積分による立体の体積計算

高校数学での範囲での積分による体積計算の方法について説明します。

積分と体積の関係

1変数の関数の積分が基本的にはグラフ上の面積を表すのに対し、2変数関数の2重積分は体積に対応します。(座標上のスカラー関数を体積積分する場合などは3重積分。)【※高校数学の微積分の範囲外。】

他方で、2重積分の最初の積分、「面積」に該当するところが積分以外の方法でS(x)という形の関数で表せるのであれば、これについての1変数の積分として体積を計算する事も可能な場合があります。錐体の体積や球の体積など、基本的な立体図形の体積公式はこの考え方でも導出できます。

例えば、断面の形が三角形、四角形、円などの規則的で容易に面積を計算できる図形であれば断面積を積分によらずに出せるので、それを1変数関数で表し積分すれば体積になるというわけです。

積分による体積計算【高校】

立体の断面がS(x)で表され、変数xの軸が断面に垂直である時、体積Vは次のように表されます:$$V=\int_a^bS(x)dx\hspace{15pt}(a,b\hspace{3pt}はてきとうな定数)$$

三角錐の体積【積分】

計算の注意点としては、明確に「体積」なるものを計算したい場合には、きちんと断面に対する「高さ」に対応するように軸の向きをとる必要があるという事です。そうしないと計算しても変な値になってしまい、正しく体積を計算できません。
積分で体積を計算できる根拠は、「薄い錐体」(三角柱、四角柱、円柱など)を加え合わせ極限をとるという操作を体積計算とみなしているためだからです。

例えばある立体の断面をもとに体積を考えたいときには、基本的に軸はその断面に垂直になるようにとって積分を計算する必要があります。
【※じつは軸は必ずしも直線でなくてもいいのですが、その場合でも断面に垂直である必要があります。】

積分の記号「∫f(x)dx」はこれ全体で1つの意味を表すと捉えるべきですが、もともとの考え方から言うとf(x)と(微小な)区間の幅dxの積を加えて区間の数→無限、dx→0という極限を考えたものでもあります。従って、断面積を関数として積分している時点で、「断面積×微小な高さ」という、微小な柱体の体積を考えている事になります。
しかしそこで本来「高さ」にはならないものを軸にして変数を考えてしまうと、積分の結果もおかしくなってしまい実際の体積を正しく表せない・・という事です。

錐体の体積公式【積分による導出】

三角錐、四角錐、円錐の体積公式:「体積=底面×高さ÷3」は、積分で導出できます。
【※それとは反対に、積分を使わなくても導出は一応可能です。】

一番下の底面に平行な平面による錐体の断面を考えてみましょう。最も基本的なのは三角錐なので、まずそれで考えます。

断面によってできる側面の線は、底面に平行になります。このとき、もとの側面の三角形と相似な三角形が作れて、相似比はどの側面でも同じ事に注意します。すると、断面の三角形は底面の三角形に相似であって、面積比は相似比の2乗になります【相似比と面積比の関係】。

この相似比はどこの高さで断面を考えているかによって決まります。そこで、高さの範囲を [0,h]とします。hは三角錐全体の高さです。ある高さxでの断面の三角形の1辺は、底面の1辺の1-x/h倍です。例えば3/hの高さであれば2/3倍という事です。4/hの高さなら3/4倍です。

相似比が1-x/hなので、面積比は(1-x/h)です。

底面積をS(定数)とすれば、断面積はS(1-x/h)という事になり、これを0~hで積分すれば体積を得るという仕組みです。

柱体の体積を積分で考える事も可能で、その場合は断面積が一定(定数関数)であるとして0~hで積分すれば「体積=底面積×高さ」を得ます。

$$\int_0^hS\left(1-\frac{x}{h}\right)^2dx=\left[-\frac{h}{3}\cdot\left(1-\frac{x}{h}\right)^3\right]_0^h=\frac{Sh}{3}$$

この通り、結果は「底面積」×「(底面から測った立体的な)高さ」÷3になります。

原始関数を出すところが多少込み入りますが、原始関数を微分すると合成関数の微分で-3/hが掛けられます。そこから逆算して-h/3を係数としてつけているわけです。
代入するところの計算は、hを代入すると1-x/h=0で, 0を代入すると1-x/h=1になる事により結果の式を出しています。【このため、結果の式では「3乗」というものがあった事は見えなくなり、1/3という係数だけが痕跡として残っているような形になります。】

ところでこの計算を見ると、底面積はSという一般的な形をしていて三角形に限っていません。問題は、高さxでの相似比と面積比という事になりますが、これは任意の多角形で成立する性質です【多角形は三角形に分割できるため】。
そのため、この積分計算は多角錐でも適用できる事になります。
また、円錐の場合でも適用できます。円を多角形の近似と考えてもいいですし、三角形の相似から半径が1-x/h倍になり、円の面積は半径の2乗に比例するからと考えても結果は同じです。
そのようにして、三角錐に限らず、他の多角錐や円錐でも体積公式は同じであるという結果を得るのです。

回転体の体積

高校の微積分では、一般的に「関数を軸周りに回転させてできる図形(回転体)の体積」を計算させる問題が多く問われます。

事の本質は「断面積をxの関数で表し、断面に垂直な方向に積分すれば体積」という事です。

軸の周りに回転させるという事は、断面は必ず円になります。y=f(x)で表されている時、これそのものを変数xにおける「半径」と考えて、断面積をxで表すというわけです。

回転体の体積計算【高校】

$$S(x)=\{f(x)\}^2として積分\hspace{20pt}V=\int_a^b\pi{f(x)}^2dx$$

これは、公式を暗記するのではなくて、意味を覚えて普通に計算する方が断然楽である部類の積分の計算の1つです。「要するに断面積を変数で表す事が必要」という事だけ覚えて、あとは図形的に判断すれば計算が可能です。

回転体の体積【積分】

この「回転体の体積」を積分で計算する事の応用例で重要なのは球の体積公式です。この場合は、円の式x+y=rからy=・・の形に直して2乗し、積分するという事になります。

ただ、高校数学の微積分の問題だと、応用上の重要度というのは度外視して、よく分からない関数を回転させて体積計算させるという問題も少なからず見かけます。
高校数学での出題では、あくまで積分の基本計算を正確にできるかを問うていると捉えるべきでしょう。
大学入試の場合には2つのグラフで囲まれる部分を回転させるといった出題もあります。この場合、グラフ同士の交点を出さないと積分区間が分からないので、積分単独ではなく複合的な形の問題になっています。

微積分の問題の例【高校・大学入試】

高校・大学入試レベルの微積分の問題例です。その中ではやや易しめで、その代わりなるべく「速く・正確に」解けるとよいでしょう。

問題の特徴
  1. 対象となる関数は2次関数か3次関数。
    1つの大問の中に微分と積分がどちらもある事が多い。
  2. 変数以外にaとかbとかの未知の定数がある問題が多い。
  3. 定積分は基本的に面積計算が多い。2つ以上の関数が関わる事が多い。

「問題を解く事自体」は最終的には計算の作業になるので、重要な事は問題を解くのに使う公式や定理を覚えているかどうかという事と、それらの公式や定理の意味を知っているかどうか、具体的に数値を当てはめる計算ではどのように使えばいいのかがある程度分かっているかどうかという事であると言えます。

微積分の問題で言うと、次の事が重要です。

  • 微分と積分は逆演算の関係にある事
  • 微分係数は図形的には「接線の傾き」である事
  • 定積分は図形的には「面積」を表す事
  • 微分係数が0になる点では、その点の前後で微分係数の符号が入れ替わるなら関数は極大値か極小値をとり(これは必ず)、それが最大値あるいは最小値である事もある(これは必ずではありません)

また、グラフ上での直線が直交する条件であるとか(傾きの積が-1になる)、グラフを平行移動をした時の関数の形(xのプラス方向なら f(x)→f(x-c))など、知っておくべき事項もいくつか出てくるでしょう。

次の模擬問題のように、言ってる事自体はじつは何ら難しくないのですが、
ちょっと面倒なものを「手早く」解く必要に迫られるタイプの問題などがあります。

■模擬問題①

2つの放物線f(x)=ax-4axとg(x)=-ax+4axとがあり、aは正の実数、
f(x)とg(x)のそれぞれの原点における接線は直交しているという。
この時に、y=f(x)の原点における接線とy=g(x)とで囲まれた部分の面積はいくらですか。

まず、微分します。
fのほう:2ax-4a →原点で-4a【x=0】
gのほう:-2ax+4a →原点で4a
直交するので傾きの積が-1】 ∴-16a=-1 【a>0に注意して】∴a=1/2
fの原点での接線:y=-4ax=-x
g(x)の式:g=-x/4+x 【条件の式にa=1/2を代入】
【交点が必要なので】g=-xとおいて、-x/4+x=-x
⇔x-8x=x(x-8)=0 ∴交点はx=0と8
【g(x)が原点を通る事は計算しなくても分かりますが】

【面積がほしいので定積分します。放物線のほうが上です。一応概形だけさっと描くとよいでしょう。】
積分:-x/4+2x【-x/4+x-(-x)】を0から8まで

$$\left[-\frac{x^3}{12}+x^2\right]_0^8 =-\frac{8^3}{12}+64=\frac{-128+192}{3}=\frac{64}{3}【解答】$$

このように解答があまりきれいに約分できない場合というのは結構多くあります。
実際の試験では、例えば途中の交点の計算が小問として穴埋めになっていたりします。

実際の試験ではあまり丁寧に図を描く時間はないと思うので、なるべく必要な箇所だけ手早く描く事も大事です。しかしあまり雑に描き過ぎてもかえってミスにつながるので、加減が難しいところです。

