弧度法とラジアン

弧度法とは、半径1の円の円弧の長さ(扇形の周部分)によって角度を表す方法を言います。
基本的には、円周率の有理数倍によって使って表す事が多いです。

弧度法で表した角度には単位をつけない事も多いですが、「ラジアン」[rad]という単位を記す事もあります。(英:radian)

定義・考え方と重要ポイント

弧度法は次のように定義され、度数法との換算の仕方も合わせて記すと次のようになります。

弧度法とラジアン

半径1の円の円弧の長さが Y 、その円弧を得る扇形の中心角の大きさが度数法で X ° である時、
円弧の長さ Y を角度そのものとして扱う方法を弧度法と言い、
特に単位をつける場合には rad (ラジアン)を使う。
Y [rad] と X [°]の換算については次の関係が成立する:
$$Y=\frac{\pi X}{180}=\frac{2\pi X}{360}$$

この角度の表し方の詳しい意味と、換算の式の出し方についての易しい説明を以下にしていきます。

円周の長さは直径と円周率の積です。この時に半径(および直径)が一定であれば円周の長さも一定です。

円周と半径の関係 円の半径をrとすれば円周の長さは2\(\pi\)r
(円周の長さ)=(直径)×(円周率)という事です。

まず、簡単な例として「半円」を考えてみましょう。これの「弧」の長さを考えます。
当然ながら、半円の弧の長さは「全体の円周の長さの半分」です。
1/3円であれば弧の長さも1/3です。1/n円であれば弧の長さは全体の1/nです。

ところで一般の扇形の面積や円弧部分の周の長さを考える時は、例えば中心角が60°の扇形は、
全体に対して60/360=1/6 の割合の面積や弧の長さを持つと判定するのでした。
全体を360°として、60°という部分を考えています。
これは、角度が分かっているので円弧の長さも分かるというわけです。

そこで、弧度法の基本的な考え方は次のようなものです。

「逆に、『弧の長さ』が仮に分かってるとすれば『角度』も確定するではないか?」

半径1の円の60°の扇形の弧の長さは\(\pi\)/3ですが、言い換えると弧の長さが\(\pi\)/3であれば
角度も「全体を6分割する」大きさである事は確定しているというわけです。

度数法の場合は360°に対して何度を比較しますが、弧度法では半径1の円の全体の円周の長さ2\(\pi\)に対して、扇形の弧の長さを比較するのです。

この観点では角度を「全体の何割なのか」という視点だけで考えているとも言えます。

考え方の説明図

換算の式の考え方と導出

弧度法と度数法の換算については、冒頭で記しましたように一応の「公式」はありますが、
基本的には部分が全体の何割かという事を考えているだけなのです。

例えば直角であれば全体の1/4ですから度数法であれば90°、
弧度法なら2\(\pi\)の1/4の\(\pi\)/2であるというわけです。
360/4=90、2\(\pi\)/4=\(\pi\)/2という計算です。
(あるいは半円の半分と考えて180/2、\(\pi\)÷2)

そもそも度数法にしても360という数字について、数学的に絶対にこの値でないと支障があるのかというとそうではありません。例えば極端な話、倍の数字の720を全体としてもよいのです。角度を測るツールとしては何でもよいわけです。その事に気付くと、弧度法というのは全然難しいものではないのです。

とすると、弧度法と度数法の換算も、全体の何割かを把握している事が本質であるわけです。この時、必要に応じて直角や2直角の何割かという事を考えたほうが計算は早い場合はあります。

例えば30°であれば、2直角180°の1/6ですから、弧度法だと半径1の半円の弧の1/6、つまり\(\pi\)/6に等しい角度という事です。

同じく45°なら2直角の1/4なので、弧度法だと\(\pi\)/4です。
前述の90°なら直角ですから弧度法では\(\pi\)/2と直ちに考える事もできます。

120°のような場合は、2直角の2/3ですから(60°の2倍)、弧度法では2\(\pi\)/3なのです。

このように考えると、じつに簡単なものである事に気付くと思います。

37°のような半端な角度の場合も考え方は同じなのです。要するに、全体の何割かを考えればよいのです。90°未満の角度の場合は180°に対する割合を考えたほうが簡単でしょう。
すると、この角度を弧度法で表すなら \(\pi\) の37/180倍です。$$37°は、弧度法では\pi\cdot\frac{37}{180}=\frac{37\pi}{180}になります。$$

これが、弧度法と度数法の換算の式の意味です。改めて記すと次のようになります。

弧度法と度数法の換算の公式 度数法で X ° の角度を弧度法の Y [rad] で表す場合、関係は次式になります。
$$Y=\pi\cdot \frac{X}{180}=\frac{\pi X}{180} $$ $$もちろんこれは Y=\frac{2\pi X}{360}としても同じです。$$ 逆に弧度法で表された角度 Y [rad] によって度数法の X ° は次のように表されます。
$$X=180\cdot \frac{Y}{\pi}=\frac{180Y}{\pi}$$ $$これはX=360\cdot \frac{Y}{2\pi}=\frac{360Y}{2\pi}としても同じです。$$
角度の換算の式の説明図

