三角形の相似

三角形の相似条件は高校入試を始めとして中学数学では重要事項の1つです。

図形問題を解くために必要という事でもありますが、三平方の定理などの重要な定理が成立するための根拠の1つになっている事なども重要と言えるでしょう。

平面において2つの三角形が「相似【そうじ】」であるとは、
ごく簡単に言うと「大きさは違うが形は同じ」であるという事です。

★これに対して、「大きさも形も同じ」なのが三角形の合同です。
意味する事と、成立する条件の違いに注意しましょう。
合同と相似は一見似ていますが扱い方が違うものなので、気を付けましょう。
「2つの三角形が互いに合同」ならば「2つの三角形は互いに相似でもある」と、確かに言えます。 しかしこの逆は成り立ちません。「相似であるから合同でもある」と言ったら、それは間違いです。
【※中学数学の範囲外になりますが詳しくは必要条件と十分条件の関係から把握する事になります。合同である事は相似である事を含んでいるという包含関係になります。】
そのため、合同と相似をごっちゃにしてはならず、関係を意識しながらも丁寧に別々に整理する事が必要であり、重要でもあるのです。

2つの三角形が合同であるならば、相似でもあるとは言えます。相似であっても合同ではない場合があります。

もっとも、単に見た目が似ているというだけでは相似であるとは言わず、きちんと数学的な条件があります。

相似条件と証明での使い方

次の3つの条件の「いずれか」を満たす2つの三角形は互いに相似であると言います。「いずれか」という事は、「1つでも当てはまればよい」という事です。

2つの三角形が相似であるための条件

次のいずれか1つが成立するならば2つの三角形は互いに相似です。

  1. 2組の角の大きさがそれぞれ等しい
  2. 2組の辺の長さの比と、その挟む角の大きさがそれぞれ等しい
  3. 3組の辺の長さの比がそれぞれ等しい

この時「△ABCと△DEFは(互いに)相似である」などと言い、△ABC∽△DEFとも書きます。(無限大の記号に似てますが別物です。)この時、「同じ形」として対応する角が順番通りになるように書きます。
相似な2つの三角形の互いの「辺の長さの比」を相似比と言います。例えば1:2とか1:3という関係が成立します。場合によっては整数比とは限らず、1:\(\sqrt{2}\) とか2:\(\sqrt{3}\) などの相似比もあり得ます。

三角形同士が相似である事がひとたび判明すれば、これら3つの条件は全て成立します。つまり、例えば2組の角度が等しいという条件が成立すれば、3組の辺の長さの比もそれぞれ等しいという事です。

ただし、相似である事を証明するためにはどれか1つだけ判明していればよいという事です。

★比較する2つの三角形が直角三角形であれば、その時点で「対応する1つの角がそれぞれ等しい(90°で等しい)」事は言えているので、もう1つだけ等しい角度を見つければよいといった作業になります。

繰り返しますが合同条件と似ていますが違うもの(相似条件のほうが制約が緩い)なので注意しましょう。
例えば、辺の長さが分からないけれど角度だけで比較できるのは相似条件のほうであって、合同条件にはそのような条件はないのです。(暗記するのではなく意味を考えてみると分かりやすいと思います。角度だけが分かっている場合、形は同じであっても辺の長さは伸び縮み可能なのです。)

合同である場合は「相似比」が1:1であると言う事もできます。それが「大きさも同じ」という意味であって、大きさが異なる場合には相似比が1:2とか2:3とかになるわけでそのような場合も含めた「形は同じだが大きさは異なる」関係を相似と呼ぶわけです。

2つの三角形が相似である事を正確に見るには、「証明」が必要です。これは、見た感じ「同じ形」に見えるけれど実際は違う(辺の比が一定にならない、角度が異なる)という事があるからです。

高校入試の出題として多いのは「2組の角の大きさがそれぞれ等しい」事を使うパターンです。これは、同じ大きさの角度である部分が2つ見つかればよいという事です。
より具体的には、対頂角の関係、平行線の同位角・錯角の関係、円周角の定理などを使って「角度の大きさが等しい」事を示します。また、共有する角がある場合にはもちろんその角度は2つの三角形で等しいのです。

証明のパターン
中学数学・高校入試で問われるパターンはこういったものが多いです。あらかじめ直角三角形という条件が与えられる事で残り1つの角の大きさだけを調べればよい場合もあります。

残りの2条件は証明の時に使う事もありますが、むしろ相似である事が証明された後に辺の比や面積比を計算させる問いで使われる事が多いように思います。

相似な三角形の面積比

三角形の相似比(辺の長さの比)が1:nの場合、面積比は1:nになります。
これは、例えば1つの三角についての底辺がn倍、高さについてもn倍になるためです。

高校入試ではよく問われる事項です。

相似な2つの三角形の面積比

辺の長さの比が1:nの相似な三角形の面積比は1:nになります。
(辺の長さの比がa:bなら、面積比はa:b

例えば底辺が2、高さが3の三角形の面積は2×3÷2=3ですが、
各辺の長さが2倍になったとすると、高さも2倍になる事に注意して
面積は(2×2)×(3×2)÷2=12
つまり2×2=4倍になるという事です。

これは公式として関係式を暗記するのではなく、図に描いてイメージしながら練習してみたほうがよいと思います。

この図の場合、相似な三角形の辺の長さの比は1:3です。相似比が整数のようにきれいな値の場合は図に描いてみて何倍になるのかというイメージをつかむのもよいと思います。平行線の補助線を引く事で図の大きな三角形を9分割できます。三角形の高さも確かに相似比倍になる事については、垂線を補助線として描けば直角三角形についても相似関係が成立する事から分かります。

辺の長さの比が1:3ではなく2:3のような場合は面積比は2:3=4:9です。

$$辺の長さの比が2:3であれば大きい三角形の面積は小さい三角形の\left(\frac{3}{2}\right)^2=\frac{9}{4}倍$$

辺の比に関する補足説明

相似な三角形の辺の比に関して、補足的な説明をします。

三角形同士が相似である場合に「対応する辺同士の比」は等しくこれを相似比と言うのは前述の通りです。

他方で「同じ三角形の中の辺同士の比」も、相似な2つの三角形で等しくなるのです。これは1つの三角形の中で3通りの比がありますからもちろん一定ではなく、一般的に相似比とも異なる値になります。

しかし、例えば△ABCでAB:BC=1:3であったとすると、それに相似な三角形△DEFがあったときにDE:EF=1:3という事も同じく言えるという意味です。
この時、AC:AB=2:5であれば同様にDF:DE=2:5という事です。
(※この場合、この条件だけから具体的な相似比は分からない事には注意。互いの対応する辺の長さの比に関して、相似比という一定の比がある事だけ分かります。)

式で書くと、△ABC∽△DEFであれば、
AB/DE=AC/DFという比の関係(この一定の比が相似比)に加えて
AB/AC=DE/DF という関係も成り立つという事です。

これは、じつは結構単純な話です。
AB/DE=AC/DF の両辺をACで割り、両辺にDEをかける事で得られます。
式変形をしなくても相似関係にあるという事は同じ形で大きさだけが異なると意味を考えれば分かりやすいかと思います。

「形は同じでサイズだけが違う」というイメージをつかむと難しさが消えるでしょう。
辺の長さの関係を丁寧に整理する必要がある場合もある事にだけ注意。

証明問題も含めて、図形問題が得意になるコツはあまり難しく考えない事です。
意味を考えながら図を描いてみましょう。

他に図形問題として関連が深いのは角の二等分線と三角形の辺の比の関係などで、これは三角形の相似を根拠として成立します。三角形の相似についてじゅうぶん理解していれば、関係式を暗記せずにその場で導出する事も可能なのです。