★積分の計算のところで、記述式であればきちんと定積分の記号から書かないとまずいですが、穴埋め形式でしかもほぼ2次関数・3次関数のみ扱われる事を考慮し、ここでは「対象の関数」→「定積分の計算は不定積分に値を代入」という感じで敢えて計算を記しています。
また、ここで記した解答の中で【直交するので掛けて-1】のような部分も、記述式であればきちんと書いたほうがよいですが、穴埋め問題であれば頭の中だけで考えて(考えれるようにして)計算だけ紙に書けば時間短縮になります。

グラフ上の適当な点のx座標をaなどとおいて、そこでの接線の方程式を計算させるタイプの問題も多く見られます。次の例を見てみましょう。

■模擬問題②

■放物線y=x上に点P(a,a) があり、0≦a≦2であるという。
この時にaを動かせるとすると、
点Pにおける接線、x軸、直線x=2、y=xで囲まれる面積の最大値と最小値はいくらですか。

【微分します。】2x → 2a【点Pでの接線の傾き】
Pでの接線:y=2a(x-a)+a=2ax-a
【特定の点を通る1次関数の式です。y-aをx-aで割ったものが「傾き」2aという式です。】
0=2ax-aとおくとx=a/2【接線とx軸の交点。次の面積計算で使います。】

【次に面積計算に移ります。このとき、必要な面積は2つの部分に分けたほうが簡単です。
0からaまでは、「放物線-x軸」面積から「a/2~aと接線」の三角形面積を引くのが簡単です。
aから2までは放物線から接線を引いた部分の普通の定積分です。図を簡易的に描くとよいでしょう。】

積分区間を[0,a/2]、[a/2,a]、[a,2]の3箇所に区切っても計算できますが、なるべく簡単に計算する方法を見つけるように普段から練習しておくとよいと思います。

【面積】
①:0からaまで 【放物線・x軸の面積から三角形を引き算】

$$\left[\frac{x^3}{3}\right]_0^a-\frac{1}{2}\cdot\frac{a}{2}\cdot a^2=\frac{a^3}{3}-\frac{a^3}{4}=\frac{a^3}{12}$$

②:x-2ax+aを積分:aから2まで 【放物線から接線を引いて積分。a≦2の条件にも注意】

$$\left[\frac{x^3}{3}-ax^2+ax\right]_a^2=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}+a^3-a^3=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}$$

$$合計:\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}+a^3-a^3=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{4}$$

この問題ではまだここで終わらず、面積の「最大・最小」の計算が続きます。
aで微分:-4+4a-3a/4=-(3a-16a+16)/4=-(3a-4)(a-4)/4
【aに関して3次関数なので微分して極大・極小を調べます。】

符号に注意して、a=4/3の時に最小【極小でもあります。2次関数のグラフで考えると多少簡単。】

$$最小値:\frac{8}{3}-\frac{16}{3}+\frac{32}{9}-\frac{16}{27}=-\frac{8}{3}+\frac{32}{9}-\frac{16}{27}=\frac{-72+96-16}{27}=\frac{8}{27}【解答1】$$
【こういった分数計算は時間がない中では少し面倒ですが、丁寧・確実に計算する必要があります。】

【最大値も問われてるので調べます。】
aが4まで動ければそこが極大値になりそう? →しかし0以上2以下という条件がある
→ 端点である0と2の値を比べて最大値を見つけます。
【a=4/3で極小という事により、そこから0と2のどちらの方向に向けても増大するので。】

a=0だと8/3、
a=2だと8/3-8+8-2=2/3【これはa=0の時の8/3より小さいので最大値にならず】

∴a=0の時最大、値は8/3【解答2】

この問いは微積の大問と大体同じ分量があるので、10分程度で解答できるとうれしいという感じです。

微分した後の導関数が2次関数の形なら、グラフを描いたほうが導関数の符号を把握しやすい場合もあります。

数列って何だろう

数列(「すうれつ」)とは、自然数や整数を代入する事で決定する種類の関数の事です。

考え方:関数と数列

普通の関数y=xなどを考えて、変数の値を自然数に限定しy=nと考えると、
n=1,2,3,4,・・に対してy=1,4,9,16,・・と決定していきます。これが数列の例です。

要するに考え方は1次関数や2次関数などの普通の関数と同じで、変数を自然数や整数に限定したものを特に「数列」と呼びます。

この時に番号nに対して決まる関数の値(数列の値)のことを、
てきとうな文字と番号を組み合わせてyのように書きます。これはy=f(x)と書くのと同じような使い方です。添えてある番号を式に代入しますよ、という意味です。

例えばy=nを数列と考えてyと書いたときには
「y=nにおいてn=2とした場合」の事を意味し、y=2=4のようになります。

一般の関数と区別して「数列」である事を明示するために数列を{y}のようにも表記します。文章の中での表記のされ方としては「自然数nに対して数列{y}があり、y=nである」といった具合です。

一般的には、数列を表す文字はa、b、c・・を使ったa、b、cなどを優先して使う事が多いですが、本質的には番号を下に添えてあればどんな文字でも数列として表記できます。

数列{a}があったときに、一番最初の値を「初項」(しょこう)と言います。
nが自然数であれば、aが初項として該当します。a=1/nであれば、初項はa=1/1=1です。2番目の値は「第2項」のように言います。この時、ものによっては番号を0から始める場合もあり、その時には初項はaです。あくまで、一番最初の項を初項と呼ぶという事です。

漸化式と初歩的な数列

数列を扱う時の一般の関数との違いは、「漸化式」(ぜんかしき)というものを考える事が多いという点です。これは、an+1=2+aのように、n+1番目とn番目などの数列の項の間に成立する関係式を指します。

★「漸」(ぜん)とは、「次第に進む」とか「徐々に進む」といった意味の漢字です。

この場合、例えばa=2+aで、
さらにa=2+aなのでa=2+a=2+(2+a)=4+aのようにもなります。
n+1=2+aのような関係であれば、a=2+an-1としてもよいという事です。この考え方は漸化式を扱ううえで重要です。(番号が1から始まっているような場合には、この漸化式a=2+an-1を適用できるのはaまでであり、aには適用不可です。)

漸化式の性質 $$a_{n+1}=f(a_n)のとき、a_{n}=f(a_{n-1})でもある。$$ $$例えばa_{n+1}=3a_nなら、n≧2に対してa_{n}=3a_{n-1}でもある。$$

より一般的には漸化式とは数列の項同士のかなり広い関係全般を差します。
例えばan+1=aとか、複数の項を考えたan+3=an+2+an+1+aなども漸化式です。
「n+1とn」のように数列の異なる2項についての漸化式を特に言う場合は「2項間漸化式」、「n+2とn+1とn」のように異なる3項についての漸化式を特に言う場合は「3項間漸化式」と言う事もあります。より一般的には「m項間漸化式」も考えれるという事です。
番号が1つではなく2つ飛んでいる場合もあり得ます。例えばan+2=2+aなどです。
このようにあらゆるものが当てはまりますが、普通は漸化式の関係から具体的な数列の形を導出したり、あるいは和や極限を計算するために漸化式を使うので、実際問題として理論で扱われる漸化式はある程度の扱いやすい規則性を持つものに限られます。

高校数学では、特に3つの初歩的な数列を扱います。これらは意味としては簡単なものですが、いずれも漸化式によって特徴付けられます。

高校数学で特に扱う数列
  1. 等差数列
    n+1=c+a で表されます。
    cは定数で、「公差」(こうさ)と言います。
    =a+c(n-1) とも直接的に表せます。
  2. 等比数列
    n+1=ar で表され ます。
    rは定数で、「公比」(こうひ)と言います。
    =an-1 とも直接的に表せます。
  3. 階差数列
    =a-an-1 で表されます。
    -an-1を数列{a}の「階差」(かいさ)と言います。
    =a-an-1は「{a}の階差数列」であるとも言います。
漸化式、等差数列。等比数列、階差数列

等差数列とは、1つの項に決まった定数を加える(あるいは減じる)事で次の項が確定するというタイプの数列です。例えばan+1=3+aを考え、a=2とします。この時、a=3+a=3+2=5、a=3+a=3+5=8、a=3+a=3+8=11、・・・のように次々と計算できます。
これを繰り返して一般的に、a=3+2(n-1)とも表せます。例えばa=3+2(4-1)=11と計算してもいいわけです。

等比数列とは、1つの項に決まった定数を掛ける(あるいは割る)事で次の項が確定するというタイプの数列です。例えばan+1=3aでa=2であるとき、a=3a=3×2=6、a=3a=3×6=18、a=3×a=54、・・・といった感じです。これを繰り返して、a=an-1とも書けます。

等比数列に関しては、和を計算する公式が重要です。

階差数列とは、上記の通りb=a-an-1といった形の漸化式で表される数列です。これの具体的な形は、階差数列の和を考えてみる事で計算できるという特徴があります。

特定の{a}について階差数列bを考える時には例えば次のようにします。a=nのとき、「階差」を計算するとn-(n-1)=2n-1なのでb=2n-1と書けます。
この時、nが整数ならこの形で整合性がとれますが、もし{a}のnが自然数といった制限を課しているならbについては別途に「b=-1とする」などとする必要があります。

いろいろな数列

関数には様々なものが想定できるのと同じように、数列も非常に幅広いものを指します。

例えば、数列{a}の和を考えてa+a+a+・・・+a=Sとして、
それ自体を数列{S}と考える事ができます。
尚、この時Snー1=a+a+a+・・・+an-1ですから、{S}の階差はS-Snー1=aです。この関係自体は、当然といえば当然のものですが結構よく使います。