この考え方が分かっていると、仮に次のような意地の悪い問題が大学入試(センター試験等)で仮に問われたとしても迷わないでしょう。

■問い:「弧度法の1ラジアンを度数法で表すならいくらか。」

そもそも円周率は無理数なのだから弧度法の角度をわざわざ有理数である「1」で表す意味があまり無いとも言えるのですが、この手の問題では理解度を試すためにわざと問うているという事でしょう。

1ラジアンですから、2直角に対する割合は1/\(\pi\)です。
したがって解答は、180×(1/\(\pi\))=180÷\(\pi\) ≒ 57.3 [°] です。【解答】

考え方としては\(\pi\)/4ラジアンが2直角\(\pi\)に対する1/4、
あるいは直角の半分だから「45°」と判定する事と同じなのです。

一般の円の円弧の長さ・扇形の面積との関係

さて、弧度法で表した角度は「半径1」の円の円弧の長さです。

あくまで半径1の場合ですから、別の半径であれば円周の長さも面積も変わります。

しかし、円周の長さは「半径(あるいは直径)に比例する」のでしたから、
仮に弧度法で表された角度が分かっているのであれば、一般の扇形の円弧の長さは「弧度法の角度[rad]を半径倍したもの」という事になります。

これは、「半径Rの扇形の円弧の長さ」=「『半径1の扇形の円弧の長さ』× R」という簡単な関係なのです。

この意味において、次の公式が成立します。

一般の扇形の円弧の長さ 半径 R の扇形の中心角について弧度法での角度 θ [rad] が分かっている時、
円弧の長さ L は次のように表されます。
$$L=R\theta$$ ★基本的には角度 θ [rad] は、例えば\(\pi\)/4のような形で判明しているという事に注意しましょう。
つまり、決して「円周率が消えている」という事ではありません。
弧度法での角度があらかじめ分かっているとは、基本的には、あくまで全体に対する何割の扇形であるかが判明しているという意味です。確かに仮に弧度法の角度を無理やり有理数で表せば見かけ上円弧の長さから円周率が消えますが、これは円周全体に占める比を有理数で表せないという「長さ」になってしまうのです。

面積についても考え方は同様です。

半径1の円の面積は1×1×\(\pi\)=\(\pi\)で、
弧度法の角度が θ であれば θ/(2\(\pi\)) の割合が扇形の面積です。

$$半径1の扇形の面積:\pi\cdot\frac{\theta}{2\pi}=\frac{\theta}{2}$$

ここで1/2というのが出てくるのは、円周の長さは直径と円周率との積、円の面積は半径の2乗と円周率との積で、弧度法の角度は円周と円弧の関係を表すものなので直径と半径のずれがあるためです。

扇形の半径がRに変わった時には面積はさらにR倍になります。

その意味において次の関係式が成立します。

一般の扇形の面積 半径 R の扇形の中心角について弧度法での角度 θ [rad] が分かっている時、
扇形の面積 S は次のように表されます。
$$S=\frac{R^2\theta}{2}$$ ★ここで再び、円周率は基本的には弧度法で表された角度に含まれているのです。
分母の2がつくのかつかないのか分からなくなった時には、半径1の2\(\pi\) [rad] を考えてみるとよいでしょう。この時の扇形は円そのものですから、面積は\(\pi\)です。上記の式に代入しても同じ結果になる事が分かります。

三角関数の変数としての角度は弧度法で表すのが基本です。特に三角関数の微積分を考える時には、度数法を使うと問題が発生するので必ず弧度法の角度を変数として扱います。

一般角の定義と使い方

三角関数とは、図形上の三角比である正弦、余弦、正接の角度部分を拡張して定義域を実数全体に広げた正弦関数余弦関数正接関数を言います。(正接関数は \(\pi\)/2の奇数倍を定義域から除きます。 )
三角関数の変数は「実数値」であり、度数法ではなく弧度法で表します。(※度数法のまま三角関数を扱っても支障はない場合も多くあります。ただし微積分を扱う時には特に問題が発生するので注意も必要です。)

表記方法自体は三角比の場合と同じで、変数部分の記号としてxを使う事が多いです。
正弦関数 y=sinx 余弦関数 y=cosx 正接関数 y=tanx

三角関数は、代表的な周期関数の1つでもあります。これは、同じ関数の値が等間隔の変数ごとに繰り返し現れるというもので、「1回転」\(2\pi\) ごとの周期性を示します。(比例係数を使う事で、その他の値の周期とする事もできます。)

