順列とは?

順列とは、N個のものを並び替える方法を言います。
(英:permutation 順列を「置換」とも言います。)ここでは、その方法が何通りあるかという「場合の数」について説明します。高校数学で扱うのはその事項です。

結論を先に言うと、N個のものを並び替える順列の総数は次式で表されます。

N個のものを並び替える順列の総数

$$_NP_N=N!$$ $$=N(N-1)(N-2)\cdots 3\cdot 2\cdot 1$$ という表記は、N個のうちN個全てを並び替えるという意味です。
びっくりマークは「階乗」を表します。自然数を1ずつ下げてNから1まで掛けて積の形にする事を指します。例えば5!=5・4・3・2・1=120です。

また、N個のもののうち、M個を並び替え方の総数は次の通りです。

N個のもののうちM個を並び替える順列の総数 $$_NP_M=\frac{N!}{(N-M)!}$$

このようになるわけですが、これらを「暗記」するのはやめましょう。確かに公式の中には暗記してしまったほうが早いものもありますが、この順列の総数に関する式は「理解」できるものです。

N個のものを並び替える方法

初めに、少ない数から具体的に見てみましょう。

2個のものがあったとき、これを並び替える方法は「2通り」です。{A,B} {B,A} の2通りです。他の文字・・例えば {甲,乙}{乙,甲}の2通りと考えても、何でも構いません。
要するに、順番を区別して数えるという事なのです。
これが「2つのものを並び替える順列の総数」=2の意味です。この場合はとても簡単ですね。

では、A,B、Cあるいは甲、乙、丙などの3つを並び替えるにはどうすればよいでしょう?

これを具体的に書くと、
{丙、乙、甲}{丙、甲、乙}{乙、丙、甲}{乙、甲、丙}{甲、丙、乙}{甲、乙、丙}
の6通りあります。

実際これしか順番に並べる方法はないのですが、どのようにしてこれらを書きだしたかを説明します。まず、最初に来る文字が甲、乙、丙の3人のパターンがあります。そしてそれぞれの場合について、続く2人の順番が2通りあります。丙を一番左に置いたとき、続く順番は{乙,甲}と{甲,乙}の2パターンであるという事です。そして次に乙が最初に来る場合を考えて、同様に書きだして上記の6パターンの並びを得ています。

つまり3人それぞれを特定の場所、例えば一番左に置く場合につき2通りあるので3×2=6通りの並び替えの方法があるというわけです。これが=3!=6の意味です。

では4人を並び替える場合はどうするかというと、1つの位置(例えば一番左)に誰かをおくと、そのパターンにつき「3人を並び替える方法がある」事に気付くと分かりやすいかと思います。

誰かが一番左にいるごとに残りの3人を並べる方法が6通りあります。一番左に誰が来るかについては全部で4人いるわけですから4通りになります。よって4人を並び替える方法は全部で4×6=24通りです。

ここで、3人を並び替える方法が3×2=6通りであった事を考えると、4人を並び替える方法は4×3×2=24通りであるとも言えます。これが=4!=24の意味です。

では5人になった場合はどうかというと、考え方は同じです。

まず5人のそれぞれをどこか固定した位置に置きます。例えば上の例と同じく一番左に置きます。すると、残りの4人の並び替えは24通り(4!=4×3×2通り)である事が分かっているので、5人のそれぞれに対して24通りですから5×24=120通りの並び替えの方法があります。これをまとめて5!通りと書く事もできて、これが=5!=120の意味です。わずか5人で、並び替えの方法は意外に多いという事が分かります。

6人の場合も同じで、6×5!=6×120=720通りになります。これもこれまでと同様に6!=720通りとも書けます。非常に数が増えて、1つ1つ手で紙に具体的に書きだすのは困難である事が分かります。

7人の場合は7!=7×6!=7×720=5040通りになります。以降、人数を増やしていくと並べ方の総数は莫大に増えていく一方です。

以下、何人いても考え方は同じで、N人いた場合にはまずN人を選びます。のこりN-1人についてみるとこれは(N-1)×「N-2人の場合」ですから、結局N×(N-1)×(N-2)×・・・×3×2=N!通りという事になるわけです。
=N×N-1N-1=N×(N-1)!=N!のようにも書けます。考え方はある程度自由です。】

これが「N個のものを並び替える順列の総数は=N!である」という事の意味です。

N個のうちM個を並び替える場合

次に、N個のものの中からM個選んで並び替える方法の総数についてです。
これは順列の記号ではと書きます。

公式だけ見ると一見わけがわからない式に見えるかもしれませんが、意味はじつに簡単です。

5人いて、3人を選んで並び替える方法を考えてみましょう。

5人全員を並び替える場合には5!=5×4×3×2通りであったわけですが、意味を考えると3人だけを選ぶ場合には、最後の「2倍」がいらないわけです。誰か3人が並んだ時点で、選ばなかった2人も確定しますからそれで終了というわけです。

結果的には話は単純で、最初に5人のうちの1人を選び、次に残った4人の中から1人、続いて残った3人の中から1人を選びそこで打ち切るという事です。
【この方法でN個全てを並び替える場合を理解しても支障ありません。】

式で書くと=5×4×3=60という事です。

5人中2人だけを選び並び替えるなら=5×4=20通り、5人中1人だけなら=5通りです。

この通り、考え方は単純なのですが一般のNに対して式を書くと多少煩雑になる面があります。

N個のうち3個を並び替えるという場合にはN(N-1)(N-2)通りなどと上から順に3項の積を考えて済みますが、N個のうちM個を並び替える場合にはどう書くのかという話になります。

=N(N-1)(N-2)の場合を見てみると、N-3以降の項がないわけですから、N!を(N-3)!で割るとちょうどうまい具合に同じ数になります。

つまり、(N-M)!を考えて、それでN!を割ればうまく式でも表現できるわけです。これがを表す公式の意味です。

$$_N\mathrm{P}_M=\frac{N!}{(N-M)!}$$

尚、M=N-1を考えると、N-M=N-(N-1)=1ですから、それでN!を割ってもN!のままです。N-1という事になります。これは5人全員を並び替える時、最後の一人については空いている位置に入れるだけなので結局「5人中4人を選んで並び替える」場合と同じである事に対応しています。

順列の考え方は、具体的な人や物の並べ方を考える時だけでなく、種々の理論の中でN個の項を並び替える何らかの操作をする時にその総数を表すために使用されます。

例えば(高校数学の範囲外ですが)線型代数で行列式の定義をする時にはN個の項の積をとって並び替えたものを全て考えるという事をやるので、項数は順列の総数という事になります。(N!という形が出てくる式全てが順列に関係するとは限りません。例えば、単項式に対する微分操作を繰り返す事でN!が出てくるパターンもあります。)

また、順列の他に重要な「組み合わせ」の数え方も順列での考え方を基礎としています。方法の総数を数え上げる事は、確率の理論でも重要です。

行列式の項数を表すn!はn個の番号を並び替える順列の総数です。

逆関数の微分公式【計算例と証明】

逆関数の微分公式の内容、具体例、証明について述べます。

y = 2x のとき、両辺を2で割って x = y / 2 とも書けます。
このように、y = y(x) のとき、逆に x = x(y) と書けるとき、x(y) を y(x) の逆関数と呼びます。
【この時の関数の記号はfでもFでも何であっても問題ありません。】

高校数学の中で重要な例としては、指数関数と対数関数を挙げる事ができます。
これらは、互いに逆関数同士の関係にあるのです。

y=x2 のような場合に逆関数を考えると x=\(\pm \sqrt{y}\)のように x を y で表した関数が2つ出てきてしまうので、「1つの変数に対して1つの値が定まる」という関数の定義に反し、ちょっとした面倒事が起きます。
こういう場合には x の定義域と y の値域を特定の区間に定めれば逆関数を書けるという形になります。
逆関数の定義に関するそういった細かい事は多くあるのですが、ここでは本質ではないので略します。

高校数学で覚える必要はありませんが三角関数の逆関数を「逆三角関数」と言い、
sin x に対して arcsin x(「アークサイン x」)と書きます。
この逆三角関数は一見使いづらい関数なのですが、
その微分の性質から、一部の微積分の計算(例えばテイラー展開や不定積分の計算)で有用な働きをする事があります。この逆三角関数を微分する時には、逆関数の微分公式を使用します。

公式の内容

逆関数を考えた時、もとの関数を微分して得られる導関数と、逆関数を微分して得られる導関数の間にはある関係式が必ず成立するというのが、逆関数の微分公式です。内容は、次のようになります。

逆関数の微分公式

y=y(x)の時にx=x(y)と表せる時、次の関係式が成立します。 $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}$$ ここで左辺はxの関数で、具体的な計算においては右辺はyの関数ですが、yはxで表せるという前提なので右辺もxだけの関数として表す事ができます。(※ただし後述するように具体的な計算ではyをxに直す作業が面倒である事があります。)
もちろん、分母は0になってはいけないという前提はあります。

ちょっと一見よく分からない公式だと思うかもしれませんが、xをyで表した時に「xをyで微分して得られる導関数」の逆数が、もとのyをxで微分して得られる導関数に必ず等しくなるという関係式です。

