)\hspace{10pt}\frac{1}{1-x},\hspace{10pt}\sqrt{1-x^2}\hspace{10pt}$$なども、みな合成関数の仲間達です。
これらを微分する時には、普通の微分公式をそのままでは適用できない場合があります。そのようなものについては「合成関数の微分公式」で微分をして導関数を計算します。

【合成関数の微分公式】この図では、cos(ωx) という形の「合成関数」を例にして考えています。余弦関数の cos の中に、ωxという別の関数が入っていて「合成」されているので、このような形の関数を合成関数と言います。見ての通り、微分をすると、cos が -sin になるだけでなく、ωというオマケがくっついてきます。この形の関数は、物理でもよく使いますので重要だと思います。物理では、「時間(秒)」を変数として、角速度ω[rad/s]を用いて cos(ωt), sin(ωt)といった関数を考えたりします。

具体的な計算例

この微分公式を使った計算は理論・応用ともに重要なのですが初見では計算の仕方が紛らわしく理解しにくい面もあるので、ここでは具体例についてかなり詳しく挙げておきます。

f(x) = (2x+3)の微分を合成関数の微分公式で計算する場合は次のようにします。

y(x)=2x+3とおき、yをxで微分して得る導関数dy/dx=2と、yを変数とみなしたf(y)=yをyで微分して得る導関数df/dy=2y=2(2x+3)を用意します。これらを掛け算します。

すると、df/dx=(df/dy)・(dy/dx)=2・2(2x+3)=8x+12です。

f(x) = (2x+3)=4x+12x+9のように式展開して直接xで微分すると、df/dx=8x+12となります。この結果は、合成関数の微分公式を使った場合の結果と確かに一致しています。

他の合成関数の場合の微分についても見てみましょう。特に重要度が高いのは(大学入試だけでなくその後についても)、三角関数(および三角比)や指数関数が合成関数の形になっている場合です。

三角関数の合成関数:f(x) = cos(2x)

cos(ωx) という形の関数の、さらにより具体的な関数として、
f(x) = cos(2x)という「2x」という形が余弦関数に入っている場合の微分計算を、例として手順を追って見てみましょう。
f(x) = cos(2x) = sin y の「x による微分」は、合成関数の微分公式を利用して計算できるのです。

  1. cos(2x)の 2x を y とおき、cos y を「y で」微分します。
    公式により、これは -sin y になります。
    $$\frac{d}{dy}\cos y=-\sin y$$
  2. 次に、y = 2x を x で微分します。
    これは、一次関数x の微分「1」に定数 2 をかければよいので 2 になります。
    $$\frac{d}{dy}(2x)=2$$
  3. df/dyとdy/dxの積をつくります。
    これは、本当に「掛け算するだけ」の計算です。
    $$\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-\sin y)\cdot 2 =-2\sin y$$
  4. ・・最後に、y に y = 2x を代入し、x だけの式にします。それがf(x)を x で微分して得られる導関数に等しいわけです。
    $$\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=-2\sin y=-2\sin (2x)$$

このタイプの微分は、イラストでも触れていますように、じつは物理でもよく使う微分計算です。
慣れてくると、cos(2x) のような形である時点で微積分する時には「2」を忘れてはいけないという事にすぐに気付くようになるでしょう。

次に、指数関数が合成関数になっている場合です。考え方は上記と同じになります。
ここでは特に自然対数の底の指数関数を扱います。理論上も応用上もその場合が特に重要です。

指数関数の合成関数:f(x) = e(2x)

f(x) = e(2x)は、指数関数の変数が「2x」などになった形の合成関数です。
このタイプも、微分方程式の解法などを含めて物理学で比較的よく使う微分計算だと思います。

2x = y とおきます。
元の関数をyで表すと、f(x)=e2x=ey(=f(y))です。

  1. y を x で微分します。$$\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(2x)=2$$※少し慣れれば、このへんは暗算でやってしまうくらいになると思います。
  2. f(y)を y で微分します。$$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}e^y=e^y$$これは、e の指数関数の微分公式そのままですね。
  3. 合成関数の微分公式を適用します。
    ここでは、y を x の形に直すところまで一緒にやってしまいます。 $$\frac{d}{dx}e^{2x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2\cdot e^y=2e^{2x}$$

この計算方法を見ると、一般に次のように、 $$「定数 a に対して、\frac{d}{dx}e^{ax}=ae^{ax}」$$ という事が言える事も、分かるかと思います。
f(x) = e2x の 2x が、3x でもあっても ax であっても、計算方法は同じだからです。
もっとも、これを新しく公式として「暗記」する必要は、ありません。
必要なのはあくまで普通の指数関数の微分公式と、合成関数の微分公式なのです。

注意点としては、y=y(x)の置き換えをした時には、最後に y を x の形に直す必要がある(場合が多い)という事だと思いますが、忘れさえしなければ数学でも物理でも、難しい計算は少ないと思います。

前述の通り、簡単な合成関数であれば置き換えは頭の中だけでやってしまっても支障ありません。

三角関数の合成関数で、少し紛らわしいタイプのものを挙げておきます。

三角関数の合成関数:f(x) = sin2x

三角関数を「2乗した」sin2x などの場合です。
この場合は、 sin x = y と考えて、元の関数が \(f(y)=y^2\)であると考えるのです。
従いまして、微分の計算は次のようになります。

  1. まず合成関数の微分公式に必要な材料を計算します。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}y^2=2y,\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}\sin x=\frac{dy}{dx}\cos x $$
  2. 2つの材料を、掛け合わせてできあがりです。
    $$\frac{d}{dx}\sin^2x=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2y\cos x=2\sin x \cos x = \sin 2x$$

(ここで sin 2x は、sin(2x) の事です。)
他方、sin 2x の微分は 2cos(2x) になります。(上の例のcos 2x と同様の手順です。)
sin2 x の微分とは、少々違った結果になる事が分かるかと思います。
一見、「似てるっぽい?」かもしれませんが、計算方法を間違えないようにしたい例のひとつであるわけです。
尚、最後の結果が「x の半角」の正弦の形になる事は、三角関数の半角の公式を導出する手順で使う式(加法定理由来)を使って$$\sin^2 x=\frac{1-\cos 2x}{2}である事から、$$ $$\frac{d}{dx}\frac{1-\cos 2x}{2}=\frac{2\sin 2x}{2}=\sin 2x$$となる事と調和しています。
また、この例の微分は積の形の微分公式で計算する事も可能で、同じ結果を得ます。

他に、うっかりすると合成関数である事を見落としがちなタイプのものを挙げます。

合成関数になっている反比例関数:f(x) = 1/(1-x)

$$続いて、f(x)=\frac{1}{1-x}という関数の微分を考えてみましょう。$$ これも、合成関数として微分する必要があるのです。
「これのどこが合成関数?」かと思われるかもしれませんが、分母の 1-x を y と考えて合成関数と見る必要があるのです。この y = 1 – x の微分においては、定数の「1」は微分すると0になって消えます。

  1. 再び、材料作りです。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}\frac{1}{y}=\frac{d}{dy}y^{-1}=-y^{-2},\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(1-x)=-1 $$
  2. 合成関数なので掛け合わせます。
    $$\frac{d}{dx}\frac{1}{1-x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-1)(-y^{-2})=y^{-2}=\frac{1}{(1-x)^2}$$
この例の微分計算は単項式の微分公式さえ知っていれば難しくはありませんが、
「うっかり合成関数である事を見落とすと」符号を間違えてしまう例と言えます。
「マイナス1乗」の微分で1つマイナス符号がつきますが、この例では合成関数の部分に―xの項があるのでさらにもう1つマイナスがつき、結果はプラスになるわけです。
似たような関数でも、$$\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x} の場合だと$$ $$\frac{d}{dx}(1+x)=1ですから、$$ $$\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x}=-(1+x)^{-2}=-\frac{1}{(1+x)^2}$$となり、こちらはマイナスの符号がつくわけです。符号の違いは、xの増加に対して関数が増加するか減少するかに対応しています。