指数関数や対数関数と同じく、高校で扱われる重要な関数である初等関数の1つです。

三角比との違いは、数学的に厳密な違いが定義されているわけではありませんが、三角比というのはどちらかというと平面の図形に対して0°~180°の範囲で適用するものであって、三角関数は図形問題というよりは周期関数としての性質を強調して使う事が多いです。

定義域の拡張・・角度を拡張する

三角関数の考え方は大体において三角比と同じ考え方を適用できますが、正弦関数等の変数は実数全体です。この場合、単純な直角三角形の角度としては変になる場合はどのように解釈するのか?を説明します。
基本となるのは正弦関数と余弦関数なので、まずはそれらについて見ていきます。
(正接関数についてはそれらの割り算で表されます。)

「0度」と負の角度 ■ \(\pi\)/2【90°】以上の角度 ■ 2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】 

「0度」と負の角度

直角三角形の直角以外の部分の角度は、「もちろん0°より大きく90°より小さい範囲」です。
弧度法だと 0 < x < \(\pi\)/2です。そうでないと三角形ができないためです。
しかし三角関数では、この変数の範囲(定義域)を拡張していきます。

まず変数が0以下の場合はどうするのでしょうか?結論を言うと次のようにします。

変数が0以下の場合の三角関数
  1. sin 0 = 0, sin(-x)=-sinx と定義する。
  2. cos 0 = 1, cos(-x)= cosx と定義する。
  3. tan 0 = 0, tan(-x)=-tanx となる。【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】

ここでx>0であれば-xは負の値で、x<0であれば-xは正の値です。
後述しますがどちらの場合でも統一的にこれらの関係式を適用できます。

これは図で言うと、三角形を底辺に関して対照的にひっくり返したものを考えて「負の角度」としています。角度の方向にも向きを付けて、反時計回りをプラス、時計回りにはマイナスの符号をつけるという意味です。
そのうえで正弦については「下向き」の高さ、余弦については変わらず同じ値と決めています。

負の角度

まずx=0の場合には次のようにしていす。

角度0の場合の定義

x=0とした時の y=sin x と y=cosx の値の定義です。

  • 正弦関数の場合:sin 0 =0 と定義する。
  • 余弦関数の場合:cos 0 =1 と定義する。

これらは「定義」であるとしか言いようがない面もありますが、「なめらかな形の連続関数」になるような定義としての1つの要請であるとも言えるのです。
三角比の範囲においても、角度を0に近づけると正弦の値は0に近づき、余弦の値は1に近づいていくのでx=0において sin 0 = 0, cos 0 = 1 であれば、その「点」において関数は「連続」になるという事です。さらにそこから、なめらかな形で負の部分に続いていく事も考えます。(微分可能になるように。)

また、周期関数になるという要請も加えると、定義の仕方も段々と限定されてくるわけです。意味としては、三角関数における「角度」の拡張の定義にはそのような意味があると捉える事ができるのです。
直交座標上にxを変数とした三角関数のグラフを描くと、ちょうどx=0で正弦関数は原点に対して点対称、余弦関数はy軸に関して軸対称の形になります。

負の角度

ここでは表記としてはxがプラス符号であるとして、それにマイナスをつけた「-x」を負の数として扱っています。

  • 正弦関数の場合:sin(-x)= -sinx【0から始まり-1に向けて関数の値は減少していく】
  • 余弦関数の場合:cos(-x)= cosx【1から始まり0に向けて関数の値は減少していく】

$$例えば\hspace{10pt}\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\frac{\pi}{4}=-\frac{1}{\sqrt{2}},\hspace{10pt}\cos\left(-\frac{\pi}{4}\right)=\cos\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}$$ 正弦の場合と余弦の場合ともに、符号の関係にだけ注意すればよいという事になります。
値の絶対値については変数がプラスの場合のものをそのまま流用するという定義であるからです。
正弦の場合「0から減少していく」、余弦の場合「(最大値)1から減少していく」事を考えると理解はしやすいと思います。

尚、ここでは sin(-x)= -sinx において「xは正の値」を考えて変数が負の場合の説明をしましたが、
そこでx自体に「負の値」・・例えば-\(\pi\)/4を入れたとすると$$\sin\left\{-\left(-\frac{\pi}{4}\right)\right\}=\sin\frac{\pi}{4}=-\left(-\sin\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)$$となり、式の整合性はとれています。余弦関数の場合も同様に整合性がとれます。つまり一般的に、変数部分にマイナス符号がついている時には、上記の定義式の関係を使って機械的に計算してもよいという事です。

\(\pi\)/2【90°】以上の角度

では、変数がプラスの値の時に戻って、変数が\(\pi\)/2以上の場合はどうするのでしょう?
通常の図形問題でも90°以上の角度は考えますが、直角三角形の直角にはそのままでは適用できません。