「形」さえ同じであれば、三角形の中の2辺の「比」が一定であるという事は、三角比の考え方の基礎となっています。これは、直角三角形に限定して、特定の角度に対しては2つの辺の長さは一定になる事を利用して決められるものです。高校数学で教えられるものですが、考え方としては三角形の相似の考え方が分かっていれば理解できる内容になります。

円の接線と内接・外接

図形問題としての円に対する接線の考え方と、それとセットになる内接・外接の考え方を説明します。

学校で教わる内容としては中学数学・高校入試の範囲ですが、一部はそれ以降の話にもつながる重要事項も含んでいます。なぜかというと微積分での微分係数は関数をグラフ上で図形的に見た場合の「接線」の傾きだからです。また、高校数学では直線を一次関数とみなして種々の考察をして問題を解かせる場合も多いので、円と関わりを持たせた接線の話は中学校以降でも出てくるのです。

円に対する接線の性質

まず「接線」とは何かと言いますと、
「ぴったりくっつくように1点のみで交点を持つ直線」の事を言います。

また、そのよう形で図形同士が交わる時に「接する」という言葉を使います。「直線 L は円Oに接する、接している」といった具合です。(「接線」は必ず直線を指しますが、「接する」という言葉は曲線同士に対しても使います。例えば円と円が「接する」場合というのもあり得ます。)

図形同士が接する点を、「接点」と言います。

接線と法線

同じ1点で交わる場合でも、突き抜けるように交わる直線は接線とは言わないのです。その場合は単純に、1点で交わる交点です。

「接する」という事は数学的に厳密にはどのような条件を要請する事なのか?という事についてはここで触れないで置きますが、図で見れば分かると思います。中学校の範囲では、見て分かるという程度でじゅうぶんです。それで図形問題は解けるからです。

円に対する接線の重要な性質の1つとして、「接点と中心を通る直線は接線と垂直になる」というものがあります。接点を通り接線に垂直な線を法線と言うので「円に対する法線は中心を必ず通る」とも言えます。

法線

接点を通り、かつ接線に対して垂直である直線の事。
円の場合、法線は必ず円の中心を通ります。

★この事実を使って図形問題を解けと言われるのは中学校と一部高校においてだけでですが、この円に対する接線と法線の性質自体は物理学への応用などでも使ったりします。そのため、内容的には結構重要です。

どういう理由で1つの接点を通る法線は中心を通るのかというと、図形的には次の通りです。

証明の説明図

まず、円周上の2点A、Bと円の中心Oからなる三角形は二等辺三角形なので∠AOBが直角になる事はあり得ても、残りの2角は直角にはなり得ません。(三角形の内角の和は180°、つまり2直角であるため。)

すると、点Aに直線が接するには、その直線と線分AOは直角でなければなりません。もし直角でなかったら、その直線上で点A以外にOまでの距離が等しい点、つまり円周上の点が存在する事になり接線ではなくなってしまいます。

という事は、接線に垂直で接点を通る法線は、接点と中心の両方を通る事になるので題意は示されます。

簡単に言うと、円周上のある点を通る直線は、その点と中心を通る線分に対して垂直である場合に限りその1点のみで交わり、垂直以外の角度の場合には別の円周上の点と必ず交わってしまう(そのような円周上の点が必ず存在する)という事です。

☆この事は、高校数学での図形を式で表す方法でも証明できます。考え方自体は二次方程式の解が重解になる条件を出すだけなので難しくはありません。

内接と外接

また、図形問題でよく取り上げられますが、円に内接する図形、外接する図形というものがあります。ここで、「外接」の場合は特定の図形が必ず円に「接している」事が要求されますが、「内接」の場合は必ずしも接していなくてもよくて頂点などが全て円を突き抜けない形で触れていれば要請を満たします。

図で見ると分かりやすいでしょう。例えば内接三角形と外接三角形の違いを見てみましょう。

内接と外接

円以外の図形側から見た時、言葉の使い方として内接と外接は逆になります。

つまり、円に内接する三角形側から見れば「円は外接」しています。

三角形に対して円が内接していると言う場合は、円に対しては三角形は外接しているのです。

これらの内接・外接の関係は、図形問題として出題される場合には別の事項と組み合わされる事がほとんどです。例えば、円に内接する三角形・四角形は円周角の定理と組み合わせて問われる事が多いです。円に外接する三角形を考える場合には、中心から接点に向けての線分が接線と直角になる事実を使わせる事が多いです。

ひねったパターンだと、角の二等分線の事項も絡めて三角形の面積比などを問う出題もあります。

複雑にしようと思えばいくらでも問題をひねれるのが内接・外接に関する図形問題の厄介なところですが、必要な定理や数学的事実は限られているという事を押さえる事が重要です。前述した事の中で言えば、「円に対する接線がある時、法線は中心を必ず通る」といった事項です。

そういった、限られた数の基礎事項を確実に押さえたうえで、いろいろなパターンの問題を解いてみる事が中学校でのこの分野を攻略する鍵と言えるでしょう。複雑な定理や人があまり知らないような定理を暗記する必要はないのです。

円周率の値はなぜ3.14なの?

円周率はなぜ3.14なのか、なぜ「3」ではいけないかの易しい説明です。円や球に対しては「円周率」が常につきまといますが、それについての話をしましょう。

そもそも円周率の定義は? ■ 正確な証明の話 

そもそも「円周率」の定義は?


円周率とは、「円の直径円周の長さの比」の事であり、値は約3.14です。
直径が1メートルの車輪の円周の長さは、円周率を用いて
1×3.14=約3.14メートルと計算できます。
円周率の正確な値は3.14159265・・・という、循環しない無限小数であり、「無理数」です。
【無理数である事は、背理法で示します。円周率に限らず、特定の数が無理数である事を示す方法は基本的には背理法です。】

円周率の特徴
  1. 「円周の長さ」÷「直径」の値の事を円周率と呼ぶ
  2. 任意の円において値は一定であり、3.141592・・・・
  3. 循環しない無限小数であり、無理数である

円周率を使って円の面積も計算できますが、元々は「円周」と直径の比です。
記号は、ギリシャ文字の「パイ」\(\pi\) を使います。

説明図①
正六角形は6つの「正三角形」で構成される事に気付くと、「直径×3」が円周ではなくて正六角形の周の長さである事が簡単に分かります。


この「約3.14」という半端な数はどこから出てくるのでしょう?
円に内接する正6角形を考えてみてください
じつは、簡単な計算により、「円の直径×3」は、ちょうど「円に内接する正6角形の周の長さ」なのです。
この事実が、円周率を「約3」と教える事が、数学的に見て決して良いと言えない理由の一つです。

【多角形の円に対する内接・外接の考え方は別途にまとめています。】

★本当に大雑把な計算(例えば100くらいになるのか、1000くらいになるのかといった)であれば円周の長さを「大体3」の計算でやってもよいと思いますが、正確な計算にはならない事は踏まえておく必要があるという事です。実際の値よりも小さくなってしまうからです。


次に、円に内接する正12角形の周の長さを計算してみると、おおよそ、円の直径×3.1058になります。
この「円周率に相当するような定数」は、円に内接する正24角形の場合は約3.1326、
正48角形の場合は約3.1393です。正96角形まで考えると、3.14が出てきます。
じつは、角をもっと増やしていくと、その値は正確な「円周率」の値に限りなく近づくのです。