式としては単純で互いに逆数であるという関係ですから、dx/dy=・・の形として見ても公式は成立します。つまり基本的には公式を次のように書き換える事もできます。

$$\frac{dx}{dy}={\large\frac{1}{\frac{dy}{dx}}}$$

これは、具体例で見たほうが分かりやすいと思います。

逆関数
このような逆関数の導関数を考える時、もとの関数の導関数との間に常に成り立つ関係式があります。

具体例と計算例

具体的に公式を使うための手順は次のようになります。
もとの関数y=y(x)の導関数を計算したい場合であるとします。

  1. 関数と逆関数を、y=y(x), x=x(y) の形で出しておく。
  2. 逆関数のほうについて、導関数を計算する。【※これが簡単にできる場合でないと、公式を使う意味があまりない事になります。】$$\frac{dx}{dy}を計算$$
  3. 得られた逆関数の導関数(yの関数)を、逆関数の微分公式に代入します。$$\frac{dy}{dx}={\large \frac{1}{\frac{dx}{dy}}}\hspace{5pt}に\hspace{5pt}\frac{dx}{dy}\hspace{5pt}を入れる$$
  4. この段階で得られる計算結果は「y の関数」の形になっているので、y=y(x)を代入して x の関数にすれば、
    それが y に対して x で微分したdy/dxの正しい形になっています。 $$式の変数をxだけにすれば\hspace{5pt}\frac{dy}{dx}\hspace{5pt}の結果になる$$
微分公式
指数関数と対数関数の微分は逆関数の微分公式で結ぶ事ができます。

※合成関数でもこの「y を x の関数の形に戻す」作業がありますが、一般には y = f(x) を代入すればよいというものでした。しかし、逆関数の微分の場合は、この作業について少し工夫がいる場合があります。

具体的な計算例を次に記します。
ここでは参考までに、逆三角関数の微分の計算も記してあります【高校では不要】。

逆関数の微分の具体例

逆関数の微分公式は、通常の微分計算で多く使うというよりは、特定の微分公式を導出するために使われる事が多いように思います。

  • 1次関数の例:y=2, x=y/2 の時、 $$\frac{dx}{dy}=\frac{1}{2}\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}={\large\frac{1}{\frac{1}{2}}}=2$$ この場合には直接微分しても、あるいはグラフを見ても分かる結果ではありますが、逆関数の微分公式も確かに成立しているという事です。
  • 2次関数の例:x>0かつ y=\(\sqrt{x}\), x=y2 の時、 $$\frac{dx}{dy}=2y\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{dy}{dx}={\large\frac{1}{\frac{dx}{dy}}}= \frac{1}{2y} =\frac{1}{2\sqrt{x}}$$ ここでは平方根のほうの導関数を計算するために、2次関数を逆関数とみなしています。
    もちろん、この計算はyを直接xで微分しても同じ結果です。
  • 指数関数と対数関数の例:y=ex, x=ln y の時、 $$\frac{d}{dx}e^x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\ln y}}={\large\frac{1}{\frac{1}{y}}}=y=e^x$$ 指数関数と対数関数の微分公式は一見全く異なる形であるようにも見えますが、じつはこうしたつながりもあるというわけです。
  • 逆三角関数と三角関数の例:y= arcsin x, x= sin y の時、$$\frac{d}{dx}\arcsin x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\sin y}}=\frac{1}{\cos y}=\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2y}}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$$ ここでは「逆三角関数の導関数」を知るために、通常の三角関数を逆関数とみなしています。
    計算過程では sin2x+cos2x=1 の関係を使用しています。
  • 余弦の逆三角関数の例:y=arccos x, x=cos y の時、$$\frac{d}{dx}\arccos x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\cos y}}=\frac{1}{-\sin y}=\frac{-1}{\sqrt{1-\cos^2y}}=\frac{-1}{\sqrt{1-x^2}}$$
  • 正接の逆三角関数の例:y=arctan x, x=tan y の時、 $$\frac{d}{dy}\tan y==\frac{1}{\LARGE{\frac{1}{\cos^2y}}}\hspace{5pt}により、$$ $$\frac{d}{dx}\arctan x={\large\frac{1}{\frac{d}{dy}\tan y}}=\cos^2y=\frac{1}{1+\tan^2y}=\frac{1}{1+x^2}$$

高校数学では、指数関数と対数関数の関係あたりを逆関数の関係で結べる事を理解していれば、基本的にはじゅうぶんかと思います。

逆三角関数の微分
【逆関数の微分公式:arcsin x の導関数の導出の例:】arcsin xの微分を、「sin xの微分公式」と「逆関数の微分公式」から導出する手順です。x = sin y の時に「y を変数とする形」で逆関数の微分を出すのは、じつはかなり簡単です。(公式により y で微分し分母に入れるのみ。)
ただ、そのあとで y を x の関数の形にうまく戻すために、工夫が必要な事があるのです。
※逆三角関数の別の表記方法

あくまで表記方法の問題なのですが、逆三角関数を sin-1xとも書きます。
もちろんその場合は(sin x)-1=1/(sin x) とは全く異なる関数・・なのです。
個人的にこれは紛らわしい表記だとも思うので、このサイトでは arcsin x などの表記を使用します。

公式の証明

y=Y(x), x=X(y) として、まず Δx = X(y+k)-X(y) とすると
k → 0 の時に Δx → 0 となります。(その逆である「Δx→ 0 の時 k → 0 」も成立)

X(y+k)-X(y) について Δx という文字でおいたのは、ここでは X(y+k)-X(y) というものが「xの変化」に等しいという事を見やすくするためです。別に他の文字でも支障はありません。

これを上手に利用すると、同じ極限が2通りの方法で表せます。その2通りの方法による結果がdy/dxと1/(dx/dy)であり、それゆえに両者を等号で結べるというのが証明の内容です。
その点で、合成関数の微分公式のように1本の式だけで証明できない点が少しだけ異なります。

ここで、微分の定義の式を書きます。

$$\frac{dy}{dx}={\large\lim_{\Delta x \to 0}\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x}}$$
これは定義通りの式です。しかし、極限をとる変数としてΔxを使っているところに計算上の工夫があります。ここの極限をとる変数は、h でなくとも何でも成立します。

上記の微分を表す微分を計算すると、次のようにも表せます。

$$ {\large\lim_{\Delta x \to 0}\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x} } =\lim_{k \to 0}{\large\frac{Y(X(y)+X(y+k)-X(y))-Y(X(y))}{\Delta x}}$$
$$ ={\large\lim_{k \to 0}\frac{Y(X(y+k))-Y(X(y))} {\Delta x}} ={\large\lim_{k \to 0}{\large\frac{y+k-y}{\Delta x} }} ={\large\lim_{k \to 0}\frac{k}{\Delta x} }={\large\lim_{k \to 0}\frac{1}{\frac{\Delta x}{k}} }$$
$$ ={\large\lim_{k \to 0}\frac{1}{\frac{X(y+k)-X(y)}{k}} } ={\Large\frac{1} {\frac{dX(y)}{dy}}}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }$$

最初の変形では、分子のところだけΔxをもとの形Δx = X(y+k)-X(y)に直してしまい、
xをx=X(y)で書く事により、x+Δx=X(y+k)としています。

次に、関数を y 変数になるように整理し、Δx→0 の時 k→0 なので k の極限にしています。

そのあとで、少しややこしいのですが逆関数の重要な性質「Y(X(y))=Y(x)=y 」(X(y)=xに注意)を使って、X(Y(y+k)) = y + k としています。
その後の計算は、例えば2/3=1÷(3/2)=1/(3/2)などと、同じ計算です。

これらの結果から、
$$\lim_{\Delta x \to 0}{\large\frac{Y(x+\Delta x)-Y(x)}{\Delta x}}=\frac{dy}{dx}={\Large\frac{1}{\frac{dx}{dy}} }【証明終り】$$

逆関数の性質
X(y)=x に y=Y(x) を代入して X(Y(x))=x としても同じです。
サイト内関連記事【高校数学の微積分】

積の微分公式と商の微分公式

積の微分公式と、それの変形版である商の微分公式の内容、具体例、証明について述べます。
(英:product rule, quotient rule)
これは関数同士の「掛け算」「割り算」の形になっている関数を微分する時に成立する公式です。

積と商の形の関数は統一的に捉える事ができるので同時に記します。
詳しくは後述していますが、商の場合にはf(x)と1/g(x)の「積」と捉えればよいので基本的には同じ形の公式なのです。

公式の内容

y=xe といった関数同士の「積」の形になったものを微分する時には積の微分公式が使えます。
また、正弦関数を「x で割った」(sin x)/x などには商の微分公式が使えます。

関数f(x)とg(x)の積f(x)g(x)、商f(x)/g(x) を微分した時には次の公式が成立します。
ここで、f(x)とg(x)をf、gと記しています。

積と商の微分公式

$$積の微分公式:(fg)^{\prime}=f^{\prime}g+fg^{\prime} \hspace{20pt}商の積分公式\left(\frac{f}{g}\right)^{\prime}=\frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}$$ これらは本質的には全く異なる公式ではなく、同種類のものであると捉えたほうがよいでしょう。