三角関数において、定義域を\(\pi\)/2以上に拡張する場合は次のようにします。

変数が\(\pi\)/2以上の場合の三角関数
  1. sin(\(\pi\)/2) = 1, sin(x+\(\pi\)/2)=cosx と定義する。
    【sin\(\pi\)=0, sin(3\(\pi\)/2)=-1, sin 2\(\pi\)=0 になる。】
  2. cos(\(\pi\)/2) = 0, cos(x+\(\pi\)/2)=-sinx と定義する。
    【cos\(\pi\)=-1, cos(3\(\pi\)/2)=0, cos 2\(\pi\)=1 になる。】
  3. tan \(\pi\) = 0, tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) となる。
    【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】
    mを整数として tan(\(\pi\)/2+m)は、定義しない!【無限大を避けるためです。】

ここで正弦と余弦についてはxは実数のうち何の値でもよく、負の数や直角を超える値を入れたとしても整合性がとれた定義式になっています。
正接のほうについては、余弦関数の値がゼロになる変数の値は全て「穴」になるような形で定義域から除外する形で考えるという事です。ですから例えば tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) においてはxの値として\(\pi\)の整数倍の時は除外する、という具合に考えます。

また、正弦関数と余弦関数については次式も成立し、これを使うと計算上便利です。

公式
  1. sin(x+\(\pi\))=-sinx, sin(\(\pi\)-x)=sinx
  2. cos(x+\(\pi\))= -cosx, cos(\(\pi\)-x)=-cosx

これらは式としては統一的にまとめる事もできますが、図形的な意味としては別々に捉える事も1つの方法として便利である場合があります。正接関数についても同様の式を作る事は可能です。

さて、この定義を見ると角度が負の場合と比較して、かなり複雑であるようにも見えます。
この場合もやはり式だけで考えるのではなく、図形的に考えたものを式で表現するなら上記のようになると理解すべきでしょう。

変数が直角を考える場合には、今度は直角三角形の高さ部分の辺に関して対照的になるようにひっくり返すのです。この場合も、関数の値の絶対値は直角未満の場合の三角比の値を流用して符号だけをいじるという定義の仕方をします。

90°を超えて180°未満の「鈍角」の範囲における三角関数の具体的な値を調べる時には、鈍角を「180°-鋭角」と考えるか、「90°+鋭角」と考えるかの2通りの計算で便利なほうを使うのが普通です。

鈍角の場合①
鈍角を「180°-鋭角」と捉える場合の三角関数の値の計算方法です。
鈍角の場合②
鈍角を「鋭角+90°」と捉えた場合の三角関数の値の計算方法です。こちらは、通常の三角比の場合に成立する公式を利用して式変形で考える事も可能です。

尚、式として考える場合、「90°+鋭角」の鋭角部分をマイナスにしてさらに90°加算する事で
「180°-鋭角」の三角関数の値の式を導出する事も一応可能です。次のようにします。

$$\sin\left(\pi-\theta\right)=\sin\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin(-\theta)=\sin\theta$$

$$\cos\left(\pi-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\cos(-\theta)=-\cos\theta$$

変数の値が2直角、つまり\(\pi\)の時には正弦関数の値は0、余弦関数の値は-1です。これは定義として捉えてもよいですし、上記の sin(x+\(\pi\))=-sinxから導出するという形でも同じです。これらも、意味としては関数の増減との対応・周期性・なめらかな連続性を満たす要件として考える事ができます。

さらに変数が\(\pi\)を超える場合には負の角度の時のように底辺に関して対照的にひっくり返します。この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式を使うと把握しやすいでしょう。図を見ながら、図形的に捉えましょう。

点対称になる場合と周期性
角度が2直角を超える場合には、座標上で言う第3・第4象限に三角形を配置する形になります。この時には原点に対して点対称になる三角形を考えて符号を反転するだけと考えると計算が簡単な場合が多いでしょう。

さらに角度の値を大きくすると、今度は再び高さ部分に関してひっくり返り、座標軸上で言うと第4象限の位置に配置された三角形を考える事になります。

2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】

角度を増やして、4直角、つまり360°に達し、それを超えた場合はどうなるでしょう。

この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式の変数にもう一度 \(\pi\) を加えるのです。

すると、再度符号が反転して sin(x+2\(\pi\))=sinx, cos(x+\(\pi\))= cosx となり、
もとの sinx および cosxになる事を導出できます。

これが三角関数の周期性と呼ばれる性質で、以降、角度をどれだけ増やしても延々と周期的に値を繰り返すという事です。これは正接関数についても成立します。

三角関数の周期性 次のように、三角関数は2\(\pi\)ごとに同じ値を繰り返します。
  1. sin(x+2\(\pi\))= sinx
  2. cos(x+2\(\pi\))= cosx
  3. tan(x+2\(\pi\))= tanx