平方根がかかっている形の関数も、「1/2乗」という事ですから合成関数の形になります。

平方根を含む合成関数:\(f(x)=\sqrt{1-x^2}\)

例として、$$f(x)=\sqrt{1-x^2}$$という関数の場合は、1-x2 = y として微分計算をします。
この関数は、図形で言うと原点を中心とした半径1の円の「第1象限」の部分を関数として表したものです。

  1. 前の例と同じように材料をまず作りますが、今回再び丁寧に、2つに分けます。
    まず、かんたんなほうからです。
    $$\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(1-x^2)=-2x$$
  2. 同じく材料として、「y の平方根」の形の関数の微分を計算します。
    これは単項式の微分公式で「a=1/2」の場合を使えばいいのですが、少し分かりにくいかもしれません。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}\sqrt{y}=\frac{d}{dy}y^{\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}\frac{1}{\sqrt{y}}$$
  3. 2つの材料がそろえば、あとは掛け合わせて、yを x の関数の形に戻すだけです。
    $$\frac{d}{dx}\sqrt{1-x^2}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-2x)\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{-x}{\sqrt{y}}=\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}$$

この例で用いている「平方根の微分」は慣れないと、とっつきにくい場合も多いかと思います。
ただ、このタイプの関数の微分は物理でもよく使いますので、知っておくと便利です。

物理や工学等の理論でこれらの関数の微積分を使用するには「これは合成関数の形だから・・」という説明は省略して結果だけ書く事が普通ですので、その意味でも計算の仕方に慣れておく事は大事かと思います。計算に慣れれば簡単な合成関数であれば「公式」としての形を特に暗記しようと努めなくても自然に計算できるようになります。

公式の証明

合成関数の微分公式の証明は次のようにします。

f(x) = f(y(x)) 、 y = y(x) である時、まず次のように考えます。

  • f(y(x))の導関数を、定義の極限を含む形で書きます。
  • fの中の変数部分y(x+h)について、y(x+h)=y(x+h)-y(x)+y(x)と変形します。


$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h))-f(y(x))}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{h} $$

次に、y(x+h)-y(x)という項を「掛けて割る」操作をします。これは値としては「1」を掛ける操作なので自由に行ってよいのです。

$$ \frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{h}\cdot \frac{y(x+h)-y(x)}{y(x+h)-y(x)}$$

$$=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{y(x+h)-y(x)}\cdot\frac{y(x+h)-y(x)}{h}$$

ここで、z=y(x+h)-y(x)とおきます。そのようにおかなくても証明できますが、見やすくするという意味です。zに置き換わる部分は3つあり、df/dxは次のような形になります。

$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(z+y(x))-f(y(x))}{z}\cdot\frac{z}{h}$$

ここで、h→0のとき、limh→0z=limh→0(y(x+h)-y(x))=y(x)-y(x)
=0ですから、hとzの両方を0に近づけるという意味で 「limh,z→0 」と書く事ができます。このときに、

$$\lim_{h \to 0}\frac{z}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{y(x+h)-y(x)}{h}=\frac{dy}{dx}$$

である事に注意し、y=y(x) を変数とみなしてyと書くと次のようになります。

$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h,z \to 0}\frac{f(z+y)-f(y)}{z}\cdot\frac{z}{h} =\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}【証明終り】$$

このように、1つの導関数を別の導関数の積で表せるという結果になるのです。

最も簡単な微分方程式5つ

大学の微積分学の入門として、簡単に解ける微分方程式について説明します。

微分方程式の解き方の手短な説明

微分方程式とはその通り、微分(および高階微分)を含んだ方程式ですが、要はその方程式を満たす「関数」を探す事が、その方程式を解くという事です。このページで紹介する微分方程式は、パズル感覚で色々組み合わせるだけで解けます。

声優担当:ステ♪様 http://sute.tabigeinin.com/

つまり、微分の公式を微分方程式に当てはめてみて、確かに解になっていればよいわけです。微分の公式と言ってもたくさんあるわけですが、今回用いるのは6つで、三角関数に関しては正弦か余弦のどちらか片方あれば足りるので、実質「5つ」だけの公式を用います。それらは次の表にまとめてあります。これらを単独で使うか上手に組み合わせるかして、微分方程式を解いていけるのです。

合成関数も利用しながら、初等関数の「パーツ」を組み合わせ、具体的な微分方程式に当てはめてみます。このタイプの解法は、高校で教わる微分の知識を直接使えます。「2回微分すると〇○になる関数はどれですか」といった事について、公式の中から探して、組み合わせればよいのです。

使う公式は、この場で表にして記しておきましょう。

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)微分すると0になる
②単項式「x の a 乗」\({\large \frac{d}{dx}x^a=ax^{a-1}}\)微分するとx の指数が1下がる
③自然対数の底 e の指数関数\({\large \frac{d}{dx}e^x=e^x}\)微分すると元の関数に戻る
④-1 三角関数(正弦関数)\({\large \frac{d}{dx}\sin x=\cos x}\)微分2回で元の関数の符号±入替
④-2 三角関数(余弦関数)\({\large \frac{d}{dx}\cos x=-\sin x}\)微分2回で元の関数の符号±入替
⑤合成関数の微分\({\large \frac{df(y)}{dx}=\frac{df(y)}{dy}\frac{dy(x)}{dx}}\)微分方程式内の定数倍などを調整
基本は、通常の微分の公式を用いて、当てはまる関数を見つけるだけです。微分方程式特有の考え方としては、「全ての」解を表現するという意味では「微分すると0になって消える定数項」などがオマケとして解にくっついてくる事です。(最初のうちはあまりこだわらなくていいと思います。)
微分方程式論の中の位置付け

このページでは「具体的な微分公式を探して当てはめてみる」という見方をしますが、このやり方は、じつは「微分の逆演算つまり積分を行い『微分記号を消去する』事で、解となる関数を見つける」・・という見方と同等なのです。そのため、微分方程式論の枠組みの中では「求積法」と呼ばれます。

少し発展事項
~微分方程式の「解」は、基本的に1つではなく「複数」ある~

具体的な関数を微分方程式に当てはめてみて、それで確かに式が成り立てば、その関数は間違いなく「解」の1つです。他方で、数学的に少し面倒で時に厳密な論証が必要なのは、
「それで『全ての解』を表現できているか??」という点にあります。その事も念頭に置きながら、具体例を通して少しずつ理解していくと学習しやすいかと思います。

では具体的な微分方程式を見てみましょう。とても簡単に、解けます。

①一番簡単な微分方程式「1階微分=0」f ‘(x)=0

最初に見るのは、「1階微分(通常微分)がゼロになる」という微分方程式です。これは、即刻解けます。しかも、運動方程式において物理的な意味も持ちます。

①一番簡単なタイプの微分方程式

$$ \frac{d}{dx}f(x)=0$$ 「微分すると0になる」関数はなんだろう、という方程式です。 $$解: 定数関数\hspace{5pt}f(x)=C \hspace{10pt}(C:定数)$$

当てはまるような公式を探してみますと、

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)微分すると0になる

と、いうものがありますね。
定数は微分するとゼロですから、そのまま当てはまります。これで「解けた」という事になります。

1つだけ注意していただきたいのは、0や1や2などの「特定の定数」だけではなく、定数であればどんなものでもよいという事です。その事を表現するために、「任意の定数」という表現を用います。この表現は、他のタイプの微分方程式の解でも用います。
【f(0) = 1 などの具体的な x の値での関数値が条件としてあるなら、解は f(x) = 1 というただ1つの関数に定まります。そのような条件は「初期値条件」と呼ばれ、微分方程式論全体で重要です。】