商の微分については、分母にあるのは「『微分してない g(x)』の2乗」です。

積の微分公式については、2つの項は足し算なので順番はどっちでもよいのですが、
「f’g +fg’」の順番にしたほうが、商の微分公式との関係で「覚えやすい」かとは思います。

計算の具体例

公式を使って計算する手順としては、f(x) と g(x) のそれぞれについて「x で微分した関数」と、「微分してない(もともとの)関数」をパーツとして用意し、公式に当てはめて丁寧に計算するというものになります。

まず、積の微分公式の具体的な計算の例をいくつか見てみます。

積の微分公式を使った計算例
  • y=sinx cosx 【2つの三角関数の積】の微分は次のようになります。$$\frac{d}{dx}\{(\sin x)(\cos x)\} =(\sin x)^{\prime}(\cos x)+(\sin x)(\cos x)^{\prime} =\cos^2x-\sin^2x$$
    加法定理を考えると、この結果はcos 2x に等しくなります。sin x cos x=(sin 2x)/2 として、xで微分した時の結果と一致します。(この時、合成関数の微分公式を使用しているので注意。)
  • y=sinx の微分を考えます。
    これに積の微分公式を適用する場合にはy=(sin x)・(sin x)と考えるわけです。$$\frac{d}{dx}\{(\sin x)(\sin x)\} =(\sin x)^{\prime}(\sin x)+(\sin x)(\sin x)^{\prime} =2\cos x\sin x$$
    これは sin 2x と表す事もできます。
    また、sin2x を合成関数の微分公式で微分した結果と一致します。
    さらに、加法定理・半角の公式でsinx=(1-cos2x)/2と変形してからxで微分しても同じ結果です。
  • y=xe【xと指数関数の積、eは自然対数の底】を微分すると次のようになります。 $$\frac{d}{dx}(xe^x)=(x)^{\prime}e^x+x(e^x)^{\prime}=e^x+xe^x=e^x(1+x)$$ 微分公式 (e)’ = e を使っています。
  • y=xlnx【xと、eを底とする対数関数の積】の微分を考えます。 $$\frac{d}{dx}x\ln x=(x)^{\prime}\ln x + x(\ln x)^{\prime}=1\cdot \ln x + x\cdot \frac{1}{x}= \ln x + 1$$ これを変形して両辺を積分すると、対数関数についての積分のほうの公式が得られます。$$\ln x = \left(\frac{d}{dx}x\ln x \right) – 1 なので、$$ $$\int \ln x dx=x\ln x -x+C が得られます。$$
  • 積分のほうの「部分積分」の公式は、積の微分公式を変形して
    $$f^{\prime}g=(fg)^{\prime}-fg^{\prime}$$の両辺を積分したものです。
  • f(x)・{g(x)}-1を、合成関数の微分公式も使って積の微分公式に適用すると商の微分公式が得られます。これについてはこのページで後述する証明の箇所でより詳しく説明します。

2番目の例のように微分の計算方法がいくつかあって、積の微分公式を使う事はその方法の1つであるというパターンもあります。計算結果が合っていればどの方法でも構いません。(入試を受験する場合にはなるべく効率のよい計算方法を考えたり、複数の方法で微分する事で計算結果のチェックをするようにしたほうがいいと思います。)

これらの中で、具体的な関数の微分計算も大事である場合もあるのですが、特に積分のほうの部分積分の公式を得るために使われるという事は覚えておくと便利かもしれません。

続いて、商の微分公式の具体的な計算例です。

商の微分公式を使った計算例
  • y=(sin x)/x を微分すると次のようになります。 $${\large\frac{d}{dx}\frac{\sin x}{x} =\frac{ (\sin x)^{\prime}x-(x)^{\prime}(\sin x) }{x^2} =\frac{x\cos x-\sin x}{x^2} }$$
  • y=(ln x)/x を微分すると次のようになります。 $${\large\frac{d}{dx}\frac{\ln x}{x} =\frac{(\ln x)^{\prime}x-(x)^{\prime}\ln x}{x^2} =\frac{x\frac{1}{x}-\ln x}{x^2}=\frac{1-\ln x}{x^2} }$$
  • 正接関数 tan x の微分公式は、じつは商の微分公式により導出されます。$$\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}なので、$$ $$\frac{d}{dx}\tan x=\frac{(\sin x)^{\prime}(\cos x)-(\sin x)(\cos x)^{\prime}}{\cos^2x}=\frac{\cos^2x +\sin^2x}{\cos^2x}=\frac{1}{\cos^2x} $$sin x と cos x の微分公式を用いて丁寧に計算すれば証明できます。
    三角比の公式 sinx+cosx=1を使用しています。
  • 三角関数のマイナー組である余接 (cos x)/(sin x)、正割 1/(cos x)、余割 1/(sin x) 【高校ではこれらを覚える必要なし】の微分公式も、商の微分公式を用いれば証明できます。
    具体的な計算例として、余接関数を微分すると次のようになります。$$\frac{d}{dx}\cot x=\frac{d}{dx}\frac{\cos x}{\sin x}=\frac{(\cos x)^{\prime}\sin x-\cos x(\sin x)^{\prime}}{\sin^2x}=\frac{\sin^2 x+\cos^2 x}{\sin^2x}=\frac{1}{\sin^2x}$$
    正割のように 1/g(x) の形の場合、f(x) = 1 ですから、f'(x) = 0 であり、公式の項が1つ消えるので計算は簡単になります。
    一般的に、 1/g(x) の形の関数の微分は次のようになります。 $$\left(\frac{1}{g}\right)^{\prime}=\frac{0\cdot g-1\cdot g^{\prime}}{g^2}=\frac{g^{\prime}}{g^2}$$これは公式として新たに暗記する必要はありません。
    むしろ、商の微分公式でこのような式もすぐに導出できるようにしておくとよいでしょう。

これらの具体例を見てみると積と商の微分公式は、初等関数の微積分という範囲に限って見ると割と重要な公式である事が、何となくつかめるのではないかと思います。

公式の証明

証明の方法は合成関数の微分公式や逆関数の証明方法と大体考え方は似ています。積や商の微分公式の場合、証明は合成関数や逆関数と比較すると比較的容易です。

結論を言うと「隠れている『0』」を加えたりしてあげる事で証明できます。

積の微分公式の証明 ■ 商の微分公式の証明
片方の公式からもう片方の公式を導出するやり方

積の微分公式の証明

積の微分公式の場合、 f(x+h)g(x) - f(x+h)g(x) という「隠れている項」を考える事で、2つの導関数の和の形を作れます。 この考え方自体は、数学の他のところ(大学数学も含め)でも、割とよく使われます。

$$\frac{d}{dx}(f(x)g(x))={\large \lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h}}$$
$$={\large\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x+h)g(x)+f(x+h)g(x)-f(x)g(x)}{h} }$$
$$ ={\large\lim_{h \to 0}f(x+h)\frac{g(x+h)-g(x)}{h} }+\lim_{h \to 0}g(x){\large\frac{f(x+h)-f(x)g(x)}{h} }$$
$$ =f(x){\large\frac{dg}{dx} }+g(x){\large\frac{df}{dx}}=f(x)g^{\prime}(x)+f^{\prime}(x)g(x) =f^{\prime}g+fg^{\prime}【証明終り】$$


証明の最後のところは、f(x)をf と略して和の順番を変えて整理しただけになります。

「隠れている『0』」の項を分子の部分に加えてあげる事で証明できます。積の微分公式の場合、
f(x+h)g(x) - f(x+h)g(x) =0という項を加える事で「2つの導関数の和」の形を必ず作る事が可能です。

商の微分公式の証明

商の微分公式も同様の方法で証明できます。

まず分母のg(x+h)とg(x)を通分します。
その後で「-f(x)g(x)+f(x)g(x) (=0)」を分子に加えるという、積の微分公式同様の考え方をします。

$$\frac{d}{dx}\frac{f(x)}{g(x)}={\large\lim_{h \to 0}\left(\frac{f(x+h)}{g(x+h)}-\frac{f(x)}{g(x)}\right)\cdot\frac{1}{h}}$$

$$={\large\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{h\cdot g(x)g(x+h)} }$$

$$ ={\large\lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x)+f(x)g(x)-f(x)g(x+h)}{h\cdot g(x)g(x+h)} }$$
$$ ={\large\lim_{h \to 0}g(x)\frac{f(x+h)-f(x)}{h\cdot g(x)g(x+h)}}-{\large\lim_{h \to 0}f(x)\frac{g(x+h)-g(x)}{h\cdot g(x)g(x+h)} }$$


$$ ={\largeg(x)\frac{df}{dx}\frac{1}{(g(x))^2}-f(x)\frac{dg}{dx}\frac{1}{(g(x))^2}}$$

$$= {\large\left(\frac{df}{dx}g(x)-f(x)\frac{dg}{dx}\right)\frac{1}{(g(x))^2} = \frac{f^{\prime}g-fg^{\prime}}{g^2}}【証明終り】$$

計算の途中にある分母のところにあるg(x+h)は、h→0でg(x)になるので、これともう1つのg(x)と合わせて公式の分母の2乗を作るわけです。

片方の公式からもう片方の公式を導出するやり方

さて、このように積の微分公式と商の微分公式は、独立に証明できるわけです。

では、片方の公式からもう片方を導出できるでしょうか?