微積分学で重要な「自然対数の底」eは、ある数列を考えて、そのn→∞における極限値として定義されます。そのように、数列は極限と合わせて考えられる事も多いのです。

$$e=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n\hspace{10pt}として定義されます。$$

また、極限値として円周率が存在する事を式で証明する時にも、図形上の辺の関係を漸化式で表しています。この場合に考えるのは、正n角形と正2n角形を考えてa2nとaの関係を出すという、少し特殊な漸化式です。

その他に、高校ではあまり扱いませんが「関数列」というものもあります。
これは、nによって関数自体の形が決まる数列{f(x)}を考えるという意味です。1つ1つのf(x)は定義域内のxによる関数であるという事です。
例を考えると意味としては難しくなくて、例えばf(x)=xやg(x)=sin(nx)などを数列として考える場合には関数列であるということになります。
数列として見る場合、x,x,x,・・,xのようにn個の関数があると見るわけです。

ベクトルなどでも、n次元に対してn+1次元を考えるというふうにすると諸量を数列的に見る事もできます。そのようにすると、何かの証明を行う際に数列的な計算が使えるので利点があったりします。

数列の和の公式

数列などについて成立する和の公式についてまとめました。

nの1乗、2乗、3乗に関する和

1+2+3+4+5+6+7=28です。
これは直接足し算をしてもよいのですが、じつは7×8÷2=28のようにも計算できます。
これは偶然ではなくて必然であるというのが、数列の和に関する公式です。
1から100までの自然数の和も、100×101÷2=5050のように計算できます。

同様に1からnまでの自然数の「2乗」や「3乗」を全て加えた時に成立する公式があります。

数列の和に関する公式
  1. 1~nまでの自然数の和 $$\sum_{j=1}^nj=\frac{n(n+1)}{2}$$
  2. 1~nまでの自然数のそれぞれの「2乗」の和 $$\sum_{j=1}^nj^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}{6}$$
  3. 1~nまでの自然数のそれぞれの「3乗」の和$$\sum_{j=1}^nj^3=\frac{n^2(n+1)^2}{4}$$

4乗の和以降の公式も理論的には作れますが、複雑になるので公式として使われる事は基本的にはありません。Σ(シグマ)は和を表す記号です。

これらのうち、特に1+2+3+・・+nを表す公式は何かの個数の数え上げの際に(突然)使う時があるので、知っておくと便利な公式です。

ここで、もし1から「n-1」まで加えるといった場合には、単純に上記公式でnのところをn-1に置き換えれば計算可能です。例えば1~n-1までの和は次のようになります。

$$\sum_{j=1}^{n-1}j=\frac{n(n-1)}{2}$$

n→n-1と、n+1→(n-1)+1=n の置き換えで、
結果的にn(n-1)のように書けるという事です。

証明については高校で「証明せよ」という形で問われる事はほとんどないと思いますが、一応どういう根拠であるのかを知っておき、また計算問題の練習としてやってみるのもよいと思います。

図を使う方法も含めて複数の証明方法がありますが、例えば次のように考えます。

1+2+3+4+・・・+n-1+n=Sとした時、
全く同じ式を「和の順番だけ入れ替えた」ものを考えます。

つまり、n+(n-1)+(n-2)+(n-3)+(n-4)+・・・+2+1=Sを考えます。

2つ並べて、左辺と右辺をそれぞれについて加えます。

1+2+3+4+・・・+n-1+n=S
n+(n-1)+(n-2)+(n-3)+(n-4)+・・・+2+1=S

この時、左辺については左から見て何番目の項であるかを合わせて加えます。
例えば、左から3番目にある項は3とn-2なのでこれらを足し合わせる形にします。
すると、次のようになります。
(1+n)+(1+n)+(1+n)+・・・+(1+n)=2s

(1+n)という項はn個ある事に注意すると、
n×(1+n)=2S ⇔ S=n(n+1)/2となり、和の公式を得ます。

ここでどの項も必ず(1+n)になるという事は、
左からm番目の項についてm+(n-m+1)=n+1となるので保証されるというわけです。
【例えばn=3なら3+(n-3+1)=3+(nー2)=n+1です。】

では、2乗の和についてはどうでしょう。考え方は似ているのですが、少し工夫が必要です。

まず、1+2+3+・・・+nを考えます。
この時、最初から2乗を考えずに1乗を考えるところがポイントです。

これについては公式が得られているので1+2+3+・・・+n=n(1+n)/2

続いて、2+3+・・+nを考えます。
これは全体から1を引いただけなので2+3+・・+n=n(1+n)/2-1です。

さらに、3+4+5+・・・+nなどを考えていきます。

1+2+3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2
2+3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1
3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2
4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2-3
5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2-3-4
・・・
n=n(1+n)/2-1-2-3-4-・・・-(n-1)
を考えます。

これらn個の式の両辺を全部加えて等号でつなぐと、
左辺については1が1個、2が2個、3が3個、4が4個、・・・nがn個ある事が分かります。
3が3個という事は3×3=3ですから、これで「2乗」の和ができるわけです。
右辺については、まずn(1+n)/2がn個ですからn(1+n)/2という項があります。(これが公式で「nの3乗」がある理由です。)
続いて引き算の部分は、1乗の和で表されるものをさらに1~n-1について和をとる事になります。
1~n-1までの和としてΣ{j(1+j)/2}を考えるという事です。
この時に「2乗の和」が発生しますが、これは左辺にもありますので移項できます。
ただし、右辺で生じるのは「1からn-1までの」2乗の和なので、「1からnまでの2乗の和」からnを引いたものになります。

+2+3+4+・・・+n=Sとして、

$$S=n\cdot\frac{n(n+1)}{2}-\sum_{j=1}^{n-1}\frac{j(j+1)}{2}=\frac{n^2(n+1)}{2}-\frac{(S-n^2)}{2}-\frac{n(n-1)}{4}$$

⇔3S/2=n(n+1)/2+n/2-n(n-1)/4
=(2n+3n+n)/4
=n(n+1)(2n+1)/4 【うまい具合に因数分解できます。】
⇔S=n(n+1)(2n+1)/6

3乗の和の公式も同じようにできて、今度は2乗の和から1つずつ項を引いたn個の式を加えます。

1+2+3+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6
+3+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1
+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2
+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3
+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3-4
・・・
n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3-4-・・・-(n-1)

が3個あれば3×3=3、mがm個あればm×m=mですから、
左辺の合計は3乗の和になります。
右辺は、n(n+1)(2n+1)/6がn個と、「2乗の和」の形の数列をさらに1~n-1まで和をとったものを引いたものになります。j(j+1)(2j+1)/6=(2j+3j+1)/6なので、これについて1~n-1まで和をとり、引き算するという事です。
少し長ったらしいですが式を整理すると次のようになります。

1+2+3+4+・・・+n=Sとして、

$$S=\frac{n^2(n+1)(2n+1)}{6}-\frac{S-n^3}{3}-\frac{n(n-1)(2n-1)}{12}-\frac{n(n-1)}{12}$$

$$\Leftrightarrow \frac{4S}{3}=\frac{4n^4+8n^3+4n^2}{12}=\frac{n^2(n+1)^2}{3}$$

$$\Leftrightarrow S=\frac{n^2(n+1)^2}{4}$$

等比数列の和

何かと重要になるのは「等比数列の和」です。これは次のようにします。

S=a+ar+ar+ar+・・・+arn-1

これの両辺にrを掛けます。

rS=ar+ar+ar+・・・+arn-1+ar

SとrSは、項数は同じで、途中のar+ar+ar+・・・+arn-1が共通しています。
共通する項は差し引けばもちろん0になるので、
S-rS=a+ar ⇔ S(1-r)=a+ar

r=1の時は単にn個のaの和なのでS=naで、r≠1のときはS=(a+ar)/(1-r)です。

等比数列の和 $$r\neq 1のとき、\sum_{j=1}^nar^{j-1}=\frac{a-ar^n}{1-r}$$ $$r=1のとき、\sum_{j=1}^nar^{j-1}=\sum_{j=1}^na=na$$

これは、r=1/2のときなど、n→∞のときにr→0となる場合が特に重要です。そのように項数を無限個にした場合の等比数列の和は、等比級数あるいは幾何級数と言います。

階差数列の和

n+1=an+1-aのような形の数列(「階差数列」)の和を考えるとき、
n+2=an+2-an+1のようになりますから、
n+2+bn+1=an+2-aになります。
中間の項がプラスマイナスでちょうど消えるという事です。

さらにbn+3=an+3-an+2を加えれば、
n+2が消えてbn+3+bn+2+bn+1=an+3-aになります。

このような形で、階差数列の和を計算する事ができます。具体的に書きだすと、多少分かりやすいでしょう。

=a-a,
=a-a,
=a-a,
n-1=an-2-an-3,
=an-1-an-2

=aとすると、
+b+b+・・・+b
=a
+(a-a)
+(a-a)
+(a-a)
+(a-a)
+・・・
+(an-2-an-3)
+(an-1-an-2)
=an-1

階差数列および類似の形の数列には色々なパターンがあるので、公式を覚えるというよりは、和をとる事で度の項が消えてどの項が残るのかを個々の計算ごとに把握するとよいでしょう。