動画声優担当ステ♪様 http://sute.tabigeinin.com/

この動画は極限値としての円周率の存在証明の記事にも載せています。

正確な証明の話

☆ここから先の内容は高校数学、さらに詳しくはそれ以上の数学の範囲です。

極限値として円周率が確かに存在する事の証明は少し面倒ですが、平面幾何と極限の基礎知識さえ知っていれば証明は可能です。
円に内接する正n角形と、円に外接する正n角形を考えます。
その中で、2つの頂点と円の中心で作られる三角形に注目します。
ここでじつは少し工夫が必要で、nに対してn+1ではなく、2nを考えます。

説明図②
通常の数学的帰納法だとnに対してn+1を考えますが、ここでは2nを考えます。
それによって、考察はかなり簡単になるのです。


すると、内接する正2n角形の周の長さは
「内接する正n角形の周の長さより必ず大きい事」と、
「外接する正n角形の周の長さよりは必ず小さい事」が、比較的容易に示せるのです。


これは、内接する正n角形の周の長さを数列として見た時、「単調増加で上に有界」である数列になっている事を示しています。
そして、そのような数列は必ず極限値を持つという定理があるので、
円に内接する正n角形の周の長さは「nを無限大にした時に極限値を持つ」事が示されます。


同様に、円に外接する正n角形の周の長さも極限値を持つ事が示せます。
ここで、証明の中で導出している関係式の一つを用いると、2つの極限値は
一致する事を示せます。その値が、円周率と呼ばれる定数です。

円周の長さが直径と円周率の積で表されるという事実は、三角関数の微分公式が成立する根拠でもあるので、理論上、かなり重要な位置にあると言えます。

三角関数の微分公式の導出には sin x < x < tan x という不等式を用います。
これは実質的には、「内接正n角形の周の長さ<円周の長さ【極限値】<外接正n角形の周の長さ」という関係式と同等です。
円周や円弧の長さは極限値なので、解析学(微積分学)的には本来は多少詳しい考察や証明が必要になるというわけです。

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円周角の定理

円周角の定理とは、円の1つの弧に対する円周角の大きさは必ず等しく、しかも中心角の半分の大きさであるというものです。言葉よりも図で見ると分かりやすいでしょう。

この定理は、高校入試(特に公立)では非常に出題頻度が高いものです。しかし逆に高校数学では重要度が減り、大学数学や物理学では基本的には使わないと言ってもよいほどその重要度が下がります。

これは、高校数学以降の話では「円に内接する三角形」よりも「円その物」のほうが対象とする図形として重要である事が大きく関わっていると思います。そのため、円周角の定理とは中学数学というか「円に内接する三角形」という話に限定する範囲においては重要な定理である、という位置付けで理解するとよいかもしれません。

定理の内容と意味

まず、「円周角」とは、円に内接する三角形の1つの角の事で、「その対辺を弦とする円弧のうち長い方(優弧)」に着目して呼ばれるものです。例えば「円弧ABに対する円周角」のように使われます。図で見ましょう。一目で分かると思います。

また、「中心角」とは、ある円弧の弦の両端の点のそれぞれと円の中心を結ぶ線分によって構成される角の事です。これも、図を見ましょう。

定理の内容

円周角の定理の内容は、1つの円弧が固定されている時、その円弧に対する任意の円周角の大きさは等しく、しかもその円弧に対する中心角の大きさの半分であるというものです。

円周角の定理

円周上に異なる2点ABがあり、円の中心をOとすると次の2つの事が成立します:

  1. 優弧AB上のA、Bとは異なる任意の点Cに対し、
    円周角∠ACBの大きさは互いに等しい。
  2. 2∠ACB=∠AOBが成立する。

尚、円弧のうち短い方(劣弧)側の弦と結んでできる角も、大きさは互いに必ず等しくなります。ただし中心角との大きさの関係は2:1にはなりません。(中心角の半分を180°から引いた大きさになります。)

高校入試を含めて中学数学では、円周角に関する問いは三角形の相似・合同・面積比に関する事項と組み合わされる事が圧倒的に多いです。

また、円周角が直角になる場合とその条件に関しても好まれて出題がなされる傾向があるようです。

「円周角の大きさは必ず中心角の大きさの半分である」という事が定理の主張の1つですが、これを円弧が半円の場合・弦が直径の場合に適用すると円周角は必ず直角であるという事です。

これは、半円の弧の両端を直線で結ぶと必ず円の中心を通るので中心角=180°とみなせる事によります。すると、その円周角はその半分の大きさで90°つまり直角になるというわけです。後述するように証明する時にはこの事項自体を場合分けで示す必要がありますが、理屈はじつに簡単です。)

証明

円に内接する三角形が内部に中心を含むかそうでないかで場合分けします。

①内接三角形が内部に円の中心を含む場合

円に対する内接三角形が内部に円の中心を含む時、まず最初に分かるのがじつは「円周角は中心角の半分」というほうの事実です。

これは、内接三角形の1つの辺の両端と円の中心で構成される三角形が、必ず二等辺三角形になる事によるのです。

そして、1つの円弧を固定する時、もう1つの円周上の点を動かしても中心角は同じである事に注意します。これは、この条件のもとで1つの円弧に対する任意の円周角は必ず等しい事を意味し、円周角の定理の主張そのものです。

下図で言うと、次のようになります:

$$(180°-2\alpha)+(180°-2\beta)+(180°-2\gamma)=360°\Leftrightarrow 180°-2\alpha=2\beta+2\gamma$$

$$\Leftrightarrow 180°-2\alpha=2(\beta+\gamma)$$

最後の式は「中心角=円周角の2倍」を表しています。これはこの条件下で点AとBを固定しておけば、点Cが移動しても \(\alpha\) の値は変わらないので円周角の定理の内容が成立するのです。

証明の説明図
いずれの場合でも、半径を2辺とする二等辺三角形を3つ考える事が証明のポイントです。

②内接三角形が内部に円の中心を含む場合

次に、内接三角形が内部に円の中心を含まない場合です。この時も、中心角を構成する二等辺三角形をもとにして証明をします。この場合においても二等辺三角形を3つ作ります。

じつは相似関係などを使う必要は特になく、
「三角形の内角の和は180°」「四角形の内角の和は360°」という、より初歩的な事実関係だけでじゅうぶんなのです。

図で言うと、中心角は \(180°-2\alpha\) で、そこと隣り合う二等辺三角形の中心角に相当する角は \(180°-2\beta\) です。これらを合わせると、\(360°-2\alpha-2\beta\) となります。

しかし、その角度はよく見ると \(180°-2\gamma\) に等しいのです。よって、次の関係が成立しています。

$$180°-2\gamma=360°-2\alpha-2\beta\Leftrightarrow 2(\beta -\gamma)=180°-2\alpha$$

ここで、式に出てくる \(\beta -\gamma\) は何かというと、これはじつは図の円弧ABの円周角です。つまり、この場合でも「中心角=円周角の2倍」が成立します。

そして、上記2つの場合において点AとBは固定したままでよいという事に注意しましょう。移動するのは、円周角をなす点Cだけなのです。中心角は変化しません。という事は、上記2つの場合の円周角は、いずれも中心角の大きさの半分であり、ともに一致するのです。

