群の定義と基本性質

数学での「群(ぐん)」の定義と基本的性質を説明します。

数学での「群」とはどのようなもの?

まず始めに、数学で「群」(英:group)と呼ばれるものは、具体的なものとしてはじつに初歩的な対象が多く含まれます。

例えば、通常の実数や複素数は、積や和に関して「群」になります。(このように、何らかの演算に関してある集合が群になる・ならないといった表現をします。積について見る場合、0を除く事になります。)

特定の平面図形を「60°ずつ回転させる」といった操作も「群」としての性質を満たします。これは具体的操作としてはただ三角形や四角形を回してるだけですから、もちろん何ら難しい操作ではありません。他に図形をある軸に対してひっくり返す「鏡映」の操作なども加わる事もあります。

問題は次のようになります:

  • これらに共通する数学的性質は何か?
  • その抽象的な性質を前提にすると、どのような事が言えるのか?

群論ではこれを数学的な視点から整理し、理論を組み立てていく事になります。

「群」の定義

数学での「群」とは、1つの前提条件と、3つの公理を満たす集合を言います。

まず、前提条件として演算が定義される事です。それは、集合Gの元【げん】a、bに対して別の元「ab」が決定するというものであり、このabという新しい元もまたGの元である事が要請されます。群の場合、この演算の事を「積」と呼ぶ事が多いですが、いわゆる加法が該当する場合があります。

前提条件 任意のa,b ∊ G について ab=c ∊ G となる「演算」abが定義できる事。
「群」の定義 「演算」が定義されている前提で、次の3つを満たす集合Gを群と呼びます。
  1. 結合律の成立:任意の3つの元a,b,c∊Gについて、(ab)c=a(bc)となる。
  2. 単位元の存在:任意の元a∊Gに対してae=ea=aとなるe∊Gが存在する。
  3. 逆元の存在:任意の元a∊Gに対してaa-1=a-1a=eを満たすa-1∊Gが存在。

二番目の条件の単位元は、例えば実数では積に関しては1、和に関しては0が該当します。
三番目の条件の逆元は、例えば実数では2に対する1/2が該当します。(※この時、0では割れないので、積に関しては「0以外の実数」が「群」に当てはまるのです。)

定義
結合律の事は「結合法則」などとも言います。

単位元と逆元以外の一般の交換律ab=baは、群によって成立するものもあれば成立しないものもあり、成立するものは特に「可換群」と言います。

0を除く実数r、sについて、もちろんその積rsは実数であり、r・1=rとなる「1」が存在し、0を除いているので任意の要素についてr・(1/r)=1となる逆元も存在します。よって積に関して「群」である・・という判定をします。
この場合、任意の実数に対してrs=srですから、群としては可換群になります。こういった感じで分類をしていくわけです。

他方で、「実数のうち無理数だけからなる集合」は、2の平方根の2乗が有理数になってしまいますから、積に関して群を作らない事になります。

実数が和に関して群を作る事は、r+sは必ず実数、r+0=rとなる0が単位元として存在する、r+(-r)=0となる逆元が必ず存在する、という事から和に関して群である事が分かります。この場合は0を除かないわけです。このタイプの群は特に加群と呼ぶ事があります。

図形を回転させるような操作は、例えば「60°回転させる操作」をてきとうに文字でおきます。何でもよいのですがギリシャ文字の σ(シグマ)を使う事が多いようです。この時、120°回転を σ の2回分の操作とみなして σと表したりします。そして、0°回転つまり「何もしない」操作をeと書く事にします。

そのように定義したうえで、操作 σ自体を要素とみなし、 集合{e, σ, σ, σ}を考えます。すると、この集合はここで定義している操作の「積」に関して群を作るというわけです。この時、σ=eであるために、任意の2つの要素の積はこの集合の要素に必ずなります。逆元に関しては、例えばσに対してはσが該当するのです。この例では、操作自体を集合の要素とみなしています。

群の基本性質

さて、数学の理論として群論を考える時には「定義」をしてそれで終わるのではなく、むしろその先が大事です。つまりそのような定義をすると、どのような事が言えるのか・成立するのか?といった事が重要です。

ここでは、定義から直結する性質をいくつか述べます。

単位元の一意性

定義においては、単位元が「存在すればいい」という要請を出しているだけで、これだけではもしかすると「1」に相当する元がもう1つある可能性も匂わせます。しかし、実際はそのような事は起き得ない事を示せるのです。

このような場合、まずeとe’ の2つの単位元を仮定して、e=e’ を示すというのが1つの常套手段です。

定義から、e’e=e’です。(ce=cと同じ理屈です。)

他方、e’も単位元であるのですから、ee’=eでもあります。
単位元に関しては順序を問わないという定義の要請があるので、ee’=e’eです。

という事は、e’e=e’=eを意味します。これで証明終りというわけです。

このような単位元の定義(およびそれを満たすと言える集合)では、必然的にそのような単位元は1つだけ定まるという意味です。

逆元の一意性

では、逆元については一意性は成立するでしょうか?

aa-1=eで、これに左側から仮定している別の逆元(a-1)’ をかけると、
(a-1)'(aa-1)=(a-1)’e=(a-1)’
同時に、(a-1)’a=eにより、(a-1)'(aa-1)=((a-1)’a)a-1=a-1
ゆえにa-1=(a-1)’

よって、上記定義のもとで逆元も一意的に決まるという事です。この計算では、公理の1つめの「結合律」も前提として使用しています。言い換えると、結合律が成立していないと厳密にはこういった計算もできないという事です。

群の逆元の一意性

簡約律

ax=ay ⇒ x=y の事です。

これは単純にaの逆元を左側からかければ終わる話ですが、やはり結合律が成立しているのでそのように計算できるという事が一応重要です。

ax=ay ⇒ a-1(ax)=a-1(ay) ⇔ (a-1a)x=(a-1a)y ⇔ x=y

積の形の逆元

次のように、積の形全体の逆元は個々の逆元の積になるのですが、順番が逆になるというものです。

(abcd)-1=d-1-1-1-1

これは、
abcd(d-1-1-1-1)=e かつ (d-1-1-1-1)abcd=e
である事から示されます。dd-1=e、aa-1=eなどの関係でどんどん消していけばよいのです。

ただし、交換可能である群の場合は最初の形をひっくり返せる事からこれについては気にしなくていい事になります。実際、実数などでの割り算ではこのような「順番」については気にしなくてよいわけです。