積の公式のほうに1/g(x)としてみると、これは(g(x))-1と考える事ができますから、合成関数のほうの微分公式を使えるのです。計算してみると次のようになります。

$$\frac{d}{dx}\frac{1}{g(x)}=\frac{d}{dx}(g(x))^{-1}=-\frac{dg}{dx}\cdot\frac{1}{(g(x))^2}$$

「g(x)の2乗」というものとマイナス符号が合成関数の微分のほうから出てくるわけで、これを積の微分公式に当てはめると商の微分公式になります。

商の微分公式の第1項はg(x)を「約分」する事もできるわけですが、こちらの証明方法の観点だともともとの1/g(x)の形に由来するというわけです。

他方、商の微分公式のほうが先に証明されているとしましょう。この時に、簡単に前述しましたが 1/g(x)の導関数が今度は合成関数の考え方を使わずに、商の微分公式から導出できるわけです。もちろん結果は同じです。

そのうえで、商の微分公式の中のg(x)を、1/g(x)に置き換えます。ちょっとややこしいですが、微分の部分も含めて丁寧に代入して整理すると積の微分公式になるのです。

商の微分公式が分かっている状況で積の微分公式を導出するにはこのようにします。

つまり積の微分公式と商の微分公式は、独立に証明もできるし、互いに片方の公式からもう片方を導出する事も可能であるわけです。

こういった、証明の方法が複数あるという事については別に知らなくても支障はないし、大学入試の受験という観点からも証明自体が出題される頻度はかなり低いと思いますが、いくつかの方法で試してみる事は計算の練習にはなると思います。

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合成関数の微分公式【計算例と証明】

合成関数の微分公式の内容、具体例、証明について記します。
(英:chain rule)

微分の定義と公式は別途に詳しくまとめています。

公式の内容

合成関数の微分公式は、f(x)=f(y(x))の形、つまり合成関数の形である時に次のように表されます。

合成関数の微分公式

$$\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}$$ 形としてはあたかも「dy」が分母分子で「約分される」かのような形となっている事が特徴です。これは覚えるコツでもありますが、数学的にも間接的に意味のある形(例えば証明の仕方との関連)になっています。

これはどういう事かというと、次のような手順を踏めば微分ができるという事です。

  1. f(x)=f(y(x)) で y=y(x)とおき、
    f(x)=f(y(x)) =f(y)のように、yが変数であるかのような形にする。
  2. f(y) をyが変数であるとみなしyで微分する。これがdf/dy
  3. y=y(x)を微分する。これがdy/dx
  4. df/dyとdy/dxを掛け算する。
    (この段階では見かけ上の変数としてxとyが混在しています。)
  5. y=y(x)を代入して式の変数をxだけにする。これがf(x)=f((y(x))をxによって微分して得る導関数に一致する。

合成関数とは、例えばf(x) = (2x+3)のような形の関数の事で、y(x)=2x+3のようにおいてf(y(x)) =(y(x))という構造になっています。

これを微分する時に、f(x) = (2x+3)であれば式を展開してから普通にxで微分する事もできますが、y(x)=2x+3のxによる微分と組み合わせて計算できる事もできるというのが合成関数の微分公式です。しかも、その組み合わせ方は「掛け算」するだけでよいというのがこの公式の意味です。

★y=y(x)と実際におくのは丁寧に計算する場合で、この置き換えが簡単な式である場合には頭の中で計算をしてしまう事もできます。
例えばf(x) = (2x+3)のような関数であれば、
yという文字を使わずに「(2x+3)という塊とその2乗」で考えるという事です。

下図のように f(x) = cos(ωx) 【例えば cos 2x】のように表される関数の他に、$$e^{2x},\hspace{10pt}\sin^2x(=(\sin x)^2)\hspace{10pt}\frac{1}{1-x},\hspace{10pt}\sqrt{1-x^2}\hspace{10pt}$$なども、みな合成関数の仲間達です。
これらを微分する時には、普通の微分公式をそのままでは適用できない場合があります。そのようなものについては「合成関数の微分公式」で微分をして導関数を計算します。

【合成関数の微分公式】この図では、cos(ωx) という形の「合成関数」を例にして考えています。余弦関数の cos の中に、ωxという別の関数が入っていて「合成」されているので、このような形の関数を合成関数と言います。見ての通り、微分をすると、cos が -sin になるだけでなく、ωというオマケがくっついてきます。この形の関数は、物理でもよく使いますので重要だと思います。物理では、「時間(秒)」を変数として、角速度ω[rad/s]を用いて cos(ωt), sin(ωt)といった関数を考えたりします。

具体的な計算例

この微分公式を使った計算は理論・応用ともに重要なのですが初見では計算の仕方が紛らわしく理解しにくい面もあるので、ここでは具体例についてかなり詳しく挙げておきます。

f(x) = (2x+3)の微分を合成関数の微分公式で計算する場合は次のようにします。

y(x)=2x+3とおき、yをxで微分して得る導関数dy/dx=2と、yを変数とみなしたf(y)=yをyで微分して得る導関数df/dy=2y=2(2x+3)を用意します。これらを掛け算します。

すると、df/dx=(df/dy)・(dy/dx)=2・2(2x+3)=8x+12です。

f(x) = (2x+3)=4x+12x+9のように式展開して直接xで微分すると、df/dx=8x+12となります。この結果は、合成関数の微分公式を使った場合の結果と確かに一致しています。

他の合成関数の場合の微分についても見てみましょう。特に重要度が高いのは(大学入試だけでなくその後についても)、三角関数(および三角比)や指数関数が合成関数の形になっている場合です。

三角関数の合成関数:f(x) = cos(2x)

cos(ωx) という形の関数の、さらにより具体的な関数として、
f(x) = cos(2x)という「2x」という形が余弦関数に入っている場合の微分計算を、例として手順を追って見てみましょう。
f(x) = cos(2x) = sin y の「x による微分」は、合成関数の微分公式を利用して計算できるのです。

  1. cos(2x)の 2x を y とおき、cos y を「y で」微分します。
    公式により、これは -sin y になります。
    $$\frac{d}{dy}\cos y=-\sin y$$
  2. 次に、y = 2x を x で微分します。
    これは、一次関数x の微分「1」に定数 2 をかければよいので 2 になります。
    $$\frac{d}{dy}(2x)=2$$
  3. df/dyとdy/dxの積をつくります。
    これは、本当に「掛け算するだけ」の計算です。
    $$\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-\sin y)\cdot 2 =-2\sin y$$
  4. ・・最後に、y に y = 2x を代入し、x だけの式にします。それがf(x)を x で微分して得られる導関数に等しいわけです。
    $$\frac{df}{dx}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=-2\sin y=-2\sin (2x)$$

このタイプの微分は、イラストでも触れていますように、じつは物理でもよく使う微分計算です。
慣れてくると、cos(2x) のような形である時点で微積分する時には「2」を忘れてはいけないという事にすぐに気付くようになるでしょう。

次に、指数関数が合成関数になっている場合です。考え方は上記と同じになります。
ここでは特に自然対数の底の指数関数を扱います。理論上も応用上もその場合が特に重要です。

指数関数の合成関数:f(x) = e(2x)

f(x) = e(2x)は、指数関数の変数が「2x」などになった形の合成関数です。
このタイプも、微分方程式の解法などを含めて物理学で比較的よく使う微分計算だと思います。

2x = y とおきます。
元の関数をyで表すと、f(x)=e2x=ey(=f(y))です。

  1. y を x で微分します。$$\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(2x)=2$$※少し慣れれば、このへんは暗算でやってしまうくらいになると思います。
  2. f(y)を y で微分します。$$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}e^y=e^y$$これは、e の指数関数の微分公式そのままですね。
  3. 合成関数の微分公式を適用します。
    ここでは、y を x の形に直すところまで一緒にやってしまいます。 $$\frac{d}{dx}e^{2x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2\cdot e^y=2e^{2x}$$

この計算方法を見ると、一般に次のように、 $$「定数 a に対して、\frac{d}{dx}e^{ax}=ae^{ax}」$$ という事が言える事も、分かるかと思います。
f(x) = e2x の 2x が、3x でもあっても ax であっても、計算方法は同じだからです。
もっとも、これを新しく公式として「暗記」する必要は、ありません。
必要なのはあくまで普通の指数関数の微分公式と、合成関数の微分公式なのです。

注意点としては、y=y(x)の置き換えをした時には、最後に y を x の形に直す必要がある(場合が多い)という事だと思いますが、忘れさえしなければ数学でも物理でも、難しい計算は少ないと思います。

前述の通り、簡単な合成関数であれば置き換えは頭の中だけでやってしまっても支障ありません。

三角関数の合成関数で、少し紛らわしいタイプのものを挙げておきます。

三角関数の合成関数:f(x) = sin2x

三角関数を「2乗した」sin2x などの場合です。
この場合は、 sin x = y と考えて、元の関数が \(f(y)=y^2\)であると考えるのです。
従いまして、微分の計算は次のようになります。