物理の力学での運動方程式ではこのタイプの微分方程式は慣性の法則のうち等速運動である事を表現します。

② 2階微分=ゼロ f ”(x)=0 1次関数 

2階微分が0になるという微分方程式も、簡単に解けるタイプのものです。高階の微分が入っていると一見難しく見えるかもしれませんが、これもじつは非常に簡単なのです。
物理的には、力が働いていない物体は等速「直線」運動する事に関わります。

「2階微分=0」という微分方程式

$$ \frac{d^2}{dx^2}f(x)=0$$ 「『2回』微分すると0になる」関数はなんだろう?という方程式です。 $$解: 1次関数\hspace{5pt}f(x)=bx+c\hspace{10pt}(b,c:定数)$$

2階微分が入っているので、一見、どうすればよいのか迷うかもしれません。

しかし、要するに2回微分すると0ですから・・
1回だけの微分は『定数』」であるはず??・・という事に気付くと、解けます。
つまり「1回の微分で定数になる関数(もう1回微分で0)」→ 1次関数が解 というわけです。
使う公式としては、「1階微分=0」の時と同じ公式の組み合わせという事に、なります。

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)微分すると0になる
②単項式「x の a 乗」\({\large \frac{d}{dx}x^a=ax^{a-1}}\)
\({\large \frac{d}{dx}x=1\cdot x^{0}=1}\)
微分するとx の指数が1下がる
「x の 0 乗」は定数

実際に、解となるはずである1次関数を「2回」微分してみましょう。

  1. 微分1回目:\(\frac{d}{dx}(bx+c)=b\)(定数)
  2. 微分2回目:\(\frac{d}{dx}b=0\)(ゼロ)→ OK
  3. 合わせると:\(\frac{d^2}{dx^2}(bx+c)=0\hspace{10pt}\rightarrow \frac{d^2}{dx^2}f(x)=0\hspace{5pt}の解\)

というわけで、確かに1次関数 bx + c は、2階微分=0という微分方程式の解です。
尚、定数関数も何回微分してもゼロになるので解ですが、これは1次関数で b = 0 の場合と見なせるので、任意定数 b の値に制限を設けなければ1次関数に含める事ができます。

この解の導出過程では、「1階微分=(ゼロ以外の)定数」というタイプの微分方程式の解も、合わせて見つけている事になります。また、同じ論法を使うと、3階微分=0、4階微分=0といった微分方程式の解も同様に考える事が可能というわけです。
$$\frac{d^3}{dx^3}f(x)=0 の解は「2次関数」$$

$$\frac{d^n}{dx^n}f(x)=0 の解は「(n-1)次関数」$$といった感じになるのです。

それでは次に、物理的には放物運動(2次関数のグラフの形)を表す微分方程式を見てみましょう。これについては高校の物理でも多分扱われていると思いますが、微分方程式の観点から考察してみましょう。

③ \(y^{\prime\prime}-b=0\)・・2次関数

「2階微分が定数に等しい」という微分方程式です。(もちろん\(y^{\prime\prime}=b\)と書いても同じです。b = 0 の場合は2階微分=0のタイプですから、b≠0 と考えてください。)
物理的には運動方程式において地上で物を投げた時の運動としての意味があり、放物軌道の運動を表します。

数学的な解法 ■ 物理的な意味・・地上での水平投射の重力による運動(放物運動)

解法:1回微分すると1次関数→2回微分すると定数 と考えよう

「2階微分=もとの関数」という微分方程式

$$ \frac{d^2}{dx^2}f(x)-b=0$$ 「『2回』微分すると定数になる」関数はなんだろう?という方程式です。 $$解: 2次関数\hspace{5pt}f(x)=\frac{b}{2}x^2+Ax+C\hspace{10pt}(A,C:定数、b は微分方程式内で使われてる係数)$$

この3つ目のタイプの微分方程式の場合、2回微分すると定数・・という事ですから、「1回微分すると1次関数」を見つければよいのです。

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
①定数(定数関数)\({\large \frac{d}{dx}c=0}\)微分すると0になる
②単項式「x の a 乗」\({\large \frac{d}{dx}x^a=ax^{a-1}}\)
\({\large \frac{d}{dx}x=1\cdot x^{0}=1}\) \({\large \frac{d}{dx}x^2=2x}\)
微分するとx の指数が1下がる
「x の 0 乗」は定数

単項式の微分公式を見ると、1回微分するごとに指数(xの「〇乗」の〇)が1下がりますから、2次関数を1回微分すると1次関数になりますね。

ですから、解となる関数は「2次関数」です。
最後に定数 b が残ってほしいのと、係数調整のために、
\(\frac{b}{2}x^2+Ax+C\)のような形のものを選びます。2次関数の中の Ax + C の部分は、2回の微分操作の過程で0になって消えてしまうので、A と C は任意定数という形になります。
2次式を微分するために\(\frac{1}{2}\)というオマケがくっつく事に注意する必要がある事を除けば、これも難しくないのではないと思います。

実際に微分して確かめてみよう

実際に微分をしてみて、確かめてみましょう。

  1. 微分1回目:
    \(\frac{d}{dx}\left(\frac{b}{2}x^2+Ax+C\right)=2\cdot \frac{b}{2}x+A=bx+A\) (1次関数)
  2. 微分2回目:
    \(\frac{d}{dx}(bx+A)=b\)(定数で、しかも b に一致)→ OK
  3. 合わせると:
    \(\frac{d^2}{dx^2}\left(\frac{b}{2}x^2+Ax+C\right)=b\hspace{10pt}\rightarrow 2次関数\frac{b}{2}x^2+Ax+C は、確かに\frac{d^2}{dx^2}f(x)-b=0\hspace{5pt}の解\)

物理的には、運動方程式においては「地上で物を投げた時」の運動を表します。座標同士の関係を表す軌道が2次関数の関係式になるので、放物線を描きます。

物理的意味:地上での水平投射 重力だけが働く場合は放物運動

ここでは、運動方程式で働く力が「重力」であるとします。これは、地球上では物体の質量が定まれば一意的に決まり、その大きさは mg (≒9.8m) である事が知られています。この時、水平に物を投げる(「投射する」)と、軌道は2次関数のグラフである放物線になる事を見ましょう。

■ ①考え方・・水平方向と垂直方向に分ける ■ ②設定をして、2方向の2本の運動方程式を作ろう
■ ③運動方程式の解から軌道の関係式を作ると、2次関数つまり「放物線」が得られる

① 考え方・・水平方向と垂直方向に力の働き方を分ける

水平に物を投げる(投射する)運動を考えます。投げた瞬間には力が働いているかもしれませんが、一旦手などを離れたら、水平方向には力は働かず、地面に向かう方向にのみ重力が働くと考えて数式を組み合わせるのです。

  • 地面に対して水平(平行)な向き:力は働かない
      → 等速で運動(射影して見れば直線運動でもある)
  • 地面に対して垂直(直角)な向き:重力 mg [N] が地面に向かう向きで働く
      → どういう挙動をするか?(運動方程式を立てて解くと「時間の2次関数」になる)

上記の「2階微分=0」の微分方程式の物理的意味の項目で、平面や空間の運動で運動方程式を考える場合は、力を分解して「座標成分ごとに運動方程式を立てる」という事を述べました。ここでも、同じ考え方をします。

この場合は、3次元で考えてもよいのですが、最初に物を放り投げた方向に向かって上手に1つの座標軸を合わせたと考えると、すなわち平面で考えても全く同じ運動を表せます。

空気抵抗力などがなく、ひたすら地面に向かって同じ大きさの重力 -mg が働くと仮定します。こういうボールみたいなものを投げる時、力学的には、「『回転』もないものとする」という仮定も、一応重要です。

(※働く力が重力だけであると想定するので、「水平方向には力は働かない」=「水平方向だけで見れば等速直線運動」という事が保障されるので、そのように考えてよいわけです。「直線」という事については、地面の真上から見れば「直線」になっているという事です。このような見方を「射影(しゃえい)」と言います。)

