円の接線と内接・外接

図形問題としての円に対する接線の考え方と、それとセットになる内接・外接の考え方を説明します。

学校で教わる内容としては中学数学・高校入試の範囲ですが、一部はそれ以降の話にもつながる重要事項も含んでいます。なぜかというと微積分での微分係数は関数をグラフ上で図形的に見た場合の「接線」の傾きだからです。また、高校数学では直線を一次関数とみなして種々の考察をして問題を解かせる場合も多いので、円と関わりを持たせた接線の話は中学校以降でも出てくるのです。

円に対する接線の性質

まず「接線」とは何かと言いますと、
「ぴったりくっつくように1点のみで交点を持つ直線」の事を言います。

また、そのよう形で図形同士が交わる時に「接する」という言葉を使います。「直線 L は円Oに接する、接している」といった具合です。(「接線」は必ず直線を指しますが、「接する」という言葉は曲線同士に対しても使います。例えば円と円が「接する」場合というのもあり得ます。)

図形同士が接する点を、「接点」と言います。

接線と法線

同じ1点で交わる場合でも、突き抜けるように交わる直線は接線とは言わないのです。その場合は単純に、1点で交わる交点です。

「接する」という事は数学的に厳密にはどのような条件を要請する事なのか?という事についてはここで触れないで置きますが、図で見れば分かると思います。中学校の範囲では、見て分かるという程度でじゅうぶんです。それで図形問題は解けるからです。

円に対する接線の重要な性質の1つとして、「接点と中心を通る直線は接線と垂直になる」というものがあります。接点を通り接線に垂直な線を法線と言うので「円に対する法線は中心を必ず通る」とも言えます。

法線

接点を通り、かつ接線に対して垂直である直線の事。
円の場合、法線は必ず円の中心を通ります。

★この事実を使って図形問題を解けと言われるのは中学校と一部高校においてだけでですが、この円に対する接線と法線の性質自体は物理学への応用などでも使ったりします。そのため、内容的には結構重要です。

どういう理由で1つの接点を通る法線は中心を通るのかというと、図形的には次の通りです。

証明の説明図

まず、円周上の2点A、Bと円の中心Oからなる三角形は二等辺三角形なので∠AOBが直角になる事はあり得ても、残りの2角は直角にはなり得ません。(三角形の内角の和は180°、つまり2直角であるため。)

すると、点Aに直線が接するには、その直線と線分AOは直角でなければなりません。もし直角でなかったら、その直線上で点A以外にOまでの距離が等しい点、つまり円周上の点が存在する事になり接線ではなくなってしまいます。

という事は、接線に垂直で接点を通る法線は、接点と中心の両方を通る事になるので題意は示されます。

簡単に言うと、円周上のある点を通る直線は、その点と中心を通る線分に対して垂直である場合に限りその1点のみで交わり、垂直以外の角度の場合には別の円周上の点と必ず交わってしまう(そのような円周上の点が必ず存在する)という事です。

☆この事は、高校数学での図形を式で表す方法でも証明できます。考え方自体は二次方程式の解が重解になる条件を出すだけなので難しくはありません。

内接と外接

また、図形問題でよく取り上げられますが、円に内接する図形、外接する図形というものがあります。ここで、「外接」の場合は特定の図形が必ず円に「接している」事が要求されますが、「内接」の場合は必ずしも接していなくてもよくて頂点などが全て円を突き抜けない形で触れていれば要請を満たします。

図で見ると分かりやすいでしょう。例えば内接三角形と外接三角形の違いを見てみましょう。

内接と外接

円以外の図形側から見た時、言葉の使い方として内接と外接は逆になります。

つまり、円に内接する三角形側から見れば「円は外接」しています。

三角形に対して円が内接していると言う場合は、円に対しては三角形は外接しているのです。

これらの内接・外接の関係は、図形問題として出題される場合には別の事項と組み合わされる事がほとんどです。例えば、円に内接する三角形・四角形は円周角の定理と組み合わせて問われる事が多いです。円に外接する三角形を考える場合には、中心から接点に向けての線分が接線と直角になる事実を使わせる事が多いです。

ひねったパターンだと、角の二等分線の事項も絡めて三角形の面積比などを問う出題もあります。

複雑にしようと思えばいくらでも問題をひねれるのが内接・外接に関する図形問題の厄介なところですが、必要な定理や数学的事実は限られているという事を押さえる事が重要です。前述した事の中で言えば、「円に対する接線がある時、法線は中心を必ず通る」といった事項です。

そういった、限られた数の基礎事項を確実に押さえたうえで、いろいろなパターンの問題を解いてみる事が中学校でのこの分野を攻略する鍵と言えるでしょう。複雑な定理や人があまり知らないような定理を暗記する必要はないのです。