  1. まず合成関数の微分公式に必要な材料を計算します。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}y^2=2y,\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}\sin x=\frac{dy}{dx}\cos x $$
  2. 2つの材料を、掛け合わせてできあがりです。
    $$\frac{d}{dx}\sin^2x=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=2y\cos x=2\sin x \cos x = \sin 2x$$

(ここで sin 2x は、sin(2x) の事です。)
他方、sin 2x の微分は 2cos(2x) になります。(上の例のcos 2x と同様の手順です。)
sin2 x の微分とは、少々違った結果になる事が分かるかと思います。
一見、「似てるっぽい?」かもしれませんが、計算方法を間違えないようにしたい例のひとつであるわけです。
尚、最後の結果が「x の半角」の正弦の形になる事は、三角関数の半角の公式を導出する手順で使う式(加法定理由来)を使って$$\sin^2 x=\frac{1-\cos 2x}{2}である事から、$$ $$\frac{d}{dx}\frac{1-\cos 2x}{2}=\frac{2\sin 2x}{2}=\sin 2x$$となる事と調和しています。
また、この例の微分は積の形の微分公式で計算する事も可能で、同じ結果を得ます。

他に、うっかりすると合成関数である事を見落としがちなタイプのものを挙げます。

合成関数になっている反比例関数:f(x) = 1/(1-x)

$$続いて、f(x)=\frac{1}{1-x}という関数の微分を考えてみましょう。$$ これも、合成関数として微分する必要があるのです。
「これのどこが合成関数?」かと思われるかもしれませんが、分母の 1-x を y と考えて合成関数と見る必要があるのです。この y = 1 – x の微分においては、定数の「1」は微分すると0になって消えます。

  1. 再び、材料作りです。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}\frac{1}{y}=\frac{d}{dy}y^{-1}=-y^{-2},\hspace{10pt}\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(1-x)=-1 $$
  2. 合成関数なので掛け合わせます。
    $$\frac{d}{dx}\frac{1}{1-x}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-1)(-y^{-2})=y^{-2}=\frac{1}{(1-x)^2}$$
この例の微分計算は単項式の微分公式さえ知っていれば難しくはありませんが、
「うっかり合成関数である事を見落とすと」符号を間違えてしまう例と言えます。
「マイナス1乗」の微分で1つマイナス符号がつきますが、この例では合成関数の部分に―xの項があるのでさらにもう1つマイナスがつき、結果はプラスになるわけです。
似たような関数でも、$$\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x} の場合だと$$ $$\frac{d}{dx}(1+x)=1ですから、$$ $$\frac{d}{dx}\frac{1}{1+x}=-(1+x)^{-2}=-\frac{1}{(1+x)^2}$$となり、こちらはマイナスの符号がつくわけです。符号の違いは、xの増加に対して関数が増加するか減少するかに対応しています。

平方根がかかっている形の関数も、「1/2乗」という事ですから合成関数の形になります。

平方根を含む合成関数:\(f(x)=\sqrt{1-x^2}\)

例として、$$f(x)=\sqrt{1-x^2}$$という関数の場合は、1-x2 = y として微分計算をします。
この関数は、図形で言うと原点を中心とした半径1の円の「第1象限」の部分を関数として表したものです。

  1. 前の例と同じように材料をまず作りますが、今回再び丁寧に、2つに分けます。
    まず、かんたんなほうからです。
    $$\frac{dy}{dx}=\frac{d}{dx}(1-x^2)=-2x$$
  2. 同じく材料として、「y の平方根」の形の関数の微分を計算します。
    これは単項式の微分公式で「a=1/2」の場合を使えばいいのですが、少し分かりにくいかもしれません。
    $$\frac{df}{dy}=\frac{d}{dy}\sqrt{y}=\frac{d}{dy}y^{\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}\frac{1}{\sqrt{y}}$$
  3. 2つの材料がそろえば、あとは掛け合わせて、yを x の関数の形に戻すだけです。
    $$\frac{d}{dx}\sqrt{1-x^2}=\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}=(-2x)\frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}=\frac{-x}{\sqrt{y}}=\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}$$

この例で用いている「平方根の微分」は慣れないと、とっつきにくい場合も多いかと思います。
ただ、このタイプの関数の微分は物理でもよく使いますので、知っておくと便利です。

物理や工学等の理論でこれらの関数の微積分を使用するには「これは合成関数の形だから・・」という説明は省略して結果だけ書く事が普通ですので、その意味でも計算の仕方に慣れておく事は大事かと思います。計算に慣れれば簡単な合成関数であれば「公式」としての形を特に暗記しようと努めなくても自然に計算できるようになります。

公式の証明

合成関数の微分公式の証明は次のようにします。

f(x) = f(y(x)) 、 y = y(x) である時、まず次のように考えます。

  • f(y(x))の導関数を、定義の極限を含む形で書きます。
  • fの中の変数部分y(x+h)について、y(x+h)=y(x+h)-y(x)+y(x)と変形します。


$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h))-f(y(x))}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{h} $$

次に、y(x+h)-y(x)という項を「掛けて割る」操作をします。これは値としては「1」を掛ける操作なので自由に行ってよいのです。

$$ \frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{h}\cdot \frac{y(x+h)-y(x)}{y(x+h)-y(x)}$$

$$=\lim_{h \to 0}\frac{f(y(x+h)-y(x)+y(x))-f(y(x))}{y(x+h)-y(x)}\cdot\frac{y(x+h)-y(x)}{h}$$

ここで、z=y(x+h)-y(x)とおきます。そのようにおかなくても証明できますが、見やすくするという意味です。zに置き換わる部分は3つあり、df/dxは次のような形になります。

$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h \to 0}\frac{f(z+y(x))-f(y(x))}{z}\cdot\frac{z}{h}$$

ここで、h→0のとき、limh→0z=limh→0(y(x+h)-y(x))=y(x)-y(x)
=0ですから、hとzの両方を0に近づけるという意味で 「limh,z→0 」と書く事ができます。このときに、

$$\lim_{h \to 0}\frac{z}{h}=\lim_{h \to 0}\frac{y(x+h)-y(x)}{h}=\frac{dy}{dx}$$

である事に注意し、y=y(x) を変数とみなしてyと書くと次のようになります。

$$\frac{d}{dx}f(x)=\lim_{h,z \to 0}\frac{f(z+y)-f(y)}{z}\cdot\frac{z}{h} =\frac{df}{dy}\frac{dy}{dx}【証明終り】$$

このように、1つの導関数を別の導関数の積で表せるという結果になるのです。

2項定理

2項定理(あるいは「2項展開」)とは、
(x+y)の形の式を展開した時にどのようになるかを表した式です。

指数の部分aは自然数である事も多いですが、一般の実数で同じ形に展開できます。(ただしaが自然数でない場合は有限の数の項で終わらず無限級数になる場合があります。)

指数が自然数の場合

まず、簡単なのはnを自然数として、(x+y)の形の式を展開した場合です。
ただし簡単とは言っても、任意の自然数nについてどのようなものになるかを知るには順列と組み合わせの知識が必要です。

n=2の場合、(x+y)=x+2xy+y であり、

n=3の場合、(x+y)=x+3xy+3xy+y です。

nが小さい場合は直接に計算もできますが、じつは公式として書けるというのが2項定理です。

2項定理(指数が自然数の時)

$$(x + y)^n=x^n+n\mathrm{C} _1x^{n-1}y+{}_n \mathrm{C} _2x^{n-2}y^2+{}_n \mathrm{C} _3x^{n-3}y^3+\cdots+{}_n \mathrm{C} _{n-1}xh^{n-1}+y^n$$ $$ =x^n +nx^{n-1}y+\frac{n(n-1)}{2}x^{n-2}y^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^{n-3}y^3+\cdots+nxy^{n-1}+y^n$$

順列組み合わせを学ぶと必ず出てくるものですが、びっくりマークが「!」ついている「3!」は「3の『階乗』」で、3!= 3・2・1 = 6 を表します。4 の階乗なら、4!=4・3・2・1 = 24。ここではあまり関係ないですが「ゼロの階乗」は0!= 1 と「定義」します。

このようになる理由自体は単純で、直接の式の展開を考えてみるのです。

x とy を何個選ぶかの「組み合わせ」を考えます。

2項定理と組み合わせ
3つの場所の中からxを1つ選ぶと、残り2つはyで決定するので係数は「組み合わせ」の数として決定します。

n=2やn=3の場合を考えてみると分かりやすいと思いますが、xyやxyの項の係数は結局どういう理由で決まるのかというと、式展開した時にそれらの項が「何個」あるかで決まっています。

n=3のときのxyの項については「3つの項の中からxを2個、yを1個選ぶ方法」の数に等しいのです。これは、組み合わせで表現できます。

少し分かりにくい場合は、3つの場所①②③を考えて、2つ選ぶという場合を考えてみてください。その2つの場所からxをぶという考え方でも組み合わせの総数になります。

3つの中から3個ともx、3個ともyを選べばxとyの場合であり、そのような組み合わせは1通りだけで実際それらの項の係数は1になります。

つまり、(x+y)のxn-mの項の係数がになるというのが2項定理の内容です。
組み合わせの性質により、n-mになります。3乗の展開式において係数が1、3,3、1の順で並ぶのはそのためです。