② 設定をして、2方向の2本の運動方程式を作る

このようにして考える時、どちら向きがプラスでどちら向きがマイナスかも含めて、座標軸の向きの設定を行ってから運動方程式を立てます。今、運動は平面で考える事にして、座標軸は x 軸と y 軸であるとします。

座標軸の設定
  • x 軸:地面に対し水平方向、物体が投射される平面内、進行方向が+プラス
  • y軸:地面に対して垂直、地面から空の向きが+プラス、空から地面への向きが-マイナス

そして、2本の運動方程式を立てましょう。※尚、この場合に仮に3本目を立てたとしても、その向きには働く力はゼロ、位置もゼロから動かないので 0 = 0 という式ができるだけです。

  1. x 軸成分: \(0=m\frac{d^2x(t)}{dt^2}\) → 「2階微分=0」なので、解は t の1次関数ですね
  2. y軸成分:\(-mg=m\frac{d^2y(t)}{dt^2}\hspace{5pt}\Leftrightarrow \hspace{5pt}-g=\frac{d^2y(t)}{dt^2} \) → 「2階微分=定数」の微分方程式で、
    解は t の2次関数というわけです。
    この場合、質量 m は上手い具合に両辺に入っているので、両辺で割って消せます。

y 軸成分の運動方程式で「力」の部分を – mg としているのは、空 → 地面方向は「マイナス」向きと設定したためです。地面方向に向かう「重力」の符号もマイナスにするのです。
(※では、もし「地面向き方向をプラスに設定したら + mg にするのか?」と言うと、その通りです。その場合は \(mg=m\frac{d^2y(t)}{dt^2} \)になります。符号が変わっても、解が2次関数という事自体は変わりません。)

② 運動方程式の解から軌道の関係式を作ると、2次関数つまり「放物線」が得られる

という事は、$$x(t)=bt+c,\hspace{5pt}y(t)=-\frac{g}{2}t^2+Bt+C $$という形の2式が、微分方程式である運動方程式の解として、出てくるわけです。
x(t) のほうが1次式ですから、これを t = ・・の形にして y(t) のほうの t に代入すると、$$y(x) = -Ax^2+Px+Q \hspace{5pt}(A > 0)$$ という、x に関する2次関数の形になる事が分かります。

これで、軌道が確かに「放物線」である事が表現されたわけですが、座標軸の正負の向きの設定などから、上記の各定数について b > 0 、A > 0 となるので、最後の結果で \(-Ax^2\)(例えば \(– 2x^2\))という形が出てくるという事は、きちんと「下に落ちていく」という事も表しています。
このような時に結果を考察すると何だか変な事になる場合は、符号の設定などを間違えているかの可能性があるわけです。

さて次は、三角関数が解になるタイプの微分方程式です。じつは、これは物理の力学で言うと「ばねの運動」なので、空間でも平面でもなく、「一次元(直線運動)」と考えてよいパターンです。ですから運動方程式は1つだけ作ればよいので、意外と考察しやすいかもしれません。

④ \(y^{\prime\prime}+b^2y=0\)・・調和振動(単振動)

このタイプの微分方程式は、2階微分と「元の関数」が入っていて、定数倍の関係にあるというものです。三角関数が関係し、物理的には抵抗力などが無い場合の「ばねの運動」(調和振動、単振動とも言います)を表します。
※\(b^2\) という「2乗」の形は、これ自体は「正の数」である事を言っています。
\(y^{\prime\prime}=-b^2y\) つまり「2階微分」=「負の定数」×「もとの関数」という事です。

数学的解法 ■ 物理的な意味:ばねの運動は三角関数(調和振動、単振動)

数学的解法:まず「2回微分すると元の関数の定数倍」になる関数は?

「2階微分=もとの関数の正の定数倍」という微分方程式

$$ \frac{d^2}{dx^2}f(x)+b^2f(x)=0$$ 「『2回』微分すると『もとの関数の負の定数倍』になる」関数はなんだろう?という方程式です。 $$解: 三角関数\hspace{5pt}f(x)=A\cos (bx+C)\hspace{10pt}(A,C:定数、b は微分方程式内で使われてる係数)$$

「2回微分するともとの関数の『マイナスの定数倍』」というものは、微分公式にあるでしょうか?三角関数は、これに似ています。実際、これをパーツとして使えるのです。この時、正弦でも余弦でも同じ事なので、ここでは余弦 cos x を、使います。

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
④-1 三角関数(正弦関数)\({\large \frac{d}{dx}\sin x=\cos x}\)微分2回で元の関数の符号±入替
④-2 三角関数(余弦関数)\({\large \frac{d}{dx}\cos x=-\sin x}\)微分2回で元の関数の符号±入替
⑤合成関数の微分\({\large \frac{df(y)}{dx}=\frac{df(y)}{dy}\frac{dy(x)}{dx}}\)微分方程式内の定数倍などを調整

三角関数を2回微分すると、もとの関数の「マイナス倍」になります。
他方、解きたい微分方程式は、「『マイナスの定数』倍」となっています。
すると、符号はよいとして、微分した時だけ「定数倍」を新たに出すにはどうすればいいでしょう?

そのためには、じつは合成関数の微分公式を考えればよいのです。この考え方は、このページで紹介するタイプ以外の微分方程式でも有効な手段です。

例えば cos(2x) の微分を1階と2階について見ますと、$$1階微分:\frac{d}{dx}\cos (2x)=(2x)^{\prime}(-\sin (2x))=-2\sin (2x)$$ $$2階微分:\frac{d^2}{dx^2}\cos (2x)=\frac{d}{dx}(-2\sin (2x))=-4\cos (2x)$$ になります。y = 2x , cos(2x) = cos y と考える事ができるので、合成関数の微分公式が適用できるのです。係数として「2」というのが掛けられていますが、それが合成関数の微分由来で出てくる係数というわけです。

・・すると、この cos (2x) という関数は、2回微分するともとの関数 cos (2x) の – 4 倍になっているので、 「2回微分するともとの関数の『マイナスの定数倍』」 の条件を満たす関数の仲間である事が分かります。

という事は、定数倍として\(-b^2\)がほしいのであれば、
cos (bx) という関数を考えれば、2回微分すると合成関数の微分公式が2回適用されるので、\(-b^2\cos (bx)\)が得られます。これが解という事になりそうですね!

任意定数については、まず A を任意定数として、A cos(bx) という形でも解として成立するのです。また、別の任意定数 C を用いて Acos(bx+C) という形でも、じつはOKなのです。これは、合成関数の微分を行う時に、bx + C を x で微分すると b は生き残りますが C はゼロになって消えるためです。

実際に微分して確かめてみよう!

つまり、総合すると Acos (bx+C) という関数が、解になるという事です。正弦で考えても同様の形になります。実際に微分してみて、確かめてみましょう。

  1. 微分1回目:\(\frac{d}{dx}A\cos (bx+C)=-bA\sin(bx+C)\)(マイナスの正弦)
  2. 微分2回目:\(\frac{d}{dx}\{-bA\sin(bx+C)\}=-b^2A\cos (bx+C)\)
    (もとの関数の「マイナスbの2乗」倍)→ OK
  3. 合わせると:
    \(\frac{d^2}{dx^2}A\cos (bx+C)=-b^2A\cos (bx+C)\hspace{5pt}\Leftrightarrow\hspace{5pt}\frac{d^2}{dx^2}A\cos (bx+C)+b^2A\cos (bx+C)=0\)
    \(\rightarrow A\cos (bx+C)は、確かに\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b^2f(x)=0\hspace{5pt}の解\)

物理的には、運動方程式を考えると、このタイプの微分方程式は「ばねの運動」を表します。ばねというと、いかにも人工的な響きがありますが、別に工学だけで用いるというものでもありません。例えば、ミクロの領域での分子の振動などを、ばねと同じタイプの振動(調和振動)と考えるモデルをもとにして考察する事が、量子力学や量子化学でもなされるのです。

物理的意味:ばねの運動は三角関数(調和振動、単振動)