ゆえに、内接三角形が円の中心を内部に含むかどうかは気にしなくてよい(その事が示された)という事です。

③内接三角形の1辺上に円の中心がある場合

さて、このように場合分けすると、「だったら三角形の1つの辺が『中心を通る場合』も考えなければだめではないか?」という話になります。実際その通りです。

ただし、この第3の場合が、じつは最も簡単なのです。

直径に対する円周角

円周角をつくる頂点から中心に向かって線分を引きます。すると、二等辺三角形が2つできます。ここで、円周角をなす頂点と直径からなる三角形は、2つの二等辺三角形の角だけから構成されるのです。

すると、三角形の内角の和が180°である事から、この場合の円周角の大きさは90°である事が分かるという計算です。

それゆえ、このような場合でも定理の内容は成立しているので、上記2つの場合と合わせてまとめてよいという事になります。

関連事項:円に内接する四角形

同じく中学数学と高校入試で問われる内容として、
「円に内接する四角形の対角線上で向かい合う角の和は180°である」というものがあります。

この理由については、円周角の定理を使うとすぐに分かります。

図のように、補助線として対角線を引きます。この時、内接四角形の1つの角が2つの部分から構成されていると考えます。図で言うと xとyで表しています。

$$\alpha=x+yとおきます。$$

円に内接する四角形

それらxとyについて、それぞれ異なる円周角であるとみなす事ができるので、それぞれについて定理を適用します。すると、対角線上で向かい合う内接四角形の角の大きさは、180°-(x+y)という事になります。(「三角形の内角の和は180°」を使用。)

しかし \(\alpha=x+y\) でしたから、\(\alpha+180°-(x+y)=\alpha+180°-\alpha =180°\) です。これで題意は示された事になります。

円周角の定理は、高校数学での正弦定理を証明するために使われたりもします。

三平方の定理およびその逆【証明】

三平方の定理は平面の直角三角形の辺の長さに関して成立する関係式です。(曲面に対して拡張したものも存在します。)別名をピタゴラスの定理とも言います。

中学で教わる数学公式の中でも重要度が高いものの1つだと思います。

定理の内容

直角三角形の斜辺の長さの2乗は、残りの2つの辺のそれぞれの2乗の合計に等しいというのが三平方の定理の内容です。「平方(つまり2乗)」が3つある事が「三平方」の意味です。

図による説明
三平方の定理

直角三角形の斜辺の長さをc、残りの辺の長さをそれぞれa、bとすると次の関係が必ず成立する:$$c^2=a^2+b^2$$

これは一般の鋭角三角形、鈍角三角形も含めた余弦定理の特別な場合です。
【余弦定理は、普通は高校数学で学習します。】

余弦定理の特別な場合が三平方の定理

$$c^2=a^2+b^2 -2ab\cos \theta$$ θ=90°の時 cosθ=0であり、余弦定理は三平方の定理に一致します。
ただし、余弦定理の証明には三平方の定理が必要です。

具体的な適用例としては、直角を挟む2辺がそれぞれ3、4である直角三角形の斜辺の長さは5になります。

+4=25=5 という計算になるわけです。

また、1つの角度が45°、60°といった特別な三角形の斜辺の長さの計算にも三平方の定理を使います。

1つの角度が45°の場合・・2つの辺の長さがそれぞれ1の時、
+1=2 より、斜辺の長さは\(\sqrt{2}\)

1つの角度が60°の直角三角形の場合は、2つ合わせると正三角形になる事を組み合わせて、斜辺と1つの辺から、もう1つの辺の長さを三平方の定理で計算するという流れになります。

$$c^2=a^2+b^2\Leftrightarrow b^2=c^2-a^2\hspace{5pt}の関係を使います。$$

斜辺の長さを2とすると、もう1つの辺の長さは1であるので、残る1辺の長さは\(\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt{3}\)

ちなみにこれが三角比・三角関数における、角度が特別な時の値の正弦や余弦の意味に直接関連します。

$$ \cos 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}$$

$$\cos 60°=\frac{1}{2},\hspace{10pt}\cos 30°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$

証明

証明の方法は1つではなく複数ありますがここでは2つ紹介します。

※上記でも触れた余弦定理の証明には三平方の定理が必要なので、余弦定理の特別な場合として三平方の定理が成立するという事は、証明としては使用できないのです。

①三角形の相似関係を使う方法

この方法は、直角三角形の中には別の小さな直角三角形が必ずある事に注目して、三角形の相似関係から辺の長さを計算すると三平方の定理の内容が得られるというものです。

三角形の相似を使う方法は、アインシュタインが12歳ほどの時に自ら証明したと、のちに語ったと言われているものです。これは、彼が「発見」したというよりは、どのように証明ができるのか自ら考え、自力で見出す事ができてとても嬉しかった、というエピソードですね。彼曰く、謙遜してかもしれませんが「苦労」したとのことです。

まず、直角の部分の頂点から、斜辺に向けて垂線を引きます。その垂線の足で斜辺の長さを分割するのです。

図のように長さを変数でおき、三角形の相似関係で式を組み立てます。

相似関係を使う証明

c=(c-h)+h となるように辺ABを分割します。
∠AHC=∠BHC=90°となるようにします。(そのようにできる点Hが必ずAB上に存在。)

この時、もとの三角形と相似関係にある小さな三角形は2つある事がポイントです。
すると、三角形の相似関係により辺同士の長さの比は次のようになります。

$$\frac{c}{a}=\frac{a}{c-h}\Leftrightarrow c^2-ch=a^2$$

$$\frac{c}{b}=\frac{b}{h}\Leftrightarrow ch=b^2$$

$$2式を合わせると、c^2-b^2=a^2\Leftrightarrow c^2=a^2+b^2【証明終り】$$

どの辺がどの辺に対応するか分かりにくい場合には、図のように相似関係が明らかに成立すると分かるように図を描き直して整理すると見やすいと思います。

②三角形の合同関係と面積を使う方法

この方法はユークリッドの『原論』における証明方法として古くから知られ、3つの「平方」とは正方形の面積であるという考え方によります。(※「ピタゴラス」によるものではないのです。)

直角三角形の各辺を1辺とする正方形を3つ作り、三角形の合同関係から斜辺の長さの正方形の面積は、残る2つの正方形の面積の合計に確かに等しい事を示せるのです。

補助線を1本引きますが、じつはこれは上記の相似関係で使ったものと同じです。ただしこちらの証明では、補助線は斜辺を突き抜けて正方形のもう1辺にまで伸ばす事になります。

ユークリッドによる証明

合同関係は、図で言うと△AA’Cと△ABC’について成立します。合同という事は面積も等しい事がポイントで、図をよく見ると、この細長い三角形の面積は正方形の半分、つまりb÷2です。底辺、高さともに長さはbであることによります。

合同条件は「2辺とそのはさむ角が等しい」です。
図で言うと次のようになります。
AC=AC’ AA’=AB ∠CAA’=∠C’AB=90°+∠BAC となります。

同様に、図の△BB’Cと△BB”Aについても合同関係が成立し、こちらの面積はa÷2です。

ここで、補助線によって分割される大きな四角形の長方形部分の面積は、細長い三角形の面積の2倍である事に注目します。(底辺と高さの値が三角形のものと等しいため。)

長方形の面積の合計は正方形の面積cに等しいですから、c=a+bが成立するというわけです。

証明の補助図
こちらは証明の補足です。四角形と細長い三角形の面積は一見すると共通点があるようには見えないかもしれませんが、底辺と高さを考えると確かに三角形と四角形の面積比は1:2になっています。