一般の和について成立する公式

特定の形の数列に限らず、一般に和に関して成立する公式というか関係式には次のようなものがあります。

公式
  1. 「和」の定数倍 $$\sum_{\large{j=1}}^n(ca_n)=c\sum_{\large{j=1}}^na_n$$
  2. 「和」同士の和と差 $$\sum_{\large{j=1}}^n(a_n\pm b_n)=\left(\sum_{\large{j=1}}^na_n\right)\pm \left(\sum_{\large{j=1}}^nb_n\right)$$
  3. 「和」同士の「積」に関する性質$$\sum_{\large{i,j=1}}^{n}\large{(a_ib_j)}=\left(\sum_{\large{i=1}}^n\large{a_i}\right)\left(\sum_{\large{j=1}}^n\large{b_j}\right)$$ $$= (a_1+a_2+\cdots +a_n)(b_1+b_2+\cdots +b_n) $$ $$\sum_{\large{i=1}}^{n}\sum_{\large{j=1}}^{m}\large{(a_ib_j)}=\left(\sum_{\large{i=1}}^n\large{a_i}\right)\left(\sum_{\large{j=1}}^m\large{b_j}\right)$$ $$=(a_1+a_2+\cdots +a_n)(b_1+b_2+\cdots +b_m)$$ ここで、\(\large{a_ib_j}\)は\(\large{a_iとb_j}\)との積です。数列の変数が2つ以上ある場合のシグマ記号を使っています。

これらのうち、最初の2つは通常の足し算の性質を式の形で書いてあるだけなのであまり公式としては認識する必要はないですが、3番目の式は注意する必要があり、しかも重要です。

「和同士の積」の計算の場合は、nとmのうちまずnだけ全部足してmは変数扱いにしておき、
その後でさらにmを動かして全体の合計の和を計算してもよいという事です。

これは、次の計算を考えると式の展開の計算通りにすると(n,m)=(1,1), (1,2), (1,3), (2,1), (2,2), (2,3),・・・の全ての組が\(\large{a_ib_j}\)の項の中に出てくる事によります。

$$(a_1+a_2+a_3+\cdots +a_n)(b_1+b_2+b_3+\cdots +b_n)$$

$$=a_1b_1+a_1b_2+a_1b_3+\cdots+a_2b_1+a_2b_2+a_2b_3+\cdots +a_3b_1+a_3b_2+a_3b_3+\cdots$$

高校数学ではほとんど扱いませんが、変数が複数ある時にシグマ記号をやたらと多く組み合わせる場合には、この「和同士の積」に関する性質を把握しておく事は結構重要になります。

幾何級数(等比級数)

等比数列の和を無限個で考えたものを、「等比級数」または「幾何級数」と言います。
【有限の項数の和のものを同じ名称で呼ぶ事もありますが、ここでは無限級数の場合を扱います。】

収束・発散の条件と計算の仕方

等比数列の和を考え、項数を無限大にしたものはどのようになるかをまとめると次のようになります。

幾何級数あるいは等比級数とは?

次の形の無限級数を「幾何級数」あるいは「等比級数」と言います。 $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=a\lim_{n\to \infty}(1+x+x^2+x^3+x^4+x^5+\cdots+x^n)$$ $$=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}\hspace{20pt}(r\neq 1)$$ これの収束・発散は次のようになります。

  1. 公比の絶対値が1未満【|x|<1】のとき収束する $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\frac{a}{1-x}$$
  2. 公比の絶対値が1以上【|x|≧1】のとき無限大に発散する
    (r=1のとき、nまでの和はna → ∞) $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\infty$$

この「等比数列の和のn→無限大の極限をとったもの」を「等比級数」と言い、
幾何級数(geometric series)」という呼び方をする時もあります。
【高校ではこの幾何級数という呼び名はあまり使わないのですが、物理などでは使用する場合もあります。】

具体的に、a=(1/2)n-1で表されるような等比数列の和はn→∞の時に収束し、
=3で表される等比数列の和はn→∞の時に無限大に発散します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{2}}}=2$$

$$\sum_{n=1}^{\infty}3^n=+\infty$$

この時に指数の部分がn-1ではなくnで表されている場合には注意が必要で、例えばc=(1/3)などと表されている時には計算にn=1の時の「初項」が必要ですので、c=(1/3)・(1/3)n-1のように考える必要があります。(あるいは、初項c=1/3である事をきちんと把握して計算します。)

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{\large{\frac{1}{3}}}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{1}{3-1}=\frac{1}{2}$$

シグマ記号を使って表す場合には、n=1ではなくてn=0から始めて表記する事も可能なので、
その場合にはn=0を代入したものが初項になります。式の形そのものだけを暗記するというよりは、「初項」と「公比」は何なのかを把握する事が大事になります。$$\sum_{n=0}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{3}{3-1}=\frac{3}{2}$$n=0から始まっているので初項は1であり、c’=(1/3)n-1に対する幾何級数の場合と同じ値に収束します。

公比が負の数である場合にも、公比の絶対値が1未満であれば同じ公式を使えます。
例えば公比が-1/2などの場合にも和を無限大にとったものは収束します。各項はプラスとマイナスが次々と入れ替わりますが、全体の和は一定値に近づいていくという事です。この場合、上記公式の公比の部分にマイナス符号の公比をそのまま代入します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1+\large{\frac{1}{2}}}=\frac{1}{\large{\frac{3}{2}}}=\frac{2}{3}$$

ところで、これらの無限級数を「幾何級数」とも呼ぶと上述しましたが、「幾何」に何か関係あるのかという話になります。一応、式に平面幾何的な意味を持たせる事は可能です。

適当な図形・・例えば長方形を考えた時に、図形の面積の1/2倍、そのさらに1/2倍、
そしてそのさらに1/2倍、・・の図形を加えていくと、全体の面積は無限には大きくならずに一定の範囲内で収まる事を確認できます。

=(1/2)n-1の各項はa=1,a=1/2,a=1/4,a=1/8,a=1/16,・・
のようになりますが、これらの項の和は平面図形で言うと、1つの長方形などの面積に対しておおもとの面積の1倍、1/2倍、1/4倍、1/8倍、1/16倍、・・を加え合わせていく事に対応します。
この時、項数を増やしても全体の面積は必ず「2未満」におさまり、無限個に増やした場合は収束値である「2」に限りなく近づく事になります。

他方、a’=(1/2)に対する幾何級数を考えた時は収束値は1になる事は上述しましたが、これは平面図形ではa=(1/2)n-1に対する幾何級数の収束値2から1を引いた場合に等しく、平面図形では図形の面積の1倍を除いた部分に相当します。

無限小数の級数としての扱い

循環小数を和で表すと?

1÷9=0.111111111・・・や、1÷3=0.33333333・・・などの
無限循環小数は、幾何級数により表す事ができます。

0.1とは1/10の事であり、0.01とは1/100の事、
そして0.11とは0.1+0.01である事を考えると分かりやすいと思います。

循環小数は幾何級数で表せる

小数0.99999999・・・・などは、0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・のように考える事で、$$a+ar+ar^2+ar^3+ar^4+ar^5+\cdots$$ の形、つまり幾何級数の形をしています。
等比数列で言うと、初項が0.9、公比が0.1であるものの幾何級数になっているという事です。
公比の絶対値が1未満なので、これは無限級数として収束します。

無限循環小数には、0.123123123123・・・のように、「123」のような複数の番号の組み合わせが繰り返されるものも含まれるわけですが、このようなものも同様に考える事ができます。

0.123123123=0.123+0.123×0.001+0.123×(0.001)
のようになるので、この場合は公比を0.001と考えればよいわけです。このようにして、小数が循環する限りは、無限小数は幾何級数とみなす事が可能です。

無理数のように循環しない無限小数は、小数点ごとに項を分けて無限級数で表す事は可能ですが幾何級数として表す事はできません。

0.999999・・・は、「1に等しい」?

「無限級数展開」が意外と身近にある例として、ちょっとしたクイズを考えてみます。

クイズ:「無限小数0.99999999・・・・は『1に等しい』ですか?」

もしかすると、意見が割れるかも・・しれませんね。結論を先に言いますと、答えは「1に等しい」、です。

・・すると、「いや、1ではないやろ!???」と、怒られるかもしれません。
では、同じ質問を、表現だけ変えてみます:

$$「無限級数 0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・=\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.9)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}は『1に等しい』ですか」 $$

これだと、幾何級数ですね。
これは、明確に答えは「1」なのです。

どういう事かというと、「1に『収束する』」「『極限値と』して1に等しい」という意味において等しくなるという事です。0.99999999・・・は、1に限りなく近づくという意味です。

0.99999999・・・が1に等しいか・等しくないかで意見が割れてしまうのは、小学校でも教わる無限小数が数学的にはどのような意味を持つかが曖昧な形で教えられている事によります。
前述のように無限小数は正確には無限級数であり、無限循環小数であれば公比の絶対値が1未満の幾何級数になるので1つの値に収束する事になります。

ところで、では例えば1/3=1÷3=0.333333・・・・について、この左辺の分数・割り算の形は本当に幾何級数の公式を使って出てくるでしょうか?試してみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.3)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.3}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{3}{10-1}=\frac{3}{9}=\frac{1}{3}$$

このように、無事に1/3(=1÷3)に収束する結果となります。

1÷9=0.1111111・・・についてもやってみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.1)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.1}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{1}{10-1}=\frac{1}{9}$$

無限級数展開としての位置付け

幾何級数は、数学的には1/(x-1)という関数のマクローリン展開と、本質的に同じ無限級数です。
(|x|<1の範囲でのみ収束するという点まで、本質的に同じです。)

|x|<1の公比、初項が1の幾何級数を考えると、

$$\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)=\frac{1}{1-x}$$

これを逆手にとるというか、逆に1/(1-x)という関数を|x|<1の範囲に限定するという条件付きで無限級数として表すのが、「幾何級数展開」です。本質的には幾何級数の計算と全く同じもので、使い方による名称の違いです。

$$\frac{1}{1-x}=\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)$$

$$無限大まで和をとる事を前提に、\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdotsと書く事も多いです。$$