運動方程式で、ばねにつながれた物体の運動を考えると、上記の「2階微分=負の定数×もとの関数」という微分方程式になります。ばねは、抵抗力が働かないなら伸びたり縮んだりを繰り返しますから、周期関数である三角関数が解であるという事はその事実と調和しているというわけです。

■ ①まずは設定をしよう・・一次元の運動として扱えます ■ ②解いてみて完成・・結果は三角関数です
① まずは設定をしよう

抵抗力がない状態で、ばねの伸び縮みの力だけで、ばねにつながれた物体が(振動)運動しているとします。この場合は、1次元の直線運動と考えてよいので、運動方程式を3つ・2つ立てる必要はなく、1つでよいのです。ですから、式さえ立てれば、結構分かりやすいと思います。

ばねの力の大きさは、ばねの「伸び」または「縮み」に比例します。(「フックの法則」と言います。)
これはつまり、ばねの平衡点(伸び縮みのない自然な状態のばねの先端の位置)から見て「位置座標」に比例するという力であるわけです。時間を変数とした場合、これは「もとの関数 x(t) 」に比例する力、というわけです。
比例するという事は比例定数もあって、「kx」という形の力が働くというわけです。この k を「ばね定数」という、そのまんまの名称で呼びます。(※物としてバネが対象ではなく、分子の振動などを調和振動モデルとして考える場合などは、「力の定数」という呼び方もします。)

ただ、プラスマイナスの符号にだけは注意しましょう。まず、ばね定数 k は正の値であるとします。次にばねの平衡点を原点 x = 0 として、座標の正負の向きを次のように設定します。

  • 原点から見て、ばねが伸びている方向:プラス方向
  • 原点から見て、ばねが伸びている方向:マイナス方向

この時、ばねによる力の向きを考えてみます。符号に注意してください。

  • ばねが伸びている時・・つまり位置座標が正の値の時:
    力は原点向き つまり負の方向(例えば x = 2 だったら、F = -2k )
  • ばねが縮んでいる時・・つまり位置座標が負の値の時:
    力は原点向き つまり正の方向(例えば x = -2 だったら、F = +2k )

これをまとめますと、「ばねの力は位置座標と常に逆の符号」という事です。 $$ばねの力:F = -kx(t)\hspace{10pt}(x(t):位置座標、ばね定数 k>0)$$ そうしますと運動方程式は次のようになるわけです。 $$-kx(t)=m\frac{d^2x(t)}{dt^2}\hspace{10pt}\Leftrightarrow \hspace{10pt}\frac{d^2x(t)}{dt^2}+\frac{k}{m}x(t)=0$$

物体の運動の様子を調べるにはこれを解けばよいわけですが、もう分かっているわけです!

② 解いてみて完成

ばねにつながれた物体に関する運動方程式\(\frac{d^2x(t)}{dt^2}+\frac{k}{m}x(t)=0\) は、
形としては「2階微分=負の定数×もとの関数」ですから、解は三角関数 Acos(bt+C) の形ですね。
(一応、\(\frac{k}{m}>0\)という符号にも注意してください。)

もう少し物理的に見通しをよくするために、
\(\frac{k}{m}=\omega^2\)(\(\omega\):「オメガ」)という置き換えが、よく行われます。
そのように置き換えると、運動方程式は\(\frac{d^2x(t)}{dt^2}+\omega^2 x(t)=0\) となりますから、
解は \(A\cos (\omega t+C)\) という形で書けるわけです。

このオメガ \(\omega\) という記号は、ばねの調和振動に限らず、回転運動などの周期的な運動における角速度角振動数角周波数(1秒間に何ラジアン回るか)を表します。ばねの場合は「振動」ですので、角振動数と言う場合が多いです。いずれにしても、ばねの運動を周期運動と見た場合に、角度の部分(「位相」)がどのように変化するかを表す値というわけです。

ここでは \(\frac{k}{m}=\omega^2\) と、おいただけでしたから、そのような角振動数は、物体の質量とばねの性質(ばね定数の大きさの違い)によって決まるという事も分かります。

さて、使用する実質5つの公式のうち、まだ使っていないのが 自然対数の底 e の指数関数の微分公式です。最後に紹介するタイプの微分方程式は、この e の指数関数の微分公式を用いて解けます。

⑤ \(y^{\prime\prime}+by^{\prime}+x=0\)・・粘性抵抗ありのばねの運動

5つ目の微分方程式として、\(y^{\prime\prime}+by^{\prime}+x=0\) で「『特性方程式』が異なる2つの実数解を持つ場合」を説明いたします。この、後のほうにくっついてる妙な条件は別になくてもきちんと微分方程式は解けるのですが(特性方程式を使った一般の場合の解法)、簡単なのがこの条件の場合ですので、この場合を述べます。
物理的には、粘性の強い流体の中でのばねの運動で、振動する事なく少し動いて止まってしまう・・という運動を表します。

数学的解法 ■ 物理的意味:粘性抵抗が「強い」場合のばねの挙動

数学的解法:e の指数関数の微分を使おう

これの説明は他のものと比べて少し長いですが、「公式を上手に当てはめれば解ける」という事には変わりありません。

\(y^{\prime\prime}+by^{\prime}+cy=0\)という形の微分方程式

$$ \frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0\hspace{10pt}x^2+bx+c=0が異なる「2つの『実数解』」を持つ場合$$ このような形の方程式で、何やら変な条件がくっついている場合の微分方程式です。 $$解: e の指数関数\hspace{5pt}f(x)=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}$$ $$(A,B:定数、\alpha, \beta は x^2+bx+c=0 の解(異なる2つの実数解)$$

このタイプの微分方程式を解くには、e の指数関数の性質と、1つ前の微分方程式の例でも用いた
「合成関数の微分公式で『定数調節』」する手法を上手に組み合わせればよいのです。

対象の関数微分公式微分方程式の解法での役割
③自然対数の底 e の指数関数\({\large \frac{d}{dx}e^x=e^x}\)微分すると元の関数に戻る
⑤合成関数の微分\({\large \frac{df(y)}{dx}=\frac{df(y)}{dy}\frac{dy(x)}{dx}}\)微分方程式内の定数倍などを調整

考え方を簡単に述べましょう。三角関数で cos (bx) 等を考えた時は、
1階微分で b倍、2階微分で\(b^2\)倍という定数倍調整に利用できました。
同様に、指数関数についても、定数 \(\alpha\) を用いて \(e^{\alpha x}\) といった形の関数を考えると定数倍調整に使えます。

この \(e^{\alpha x}\) という関数を微分すると、

  • 微分してないもとの関数:\(e^{\alpha x}\)
  • 微分1回目:\(\frac{d}{dx}e^{\alpha x}=\alpha e^{\alpha x}\)
  • 微分2回目:\(\frac{d^2}{dx^2}e^{\alpha x}=\alpha^2 e^{\alpha x}\)

ポイントは、「これらを加え合わせてみる」という事です。
e の指数関数は微分しても元の関数になるだけという際立った性質があるため、何回微分したとしても\(e^{\alpha x}\) が必ず含まれる事に注意して、足し算してみましょう。すると・・ $$\frac{d^2}{dx^2}e^{\alpha x}+\frac{d}{dx}e^{\alpha x}+e^{\alpha x} =\alpha^2 e^{\alpha x}+\alpha e^{\alpha x}+e^{\alpha x} =e^{\alpha x}(\alpha^2+\alpha +1)$$ もし「これがゼロ」であるなら、指数関数はゼロになりませんので、
後ろにくっついている \(\alpha^2+\alpha +1\) がゼロという事です。
少し、2次関数、2次方程式との関係がありそうですね?