定理の「逆」も成立する

上記での証明は、正確には次の命題の証明になっています:
三角形の斜辺の長さがc、残りの2辺の長さがa、bのもとで
三角形ABCは直角三角形 ⇒ c=a+b

では逆に、
=a+b ⇒ 三角形ABCは直角三角形
という命題は成立するのかというと、じつは成立します。

この証明は次のようにします。(これもユークリッドの方法です。)

=a+b が成立している三角形と1辺を共有する直角三角形を考えます。この直角三角形の1つの辺は、もとの三角形の別の1辺と同じ長さのものを考える事が必ず可能です。

この時点で、最初の三角形と別途に作った直角三角形は、2つの辺の長さが等しいわけです。

ここで、
命題:三角形ABCは直角三角形 ⇒ c=a+bは直角三角形
は上述の証明方法により真であると言えますから、新しく作った直角三角形についてこれを適用できます。

すると、2つの三角形は2辺が等しいですから、辺の長さについて「三平方」の関係がともに成立する条件になるので、残りの1辺の長さも等しくなるのです。

これによって、もとの三角形は新しく作った直角三角形と合同です。(合同条件は『3組の辺の長さがそれぞれ等しい』。)という事は、もとの三角形も直角三角形であるという事です。もちろん、斜辺に対応する角が直角になります。

よって、命題:c=a+b ⇒ 三角形ABCは直角三角形
も成立しますから、三平方の定理は「必要十分条件」の形という事になるのです。

三平方の定理は「必要十分条件」である事を明示する場合

三角形の斜辺の長さがc、残りの2辺の長さがa、bのもとで
三角形ABCは直角三角形 ⇔ c=a+b

他の分野との関連

上記で三角比および三角関数との関連に少し触れましたが、他の数学的事項や物理学・種々の工学とも密接に関連します。

三平方の定理は様々な場面で「距離」を計算する計算のツールとして使われます。直交座標を考えた時、斜めの線の長さは2点間の距離になります。この時、座標さえ分かっていれば三平方の定理から距離を必ず計算できるというわけです。

この「距離」という考え方はもちろん理論の中だけではなくて現実の距離の計算にも適用できるので、物理学でもじつに頻繁に使用され、また測量のような、より実務的な事項にも間接的に利用されます。

数学の図形的な平面幾何以外の分野でも、ベクトル複素数の理論において三平方の定理をもとに定義が成されます。ベクトルの「大きさ」や複素数の「絶対値」の考え方自体は、三平方の定理そのものです。

$$\overrightarrow{X}=(x,y)のとき、|\overrightarrow{X}|^2=x^2+y^2$$

$$z=x+iyのとき、|z|^2=x^2+y^2$$

三平方の定理の考え方は、直交座標、複素数、ベクトル、物理学、測量と、幅広く計算に使われます。

上記で少しアインシュタインに関するエピソードを紹介しましたが、彼の特殊相対性理論の考察においても三平方の定理は使用され、一般相対性理論では平面ではなくて曲面(4次元)において三平方の定理を拡張した考え方の一部が使用されています。なお、平面から曲面に拡張を行ったときには必ずしも「三平方」ではなくなってしまうので、その観点から「ピタゴラスの定理」のほうの名称を優先して使うべきではという考え方をする人もいます。

三角形の角の二等分線

三角形の角を二等分する線を引いた時に成立する1つの図形的性質があります。

これは高校入試の図形問題でよく出題され、場合によっては大学入試で部分的に扱われる事もあります。

三角形の角の二等分線に関して成立する関係

△ABCにおいて線分BC上に点Dがあり、線分ADは∠BACを2等分するという。
(つまり∠BAD=∠CADとなっている。)
この時、線分の長さの比についてAB:AC=BD:CDが成立する。

まず、三角形の1つの角を二等分する線を引きます。これは、例えば60°の角度であれば30°と30°に分割する線を引くという意味です。

次に、その線が1つの辺とぶつかる交点を考えます。すると、じつはその交点は、他の2辺の長さの「比」でその辺を分割しているのです。こういったものは、図で見たほうが多分分かりやすいでしょう。

三角形の二等分線①
例えばAB=6、AC=4であれば点DはBCを6:4=3:2で分割します。BC=5であればBD=3、DC=2であると決まるという事です。

これを証明するのは比較的簡単です。次のようにします。
(★ただし、入試の問題を解くという観点からは結果の関係式を確実に覚えておいたほうがよいです。しかし仮に忘れた時でも証明は難しくないという事です。)

まず、二等分する角につながる三角形の辺の1つを延長します。次に、二等分する角の対辺の1端から、角の二等分線に「平行」な直線を引きます。すると三角の相似関係により証明ができるというのが簡単な流れです。この時、二等辺三角形ができる事に気付く事も1つの重要な点です。

三角形の二等分線②(証明)
1つの辺の延長と、補助線として設ける平行線をつなげると大きな1つの三角形ができます。それと元の三角形の相似関係を考え、さらに図の△ACEが二等辺三角形である事に注目すると関係式が得られるのです。

この関係が中学校の数学、特に高校入試で問われる場合は、単独ではなくて他の図形上の関係と合わせて計算をさせる事が多いと思います。例えば、三角形の相似問題の1つの条件として使われたり、三角形の面積比を計算させるといった具合です。

また、円周角関連の事項と合わせた出題もあり得ます。この手の問題は計算を面倒にさせようと思えばいくらでもそのように問いを作れるので、いくらか練習しておかないといきなり問われた時になかなかうまくいかない事もあろうかと思います。

高校入試などでは三角形の面積比を計算させる問いなどで使わせる例があります。この図の例では、例えば情報としてAB、AC、BCの長さだけが与えられていて△AEFと△ABCの面積比を計算させるといった具合です。

さて、この三角形の二等分線に関する問いは多いですが、中学での勉強を終えて高校での学習に移る時、そんなに使うのかというと正直あまり使わないと思います。ただし、図形の平行・直角・相似・合同といった考え方は引き続き使用される事があります。

そのため、試験問題を解くという事を抜きにして語るのであれば、重要なのは関係式が成立する「理由」のところだと思います。平行線の性質や相似関係によってこのような事が言えるという事が、本当は一番覚えて理解しておきたいところかとは思います。

円・扇形に関連する面積の計算

円と扇形の面積に関連する計算の数学・算数の問題について説明します。

円と扇形

まず、円の面積は半径の2乗と円周率(≒3.14)の積です。

円の面積

円の面積=半径×半径×3.14

例えば、半径が2メートルの円の面積はおおよそ2×2×3.14=12.56平方メートルという事です。

★尚、「円周率」は「円の周の長さ」と直径の比の事です。なぜ円周率が3.14なのかは別途に詳しくまとめています。

他方、「扇形」とはピザやアップルパイのように、中心からまっすぐ円周に向かって円を切り取った部分のような形の図形の事です。

この扇形の面積を計算するには、角度を使います。要するに角度が全体の何割かという事で、面積が円全体の何割かという事で計算するわけです。

扇形の面積

$$扇形の面積=円の面積×\frac{扇形の角度}{360°}=半径×半径×3.14×\frac{扇形の角度}{360°}$$ 扇形の角度とは、もちろん中心部分の角度の事です。
角度を「弧度法」で表す場合には、弧度法で表した扇形の角度を \(2\pi\) で割ります。