4乗の場合の展開式を計算してみると、=4、=6であるので、(x+y)=x+4xy+6x+4xy+y です。
これは、3乗の展開式に(x+y)をかけてみても同じ結果になります。

指数が実数の場合(一般2項定理)

上記の指数が自然数の場合の形の式と全く同じ形が、指数が実数一般の場合でも成立する事を特に指して一般2項定理(もしくは一般2項展開)と言います。

この場合はどうやって示すのかというと、結論を言うとマクローリン展開を使います。マクローリン展開とは微積分を利用した関数の無限級数展開の1つで、高校では教えない場合も多いので高校生であれば覚える必要はありません。(テイラー展開の特別な場合がマクローリン展開です。)

参考までに述べておくと一般2項定理の証明は次のようになります。

一般2項定理の証明

a が自然数でない時、\((1+x)^a\hspace{5pt}(|x|<1)\)に対して適用して、マクローリン展開を適用すると、 $$(1+x)^a=1+ax+\frac{a(a-1)}{2}x^2+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}x^3+\frac{a(a-1)(a-2)(a-3)}{4!}x^4+\cdots$$ r < s および s ≠ 0 の任意の実数 r と s の組に対して |x|<1 の範囲に x = r/s となる x が存在するので、 $$\left(1+\frac{r}{s}\right)^a=1+a\frac{r}{s}+\frac{a(a-1)}{2}\frac{r^2}{s^2}+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}\frac{r^3}{s^3}+\cdots$$ $$\left(1+\frac{r}{s}\right)^a=\left(\frac{s+r}{s}\right)^a=\frac{(s+r)^a}{s^a}に注意して、$$ 上式の両辺にs(これは有限の値)をかけます。 $$(s+r)^a=s^a+ars^{a-1}+\frac{a(a-1)}{2}r^2s^{a-2}+\frac{a(a-1)(a-2)}{3!}r^3s^{a-3}+\cdots$$ というわけで、a が自然数の場合とも合わせて、一般2項定理が成立する事を意味します。(証明終)
この証明でややこしくて面倒なのは、\((1+x)^a\)のマクローリン展開が可能な x の範囲が |x|<1 という形で限定されているため、最初からマクローリン展開で直接に一般2項定理を示そうとすると話がこじれるところでしょう。

冒頭でも少し触れましたが、このように形としては指数が自然数でもそうでなくても同じ関係式が成立しますが、指数が負の数などの場合では項が延々とずっと続き無限級数になります。(単なる式の展開が無限級数とか微積分との関連もあるというのは、少し意外に思う人もいるかもしれません。)

2項定理が成立するとすると、単項式の微分公式が (x)’ =nxa-1となる理由が分かりやすくなるという利点があります。(ただしaが実数の場合には、一般2項定理は微分公式の証明にはなりません。指数が実数の場合の単項式の微分公式の証明は、普通は対数関数の微分公式を利用します。)

和積・積和・倍角・半角の公式

三角関数の積和の公式、和積の公式、倍角の公式、半角の公式という一連の公式は互いに本質的に異なるものではなく、全て三角関数の加法定理から導出されるものです。
(英:倍角の公式 double-angle formula 半角の公式 half-angle formula)
(和積の公式と積和の公式は、英語では加法定理の一部だと捉えられる事も多いようです。)

★高校数学の中の位置付けだと、まずこれらの公式よりも大事なのは加法定理であると言えます。これらの公式は、じつは加法定理さえ覚えていれはその場で割と簡単に導出が可能であるからです。
これらの和積の公式等を暗記するにしても、まずは加法定理との形との対応から慣れていき、入試問題などを解いて練習しながら覚えていくのがよいと思います。

公式の内容

積和の公式、和積の公式、倍角の公式、半角の公式の内容を順に記すと次のようになります。これらは切り離された別々の公式ではなくて、本質的には加法定理を目的に応じて使いやすいように変形したものです。

積和の公式

次の正弦と余弦の「積」に関する4式を言います。【三角関数の積の形を和にする公式です。】$$\sin A \cos B=\frac{\sin (A+B)+\sin (A-B)}{2}$$ $$\cos A \sin B=\frac{\sin (A+B)-\sin (A-B)}{2}$$ $$\cos A \cos B =\frac{\cos (A+B)+\cos (A-B)}{2}$$ $$\sin A \sin B =-\frac{\cos (A+B)-\cos (A-B)}{2}$$

和積の公式

次の正弦と余弦に関する4式を言います。【三角関数の和や差の形を積にする公式です。】$$\sin C +\sin D =2\sin\left(\frac{C+D}{2}\right)\cos\left(\frac{C-D}{2}\right)$$ $$\sin C -\sin D =2\cos\left(\frac{C+D}{2}\right)\sin\left(\frac{C-D}{2}\right)$$ $$\cos C +\cos D =2\cos\left(\frac{C+D}{2}\right)\cos\left(\frac{C-D}{2}\right)$$ $$\cos C -\cos D =-2\sin\left(\frac{C+D}{2}\right)\sin\left(\frac{C-D}{2}\right)$$ 後述しますが、ここで使っているCやDは、加法定理や上記の積和の公式でのAとBを使ってC=A+B, D=A-Bとおいたものです。

倍角の公式

正弦と余弦に関する倍角の公式は次の2式です。 $$\sin 2A=2\sin A\cos A$$ $$\cos 2A=\cos ^2A-\sin ^2A$$ 余弦のほうはcos2A=2cosA-1=1-2sinAとも表せます。
正接の倍角の公式は tan2A=(sin2A)/(cos2A)で計算します。

半角の公式

正弦と余弦に関する半角の公式は次の2式です。 $$\cos A=\pm\sqrt{\frac{1+\cos 2A}{2}}$$ $$\sin A=\pm\sqrt{\frac{1-\cos 2A}{2}}$$ プラスマイナスの符号は角度に応じて適切なほうを選びます。
A=X/2といった置き換えをすると「半角」という事をより明確にもできます。
正接の半角の公式も正弦を余弦で割って計算できます。

ところで、これらの式の数を合計すると12個ありますね。これらを1つ1つ、別々の公式として暗記するのは大変です。そのため、もとになっている加法定理を変形したものであるという見方のほうが勧められます。

公式の導出①
積和の公式、和積の公式、倍角の公式などは、加法定理をもとにして作る公式です。

三角関数の加法定理については証明も含めて別途に詳しく述べていますが、正弦と余弦について結果だけ記すと次のようになります。

加法定理
  1. sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinB
  2. sin(A-B)=sinAcosB-cosAsinB
  3. cos(A+B)=cosAcosB-sinAsinB
  4. cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinB

これらを組み合わせると和積・積和の公式が導出され、角度の1つを置き換えると倍角の公式になります。
半角の公式については倍角の公式を変形して導出する事になります。

証明①:積和の公式

加法定理の4式のうち、正弦同士、余弦同士を見ると、2つの項は符号が違うだけで同じ形をしています。この事を使います。

まず、正弦についての加法定理の2式を加えてみましょう。

sin(A+B)+sin(A-B)=sinAcosB+cosAsinB+sinAcosB-cosAsinB=2sinAcosB

本質的にはこれだけでよくて、和積の公式も積和の公式も、本質的には本来はこの同じ形の関係式です。ただ、三角関数の積を和に直すか、和を積に直すかで少しだけ形を変えて「公式」としているだけです。まず、積和の公式は上記の式の両辺を単純に2で割って、積が和の形になるようにします。

$$\sin A \cos B=\frac{\sin (A+B)+\sin (A-B)}{2}$$

他の3式も、加法定理の2式を加える・2式の差をとる事で導出します。

$$\sin (A+B)-\sin (A-B)=2\cos A \sin B\Leftrightarrow\cos A \sin B=\frac{\sin (A+B)-\sin (A-B)}{2}$$

$$\cos (A+B)+\cos (A-B)=2\cos A \cos B\Leftrightarrow\cos A \cos B =\frac{\cos (A+B)+\cos (A-B)}{2}$$

$$\cos (A+B)-\cos (A-B)=-2\sin A \sin B\Leftrightarrow\sin A \sin B =-\frac{\cos (A+B)-\cos (A-B)}{2}$$

証明②:和積の公式

では、和の形を積に直している和積の公式は、どのように出すのでしょう。

じつは使う式は全く同じで「変数の置き換え」をするのです。

一般的には次のようにします。
まずA+B=C,A-B=Dのようにおき直します。
次にこの2式を加えると 2A=C+D ⇔ A=(C+D)/2
片方からもう片方を引くと2B=C-D ⇔ (C-D)/2 
このようになる事を使って、式を整理して公式としています。

$$\sin (A+B)+\sin (A-B)=2\sin A \cos B においてA=\frac{C+D}{2}, \hspace{5pt}B=\frac{C-D}{2}とおくと$$

$$\sin C +\sin D =2\sin\left(\frac{C+D}{2}\right)\cos\left(\frac{C-D}{2}\right)$$