では今度は、定数倍も考えて、
\(\frac{d^2}{dx^2}e^{\alpha x}+b\frac{d}{dx}e^{\alpha x}+ce^{\alpha x}\) を考えてみましょうか。 $$\frac{d^2}{dx^2}e^{\alpha x}+b\frac{d}{dx}e^{\alpha x}+ce^{\alpha x} =\alpha^2 e^{\alpha x}+b\alpha e^{\alpha x}+ce^{\alpha x} =e^{\alpha x}(\alpha^2+b\alpha +c)$$ これがゼロになるには、先ほどと同じ論法で、
\(\alpha^2+b\alpha +c=0\)となる \(\alpha\) であればよい、という事です。

\(\alpha\) が \(\alpha^2+b\alpha +c=0\) となる事を、 全く同じ意味で、次のようにも言い換えられます。 $$「\alpha が x^2+bx +c=0 の解である」$$

そしてそのような場合、じつはまさしく上の微分方程式の形:
\(\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0\)を満たしています。
ですから、まず次の事が言えます。

POINT

$$\alpha が x^2+bx +c=0 の解である時、e^{\alpha x}は$$ $$\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0の解の1つ$$ また、任意定数を A として、\(Ae^{\alpha x}\) も解になります。
■ ここで解法のために考えている2次方程式を「特性方程式」と言います。n階の定数係数の線型の微分方程式に対する、同じ係数を用いたn次方程式を一般的に特性方程式と呼びます。

さて、\(\alpha が x^2+bx +c=0\) の「実数解」である時で、重解では無い時
同じく実数解となる \(\beta\) が存在するわけで、これを用いた
\(e^{\beta x}\) も、同じく\(\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0\)の解なのです。
微分の基本的な性質として\(\frac{d}{dx}(bf(x)+cg(x))=b\frac{df(x)}{dx}+c\frac{dg(x)}{dx}\) というもの(線型性)があった事に注意しますと、
「特性方程式」が2つの異なる実数解を持つ時の上記の微分方程式の解は、任意定数も考慮すると次のように表せるわけです:

解:「特性方程式」が2つの異なる実数解を持つ場合 $$\alpha と\betaを x^2+bx +c=0 の異なる2つの解、A と B を任意定数として、$$ $$\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0の解は$$ $$Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x} で表されます。$$ ■ 特性方程式が重解を持つ場合と、実数解をもたない場合にも微分方程式を解く事はできますが、これは別の記事で詳しく述べましょう。指数関数の微分の性質が重要である点は同じです。

物理でも、運動方程式がこのタイプの微分方程式になる事があります。それについて、見てみましょう。

物理的意味:粘性抵抗が「強い」場合のばねの挙動

ばねにつながれた物体の運動を表す運動方程式には、位置座標(1次元・直線)の「2階微分」と、「もとの関数の定数(ばね定数)倍」という項が含まれています。粘性のある流体の中のばねの運動の場合、これに粘性抵抗力が加わり、
これは速度に比例する事が実験から分かっています。つまり、「1階微分」に比例する項が加わるという事です。
特性方程式が異なる2つ実数解を持つ場合は、粘性が結構強い場合になります。

設定をして運動方程式を解く ■ どういう運動かを考察してみよう 

設定をして運動方程式を解く

まず、座標の設定としては、抵抗力のないばね運動の時と同じで、一次元の運動と考えてよいのです。ばねの平衡点を原点として、伸びる方向をプラス方向、縮む方向をマイナスとします。

次に、力を整理しましょう。ばねの力と、粘性抵抗力の2つがあります。粘性抵抗力は、運動を妨げる方向に働きますので、マイナス符号をつけるのです。(この抵抗力の符号の考え方は、空気抵抗力や摩擦力に対しても同じです。)

この場合に働く2つの力
  1. ばねの力:\(-kx\) k:ばね定数(正の値)
  2. 粘性抵抗力:\(-\rho \frac{dx(t)}{dt}\) \(\rho\):てきとうな比例定数(正の値)

すると、運動方程式は次のようになります。 $$-kx-\rho \frac{dx(t)}{dt}=m\frac{d^2x(t)}{dt^2}$$ $$\Leftrightarrow \frac{d^2x(t)}{dt^2}+\frac{\rho}{m} \frac{dx(t)}{dt}+\frac{k}{m}x=0$$ $$\left(\Leftrightarrow \frac{d^2x(t)}{dt^2}+2\gamma \frac{dx(t)}{dt}+\omega^2x=0\hspace{10pt}\gamma=\frac{\rho}{2m},\omega^2=\frac{k}{m}\right)$$ 最後の形には別に変形しなくてもよいのですが、この形だと、解を出しやすいです。
いずれにしても、\(\frac{d^2}{dx^2}f(x)+b\frac{d}{dx}f(x)+cf(x)=0\) の形に確かになっています。

特性方程式が「異なる2つの実数解を持つ」という条件が満たされているとすると、上記の要領で解く事ができます。一応、特性方程式の解を出しておきましょう。(※2次方程式なので比較的容易に出せる事に注意してください。) $$特性方程式:X^2+2\gamma X+\omega^2X=0\Leftrightarrow (X+\gamma)^2-\gamma^2+\omega^2=0 $$ $$\Leftrightarrow (X+\gamma)^2=\gamma^2-\omega^2\Leftrightarrow X+\gamma=\pm \sqrt{\gamma^2-\omega^2}$$ $$\Leftrightarrow X=-\gamma \pm \sqrt{\gamma^2-\omega^2}$$ この2解(実数解という条件とします)を用いて、
微分方程式のほうの解は\(Ae^{(-\gamma +\sqrt{\gamma^2-\omega^2})t}+Be^{-\gamma -\sqrt{\gamma^2-\omega^2})t}\)
・・という事になります。

どういう運動かを考察してみよう

解が出ましたので「これで終わり」でもよいのですが、少し汚い形という事もあって、結局どういう運動になるのかが分かりにくいですね。そこで、もう少しだけ考察をしてみましょう。

特性方程式の2解の形をよく見ますと、 \(X=-\gamma \pm \sqrt{\gamma^2-\omega^2}\) は、これが実数解であるという前提で、
プラスマイナスのどちらの符号をとってもじつは「負の値」なのです。
平方根につくのがマイナス符号の場合は、最初の定数の取り方から X は必ず負の数ですし、
平方根につくのがプラス符号の場合でも \(\sqrt{\gamma^2-\omega^2}<\gamma\) ですから、これは負の数になります。
(※分かりにくい場合、2乗してみてください。)

という事は、特性方程式の2解を、「正の定数」\(p,\hspace{5pt}q\hspace{5pt}を用いて X=-p,-q\)と書くと、 微分方程式のほうの解は、 $$x(t)=Ae^{-pt}+Be^{-qt}$$ となります。これだと多少見やすくて、p と q を正の数だとしましたから、これらにマイナスがついたものが指数に来ているという事は、時間に関して「単調減少」の関数であり、しかも変数の値が大きくなるとゼロに近づいていく事が分かります。 また、普通の指数関数ですので、三角関数と違って「振動」もしません。

この考察をまとめると、例えば次のような事が言えるのです。

粘性抵抗が強い場合の考察
  1. 時間が経てば経つほど,位置座標の x(t) の値は小さくなり、
    じゅうぶんな時間経過後(t → ∞)は、原点x(t) = 0 (ばねの平衡点)に近づき、
    そこからほぼ動かなくなる。
  2. 位置座標 x(t) は通常の指数関数で表されているので、振動はしない。
    伸びた状態から始まるにしても縮んだ状態から始まるにしても、そこから平衡位置に戻って動かなくなり、運動が終了する。

特性方程式が2次方程式の場合、実数解を持つかは \(\sqrt{\gamma^2-\omega^2}\) の中身が正か負かで決まるわけですが、
\(\gamma =\frac{\rho}{2m}\) が粘性抵抗に由来する定数である事から、
粘性が強いほど特性方程式の解が実数解になりやすく、振動しない運動(過減衰)になりやすいという事です。
「では特性方程式が複素数解を持つ場合はどうなるのか?」と言いますと、結論は、
「振動しながら振幅が減衰し、時間が経つと原点(ばねの平衡点)に落ち着く」という運動になります。
ちなみに、特性方程式の解が重解の場合は、ぴったり合う事自体ほとんどないと考えられますが、減衰していく運動である事には変わりありません。