この周期性は、マイナスの向きに角度を減らした場合にも適用できます。つまりマイナス方向にもプラス方向にも、実数全体にわたって2\(\pi\)の周期性があるという事です。

sin(x+2\(\pi\))=sinxの関係から、sin(2\(\pi\)-x)=sin(-x) となり、余弦関数の場合も同様です。これは図形的に見ると、同一の頂点に相当する部分に至る角度を反時計回り(プラス)で測っても時計回り(マイナス)で測っても三角関数の値は同じである事を意味します。

尚、sin2xのような関数を考える場合には、周期性は sin(2x+2\(\pi\))=sin2xのようになります。
するとこの場合には、xに着目するとsin(2x+2\(\pi\))=sin2(x+\(\pi\))のようになりますから、xの変化としては周期は\(\pi\)ごとに発生する事になるのです。xは\(\pi\)だけ変化すれば三角関数の変数全体では2\(\pi\)の変化になるので、それだけで周期が1サイクルしてしまうという事です。
グラフ上では通常の正弦関数よりも「密」になった波の形になります。

単位円による定義方法

さて、以上の三角関数の定義と性質を見ると、式だけで覚えるのは大変複雑で、図形的に見るとそれほど難しい理屈ではない事が分かると思います。

上記の図でもところどころに描いていますが、じつは三角関数を把握するには円を描くと便利です。(三角関数の別名を「円関数」とも言います。)

この円は、原点を中心とした半径を1にした円で、単位円と呼ばれます。

すると、斜辺の長さに相当する「半径」が1ですから、角度の取り方は前述の方法と同じであるとすると、
円周上の点のx座標は余弦関数の値、y座標は正弦関数の値になるのです。

この単位円による方法でも適切に三角関数の値を出せるので、これを定義にしてしまうやり方もあります。

単位円による三角関数の定義

直交座標上の原点を中心とする半径1の円周上の点(X,Y)を考えて、
(1,0)から測った円周の長さ(弧度法の角度に等しい)をxとします。この時、

  1. X=cosx すなわち余弦関数と定義する
  2. Y=sinx すなわち正弦関数と定義する
  3. 正接関数は tanx=(sinx)/(cosx) で定義する

各三角関数には2\(\pi\)の周期性があり、
角度は反時計回りをプラス符号、時計回りをマイナス符号として区別するものとします。

単純な覚えやすさと使いやすさに関しては、この単位円による方法は非常に優れています。

欠点があるとすれば、三角比の拡張として唐突に「円」を持ち出すと、やはり少しばかり飛躍を感じさせるのも事実だと思います。最初から単位円による定義で教え込まれてしまうと結局「わけもわからずに」暗記するだけ・・という事になりがちです。

単位円による定義
単位円を使った三角関数の定義は、覚え方や計算の便宜としては非常に優れています。

重要な公式まとめ

三角関数の公式としては、簡単に4つのグループに分けると次のようなものがあります。

  1. 三角比についても適用できる公式
  2. 定義域を拡張した三角関数に特有なもの(例えば周期性)
  3. 正弦定理と余弦定理
  4. 加法定理と、それから派生する公式

まず、三角比についても成立するいくつかの公式は、三角関数でも成立します。これは三角比範囲の角度でのみ成立するのではなく、負の角度や直角以上の角度を代入してもきちんと成立するところが便利です。

三角関数の公式①

次式は三角比について成立しますが、
定義域を実数全体とする三角関数においても成立します。 $$\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}$$ $$\cos^2 x+\sin^2 x=1$$ $$\cos \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\cos x$$ $$\tan \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\frac{1}{\tan x}$$ 角度についてはここでは弧度法で記しましたが、単純な図形問題にこれらを適用する際には角度を度数法で記しても大きな問題は普通は起きません。

これらの証明は三角比の説明のところで詳しく記しています。

周期性も含めて、三角関数特有の公式・性質も整理しておきましょう。
前述の通り、式だけで覚えるのではなく図形的に理解して覚えるとよいと思います。

三角関数の公式②

これらは特に三角関数において成立する関係式です。 $$\cos \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=-\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=\cos x$$ $$\sin(-x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(-x)=\cos x$$ $$\sin(\pi +x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi +x)=-\cos x$$ $$\sin(\pi -x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi -x)=-\cos x$$ $$\sin(2\pi +x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(2\pi +x)=\cos x$$ 最後の関係式については周期性と呼ばれる事は前述した通りです。
正接関数については、全てtanx=(sinx)/(cosx) の関係から公式を作る事ができます。

図形的に三角形に対して成立する公式で三角関数を使うものには、正弦定理余弦定理というものがあります。(余弦定理のほうがどちらかというと重要かと思います。)それらは基本的には三角比に対して成立しますが、角度として鈍角や直角を適用する場合には三角関数の定義を使用すると図形的な対応もうまくとれるという具合になります。図形的な対応さえきちんとつけるなら、余弦定理に関しては全実数の範囲の角度を適用しても成立します。