これは無限級数展開の中では非常に簡単に理解できるものの1つです。にもかかわらず、大学範囲の数学や物理でも要所で使用します。知っておくと、学習がスムーズになり便利です。

幾何級数展開は、数学の複素関数論で用いられたり、物理では黒体放射の理論で「エネルギーが離散的な値をとること」(つまり量子的である事)の根拠のひとつとして用いられたりもします。他にも、使われ方は色々あります。割と重要なところで突然出てくるのが特徴かもしれません。

ただしそれらは教科書等の中では「幾何級数」「等比級数」である事の説明なしに、唐突に「1/(1-x)=1+x+x+x+x+・・・と『展開』すると・・」などと書かれる事が結構多くあるので、その点だけ注意しましょう。

幾何級数は、|x|<1のもとで1/(1-x)という特定の関数のマクローリン展開に一致し、本質的に同じ無限級数です。

シグマ記号の使い方(和を表す記号)

和(足し算)を表すのに使うシグマ記号について説明します。

$$英:\sum_{j=1}^n \hspace{10pt}\mathrm{summation\hspace{3pt}notation}$$

記号の意味と使い方

数学で、いくつかの項の和(足し算、合計)を表す時に次の記号を使う事があります。

$$\Large{\Sigma}$$

これはギリシャ文字の「シグマ」の大文字で、英語のアルファベットのSに相当します。
【ギリシャ語だと実際に「s」の発音らしいです。】
和を表す語(英語だと sum)の頭文字として使っていると言われます。

シグマ記号というものは、数学の教科書や本の中でも使われますが、
表計算ソフトの Excel で見た事がある人もいるかもしれません。
使い方はまさしく指定した範囲の数の「合計」の値を計算するというものです。

数学でこの記号を使う時には、もう少しごちゃごちゃと書いてある事が多いです。

$$\sum_{\large{n=1}}^5\frac{1}{n}$$

これは、記号の次に書かれた1/nに「n=1,2,3,4,5を代入して全部足しますよ」という意味です。
各項の和を具体的に書き下すと次のようになります。

$$\sum_{\large{n=1}}^5\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}$$

変数部分はnの代わりにi、j、kなどのてきとうな別の文字を使っても表記できます。
(iを使う場合、虚数という事では無くてあくまで変数の番号を表します。)

数列の和を表したり、何かの数のべき乗の和を表したり、様々な和を表すのに使えます。

$$\sum_{\large{i=1}}^7\large{a_i}=\large{a_1+a_2+a_3+ a_4+a_5+a_6+a_7}$$

$$\sum_{\large{j=1}}^7\large{{e^j}}=\large{e+e^2+e^3+ e^4+e^5+e^6+e^7}$$

$$\sum_{\large{m=1}}^5\frac{1}{m^2}=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{4^2}+\frac{1}{5^2}=1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\frac{1}{16}+\frac{1}{25}$$

「1から始まってnまで」の和を表す時には、シグマ記号の上のところの番号のところにnと書きます。

$$\sum_{\large{i=1}}^n\large{A_i}=\large{A_1+A_2+A_3+\cdots +A_{n-2}+A_{n-1}+A_n}$$

$$\sum_{\large{j=1}}^n\large{{e^j}}=\large{e+e^2+e^3+ \cdots +e^{n-2}+e^{n-1}+e^n}$$

略記号的な書き方で、nなどのてきとうなところで区切る事を前提としてシグマ記号の上のところを略して書く場合もあります。表記が煩雑なときなどに使われます。どの番号までの和なのか明示したい場合には省略せずに上の番号も書きます。

$$\sum_jF_j(x)\hspace{10pt}\left(\sum_{j=1}^nF_j(x)の略記\right)$$

【※この略記法は一般の教科書などでよく使われますが、試験や入試では使わないほうがいいと思います。】

無限級数を考える場合にはシグマ記号の上のところに無限大の記号(∞)を書きますが、これはより正確に言えばまずてきとうな番号nまで和に対して、n→∞の極限を考えたものです。

$$\sum_{\large{n=1}}^{\infty}\frac{1}{n}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}=\lim_{n\to \infty}\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots +\frac{1}{1-n}+\frac{1}{n}\right)$$

(なお、この無限級数は収束せず無限大に発散します。)

他に、最初の番号が1ではなくて、別の番号から始める事も表記できます。
その場合は、シグマ記号の下の部分で「n=1」ではなくて例えば「n=2」と書けばn=2,3,4,・・について項を加えるという意味になります。

$$\sum_{\large{n=2}}^5\frac{1}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}$$

$$\sum_{\large{n=3}}^7\frac{1}{n}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}$$

★番号を1ではなく他の数で始める場合の表記法を使うと、例えば次のような計算もできます。$$\sum_{\large{n=1}}^{10}\frac{1}{n}-\sum_{\large{n=1}}^{5}\frac{1}{n}=\sum_{\large{n=6}}^{10}\frac{1}{n}=\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+\frac{1}{9}+\frac{1}{10}$$ この例では、同じ対象の1/nについて1~5までの番号の項の和を取り去ってしまうので、6から始めた和の形として表す事も可能であるという事です。
より一般的には次のような関係が成立します。 $$n>mのとき、 \sum_{\large{j=1}}^{n}\large{a_j}- \sum_{\large{j=1}}^{m}\large{a_j}=\sum_{\large{j=n-m+1}}^{n}\large{a_j}$$

普通は番号として自然数(正の整数)を使いますが、0も含めた負の数も含めた整数の範囲にする事もあります。その場合は、例えば-2,-1,0,1,2,・・・を順番に対象の関数などに代入して加えていきます。
(数列の場合は、aといった一般的な形の場合にはnとして自然数と0を使うのが普通なので、nのようなn=・・を直接代入できる形の時に負の整数も代入する表記を使えます。また、1/nのように0を代入できないものについては番号として0を含むシグマ記号は使えません。)

$$\sum_{\large{n=0}}^5\frac{1}{n+2}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}$$

また、高校ではあまり使わないと思いますが、整数を要素とする集合の番号を足し上げるという表記も使われる事があります。例えば、説明のためのごく簡単な例としてA={2,3,7,8,10}のとき、この番号にわたって和をとる事は次のように書く場合があります。

$$\sum_{\large{n\in A}}^5\frac{1}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+\frac{1}{10}$$

代入する番号は整数であるという前提で、不等式で範囲を指定する表記法も一部あります。

$$\sum_{\large{1≦ i≦ 7}}\large{a_i}=\sum_{\large{ i=1}}^7\large{a_i}=\large{a_1+a_2+a_3+ a_4+a_5+a_6+a_7}$$

変数が複数ある時

やや複雑な例として、変数を2つ含む和を考える事もあります。

$$\sum_{\large{n,m=1}}^3\frac{m}{n}=\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{2}+\frac{2}{3}+\frac{3}{1}+\frac{3}{2}+\frac{3}{3}$$

これは、n=1,2,3とm=1,2,3の「組」にわたって和をとるという意味になります。
つまり、(n,m)=(1,1), (1,2), (1,3), (2,1), (2,2), (2,3), (3,1), (3,2), (3,3) の9通りについて、
9項の足し算を考えるという時です。

この時に、n=mとなる場合を除いた(n,m)=(1,2), (1,3), (2,1), (2,3), (3,1), (3,2)の6通りだけの和を考えたいという場合には、シグマ記号の下のところにn≠mといった表記をして表現する事があります。

$$\sum_{\large{n\neq m\hspace{3pt}n,m=1}}^3\frac{m}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{3}+\frac{3}{1}+\frac{3}{2}$$

nとmのうちnは3まで、mは2までという場合は、
次のようにシグマ記号を2つ並べて表記する場合が多いです。$$\sum_{\large{n=1}}^{3}\sum_{\large{m=1}}^{2}\frac{m}{n}=\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{2}+\frac{2}{3}$$この表記で、(n,m)=(1,1),(1,2), (2,1), (2,2), (3,1), (3,2)の組の和という意味です。
同様に、3変数について別々の番号までの和である場合はシグマ記号を3つ並べたりします。 $$\sum_{\large{i=1}}^{l}\sum_{\large{j=1}}^{n}\sum_{\large{k=1}}^{m}\large{a_{ijk}}$$ ※いずれの変数も同じ番号までの和をとるときも、このように複数のシグマ記号を並べて表記する場合もあります。

積分の考え方と基本計算

微分が「傾き」を表すのに対し、積分は「面積」を表すというのが基本的な考え方です。
(使い方は色々あって、「体積」を表す事もできます。また、後述するように通常の図形問題で言う面積との相違点もあります。)

英:積分 integral 定積分 definite integral

考え方と計算方法

関数y=f(x)の微分係数はxの各点ごとに1つ、傾きの値として決まります。これに対して、積分の場合にはxの2点を指定するごとに面積の値として決まります。この2点で挟まれる閉区間は積分区間と呼ばれます。この面積は、f(x)を表す曲線とx軸、指定した2点を通りx軸に垂直な直線で囲まれる面積です。

積分の計算には微分演算の逆算を使用します。そのため、基本計算でも微分の知識が必要です。

この面積の計算が積分で、このように定まった積分区間内の面積の値は特に「定積分」と呼ばれます。
積分区間 [a,b] における関数y=f(x)に対する定積分は、記号では次のように書きます。