微積分学や物理の入門としては、まず「高校で教わった事を直接使える」ものについて、いくつか具体例を見ながら中に入っていけた事になります。同じように、まずは手持ちの知識を用いて入っていける部分から、少しずつ新規の知識も知っていくようにすると大学数学の内容に無理なく入っていけると思います。

初等関数の微分公式

この記事では初等関数の微分公式とその導出・証明をまとめています。ここで扱う初等関数は主に単項式、三角関数、指数関数、対数関数を主に指します。(逆三角関数は別の記事で詳しく扱っています。)

■関連サイト内記事:微分についての定義や定理、関連する事項などです。

初等関数の微分公式の一覧表

基本となる初等関数の微分公式

初等関数について、微分演算によって得られる導関数のうち、
最も基本的なものと思われるものをまとめると次のようになります。

関数名導関数備考
定数関数y=cy’=0定数に対する微分は0になります。
単項式y=xay’=axa-1aは実数で、y=1/xや
y=\(\sqrt{x}\) を含む
正弦関数y=sinxy’=cosx4回微分するともとの式に戻る
余弦関数y=cosxy’=-sinx4回微分するともとの式に戻る
指数関数y= ey’=e自然対数の底 e を使った場合。
もとの関数と導関数が一致。
対数関数y= lnxy’=1/x自然対数関数の場合。(底が e)

単項式」とは2次関数や3次関数がxaの形で単独で存在しているものを指し、それを定数倍と和や差で組み合わせると「多項式」になります。
定数関数については単項式で指数が0の場合と考えても可です。定数関数の微分が0になるという事は、要するに普通の1とか2とかの定数を微分すると結果は必ず0であるという意味です。

単項式の導関数について代表的なものをいくつか挙げると次のようになります。

a単項式導関数備考
a=1y=xy’=12階微分は0
a=2y=xy’=2x2階微分は定数
a=3y=xy’=3x3次関数のグラフの
形状に関係
a=-1y=1/x
 =x-1
y’=\(-\frac{\Large 1}{\Large x^2}\)
 =-x-2
x=0で微分不可能
(関数を定義できない)
a=-2y=1/(x)
 =x-2
y’=\(-\frac{\Large 2}{\Large x^3}\)
 =-2x-3
x=0で微分不可能
(関数を定義できない)
a=1/2y=\(\sqrt{x}\)
 =x1/2
y’=\(\frac{\Large 1}{\Large 2\sqrt{x}}\)
 =(1/2)x-1/2
x=0で微分不可能
(導関数を定義できない)

その他の初等関数の微分公式

次に、その他の初等関数の微分公式です。
これらは、基本となる微分公式から導出できるものが少なくありません。

関数名導関数備考
正接関数y=tanxy’=1/(cosx)
 =1+tan
正弦、余弦の微分公式と
積・商の微分公式から
指数関数
(一般)
y=ay’=(ln a)ae 以外の指数関数
対数関数
(一般)
y= loga
=(lnx)/(ln a)
y’=1/(xln a)e 以外の底。
底の変換公式使用
逆正弦関数y=Arcsinxy’=\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{1-x^2}}\)マイナス符号をつけると
逆余弦関数の導関数
逆正接関数y= Arctanxy’=\(\frac{\Large 1}{\Large 1+x^2}\)積分で理論上
重要な場合がある
双曲線関数y= \(\frac{\Large e^x-e^{-1}}{\Large 2}\)
 =sinhx
y= \(\frac{\Large e^x+e^{-1}}{\Large 2}\)
 =coshx
(sinhx)’=coshx
(coshx)’=sinhx
三角関数の導関数の
関係に似ている。
(微妙に違う。)

微分の公式と接線の傾きの関係

初等関数の微分公式は、基本となる単項式・三角関数(特に正弦と余弦)・指数関数・対数関数に限って言えば比較的平易な形をしているとも言えます。

と言ってもプラスとマイナスの符号の関係など、細かい部分は混乱する事もあるかもしれません。そのような時には、関数のグラフの接線の傾きとしての微分係数を考えてみると理解に役立つ場合があります。

関数のグラフを描いてみて、接線の傾きが正(グラフで言うと右上がり)、負(右下がり)、0、無限大など、見て大体分かる部分があるので、微分の公式の導関数との対応を考えると比較的分かりやすいです。

対数関数などは、 微分して得る導関数は 1/x ですが、x がゼロに近づくにつれて無限大の急な傾きになっていく事が表現されています。また、逆に x を無限大にしていくと傾きはどんどん緩やかに0に近づいて行く事になります。

x = 0 付近で傾きが非常に急で無限大に近く、x の値が巨大になるにつれて傾きが緩やかになり次第にほとんど0になるのは、「xの平方根」(xの1/2乗)などの関数でも同じです。

初等関数の微分公式の証明

微分の定義式からの個々の関数の微分公式の導出および証明を記します。

なるべく定義式からの極限として考えますが、
積の微分公式・合成関数の微分公式・逆関数の微分公式を途中で使ったほうがよい事もあります。(積の微分公式等はいずれも微分の定義式から導出されます。)

基本となる初等関数の微分公式は結果は比較的平易ですが、単項式で実数を指数とする場合の証明は意外と複雑だったり、三角関数に対しては計算を進めるうえで加法定理が必要だったりと、微分の定義から公式を導出する過程は意外と複雑であったりします。(そのため、微分を使っていくうえでは証明方法を理解したうえで「公式の結果は覚えてしまったほうが早い」とも言えます。)

単項式の微分公式の証明

定義式に直接単項式を代入すると、$$\frac{(x+h)^a-x^a}{h}$$となります。

他方で(x+h)a について、a が自然数 nであれば2項定理で展開する事によって$$\frac{nhx^{n-1}}{h}=nx^{n-1}$$の項だけが h→0 で 残り、他の項は全てゼロに収束します。

つまりxの導関数2xや、xの導関数3xにおける、
2とか3とかの係数は2項展開した時の係数由来(の項)であるというわけです。

しかしa が自然数でない場合には、少し証明に工夫を要します。
a が実数の場合でも「一般2項定理」が成立するのですが、その肝心の一般2項定理の証明が、一般的には単項式の微分の結果を使って行われます。(マクローリン展開を使います。マクローリン展開とは、微分を利用した関数の無限級数展開です。言い換えると微分の公式を必要とする展開です。)
そこで、単項式の微分公式の証明では、強引に一般2項定理の単独での証明を試みるよりは、
実は対数関数の微分を利用するほうが簡単です。

証明(a が実数の場合の単項式xaの微分公式)

対数の性質 ln xa=a ln x に注意して、$$\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{d}{dx}a\ln x=a\frac{d}{dx}\ln x=\frac{a}{x}$$ 他方で、合成関数の微分公式を用いると同じ式を別の形で表せます。
$$\frac{d}{dx}(\ln x^a)=\frac{\large{\frac{d}{dx}(x^a)}}{\large{x^a}}$$ という事は、$$ \frac{a}{x}=\frac{\large{\frac{d}{dx}(x^a)}}{\large{x^a}} $$ $$\Leftrightarrow {\large \frac{d}{dx}(x^a)=\frac{a}{x}x^a=ax^{a-1}}【h→0】$$

指数関数の微分公式の証明

指数関数の微分は、e に関する微分公式の証明が基本になります。
証明の方法は、微分の定義式に直接関数を当てはめて計算を進める形になります。
その際に、指数と対数との関係を使って式変形をしていきます。