三角関数の公式③ 図形的な定理
  1. 正弦定理:三角形の辺a、b、cの対角の大きさをそれぞれA,B、C、三角形に外接する円の半径をRとすると
    a/sinA=b/sinB=c/sinC=2R
  2. 余弦定理:三角形の辺a、b、cと、辺aの対角の大きさAについて次の関係が成立する。
    a=b+c-2bccosA
    【特にAが直角の時は三平方の定理そのもの】

また、三角関数の加法定理というものがあって、これは複素数の理論の一部を構成しており、微積分のほうで計算を進めるために使う事もあるので三角関数の公式の中では重要な部類に入ります。
また、この加法定理から派生するいくつかの小さなグループの公式として積和の公式・和積の公式・倍角の公式と呼ばれるものもあります。それらは本質的にはもともと加法定理そのもので、少し式変形をして形を変えたものになります。

三角関数の公式④ 加法定理

2つの角度の大きさ A, B に関して次式が成立します。

  1. sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinB
  2. sin(A-B)=sinAcosB-cosAsinB
  3. cos(A+B)=cosAcosB-sinAsinB
  4. cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinB
sinAcosB などは、sinA と cosB の積です。
正接関数についても、tan(A+B)=sin(A+B)/cos(A+B) の計算によって加法定理の公式を作る事が可能です。

この他に、高校数学では必要ありませんが、三角関数を使った無限級数によって周期関数を解析する技法があります。そこでも三角関数の基本的な性質や公式は前提として話が進められる事も多いので、基礎事項をよく知っておくと後々の学習が進めやすい事もあろうかと思います。

三角比と三角関数の定義および公式

三角比とは直角三角形の2つの辺の比の事で、どの2つの辺を考えるかによって
正弦(「せいげん」)、余弦(「よげん」)正接(「せいせつ」)の基本的な3種類があり、記号ではそれぞれ sin(サイン), cos(コーサイン), tan(タンジェント)で表します。また、その逆数として「余割」「正割」「余接」をもし必要があれば使う事もあります。三角比は図形問題を考える時にも使えますがベクトルを考えるうえでも重要で、ベクトルを力学等で活用する時にも使用されます。

三角形の角の角度は基本的には0度より大きく180度未満ですが、それを拡張して三角比に対して変数を任意の実数としたものは特に三角関数と呼ばれます。三角関数は周期関数として代表的なものであり、数学的にも物理的にも応用の範囲が広い初等関数の1つです。

角度を表す記号は何でも良いのですが
特に多く使われるのがθ(「シータ」あるいは「テータ」英語で言うthの音を表すとされるギリシャ文字)であり、ここでも一般的な角度を表す記号として多く使用します。
三角関数はxy平面の座標上で原点を中心とした単位円周上の座標としても考える事ができる事などから円関数と呼ばれる事もあります。ただしこのサイトでは三角関数の名称を使用します。

■サイト内関連記事:

三角比(正弦・余弦・正接)の図形的な定義

三角比は直角三角形の辺の比であり、角度を変数として表されます。

三角形の各辺の比は相似である別の三角形でも同じ値ですから、三角比は直角三角形の大きさにはよらず角度によってのみ確定する値になります。角度によって1つの値が決まる事を意味します。

斜辺と底辺と高さの部分(直角以外の2つの角度のどちらを考えるかで底辺と高さは入れ替わります)を使用し、「sin(サイン)」「cos(コーサイン、コサイン)」「tan(タンジェント)」の記号を使って角度の関数として表します。

直角三角形の斜辺以外の1つの辺を底辺とした時に、斜辺と底辺のなす角度をθとします。斜辺の長さをc斜辺と共に角をなす辺の長さをa(図では底辺)もう1つの辺の長さ(図では高さ)をbとする時、三角比の基本となる正弦余弦正接角度θの関数としてそれぞれ次のように表されます。

三角比表記辺の比で表した時具体例
正弦sinθb/csin60°=\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)
余弦cosθa/ccos60°=\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)
余弦tanθb/atan45°=1
公式としてtanθ=(sinθ)/(cosθ)が成立しています。
正弦、余弦、正接の定義

考えているのが直角三角形なので三平方の定理によりa+b=cですが、これは必要がある場合には三角比を表すのにも使用します。例えば斜辺の長さcを使わずにaとbだけで正弦と余弦を表すなら次のように書けます。

$$\sin\theta=\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\hspace{15pt}\cos\theta=\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}$$

30°、45°、60°の三角比の出し方
三平方の定理を使えば直角三角形の斜辺とその他の辺の長さの関係が分かるので、三角比の値を計算する事ができます。

30°、45°、60°の三角比の具体的な値は図形的な考察から導出する事ができて、整理すると次のようになります。

三角比の値30°45°60°
正弦 sinθ\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)
余弦 cosθ\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)
正接 tanθ\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)\(\sqrt{3}\)
sin30°=cos60°となっている事や
sin45°=cos45°となっている事などは偶然の一致ではなく図形的な関係から成立します。