加法定理の2式の和ではなく「差」をとると、正弦の差を積に直す形の公式が得られます。

$$\sin (A+B)-\sin (A-B)=2\cos A \sin B においてA=\frac{C+D}{2}, \hspace{5pt}B=\frac{C-D}{2}を代入します。$$

$$\sin C -\sin D =2\cos\left(\frac{C+D}{2}\right)\sin\left(\frac{C-D}{2}\right)$$

余弦のほうについても、加法定理の2式を加える・差をとる事で公式を導出します。まず余弦に関する和積の公式の和の形のほうのものは次のようになります。

$$\cos (A+B)+\cos (A-B)=2\cos A \cos B においてA=\frac{C+D}{2}, \hspace{5pt}B=\frac{C-D}{2}を代入します。$$

$$\cos C +\cos D =2\cos\left(\frac{C+D}{2}\right)\cos\left(\frac{C-D}{2}\right)$$

差の形のほうは次のようになります。

$$\cos (A+B)-\cos (A-B)=2\cos A \cos B においてA=\frac{C+D}{2}, \hspace{5pt}B=\frac{C-D}{2}を代入します。$$

$$\cos C -\cos D =-2\sin\left(\frac{C+D}{2}\right)\sin\left(\frac{C-D}{2}\right)$$

具体例:
例えば、唐突に sin75°+sin15°の値はいくらかと聞かれたらこの公式を使えば即座に答えは出るという事です。(こういう問いは理解度を試すための問題で、高校数学以外ではあまりやりません。)
(75°+15°)÷2=45° と (75°-15°)÷2=30° の正弦の値を使います。$$\sin 75°+\sin 15°=2(\sin 45°)(\cos 30°)=2\cdot \frac{\sqrt{2}}{2}\cdot\frac{\sqrt{3}}{2}=\frac{\sqrt{6}}{2}$$ 加法定理で75°=30°+45°などとして加法定理を使って計算しても結果は同じです。ただ、和積の公式を知っていると多少計算は速く済みます。

証明③:倍角と半角の公式

次に倍角の公式と半角の公式と呼ばれる式の導出方法です。
これらもまた別々のものではなく、本質的には同じ式であるものを変形したものです。

公式の導出②
余弦の半角の公式は余弦の倍角の公式から得ますが、正弦の半角の公式も同様に余弦の倍角の公式から導出されます。

まずは倍角の公式から見ましょう。

sin2A=2sinAcosA という式ですが、
じつはこれは、加法定理で2つの角度についてA=Bとしているだけなのです。
余弦のほうの倍角の公式も、やり方は同じです。

つまり次のようにします。
sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinB において A=Bとして sin2A=2sinAcosA
cos(A+B)=cosAcosB-sinAsinB において A=Bとして cos2A=cosA-sin

余弦のほうは、cosA+sinA=1を使ってcosA=2cosA-1、もしくはcosA=1-2sinAとも表せます。

次に半角の公式の導出です。

このページで紹介している公式のうち半角の公式についてだけは加法定理から直ちには出せず、余弦のほうの倍角の公式を変形する事になります。
(ただし倍角の公式が簡単に出るので、導出に手間はかからないはずです。)

cos2A=2cosA-1 ⇔ cosA=(cos2A+1)/2 から余弦の半角の公式、
cos2A=1-2sinA ⇔ sinA=(cos2A-1)/2 から正弦の半角の公式を得ます。
2乗がありますので、平方根を考える事になります。

$$\cos A=\pm\sqrt{\frac{1+\cos 2A}{2}}$$

$$\sin A=\pm\sqrt{\frac{1-\cos 2A}{2}}$$

平方根をとる時に一般の場合では符号が確定しませんが、具体的に例えばプラスの鋭角に対する「半分の角度」を考えるのであれば、余弦も正弦もプラスのはずなので、プラス符号のほうをとります。

このように倍角・半角の公式もまた、基本は本質的に加法定理によるものであるわけです。加法定理さえ覚えておけば、例えば倍角の公式は暗記しなくても即座に出てきますし、半角の公式で正弦・余弦の公式がともに余弦を使って表される事も理解できて覚えやすいはずなのです。

尚、角度Aに対する3倍の3Aを考えた3倍角の公式、4倍角の公式、・・なども一応存在します。
ただしこれらも同様に、いずれも加法定理から出せる関係式ですので一般的には暗記しなくてもよい場合も多いと思われる事項です。
参考までに、複素数に関するド・モアブルの定理を使うと、そういった三角関数の3倍角の公式などの形を比較的容易に知る事も可能です。

積和の公式や倍角の公式などは、大学入試で直接計算を問われる場合以外には、三角関数に関する積分の計算に使う事が比較的多いように思います。例えば、sinxcosxの原始関数(微分すると対象の関数となる関数)は微分の公式だけからは即座には分かりにくいので、倍角の公式を思い出してこれを (sin 2x)/2の形にして積分の計算をするといったものです。

また、物理学で2つの正弦波の重ね合わせをするときも、和積の公式を知っていると即座に結果を計算できるので便利です。

この手の三角関数の微積分での変形計算は大学入試でも問われるかもしれませんが、大学数学の微積分の一部でも重要である場合があります。ただし繰り返しになりますが、加法定理とこれらの公式の導出の方法の大筋さえ覚えておけば、もし公式を忘れてしまってもすぐにその場で計算できるようになります。

初等関数の仲間達【高校数学の関数】

初等関数(英:elementary function)とは、大雑把に言うと「高校までに教わる関数」の事です。要するに、具体的には高校数学で扱っている関数が該当するのです。

例えば2次関数や、三角関数、それと指数関数と対数関数などが該当します。

★もう少し詳しく言うと「初等関数」とは、いわゆる高校で教わる関数の「加減乗除の組み合わせ」およびそれらの「合成関数」「逆関数」を指すとされますが、これはあまり気にしなくてよいでしょう。(ただし高校数学でも微積分までやる時は気にしてください。合成関数の微分や、逆関数の微分に対して特定の公式が成立するからです。)

初等関数は「特殊関数」に対する語でもあります。特殊関数とは具体的にはガンマ関数、ベータ関数、ゼータ関数のように積分や極限によって定義される関数が該当し、初等関数では表せない事を1つの特徴とします。

高校で教わる関数まとめ

さて、初等関数とは高校数学での関数と言い換えてもそんなに間違いはないので、初等関数とはどういうものかを見ると高校で教わる関数というものが見えてきます。

高校で教わる初等関数
  1. 単項式と多項式:xで表される関数。1次関数、2次関数、3次関数など。
    反比例関数1/xや変数の平方根を考えた \(\sqrt{x}\) も含みます。
  2. 指数関数 実数等の「x乗」の形の関数。特に自然対数の底を使ったeが重要。
  3. 対数関数 ある数を何乗するとxになるかを表したもの。指数関数の逆関数でもある。
  4. 三角関数 直角三角形の辺の比をもとにした関数。代表的な周期関数としても使用。
  5. 逆三角関数 その名の通り三角関数の逆関数で、最近の高校ではあまり扱わない。微積分の理論においてむしろ使う事がある。

※他に例えば「双曲線関数」というものもありますが、これは指数関数の組み合わせで作る関数です。その他にも、初等関数を組み合わせて便宜上特別な名称をつける場合があります。ただし、高校数学ではそれらはさほど重要でない場合が多いです。

初等関数というものは、じつはまとめるとこれだけしかないのです。
もちろん、これらの組み合わせも初等関数であり、例えば1次関数と三角関数の組み合わせの xsin x なども該当します。また、高校ではこれらの関数の他に数列やベクトルや微積分や順列・確率等も教えますので、これら初等関数の一覧が高校数学の内容全てを網羅しているという意味ではありません。

しかしそれでも、高校で教わる具体的な関数というのは大別すると「じつはこれだけ」であるというのは少し意外であるという人もいるのではないでしょうか。高校数学でも、大学入試などでは確かに初見で時間内に正確に解くのはなかなか難しい「難問」や複雑な計算は存在しますが、それらも原則としてはじつは「基礎事項」の組み合わせなのです。

つまり学ぶべき基礎事項をしっかり整理して把握したうえで、それらを組み合わせて問題を解く練習をしてみる事が高校数学を得意にする鍵になります。

単項式と多項式

単項式とはxのa乗の形、つまりxの単独の形です。
これらが和や差で組み合わさったx+x+1などが多項式です。
のaを「指数」とも言います。単項式や多項式での指数の値は、高校数学では実数全体を取り得ます。

★高校数学および大学入試では、1次関数および2次関数について、図形上の性質と式による表現を組み合わせた出題がなされます。3次関数については微分によりグラフの形を考察するので、基本的には微積分での出題になります。
他方これらに対して、多項方程式を解くという作業は(中学校での)2次方程式の解法まででじゅうぶんです。3次方程式の解法や、4次方程式の解法は高校数学では原則として問われません。(ただしそれらを高校数学の範囲の知識で解く事は可能です。)