証明(e の指数関数の微分公式)

$${\large\frac{e^{x+h}-e^x}{h}=e^x\frac{e^h-1}{h}=e^x\frac{e^h-1}{\ln e^h}}$$

次に、eh-1=kとおきます。$$e^h-1=k\Leftrightarrow\hspace{5pt}e^h=1+k\hspace{5pt}に注意して$$ $${\large\frac{e^h-1}{\ln e^h}}=\frac{k}{\ln (1+k)}=\frac{1}{\Large{\frac{1}{k}}\large{\ln (1+k)}}$$と表す事ができて、これの分母についてさらに$$\frac{1}{k}\ln (1+k)=\ln (1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}$$ という、e の定義式の形を含んだ式に変形できます。
h→0 の時k→0なので k に関する極限として考えてもよく、 $$\lim_{k \to 0}(1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}=\lim_{k \to \infty} \left(1+\frac{1}{k}\right)^k=e$$ なので $$\lim_{k \to 0}\frac{1}{k}\ln (1+k)=\lim_{k \to 0}\ln (1+k)^{\Large{\frac{1}{k}}}=\ln e = 1 $$ですから $$ \lim_{h \to 0}\frac{e^{\large{x+h}}-e^x}{h}=\lim_{k \to 0}e^x\frac{k}{\ln (1+k)} $$ $$=\lim_{k \to \infty}e^x\frac{1}{\ln (1+\large{\frac{1}{k}})^k}=e^x\frac{1}{\ln e}=e^x\frac{1}{1}=e^x$$

$$\lim_{n \to 0}(1+n)^{\Large{\frac{1}{n}}}=\lim_{n \to \infty} \left(1+\frac{1}{n}\right)^n=e$$ で定義される自然対数の底 (ネピア数)e が有限の値であるという事は、きちんと証明できます。少し面倒ではありますが自然数に関する2項定理を使って式を直接展開して、対象の式を数列として見た時に「上に有界である単調増加数列である」事を示す事で証明できます。e = 2.718・・・である事はマクローリン展開を使うと見やすいです。

一般の指数関数の微分

一般の指数関数の微分については、定義に当てはめて自然対数の底の場合と全く同様にして計算を進めます。対数の底の変換公式により次のようになる事を使います。$$\log_a\left(1+\frac{1}{h}\right)^h=\frac{\large{\ln(1+\frac{1}{h})^h}}{\ln a}$$ $$これは、h → ∞ で\hspace{5pt}\frac{1}{\ln a}\hspace{5pt}に収束します。$$
微分の定義式による計算ではこの式が分母にありますから微分により得られる導関数は次式です。$$\frac{d}{dx}a^x=a^x\ln a$$

対数関数の微分公式の証明

直接定義から計算しても証明できますし、指数関数の逆関数が対数関数なので、逆関数の微分公式を用いても証明できます。いずれの方法でも、自然対数の底 e の定義式の極限値の存在が、対数関数の微分公式でも成立の根拠となります。

以下では微分の定義式から証明してみます。

証明(対数関数の微分公式)

$$\frac{\ln (x+h)-\ln x}{h}=\frac{\ln \large{\frac{x+h}{x}}}{h}=\frac{\ln \left(\large{1+\frac{h}{x}}\right)}{h}$$ $$=\frac{1}{x}\frac{x}{h}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)=\frac{1}{x}\ln \left(1+\frac{h}{x}\right)^{\LARGE{\frac{x}{h}}}$$ $$ \rightarrow \frac{1}{x}\ln e =\frac{1}{x} 【h→0】$$

三角関数の微分公式の証明

三角関数のうち正弦関数と余弦関数の微分公式は、まず定義に当てはめて、sin(x+h) の形を三角関数の加法定理によって (sinx)(cos h) +(cosx)(sin h)の形にして計算を進めれば導出する事ができます。
ただし、計算の過程の最後で$$\lim_{h \to 0}\frac {\sin h}{h}=1$$の極限の公式が必要になります。(この公式は角度を弧度法で考えないと話が変になります。)

証明(正弦関数と余弦関数の微分公式)

■正弦関数 sin x の微分
$$\frac{\sin (x+h)-\sin x}{h} =\frac{\sin x \cos h + \cos x\sin h – \sin x}{h}$$ $$=\sin x \frac{(\cos h -1)}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h} =-2\sin x \frac{\sin^2 \Large{\frac{h}{2}}}{h}+\cos x\frac{\sin h}{h}$$ $$\left(∵ \cos h-1=\cos^2\frac{h}{2}-\sin^2\frac{h}{2}-1=1-2\sin^2\frac{h}{2}-1=-2\sin^2\frac{h}{2}\right)$$ $$=-(\sin x) \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \large{\frac{h}{2}}}{ \large{\frac{h}{2}}}+\cos x\frac{\sin h}{h}$$ $$ →\cos x【h→0】\left(\lim_{h\to 0}\frac{\sin h}{h}=1より\right)$$ ■余弦関数 cos x の微分
$$\frac{\cos (x+h)-\cos x}{h} =\frac{\cos x \cos h – \sin x\sin h – \cos x}{h}$$ $$=\cos x \frac{(\cos h -1)}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}=-2\cos x \frac{\sin^2 \Large{\frac{h}{2}}}{h}-\sin x\frac{\sin h}{h}$$ $$\left(∵正弦の時と同じく \cos h-1=-2\sin^2\frac{h}{2}\right)$$ $$=-(\cos x) \sin \frac{h}{2}\frac{\sin \large{\frac{h}{2}}}{ \large{\frac{h}{2}}}-\sin x\frac{\sin h}{h}$$ $$→-\sin x 【h→0】$$

正接関数の微分に関しては定義からも計算できますが、商の微分公式を使うほうがじつは簡単です。tanx=(sinx)/(cosx) である事を利用します。

途中式にある(cosh -1)/hの極限計算は加法定理を使わない計算方法もあります。

$$\frac{\cos h-1}{h}=\frac{(\cos h-1)(\cos h+1)}{h(\cos h+1)}=\frac{\cos^2 h-1}{h(\cos h+1)}$$

$$=\frac{-\sin^2 h}{h(\cos h+1)}=\frac{-\sin h}{\cos h+1}\cdot\frac{\sin h}{h}\rightarrow 0\cdot 1=0【h\rightarrow 0】$$

(sin x)/x の極限問題

ここでは、円弧の長さを変数とする関数として正弦、余弦、正接を考えてみます。(それが弧度法の考え方そのものでもありますが、ここでは「角度」という語を使わないで考えてみます。)

その場合に余弦と正弦波は単位円の円周上の点のx座標とy座標として考える事ができますが、正接も相似な三角形の辺の比から tanx=(sinx)/(cosx) としてきちんと考える事ができます。

この時に円弧の長さをxとすると sinx<x<tanxが成立しますが、
より詳しく見るとsinxは単位円に内接する正多角形の周の一部であり、
tanxは単位円に外接する正多角形の周の一部です。
この図形的な長さの関係は、円弧および円周の長さを計算する時に使うものと実は本質的に同じです。
すなわち円の内接多角形と外接多角形の周の長さを考えて、角の数を増やした時の極限値として円弧や円周の長さを計算するやり方です。

それらの正多角形を正n角形として考えた時、
内接する正n角形については周の長さはnについての単調増加数列となり、逆に
外接する正n角形については周の長さはnについての単調減少数列となります。
それらのn→∞の時の極限値として円弧の長さxが存在します。
詳しく言えばそれは半径および直径に比例し、円周全体の場合の比例定数はπ(円周率)です。
そのため、任意の長さの円弧についてsinx<x<tanxが成立するというわけです。
(この図形的考察は、より詳細には三角不等式等を使って丁寧に見て行く必要があります。)

この時に内接・外接する正多角形の隣り合う頂点を結んだ円弧の長さxは、x→0となります。それが(sinx)/xの極限としてx→0を考える図形的な意味です。

sinx<x<tanxに1/(sinx)を乗じると、1<x/(sinx)<1/(cosx) です。
x→0で1/(cosx)→1なので、極限の性質によりx→0でx/(sinx)→1
(sinx)/xの極限はその逆数ですが、1の逆数なのでそのまま同じ1になります。
そのため、x→0で(sinx)/x→1という事になります。