図形的にこれらの値を導出するには次のようにします。

60°の場合は1辺の長さが「2」の正三角形を考えると分かりやすく、
真っ二つにすると斜辺が2、底辺が1、高さが\(\sqrt{3}\)の直角三角形ができます。
するとまず、余弦についてcos60°=1/2が分かります。
次に高さ部分については三平方の定理を使って \(\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt{4-1}=\sqrt{3}\) と計算します。
それによってsin60°=\(\sqrt{3}\)/2およびtan60°=\(\sqrt{3}\)を導出できます。

30°の場合は、直角三角形の残りの角度が90°-60°=30°である事を使います。すると底辺と高さの関係が変わるので、正弦と余弦に関しては60°の時の値を入れ換えた形になり、正接に関しては60°の時とは逆数の関係になるわけです。三角形の向きを変えて考えてみても同じ事になります。

45°の場合には直角二等辺三角形を考えて、底辺と高さをそれぞれ1とすれば、まず正接について tan45°=1が分かります。次に斜辺の長さは\(\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{1+1}=\sqrt{2}\) となるので正弦と余弦の値も導出できます。

角度を0°より大きく90°未満とした時の三角比の取り得る範囲は次のようになります。

  • 0<sinθ<1【θに対して単調増加】
  • 0<cosθ<1【θに対して単調減少】
  • 0<tanθ  【θに対して単調増加で、90°に近付くにつれて無限に増加】

その他の角度についての三角比の値を知るには加法定理によって一部の値を計算できるほか、正弦についての無限級数展開(マクローリン展開)を使います。$$\sin \theta=\theta – \frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\frac{\theta^7}{7!}+\cdots$$ただし、この式を使う時には角度は弧度法で表したものでなければなりません。
例として、10° は弧度法で\(\pi\)/18【rad】なので、式に代入して四捨五入で小数点第3位まで計算すると sin10° ≒ 0.1735 です。
角度が弧度法で0に近い値の時はsinθ≒tanθ≒θの近似式を使えます。(上記の展開式で第2項以降をほぼ0と考える事により得られます。)
10°に相当する弧度法の角度を小数で表すと\(\pi\)/18≒0.1744なので、10°の場合は概算的にはその近似式を使ってもよいと言えます。

三角関数の定義と考え方

三角比に対して適用する角度の範囲を0°以下や90°以上の値を考えた関数を三角関数と呼びます。三角関数の角度は基本的に弧度法を使って表記しますが、ここでは分かりやすさのために変数を度数法で記しておきます。また、三角関数を使う時には変数をxとする事も多いですが、ここでは変数をθで表すとします。

任意の実数値を取り得る角度(「一般角」)は図形的には直角三角形を反転させた時に意味を持ち得ると同時に、向きも含めた回転の意味も持ちます。直交座標上で原点を中心にして見た時に反時計回りの回転がプラスの方向への角度の増加、時計回りの回転がマイナス方向への角度の減少としての意味を持ちます。

360°に達した時は「1周」とみなします。三角関数は360°を経過するごとに0°の時と同じ値になると定義します。つまり周期的に同じ値を繰り返す周期関数となるわけです。

三角関数の値は、xy直交座標上の原点を中心とした半径1の円(単位円)の円周上の点の座標として表されます。より具体的にはx軸のプラスの部分を0°として、角度θになる直線を円に向かって引いた時の円との交点のx座標を余弦関数 cosθの値として、y座標を正弦関数 sinθの値とします。この時に、角度の範囲が0°より大きくて90°未満の時には三角比と全く同じ値をとるわけです。

sin0°=0,cos0°=1,sin90°=1,cos90°=1のように定義します。このような定義をするのは数学的な拡張として自然であるからというのもありますが、物理的に単位円周上の等速運動に対応する単振動などを考えてみるとそれを表現する関数として適切であるといった見方もできます。

正接関数はtanθ=(sinθ)/(cosθ)として定義します。ただし、正接関数においては cosθ=0となるθの値においては無限大になってしまい「定義できない」とします。より具体的にはθ=±90°,±270°等は正接関数の定義域から除外する事になります。

三角関数の具体的な値を、三角比の範囲も含めて挙げてみると次のようになります。

一般角(度数表記)正弦関数 sinθ余弦関数 cosθ正接関数 tanθ
0°
30°\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
45°\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)
60°\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\sqrt{3}\)
90°定義しない
120°\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
135°\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)-1
150°\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
180°-1
210°【-150°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
225°【-135°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)
240°【-120°と同じ】\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
270°【-90°と同じ】-1定義しない
300°【-60°と同じ】\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
315°【-45°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)-1
330°【-30°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
360°【0°と同じ】
もちろんこれらの値は暗記するものではなく、
座標上の単位円から判断するか三角比の値をもとに公式から計算するものになります。