例えば、簡単な例では半円は円の半分の面積、1/4円の面積は円の1/4の面積です。60°の角度の扇形の面積は円の1/6の面積になります。

円と扇形の面積の計算問題①
弧度法とは角度と対応する円周部分の長さを角度その物として扱う方法です。主に高校数学以上で扱います。面積の記号にはS(surface)やA(area)をよく使います。

円・扇形に関する面積の応用問題

さて、算数や中学数学での図形の問題で、円や扇形に関連する「変な形」の図形の面積を計算させる問題があります。例えば、四角形から円を切り取った部分の面積や、1/4の円を組み合わせて作ったラグビーボールのような図形の面積です。

基本的には、ある図形の面積から別の図形の面積を差し引き、それをうまく組み合わせて変な形の図形の面積を上手に計算するのです。

円と扇形の面積の計算問題②

例えば、1辺の長さが2Rである正方形を考えましょう。これに円が内接する場合、円の半径はRになります。そこで、正方形から円の部分を切り取った図形(4つ分)の面積は次のようになります。

$$S=(2R)^2-R^2×3.14=(4-3.14)R^2=0.86R^2$$

R=1で正方形の1辺が2で正方形の面積が4である場合、約0.86が切り取られた部分の面積の合計というわけです。1部分の1つだけの面積を問う問題であればそれをさらに4で割ります。

ラグビーボール型の面積については、2段階を踏みます。
今度は円の半径が正方形の1辺に等しいのでこれをRとしましょう。

まず、正方形から4分円(円の4分の1)を引きます。

そして、その部分の2倍を、正方形から引きます。
これがラグビーボール型の図形の面積になります。

$$S=2×(R^2-R^2×3.14÷4)=2×0.215×R^2=0.43R^2$$

R=1であればラグビーボール型の図形の面積は約0.43という事になります。

この手の問題は図形の組み合わせによっていくらでも複雑にできるところがありますが、基本的にはこのように公式で面積が分かる図形から切り取った図形を組み合わせて計算します。

中学数学の場合は、三角形との組み合わせの問題もあり得ます。例えば、三平方の定理や図形の相似の関係と組み合わせるパターンです。

次図はその1つの例で、隠れてる扇形を見つける必要がある事、三平方の定理か三角比を使って1つの辺の長さを出す必要がある事から、一手間かかるタイプの問いです。

円と扇形の面積の計算問題③
この問題は小学校の知識だけで解答を出すのは多少難しいパターンです。三角形の辺の長さから扇形の角度を出して、未知の1つの辺の長さも計算する事になります。半円が交わる点がちょうど長方形の中の中間にある事を使います。

高校数学の場合はこのような問いが出題される頻度は少なくなりますが、積分の問題として、似たような図形の面積を計算させる問いは出題されます。

台形の面積公式【算数と図形】

小学校や中学校で教わる台形の面積を出すための公式というものがありますね。

台形の面積公式

台形の面積={(上底)+(下底)}×(高さ)÷2

これくらいなら覚えれるという人も多い一方で、なんでこんな変な公式になるのか疑問に思いながら覚えた人も中にはいるかもしれません。この公式がなぜ成立するのかをこのページでは述べます。理由は全く難しくありません。

台形の面積公式①
まず台形の図を描いてみましょう。四角形のうち、1組の対辺同士が平行であるものを「台形」と呼びます。2組とも平行であればそれは「平行四辺形」です。

台形の面積公式の導出方法はじつにシンプルで、

台形をコピーして上下左右ひっくり返してぴったり貼り付けると平行四辺形になる

なんとこれだけです。

まず、もとの台形を上下・左右逆さまにひっくり返したものを用意します。まず上下に反転し、左右にも反転させる事が1つポイントです。

これを、もとの台形の横にくっつけます。

尚、「ぴったり」きれいに必ずくっつくという事は平行線の錯角の関係によって保障されるのです。

すると、平行四辺形の面積は(底辺)×(高さ)であるわけですが、この大きな平行四辺形の「底辺」は、台形の(上底)+(下底)なのです。下底に、上底だった部分がくっついていますので。

ただ、その平行四辺形の面積は台形2個分の面積です。

そのため、もとの台形の面積はその半分であって、「2で割る」わけです。

台形の面積公式②
台形を2つ分合わせた平行四辺形の面積を出し、それから半分個にする事でもとの台形の面積であるとする計算が台形の面積公式です。

これで、公式「台形の面積={(上底)+(下底)}×(高さ)÷2」が出ます。【証明終り】

尚、三角形の面積公式も三角形2つで平行四辺形を必ず作れる事に由来します。

「2で割る」というのは、じつは台形の場合と同じ理由であるわけです。

また、平行四辺形の面積が(底辺)×(高さ)となる理由は、出っ張っている部分を切り取って反対側につけると「長方形」になるためです。

三角形の面積公式の出し方は、ある意味台形の面積公式の出し方に似ています。いずれにしても、三角形も平行四辺形も長方形に直せるという事が面積公式の根拠であるわけです。三角形の場合、もとの三角形の2個分が平行四辺形なので、最後に2で割るのです。

さらに言うと、長方形の面積は正方形の面積の和に最終的には還元されます。

面積の単位は「平方メートル」m2(あるいは平方センチメートルcm2)と書きますね。つまり面積というものは1m2の正方形が何個分あるかという事なのです。もちろん、それを数えるのは大変ですから、面積の公式というものを使うわけです。

台形の面積公式の場合は、言われれば覚えれる人も多いと思います。ただ、たまには、どういう理由でそうなってるのかを考えてみると楽しい事もあるかもしれません。

尚、こういった初歩的な面積計算は、高校や大学での積分の理論の基礎になっています。

因数分解を学ぶ意味と計算のコツ

因数分解と言えば中学数学で悪名高いものの1つかと思います。

これをめぐる話は色々あるのですが、まず数学の教員すらもよく言ってしまう「まとめる」という言葉で因数分解を表現する事に、じつはひとつの問題があります。その事についても見ていきましょう。

因数分解は積の形に「分解」する事

日常で使う因数分解 ■ 中学校等での式の因数分解

日常で使う因数分解

因数分解は、「分解」です。

1つの数を、2つ以上の「積」の形に分解する事を言います。

その意味で、50=10×5のような形で表す事はやっている事としては因数分解です。

合計50円の物を買うために10円玉を5枚取り出すという時には、
じつは因数分解の思考をしているのです。

因数分解の本質的な意味 $$因数分解とは:50=10×5のように、A=B×Cなどの積の形に分解する事$$

50=5×5×2と表せるように、A=B×C×Dのような3つ以上の積で表す事も指します。

後述するように、中学校等で教わる「式に関する因数分解」も本質的に同じ意味です。

因数分解を「何に使うのか」という事は頻繁に言われる事ですが、じつのところ日常の生活でも使われる、数に関する操作と思考の1つが因数分解なのです。

掛け算は普段から使う計算だと思いますが、2×3=6に対して、これを逆に見て6=2×3という見方をする事が因数分解の考え方と言ってもよいかと思います。

中学校等での式の因数分解

さてしかし、そうは言っても、多くの人が問題としているのは次のような「式の」因数分解の事でしょう。

$$x^2+2xy+y^2=(x+y)^2,\hspace{10pt}x^2+3x+2=(x+1)(x+2)\hspace{10pt}等$$

で、こういう問が出題される時に、教員もよく言ってしまうのが、「まとめる」という表現です。そう言いたくなる気持ちは分かりますし、実際上、便利な表現だとも思います。

しかし、このように式に関する因数分解も、操作としてはまとめているのではなく「分解」しているのです。上記の因数分解を、もう1度書いてみましょう:

$$(x^2+2xy+y^2)=(x+y)^2=(x+y)(x+y),\hspace{10pt}(x^2+3x+2)=(x+1)(x+2)\hspace{10pt}等$$

どうでしょうか?