定積分の記号の書き方と意味

「定積分」を次のように書きます。この計算をする事を「積分する」とも言います。$$\large{\int_a^bf(x)dx}$$

  • \(\int\) の記号はSの文字由来と言われる。(「和」「合計」を表す語の頭文字)
  • 上下に添えられた文字は積分区間 [a,b] の事
  • dxは対象の関数の変数がxである事を表す。
    【dxと書く由来は微小な区間の幅dxをf(x)に乗じて合計し面積を近似しているため】

定積分の値は1であるとか2であるとか、何らかの「値」になります。
(f(x)が負であれば定積分の値は負の数になる事もあり、0でもあり得ます。)

f(x)に具体的な関数を入れて、特定の積分区間の定積分を考えます。$$\int_{-1}^1x^2dx\hspace{15pt}\int_{0}^2e^xdx\hspace{15pt}\int_{0}^{\large{\pi}}\cos xdx\hspace{15pt}\int_{1}^{\large{e}}\ln xdx$$

次に、具体的にどういう計算をすればよいかという話になります。
結論を先に言うと次の手順で定積分は計算できます。

定積分の計算の手順
  1. 微分すると「対象の関数f(x)になる」別の関数F(x) を探す。
    【例えば f(x)=x であればF(x)=x/3, f(x)=cosxであればF(x)=sinx】
  2. 積分区間 [a,b] のa、bをF(x)に代入したものを用意する。
    【例えば積分区間 [0,1]で F(x)=x/3 であればF(0)=0とF(1)=1/3を用意】
  3. F(b)-F(a)を計算する。これが積分区間 [a,b] でのf(x)の定積分の値になる。
    【例えばF(1)-F(0)=1/3-0=1/3になる。】 $$\left(この計算の時に、F(b)-F(a)を\left[F(x)\right]_a^bとよく書きます。\right)$$

「微分するとf(x)になる」別の関数F(x)の事を、原始関数とも言います。
このように計算できる事は、微積分学の基本定理がもとになっています。

基本的な考え方としては、x軸とy軸、x軸上の1点 (x,0) に垂直な直線とy=f(x) の曲線で囲まれる面積をS(x)として、微分の定義式に当てはめるとS(x)を微分して得られる導関数(d/dx)S(x)=f(x) となるというものです。これはy軸、すなわちx=0から始めているので、S(b)からS(a)を差し引けば閉区間 [a,b] における面積となるという事です。

ある点での微分操作により導関数を計算する時には関数自体はどこから始まってもよく、図の面積S(x)も微分する計算を考えるだけならどこから始まってる面積でもよい事になります。しかしそれでは実際の値としての面積を計算できないので、定積分を微分操作からの逆算で計算する時にはS(x)-S(a)のように考えて値を出します。

この時、微分方程式を解く時の注意点にも共通しますが、ある関数F(x)を微分してf(x)になる時、定数cを加えたF(x)+cという関数も同様に「微分するとf(x)になる」関数になります。定積分を計算する時にF(b)-F(a)という引き算を考えるのは、その不定の定数を除去して面積の値を確定させるという工夫です。

具体的な計算例

y=xの積分区間 [-1,1] での定積分は次のように計算します。

$$\int_{-1}^1x^2dx=\left[\frac{1}{3}x^3\right]_{-1}^1=\frac{1}{3}-\frac{-1}{3}=\frac{2}{3}$$

この計算では、1/3という係数がくっつけて【xを微分すると3xなので3で割る】、最後の引き算を考える時に―1をx/3に代入し、それをさらに「引き算する」ので符号はプラスになり、結果的に2つの正の数の値を加える形になっています。

$$\int_{0}^2e^xdx=\left[\large{e^x}\right]_0^2=e^2-1$$

$$\int_{0}^{\large{2\pi}}\sin xdx=-\left[\large{\cos x}\right]_0^{\large{2\pi}}=-(1-1)=0$$

微分すると sinxになる関数は-cosxですが、ここでは符号の煩雑さを避けるために積分区間の端点(\(2\pi\) と0)を代入するところでカッコの外にマイナス符号を出しています。このような操作は、符号も含めて定数倍に関しては一般的に行う事ができる操作です。

なお、この定積分の計算を1次関数(図形的には直線)に適用すると、きちんと「三角形の面積公式」で計算した時と同じ結果を得ます。

$$\int_0^3xdx=\frac{1}{2}[3x^2]_0^1=\frac{3}{2}(1-0)=\frac{3}{2}$$

$$底辺×高さ÷2で計算して\hspace{5pt}\frac{1\cdot 3}{2}=\frac{3}{2}\hspace{5pt}でも同じ$$

グラフがある点を境にy軸に関して対称であったり、点対称になっている場合には図形的な性質を利用して計算を簡単にできる場合もあります。

個々の関数に関してどのように定積分を計算するかは結局のところ微分の問題になる事も多く、合成関数の微分などを使用する事もあります。三角関数の場合には加法定理などを使って工夫してから定積分を計算すると分かりやすい事もあります。

$$\int_0^1e^{2x}=\left[\frac{1}{2}e^{2x}\right]_0^1=\frac{1}{2}\left(e^2-1\right)$$

$$\int_0^{\pi}(\cos x\sin x)dx=\frac{1}{2}\int_0^{\pi}\sin (2x)dx=-\frac{1}{4}\left[\cos (2x)\right]_0^{\pi}=-\frac{1}{4}(1-1)=0$$

$$\int_{1}^{\large{e}}\ln xdx=\int_{1}^{\large{e}}\left[x\ln x-x\right]_{1}^{\large{e}}=(e\ln e-e)-(1\cdot 0-1)=(e-e)-(-1)=1 $$

【(d/dx)(xlnx-x)=lnx+x/x-1=lnx+1-1=lnx 積の微分公式使用】

y軸に関して対称な関数(偶関数)の定積分を [-a,a] で考える時は[0,a]での定積分の2倍の値を考えればよく、原点に対して点対称な関数(奇関数)の定積分を [-a,a] で考える場合は値は必ず0になります。
上記の例でも、積分区間が[-a,a]の形であれば偶関数・奇関数の性質を使って計算できるものもあります。

定積分は「負の値」やゼロの事もある

関数が負の値になる時も、定積分はそのまま計算するルールになっています。

y=-xのような関数を積分区間 [-1,1] で積分する時は、定積分の結果は負の値になります。

$$\int_{-1}^1(-x^2)dx=\left[-\frac{1}{3}x^3\right]_{-1}^1=-\frac{1}{3}-\left(-\frac{-1}{3}\right)=-\frac{2}{3}$$

こういうとき、マイナス符号の扱いが煩雑になりがちなので、計算しやすいように工夫したほうがよい事もあります。例えばこの場合には「y=xの同じ積分区間での定積分にマイナス符号をつければよい」事になるので、次のようにも書けます。

$$\int_{-1}^1(-x^2)dx=-\int_{-1}^1x^2dx=-\left[\frac{1}{3}x^3\right]_{-1}^1=-\left(\frac{1}{3}-\frac{-1}{3}\right)=-\frac{2}{3}$$

y=sinxの[0,\(2\pi\)] での定積分は0ですが、これは 0から\(\pi\)までの定積分の値がプラスで、そこから定積分はマイナスに転じます。それで、差し引きゼロになってしまうという事です。

$$\int_{0}^{\large{\pi} }\sin xdx=-\left[\large{\cos x}\right]_0^{\large{\pi}}=-(-1-1)=2\hspace{15pt}\int_{\large{\pi}}^{\large{2\pi} }\sin xdx=-\left[\large{\cos x}\right]_{\large{\pi}}^{\large{2\pi} }=-(1+1)=-2\hspace{15pt}$$

半周期の範囲で正弦関数とx軸で囲まれる面積がぴったりと整数になるのは意外かもしれませんが、とりあえず積分の計算によるとそういう結果になるという事です。

プラスとマイナスの両方の値を取り得るという意味では、定積分の計算は平面幾何での図形の「面積」と少し違っている事になります。
もし平面幾何の意味での「面積」の総和を出す必要があるなら、確実に計算するのであればy=f(x)が合った時には絶対値記号をつけて|y|=|f(x)|の定積分を計算します。つまり、負の部分は全てx軸に関してひっくり返して計算する事になります。
他に、関数の2乗を考える場合など、関数の値が確実にプラスである事が確定している時には定積分の計算結果は引かれている部分が無い「面積」の総和になります。

対数関数

対数【たいすう】関数 y= logx について説明します。
関数ではなく、何か1つの値logbについて考えた時は単に「対数」と呼びます。

英:対数関数・・logarithmic function  
対数・・logarithm【「比」と「数」を意味するギリシャ語から作った造語と言われる】

定義と表記

対数関数とは、ある正の数aを「何乗したら」xになるのかを、xの関数として表したものです。
logxと表記し、対数関数と呼びます。これは、指数関数の逆関数になります。

対数関数の定義

指数関数の逆関数、すなわち「ある正の数a【≠1】をy乗したらxになる」という意味になる関数を
対数関数と言い、y=logxと書きます。 $$a>0\hspace{3pt}かつ\hspace{3pt}a≠1のもとで$$ $$\large{x=a^y\Leftrightarrow y=\log _a x}$$ この時、1でない正の数aの事を「」【てい】と言います。
y=logx の定義域はx>0です。
特定の数bに対する対数 logbを考える時には「aを底としてbの対数を取る」という表現をする事があります。また、logbにおけるbを「真数」【しんすう】と呼ぶ事もあります。