基本的には三角比の値を使う事ができて、それがx軸対称やy軸対称の形で符号が入れ替わったり角度を180°から引いた形で扱うといった計算をしている事になります。

三角比と三角関数の公式

基本公式としては次のようなものがあります。三角比と三角関数とで同じ公式を適用する事ができて、違いは定義域(角度の範囲)だけになります。三角関数で統一的に考えて、三角比は範囲を限定した特別な場合と考えても同じです。

三角比の公式

正弦、余弦、正接について次式が成立します: $$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$ $$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=1$$ $$【\cos^2\theta+\sin^2\theta=1と一般的に書きます。】$$ $$\cos (90°-\theta)=\sin \theta$$ $$\sin (90°-\theta)=\cos \theta$$ $$\tan (90°-\theta)=\frac{1}{\tan\theta}$$

三角比のベキ乗の表記

三角比の2乗については、次のように書く習慣があります。 $$\sin^2\theta\hspace{15pt}\cos^2\theta\hspace{15pt}\tan^2\theta$$ また2乗だけでなく、3乗、4乗等でも同じようにします。
これは一応「ある角度の2乗」θの三角比 sin(θ)と区別するためです。

公式

上記の公式の第1式である正接を正弦と余弦で表す関係は、単純に正弦を余弦で割ると出ます。斜辺の部分は消えてしまうわけです。

$$\frac{\sin\theta}{\cos\theta}=\frac{b}{c}\cdot\frac{c}{a}=\frac{b}{a}=\tan\theta$$

2番目の、正弦と余弦のそれぞれの2乗の和が1になるという式は、三平方の定理により分かります。

$$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=\frac{a^2+b^2}{c^2}=\frac{c^2}{c^2}=1$$

90°-θ の角度を考えている関係式は、図を見ると分かりやすいかと思います。直角三角形の θ とは別の角度の三角比は、正弦と余弦の関係をちょうどひっくり返して表せるという事を意味します。

正接の公式tan(90°-θ)については最初の関係式 tanθ=(sinθ)/(cosθ) も使って
{sin(90°-θ)} / {cos(90°-θ)} によって出しています。
正接の公式についてはいずれも同じように導出する事ができます。

特に三角関数に対しては次の式が成立する、あるいは定義が行われます。

特に三角関数に対する定義と公式
定義・公式正弦関数 sinθ余弦関数 cosθ正接関数 tanθ
0°
90°定義せず
マイナス
の角度
sin(-θ)
=-sinθ
cos(-θ)
=-cosθ
tan(-θ)
=-tanθ
180°-θsin(180°-θ)
=sinθ
cos(180°-θ)
=-cosθ
tan(180°-θ)
=-tanθ
180°+θsin(180°+θ)
=-sinθ
cos(180°+θ)
=-cosθ
tan(180°+θ)
=tanθ
360°+θsin(360°+θ)
=-sinθ
cos(360°+θ)
=-cosθ
tan(360°+θ)
=tanθ
90°+θsin(90°+θ)
=cosθ
cos(90°+θ)
=-sinθ
tan(90°+θ)
=-(1/tanθ)

その他、重要となる(他の色々な場面で使う)主な公式や定理には次のようなものがあります。

定理・公式等主な内容備考
余弦定理=a+b-2abcosθθはaとbの長さの辺のなす角
θ=90°の時は三平方の定理
加法定理sin(θ+θ)=sinθcosθ+sinθcosθ2
cos(θ+θ)=sinθsinθ-cosθcosθ2
正接の加法定理も存在
倍角の公式sin(2θ)=2sinθcosθ
cos(2θ)=sinθ-cosθ
加法定理から導出
和積の公式sinθ+sinθ=\(2\sin\frac{\Large \theta_1+\theta_2}{\Large 2}\cos\frac{\Large \theta_1-\theta_2}{\Large 2}\)
cosθ+cosθ=\(2\cos\frac{\Large \theta_1+\theta_2}{\Large 2}\cos\frac{\Large \theta_1-\theta_2}{\Large 2}\)
加法定理から導出
積和の公式もあり
三角間数の
微分公式
(d/dθ)sinθ=cosθ
(d/dθ)cosθ=-sinθ
微分の定義式より
積分にも使用可
極座標変換x=rcosθ
y=rsinθ
図から導出
複素数の
指数関数表示
eiθ=cosθ+isinθi は虚数単位
オイラーの式とも
マクローリン
展開
sinθ=θ-θ/(3!)+θ/(5!)-・・・
cosθ=1-θ/(2!)+θ/(4!)-・・・
正接に関しては
逆正接関数のほうが簡単
内積の定義\(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}|\hspace{2pt}|\overrightarrow{b}|\cos\theta\)θは2つのベクトルのなす角