これだと、1つの数を2つ以上の数の積に「分解」している事が分かりやすいのではないでしょうか。50=10×5として表すのと全く同じなのです。

通常は、左辺のかっこはなくても同じ意味になるので省略してしまいますが、式の場合であっても複数の積の形に「分解」して表す事も可能であるというのが中学や高校で教わる因数分解の意味なのです。

式の因数分解も積の形への「分解」 $$因数分解とは:(x^2+3x+2)=(x+1)(x+2)のように、1つのまとまりを積の形に分解する事。$$

因数分解を行う事が有用であるのは、何と言っても方程式の解が得られる事にあります。これは、実数や複素数についての 「A×B=0 ⇔ A=0またはB=0」 という性質を利用しているのです。(※高校以上で学ぶ「行列」などについてはこの関係式が成立しないので注意。)

$$(x+1)(x+2)=0\Leftrightarrow x=-1\hspace{5pt}または\hspace{5pt}x=-2$$

$$したがって、x^2+3x+2=0の\hspace{5pt}解は、x=-1\hspace{5pt}または\hspace{5pt}x=-2$$

こういった具合に計算ができるので、数学、自然科学、工学の理論で使われるというわけです。

因数分解のコツ

学ぶ「意味」は分かったとしても、それでも計算問題として苦手であるという人もいるかと思います。

ではうまく計算して得意になるコツはあるのかというと、人によってやり方は多少違うので一概には言えませんが、その1つをここで挙げてみたいと思います。

$$■問い:x^2+15x+56\hspace{5pt}の因数分解はどのようになりますか。$$

こういった問題があった時には「定数項」に着目するとよい場合が多いです。
すなわち、上式では56の部分です。

因数分解とは逆に式を展開する時の事を考えると分かりやすいのですが、

$$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$$

ですから、上記のような2次式の因数分解を考える場合、定数項を何らかの「2つの数の掛け算」として表す事がヒントになります。この2つの数とは任意の実数であったり複素数でもいいわけですが、中学校で問われる問題の場合、大抵は整数だと思います。

56の場合、1×56、2×28、4×14、8×7などの表現方法があります。(できれば頭の中で思い浮かべられると、試験の時は楽です。)

次に1次の項\(15x\)に着目し、1×56、2×28、4×14、8×7の数の組み合わせのうち、加えたら15になる数はあるかというと、8と7の組み合わせが該当しますね。従って、因数分解は次のようになるのです:

$$x^2+15x+56=(x+8)(x+7)【解答】$$

因数分解2
実際問題として試験等でこの手の問題を解く時には、頭の中で2つの数の掛け算と足し算を組み合わせて、あてはまるものを選んで因数分解するとよいかもしれません。もちろん、分かりにくい場合は紙に書きましょう。

このように「綺麗な形ですんなりと」因数分解を見つけられないケースも当然ありますが、学校で出題される問題は解けるように作ってあるので、大抵は綺麗な数の組み合わせである事が多いと思います。

式にマイナスが入っている場合の考え方も同じで、

$$x^2-7x-18$$

の因数分解は、掛けて -18になって、今度は(マイナスも含めて)加えると -7 になる組み合わせを考えます。この場合は、-9 と 2 が該当しますので、次のように因数分解できます。

$$x^2-7x-18=(x-9)(x+2)$$

因数分解に関する応用問題

中学~高校の問題 ■ 大学数学での問題

中学~高校の問題

さて、学校で出題される問いは上記のようにある程度分かりやすいものである事が普通ですが、次のような「汚い式」の因数分解はどうすればよいでしょう。

$$■問い:x^2+\sqrt{2}x-6\hspace{5pt}の因数分解はどのようになりますか。$$

これを見て、因数分解は「できない」のではないか?と思う人もいるかもしれませんが、因数分解はできます。綺麗な形には到底ならないという前提付きですが・・。

こういった問題は普通はあまり出ないとは思いますが、高校入試や、考え方自体は大学入試のセンター試験程度では出題される可能性はあるかもしれません。

因数分解3
係数は理論上、実数だけでなく複素数でも可です。手計算で解けるかは別問題にして、因数分解が可能であるのは一般の3次式でも4次式でも5次式でも、何次式でも同じ事が適用できます。(ただし、無限級数の場合には少し話が変わってきます。)

理屈としては、二次方程式は異なる2つの解か、重解1つを必ず持ちます。しかも、これは手計算で解を出す事ができます。

$$x^2+\sqrt{2}x-6=0を満たす\hspace{5pt}x=\alpha\hspace{5pt}または\hspace{5pt}\beta\hspace{5pt}は存在し、(x-\alpha)(x-\beta)=0となる$$

という事を利用して「因数分解」が可能であるという事です。ですから、因数分解しなさいと言ってますが、実質的には2次方程式を解くという問題なのです。

$$\left(x+\frac{\sqrt{2}}{2}\right)^2-\frac{1}{2}-6=0$$

$$\Leftrightarrow \left(x+\frac{\sqrt{2}}{2}\right)^2=\frac{13}{2}$$

$$\Leftrightarrow x+\frac{\sqrt{2}}{2}=\pm\frac{\sqrt{26}}{2}$$

$$\Leftrightarrow x=\frac{-\sqrt{2}\pm\sqrt{26}}{2}$$

方程式にした場合の2つの解が分かりましたので、これで「因数分解」できます。

$$x^2+\sqrt{2}x-6=\left(x-\frac{-\sqrt{2}+\sqrt{26}}{2}\right)\left(x-\frac{-\sqrt{2}-\sqrt{26}}{2}\right)$$

$$=\left(x+\frac{\sqrt{2}-\sqrt{26}}{2}\right)\left(x+\frac{\sqrt{2}+\sqrt{26}}{2}\right)【解答】$$

尚、仮にこういう問いが出題されて答えの形が汚くて合ってるかどうか不安になる時はチェックをするとよいでしょう。因数分解したものを、逆に展開してみてもとの式に一致するかを見ればよいのです。

二次方程式の「解と係数の関係」として考えても同じです。

$$(x – \alpha)(x – \beta)=x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta$$

解と係数の関係を使う場合、プラスマイナスの符号に多少の注意が必要です。

ここでは、因数分解された最後の結果を展開する事でチェックしてみましょう。

$$\left(x+\frac{\sqrt{2}-\sqrt{26}}{2}\right)\left(x+\frac{\sqrt{2}+\sqrt{26}}{2}\right)\hspace{5pt}を展開計算します。$$

$$\frac{\sqrt{2}-\sqrt{26}}{2}+\frac{\sqrt{2}+\sqrt{26}}{2}=\sqrt{2},\hspace{10pt}\frac{\sqrt{2}-\sqrt{26}}{2}×\frac{\sqrt{2}+\sqrt{26}}{2}=\frac{2-26}{4}=\frac{-24}{4}=-6$$

このようになるので、正しく因数分解できている事を確認できます。

■参考:3次式の因数分解

一般の3次式を因数分解する方法も基本は2次式と同じですが、一般の3次方程式の解を手計算だけで出すのは結構面倒なので、てきとうな「簡単な1つの解」を見つけさせて、「1次式と2次式の積」の形の因数分解をさせる問いのほうが、出題されるとすれば多いのではないかと思います。