例として「10という数を何乗したらxになるか」を考えた時、
その値が 「10を底とする対数関数」であり、log10xと書きます。10が対数関数の底【てい】です。

数学の応用や、理論の多くの場合でも「底」として使われる数は大体決まっている事が多く、
それは10とe(≒2.718・・) と2です。
(もちろん必要があれば他の値を底として考える事ができます。)

これらのうち、10を底とする対数を常用対数 (common logarithm)と言い、
log10xを略記して logxと書く事があります。桁数がやたらと大きい場合に使われる事が多いようです。

また、eを底とする対数を自然対数(natural logarithm)と言い、
logxを略記して lnxと書く事があります。(「ログ・ナチュラル」と読む事があります。)
これはeの指数関数とともに微積分の理論で重要です。

他方、情報理論などでは2を底とする対数を使う事があります。
これは、0と1の2進数を扱う事と関連があります。

logxという略表記はじつは意味が一貫してないところがあり、常用対数を表す事が多いのですが、人によって自然対数を表したり、2を底とする対数として表す事もあります。
そのため「以下、log10x= logxと表記する」といったように、普通は断り書きをつけて使われます。

logax の底aは「正の数」で「1ではない」値を考えるというルールがあります。
もし底が1の場合には、1を何乗しても1になってしまうためで、0の場合も同様です。
またもし底が負の数の場合を考えると、ところどころで「穴」が生じます。
例えば-2の2乗は4ですが、3乗すると-8になります。
という事は実数の範囲で考えれば(-2)=8になるyは存在しないという事になり、関数として見た時にx=8のところが存在しない事になってしまいます。
そのため、負の数のxが取り得る範囲からは除外するという考え方をします。

少しややこしいですが、次に具体例でも示すように対数関数自体の値は0や負の数もとり得ます。y=logxについてx>0で、yは実数全域の値をとり得るという事です。

対数関数における値の範囲の整理

y=logxの、a, x, y のとり得る値の範囲を整理すると次のようになります。

  • a:特定の数で、1以外の正の実数。a>0かつa≠1
  • x:変数で、0より大きい数。x>0
  • y:対数関数の値。範囲は実数全域。0や負の数も含め、任意の実数であり得る。

具体例とグラフ

2を底とした時、
x=2は「2の1乗」
x=4は「2の2乗」x=8は「2の3乗」
x=1は「2の0乗」
x=1/2は「2の『-1乗』」
x=1/4は「2の『-2乗』」

これら「○乗」の部分が対数関数の値となり、logxの表記で書くと次のようになります。

log2=1
log4=2
log8=3
log1=0
log(1/2)=log(2-1)=-1
log(1/4)=log(2-2)=-2

点を座標上にプロットしてy=logxのグラフを描くと次のようになります。

特に断りがない時は、対数関数の定義域はx>0であり、値域(yの範囲)は実数全域です。

この時、2は正の数ですから、x=0やx=-1のような場合、2を何乗してもそれらの値にならないので、x≦0については考えない・・対数関数の定義域から除外するという考え方をします。

10を底にして考えた時は
x=10は「10の1乗」
x=100は「10の2乗」
x=1000は「10の3乗」
x=1は「10の0乗」
x=0.1(=1/10)は「10の『-1乗』」
x=0.01(=1/100)は「10の『-2乗』」
x=\(\sqrt{10}\)(≒3.162)は「10の『1/2乗』」

これらを log10xの表記を使って書くと、次のように表現できます。

log1010=1
log10100=2
log101000=3
log1010000=4
log101=0
log100.1=-1
log100.01=-2
log10\(\sqrt{10}\)=1/2

基本公式

対数関数に関して成立する基本公式には次のようなものがあります。

対数と対数関数の公式
  1. logax+logaz=loga(xz) 
  2. loga(1/x)=-loga
  3. logax-logaz=loga(x/z)
  4. logab=bloga
  5. 底の変換公式:$$\log _bx=\frac{\log \large{_a}x}{\log \large{_a}b}$$ 

①対数の和に関する公式:
=x, a=zとすると、xz=a=au+wなので、log(xz)=u+wで、
=x ⇔ logx=u, a=z ⇔ logz=w なので
log(xz)=u+w=logx+logzとなります。
もっと直感的には、例えば2×2=2となるので底を2としたときには
log(2・2)=log+log=3+4=7と計算してよいという事です。

②逆数に関する対数の公式:
y=log(1/x) とすると、a=1/x
⇔ 1/(a)=x ⇔ a-y=x ⇔ logax=-y=-log(1/x)
もっと直感的には、2の3乗は8で、2の「-3乗」は1/8なので
log(1/8)=-log8=-3と計算してよいという事です。

③対数の差に関する公式:
上記2つの公式を組み合わせると、
logx-logz=logx+log(1/z)=log(x/z)となります。

④ベキ乗に対する対数の公式:
y=logx, z=log(x) とすると、a=x, a=x=(a)yb なので
z=yb つまりlog(x)=blogxです。
ここで(2)=4=2のような計算をしています。
log{(2)}=3log(2)=3・2=6のようになるという事です。

⑤「底の変換公式」:
これが最も分かりにくいかもしれませんが、使用頻度は少ないかもしれません。
理屈としては、次のように考えます。
logx=y, logx=zとすると、a=x, b=x,
よってa=bで、a>0, b>0なのでb=ay/zです。
これは「aのy/z乗がbになる」という事になり
logb=y/z=(logx)/(logx)
⇔ logx=(logx)/(logb) という底の変換公式になります。
例えば、log5=(log5)/(log3)という計算が可能であるという意味です。

途中の式でa=bz/yと考えると、logx=(logx)(loga)という関係式になります。
これら2式の両辺の比を考えると、(logb)(loga)=1という関係も得られます。
logb=yつまりaのy乗がbである時、
bのy乗根(のうち正の数)がaなのでbを1/y乗すればaになる・・
つまりloga=1/yとなるという事です。
具体的には、log8=3, log82=1/3より、(log8)(log82)=1といった計算です。

円を表す式【直交座標】

直交座標上で円を表す式について説明します。

基本となるのは図形としての円の定義と、三平方の定理(2点の距離)です。

1点からの距離が等しい点の集合:円

y=2xなどの1次関数は直交座標上で「直線」になり、y=xなどの2次関数は「放物線」になります。

では具体的に他の特定の図形、
例えば「円」の形になるように直交座標上での式を考えるとしたらどのようになるでしょうか。

結論を言うと次のようにします:

直交座標上で円を表す式

点(a,b)を中心とする半径rの円は、
(x-a)+(y-b)=r で表される。

これは何を言ってるのかというと「点(a,b)から点(x,y)までの距離がrですよ」という事です。これを満たす点(x,y)は点(a,b)を中心とする半径rの「円周上」に必ずありますよ、という意味です。

平面幾何での円の定義を思い出してみると、円とは「1点からの距離が等しい点の集まりで構成される図形」でしたから、これは適切という事になります。

そして2点間の距離は三平方の定理を使って出せばよいので、上記のような2乗を含んだ式になるわけです。特に原点を中心とする場合はx+y=rという形になります。

この時、(x-1)+(y-2)=4のような形で、右辺が2乗の形として明示しなくても円の式を表します。この場合には4=2のように書けるので、(1,2)を中心とする半径「2」の円という事です。

理屈自体は以上で終わりで、意味さえ理解すれば難しいものではないと思います。

そのうえで、高校数学でさらに問われる内容をいくつか挙げます。

まず1つは、関数y=f(x)の形で円を表すとどうなるかという事です。

上記のx+y=rのような形も、一応関数の仲間ですがこのようなF(x,y)=0の形の式を「陰関数表現」と言ったり、その中のyを「陰関数」と言ったりします。逆にy=f(x)の形になっている事は「陽」に表わされていると言う事があります。

円の式の場合は、式を変形してy=f(x)の形にする事は比較的容易です。次のようになります。

$$原点中心の場合:x^2+y^2=r^2\Leftrightarrow y=\pm \sqrt{r^2-x^2}$$

$$一般の場合:(x-a)^2+(y-b)^2=r^2\Leftrightarrow y-b=\pm \sqrt{r^2-(x-a)^2}\Leftrightarrow y=\pm \sqrt{r^2-(x-a)^2}+b$$

プラスマイナスの符号は、原点中心の円であればx軸を境にした円の上側か下側かであるかを言っています。積分で円の面積を計算する場合などは、この形の式を使います。

ただし、図形同士の交点を調べる場合などは、無理にy=・・の形にしないで2乗の形のままで計算したほうが楽である場合も多いです。

円と図形との交点問題

円x+y=2と直線y=x+1の交点の数を調べる場合、円の式のyに直接y=x+1を代入して2次方程式の形にして実数解がいくつあるか調べるといった形になります。

グラフを描くと「明らか」である場合もありますが、式で示すなら次のようになります。
+y=2にy=x+1を代入して、
+(x+1)=4
⇔2x+2x-3=0

ここで2次関数2x+2x-3はx軸と2交点を持つので(x=0で負の値なので)2次方程式の解は実解が2つあり、円と直線の交点は2つというわけです。もし2次方程式が重解を持てば円と直線は「接する」という事になります。この計算をよく見ると、計算方法自体は放物線の時とほぼ同じという事も分かります。

さて、では円同士の交点の場合はどうなるでしょうか。

この場合、直線と放物線との関係の場合と異なり、y=・・の形を代入しようとするとかなり面倒です。そのため、結論を言うと2乗を含んだままの形でまず処理し、1次式の形にする工夫をします。
具体例で見てみましょう。