=1で、つまり定数関数は単項式に含めている形になります。

のaが負の値の時は分母に関数を持っていき反比例の形にしたものです。この時、x=0を定義域(変数xの値の範囲の事)から必ず除外して考えます。

$$x^{-1}=\frac{1}{x},\hspace{5pt}x^{-2}=\frac{1}{x^2}$$

のaが分数になる時は、自然数nを使って1/nの形になる時は「n乗根」(の正の値)を表します。この場合には、aがm/nのような形の時は、「xのm乗とxのn乗根の掛け算」であると考えます。

$$x^{\frac{1}{2}}=\sqrt{x},\hspace{10pt}x^{\frac{1}{3}}=^3\sqrt{x}$$

また、高校数学ではあまり気にする必要はないですがxのaは無理数でもよくて、じつはさらに別途にaが複素数の場合も定義可能です。

こうしてみるとxの「何乗」の部分が自然数、負の数、有理数・・の場合があって複雑に見えるかもしれませんが、重要なのはそれらをxという形で統一的な演算が可能であるという事です。

指数関数

指数関数とは、2次関数や3次関数などとは異なり、「2のx乗」2などの関数です。基本的な考え方はxの場合と同じで、指数関数2などの変数xの定義域は実数全体とする事ができます。

指数関数のグラフの形は、関数自体にマイナス符号がついていなければ正の値を常にとるという特徴があります。これは単項式や多項式で表される関数との大きな違いです。具体的な値を代入してみたりグラフに描いてみたりすると分かりやすいでしょう。

指数関数と対数関数
指数関数のy軸との交点は(0,1)であり、対数関数はx軸と(1,0)で交わります。

指数関数で重要なのは、e=2.718・・という無理数のx乗、eです。ただし、これが重要なのは微積分においてなので、もしも高校数学の範囲で微積分を除いて考えるのであればあまり気にしなくてよい事です。

対数関数

対数関数とは、指数関数の逆関数であり、logxという記号で(正の数)aを「何乗するとxになるか」という値を関数とするものです。ここでのaの事を対数の「底」と言います。この時、x=aであれば logx=1, x=aであればlogx=2です。

logxにおいて、a=10の時を特に常用対数と言い、a=e=2.718・・の時を特に自然対数と言います。高校数学ではあまり気にしなくてよいのですが、常用対数を log x、自然対数を ln x(こちらをlog xとする人も)で記す場合があります。対数関数の場合、関数の値自体は負の数でもあり得ますが、変数の範囲は「正の数」という点がひとつ注意点です。

対数関数も指数関数と同じく、高校数学ではどちらかというと微積分との関連のほうが重要になってきます。

三角関数

三角関数は、弧度法で表した三角形の角度を変数とした辺の比(三角比)を基本とする関数で、正弦関数(sin x)、余弦関数(cos x)、正接関数(tan x)の3つが基本です。角度を0から直角までに限定した場合して平面図形に使うなどには特に三角比と呼ぶ場合もあります。

必要に応じてこれらの逆数(例えば余接関数 cot x=1/(tanx))を考える事もありますが、高校数学では重要ではないでしょう。まず初めに学習すべき事を絞る事も大事である場合もあります。高校数学での基本は sin, cos, tan の3つだと思ってよいです。

三角関数は基本的には「角度」を変数とするのですが、プラスマイナスの値と対称性を考えて三角関数の変数の範囲は実数全体とします。(tan xだけは\(\pi\)/2 の奇数倍を定義域から除きます。)

三角関数
三角関数は三角比を基本としながら、定義域を実数全体に拡張した周期関数です。ただし正接関数については、値が無限大になってしまう「90°」の部分を定義域から除きます。

前述の通り、逆三角関数については最近の高校ではほとんど問われないので、原則として気にする必要はありません。大学数学で扱う微積分の特定の計算で、逆三角関数を使う事が有用である場合があります。

以上、初等関数の一覧と重要な点を列挙しましたが、①:まずは学習すべき内容を整理し全体像をつかむ → ②:各関数についての細かい規定や計算方法を知る → ③:それらを組み合わせた問題(主に大学入試問題)を解く練習を積んでみる という手順が高校数学を得意にする勉強のやり方の1つです。

球に関する公式

球の表面積と体積の公式はセットになっています。微分と積分の関係で結ばれています。
微分の公式積分の理論については別途に詳しくまとめています。

直接的な問いとして出題されるのは高校数学の範囲ですが、球の表面積や体積を種々の理論で「使う」事は大学数学と物理学でも引き続き行われます。特に物理学で円や球がモデルとしてよく使われますが、これは単純に、半径が等しいと性質が理論を組み立てる際に非常に便利であるからです。

公式

球の表面積と体積の公式は次のようになります。

公式:球の表面積と体積

$$S=4\pi r^2【球の表面積】$$ $$V=\frac{4}{3}\pi r^3【球の体積】$$ ★覚え方としては、面積は2乗、体積は3乗という点は四角形と立方体の関係と同じと考える事ができます。比例係数については微分・積分の関係にあり、円が関わりますから円周率もくっついてくるというわけです。

公式の導出については、じつは
円周の長さ → 円の面積 → 球の体積 → 球の表面積 という順番です。
しかも、基本的には微分と積分の関係で結ばれているのです。ただし微積分による導出では、順番としては体積が先でその次が表面積という事になります。

体積と表面積

表面積公式の導出

球の体積のほうの公式の「4/3」という係数が不可解で覚えにくいという人もいるかもしれませんが、微積分を考えてみてください。球の体積公式をrで微分すると球の表面積になるのです。

これはそう考えると単に覚えやすいという事ではなくて、数学の理論としても本質的な事なのです。

$$rで微分する:\frac{d}{dr}\left(\frac{4}{3}\pi r^3\right)=4\pi r^2$$

このように、初歩的な微分の公式で体積と表面積の関係が結ばれています。

逆に表面積の公式をrで積分すれば体積の公式になりますが、これはより正確には「0からrまで」の定積分になります。しかし0の部分は代入すると消えるので、公式を覚えるという意味では結果的に考えなくてもよい事になります。

面積と体積の公式
円と球についてのこれらの公式は、rに関する微積分の関係で結ばれています。

尚、積分を使えば最初に円の「面積」をいきなり出す事も計算上は可能ですが、この計算ではじつは三角関数への置換積分を利用します。そこで三角関数の微分公式を使うわけですが、肝心のこの三角関数の微分公式は、円周率が極限値として存在する事を前提としています。
そのため、この積分による面積計算は円周率という値の存在の「証明」としては、通常は使いません。ただし「理解」する方法としては有用です。また円周率の正確な数値3.14159265・・を直接計算するための手法としては、じつは周の長さよりも円の面積のほうを利用する事が多いのです。

体積公式の導出

しかし、球の体積と表面積が微積分の関係にあるとすれば、平面の円の面積と球の体積はどうつながるのか?という話になります。

微積分の関係である事は同じです。ただし、この場合は [-r,r] の積分区間での定積分になります。また、積分の設定をする際に1つだけ注意が必要です。そのため、定積分の結果である球の体積のほうから円の面積を推測するのは少々難しいでしょう。

基本的には、「断面の面積が分かっている立体」の体積を計算する要領で定積分を行って導出するのです。
直交座標上に立体をおいて、x軸に垂直な断面積をxで定積分します。

体積の計算

計算を簡単にするため、球の中心を原点におきます。すると、x軸に垂直な部分の断面の円の半径が分かれば、円の面積を-rから+rまで積分すれば球の体積となるのです。

その時に、xy平面の断面で一度考える必要があります。
注意点は、この時の球の、各x座標に対する断面積(円になります)と半径の考え方です。
これは、球をちょうど半分に切った時の円に対するx+y=rの関係式を踏まえて、
x座標における「yの値の絶対値を半径とする」円の面積を断面積として考える必要があるのです。この設定を間違えると正しく計算されないので注意が必要です。

すると、円の式におけるyの値という事は「平方根が出てきてしまうではないか!」という事になり面倒に思えるかもしれませんが、円の面積はその2乗を考えればよいのですから、y=r-xだけ分かればじゅうぶんです。

定積分の計算は次のようにします。計算は難しくありませんが、ここでの積分変数はxであり、rは定数扱いという点に少し気を付ける必要があります。

$$\int_{-r}^r\pi y^2dx=\int_{-r}^r\pi (r^2-x^2)dx=\left[r^2x-\frac{1}{3}\pi x^3\right]_{-r}^r$$

$$=r^3-\frac{1}{3}\pi r^3-\left(-r^3-\frac{-r^3}{3}\pi\right)=2r^3-\frac{2}{3}\pi r^3=\frac{4}{3}\pi r^3$$

途中の符号が入り乱れていて分かりにくい場合は、0から+rまで定積分して2倍しても同じです。

$$2\int_0^r\pi y^2dx=2\int_0^r\pi (r^2-x^2)dx=2\left[r^2x-\frac{1}{3}\pi x^3\right]_0^r$$

$$=2\left(r^3-\frac{1}{3}\pi r^3\right)=2\cdot\frac{2}{3}\pi r^3=\frac{4}{3}\pi r^3$$

この計算の仕方は球だけではなくて他の任意の立体の体積でも同じ事です。(もちろん、手計算でやる場合は原始関数を計算で出せるならの話ですが。)

物理学や工学の理論で球の表面積や体積を考える時には、特定の力等の大きさの関係と組み合わせて理論が組み立てられます。特に、距離の逆2乗に比例する(2乗に反比例する)関数と表面積の組み合わせは理論上重要な役目を果たす事になります。