例えば、 $$x^3-x^2-x-2$$ という3次式の因数分解では、じつはこの式に \(x=2\) を代入すると 0 になるので、
まず \((x-2)\) が1つの因数(掛け算を構成する項の1つ)であると分かるのです。

つまり、もとの3次式の因数分解は $$x^3-x^2-x-2=(x-2)(x^2+Ax+B)$$ の形になります。ここで、定数項に着目すれば $$-2=-2B\Leftrightarrow B=1$$ であり、1次の項は $$-1=B-2A=1-2A\Leftrightarrow -2=-2A\Leftrightarrow A=1$$ という事になりますから、これで解答を出せるわけで $$x^3-x^2-x-2=(x-2)(x^2+x+1)$$ と、因数分解できます。2次式の部分をさらに因数分解する事も可能です。

大学数学での問題

大学数学の範囲だと、全体の中の位置付けとしてはそれほど重要ではないのですが、一応存在するテーマとして「無限級数の因数分解」というものがあります。例えば次のようなものです:

$$1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}-\frac{x^6}{5040}+\cdots=\left(1-\frac{x^2}{\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{4\pi^2}\right)\left(1-\frac{x^2}{9\pi^2}\right)\cdots$$

左辺は和が無限に続く「無限級数」で、右辺はそれが因数分解され無限個の積の形になった「無限積」です。
\(\pi\) は円周率で 3.14・・を表します。

もちろん、魔法のように唐突にこの関係式が得られるのではなく、1つ1つの数学的事実を組み合わせると、結果としてはこのような関係式も成立する事が分かる、というものです。

この関係式を得るには少々面倒な手続きがあって、まず左辺の無限級数は、じつは微積分の知識を使って出てくるものなのです。【正弦関数のマクローリン展開を x で割ったものです。】

そして、それを「因数分解」する時に、そもそも無限級数を無限積の形に「因数分解してよいのか?」という問題もじつはあります。これについても、極限や微積分に関する分野での考察が必要になります。これは、厳密に考えると結構面倒です。

いずれにしても中学でも高校でも大学でも、因数分解において重要な考え方は「積の形にする」という事なのです。

2次方程式の「解の公式」

中学でも高校でも2次方程式の「解の公式」は嫌われものだと思いますが、実際、決してきれいな形ではなく覚えやすい部類の公式でもないでしょう。

暗記できる人は暗記してもらって構わないと思いますが、ここでは「暗記しなくても解を出せる」方法を述べます。

数学的にも応用的にも、2次方程式の位置付けは「比較的簡単な操作で解を出せる」というものでしょう。

3次方程式の解の公式も存在しますが、これは2次方程式の場合よりもさらも面倒な形で、応用の場面で手計算で使う事は、基本的にほとんど無いのではないかと思います。

つまり、n次方程式の中で、「手計算で比較的簡単に解ける」ものの限界が2次方程式なのです。できる事なら1次方程式が最も簡単ですが、2次方程式までなら手計算でもじゅうぶん何とかなる、という事なのです。(もちろん。高次の方程式でも容易に因数分解できるようなものであれば手計算で解を出せます。)

2次方程式の解の公式
式変形で解けるようにすると公式を忘れても計算できるので便利です。

解の公式の導出

2次方程式の解を公式として表せる根拠は、一般の2次方程式を加減乗除と累乗の計算によって必ず次の形

$$X^2=C$$

に変形できる事にあります。(同様の操作は3次・4次方程式だと少し面倒で、5次以上になると一般の方程式に対して統一的にそのような操作を行う事はできません。)

$$ax^2+bx+c=0$$

において、本当に大事な事は x = ・・の公式を丸暗記する事ではなく、これを容易に式変形できる事です。

まず、次のように変形します。a はゼロではないとします。

$$a\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+c=0$$

次の変形は少しややこしいと思う人もいるかもしれませんが、これを容易に計算できる事が、中学・高校数学では非常に大事です。

$$a \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2-a \left ( \frac{b}{2a} \right )^2+c=0$$

$$\Leftrightarrow a \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2 =a \left ( \frac{b}{2a} \right )^2 -c$$

$$\Leftrightarrow \left (x+\frac{b}{2a} \right )^2 = \left (\frac{b}{2a} \right )^2 – \frac{c}{a} =\frac{b^2}{4a^2} -\frac{c}{a} =\frac{b^2 – 4ac }{4a^2}$$

$$ \Leftrightarrow x+\frac{b}{2a} =\pm \frac{\sqrt{ b^2 – 4ac }}{2a} $$

$$ \Leftrightarrow x= \frac{-b\pm \sqrt{ b^2 – 4ac }}{2a} $$

これで、「解の公式」になっていますね。

この計算を、具体的な問題を試験で出されるたびに行うのはかえって大変ではないかと思う人もいると思います。しかし、上記は一般の係数 a, b, c でやっているから少し面倒であるわけで、具体的な数値が係数として与えられている場合にはもっと簡単になります。

具体的な計算問題を解いてみる

具体的な問題を見てみましょう。

$$x^2+7x+11=0$$

もしかすると手計算で因数分解できるかもしれませんが、変形で解いてみましょう。

$$ x^2+7x+11=0 $$

$$ \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right)^2-\frac{49}{4}+11=0$$

$$ \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right)^2=\frac{5}{4} \Leftrightarrow \left(x+\frac{7}{2}\right) =\pm \frac{\sqrt{5}}{2}\Leftrightarrow x= \frac{-7\pm \sqrt{5}}{2}$$

もちろん、結果は解の公式を使った場合と同じです。途中の分数計算を手早く済ませる必要は確かにありますが、それさえできれば公式そのものを覚えていなくてもかなり早く解答を出せるはずです。

試験で高得点を取る事が学校の勉強の目的ではありませんが、間違いを減らすポイントの1つとして、解答を出した後の「チェック」の方法を身に付けておくと便利です。正答率は上がるでしょう。

結果が同じなので、公式として覚えてしまったほうが早いという考え方も確かにあります。(覚えられるなら、ですが。)尚、試験での正答率を上げようとするのであれば、式変形で解けるようにして、公式も覚えておくと理想的です。それによって間違いがないか2重にチェックできるためです。
個人的には、まず式変形で解けるように練習してみて、どうしても正答率が上がらないようなら何とか一時的にでも公式も覚えるようにして両方のやり方で解いてみると良いと思います。2つのやり方で解いて答えが一致しなければ、もちろんどこかに計算間違いか何かがあります。

まとめと学ぶ意味

大学数学や物理でも2次方程式を解く場合があります。しかし、そんなにやたらと多く出てくるものではなく、時々、ポッと出てくるようなものです。

そういう時には、中学や高校で教わった公式を明確に覚えている人もいるかもしれませんが、忘れているか曖昧になる人も多いのではないかと思います。そうした場合には、公式を探し出して係数を当てはめるよりは、上記の式変形の方法で自分で解いてしまったほうが多分早いでしょう。

前述の通り、「手計算で簡単に解ける多項方程式は基本的にn=2の時まで」という事が重要です。(3次・4次の方程式の解の公式は、あまり使わないです。)大学数学の代数学では、より抽象的・一般的な視点から多項方程式の解について考察したりします。また、どうしても高次の多項方程式を解く必要になる場合には手計算で解く事は放棄して、コンピュータによる数値計算を行います。