■問い:2つの円(x+1)+(y-1)=3と(xー1)+(y+1)=7があるという。
これら2つの円の交点はいくつありますか。

この場合、どちらの式にもx、yの項とx、yの項がともにあります。
これらをどう処理すればよいかという話です。

まず、片方の円の式からx+y=・・の形にします。

(x+1)+(y-1)=3
⇔ x+2x+1+y-2y+1=3
⇔ x+y=2y-2x+1

これを、もう片方の式に代入します。
まず2乗部分を計算して、x+yの部分にまとめて代入するという事です。

(x-1)+(y+1)=7
⇔ x+y-2x+1+2y+1=7
これにx+y=2y-2x+1を代入して、
(2y-2x+1)-2x+1+2y+1=7
⇔ 4y-4x+3=7
⇔ y=x+1

ここで得られたyとxの1次式の関係は何を意味するかというと、特に「2交点を持つ場合」にはその2点を通る直線になります。このy=xの関係を、2つの円のどちらにでもいいので代入します。ここでは最初のほうの円に代入します。

(x+1)+(y-1)=3にy=x+1を代入して、
(x+1)+x=3
⇔ 2x+2x-2=0 ⇔ x+x-1=0
この2次方程式は異なる2実解を持つので、
2つの円は異なる2つの交点を持ちます。【解答】

尚、ここでもし交点を持たない(最後の2次方程式の形で実解を持たない)場合には、途中で得られる1次式の関係はもちろん2交点を結ぶという意味は持ちません。

また2交点を持つと分かった時の具体的な座標は、xが分かった時点でy=xの1次式のほうにxを代入すればyが分かるのですが、xをもしも円のほうに代入してyを出そうとするとさらに2つの解が出てくる場合があります。これは、直交座標上の円には端っこの2点を除いて、1つのx座標に対応する点が必ず2つ存在するからです。その時には片方の点だけが2交点の1つになります(2交点を結ぶ直線がx軸に垂直の場合を除きます。)

特定の点を通る円

少し面倒くさいタイプの高校数学の問題として、「ある1点を通る円」「ある2点を通る円」などが扱われる場合があります。

特定の点(A,B)を通る半径Rの円の場合、
中心の座標を(r,r)とすると (r-A)+(r-B)=Rという関係式ができますから、中心の座標を動かせるとすれば「軌跡は (A,B)を中心とした『半径R』の円」という事が言えます。

では「ある2点を通る円」ではどうなるかというと、半径が一定であれば図を描くとおそらく「2パターン」しかあり得ない事が予想できますが、実際そうなるのです。
(A,B)と(C,D)の2点を通り、半径がR、中心の座標を(r,r)とすると
(r-A)+(r-B)=R および
(r-C)+(r-D)=Rの2式ができます。

そこから先の計算は、まずr+r=・・の形の式に変形して、もう片方に代入します。すると、rとrの1次式の関係を作れます。これは、(A,B)と(C,D)の2点を通る直線の式です。要するに、円同士の交点を調べる時の計算と同じです。

さらにr=・・の形を円のどちらか片方の式に代入すれば2次方程式になりますから、半径一定のもとで実数解は多くても2つ、つまり中心の座標は2パターンだけで他はあり得ないという事が式でも示されます。
(ここで、半径が小さすぎてそもそも所定の2点を通りようがない場合には実解がない結果になります。また、重解になる場合は2点のちょうど中点に円の中心が来る場合です。)

この場合に途中の計算で出てくるxとyの1次式は、(A,B)と(C,D)を結ぶ線分に垂直で、線分の中点を通る直線になります。

定点を通る円

では、「3点を通る場合」はどうでしょう?この場合、中心と3点の関係を表す式が3つできます。いずれも、中心を動かせるとすると「円の式」の形になります。この時、まず1つを使ってr+rを残り2式のそれぞれに代入し、2乗を消して1次式の関係にします。

ところが、この場合は1次式の関係が2つできて「連立一次方程式」になってしまいますから、
とrが満たす解があるとすれば1つという事になります。

この時、異なる2点を通る場合と違うのは、rとrの値を計算する時に円の半径は必要ないという事です。異なる2点を通る場合には、最後の2次方程式に半径が必要です。

それに対して異なる3点を通る場合には半径が「消えた」状態でrとrの連立一次方程式が出てきます。

式で書くと、まず(r,r)と3点までの距離が等しいという3式を考えます。
(r-A)+(r-B)=R
(r-C)+(r-D)=R
(r-E)+(r-F)=R

第1式から
+r=2Ar-A+2Br-B+R であり、
これを第2式と第3式の両方に代入します。

すると、
2(A-C)r-A+C+2(B-D)r-B+D=0
2(A-E)r-A+E+2(B-F)r-B+F=0
という2つの式になりますが、この時点でRは消えているわけです。
これは最初の3式でともに「等しい距離R」を使ったためです。
(一見ごちゃごちゃした式ですが、rとrに関して見れば1次式です。)

そこで連立1次方程式からrとrを確定させると、もとの式に代入すると半径であるRもそれによって決まらないとおかしい話になります。つまりこの場合は、中心座標が1つに決まる事に加え、半径も1つに決まるという事です。

ここでじつはもう1つ細かい注意点があって、
それは連立1次方程式は「解を持たない」場合があるという事です。

「そんな場合ありましたっけ。」と思われるかもしれませんが、単純な話で、
x+y=2 かつ
x+y=3
のような場合の事です。
これは、ここでは異なる3点が「同一直線上」にある場合に発生します。ですので、その場合に限っては最後の連立1次方程式の解がないので、3式を満たすrとrは「存在しない」という事になります。

まとめると、「『同一直線上にない』異なる3点」を通る円はただ1つしかなく、しかも半径も1つに確定するという事になります。また、同一直線上にある異なる3点を通る円は存在しないという事にもなります。

組み合わせの総数【場合の数】

組み合わせの総数について説明します。順列と同じく「場合の数」の分野に属する個数の数え方です。これは確率でも使用しますし、2項定理を始めとして種々の計算にも使われる事が特徴です。
(英:組み合わせ【数学の用語として】 selection, combination)

考え方・・順番を区別せずに選ぶ

順列が並び方を区別するのに対して、
組み合わせは本当に「何を選んだか」だけを問題にして順番は無視するというものです。

例えば、4つのものを並べる順列の総数は4!通りですが、
4つのものから4つを選ぶ組み合わせは1通りだけです。

順列:{A,B,C,D}{A,B,D,C}{A,C,D,B}{A,D,C,B},・・他 24通り
組み合わせ:{A,B,C,D}の1通り

4つのものから3つを並べる順列の総数は4・3・2=24通りですが、組み合わせの場合はどうなるでしょう。具体的に書きだしてみると、{A,B,C}{A,B,D}{A,C,D}{B,C,D}の4通りだけという事になります。これを記号では=4のように書きます。

尚、4つのものから3つを選ぶという事は実際のところ「残る余りの『1つ』」の選び方と同じなので、ただちに「4通り」と言う事もできます。これは次に触れるように、公式のような形で定式化する事もできます。

「組み合わせ」を考える時には順序を考えません。

「並び方を区別しないのだから組み合わせのほうが簡単か?」というと、「その総数」が組み合わせの場合のほうが少なくなるのは正しいです。
ただし、考え方としては多分順列のほうが簡単で、順列を理解してから組み合わせを考える方が学習の手順としては便利です。

結論の式と公式

公式にすると、結論は次のようになります。

組み合わせの総数を表す式

n個の中からm個を選ぶ「組み合わせ」の総数をの記号で表し、次式のように計算できます。$$_nC_m=\frac{_nP_m}{m!}=\frac{n(n-1)(n-2)\cdots (n-m+1)}{m!}=\frac{n!}{(n-m)!m!}$$ここで、等号で結ばれてる部分は式変形しているだけで、どの方法で計算しても良いという事です。は順番を区別した「順列の総数」を表します。

成り立つ関係式

特に、m=n、m=1の場合や、n-m個を選ぶ場合には次式が成立します。$$_nC_n=1\hspace{20pt}_nC_1=n\hspace{20pt}_nC_{n-m}=_nC_m$$

この組み合わせの記号2項係数と呼ぶ事もあります。(名称が違うだけで中身は全く同じです。)
その名称の由来は冒頭で触れましたように、2項定理で係数として表される事によります。

考え方としては次のようにします。

まず、n個からm個を選び「並び替える」場合は通りです。この時、「n個からm個を選ぶ」という操作はじつはすでにやってしまっているんですね。

ただし順列の場合は、その「選んだm個の並び替え」も実行して、総数にカウントしているわけです。言い換えると、順番を区別していない「組み合わせ」のそれぞれを「m個を並び替変えの総数:m!通り」倍しているわけです。

例えば、5つから3つを選んで{A,C,D}であったとしましょう。これは、順番を区別していないものです。つまり、{C,A,D}と書いても同じものとします。

ここで、順列の場合は、{A,C,D}の並び替えもカウントするので、この組み合わせに対して3!=6通りあるわけです。

これは他の組み合わせ{B,C,E}などに対しても並び替えれば3!=6通り発生するわけで、他の組み合わせも個体の数が同じですから同様に並び替えで3!=6通りずつ発生します。

結局、次のようになります:
「組み合わせの総数【】」×「選ぶ個数【m】に対する順列の総数【m!】」
=「n個からm個選んで並び替える順列の総数【】」
という事になります。これを式で書くと次のようになります。

$$(_nC_m)\cdot (m!)=_nP_m\hspace{5pt}\Leftrightarrow \hspace{5pt}_nC_m=\frac{_nP_m}{m!}$$

これが、組み合わせの総数を表す公式の意味です。

この式の続きは、単なる分母と分子の約分の計算になります。順列を階乗だけで表す形にすれば組み合わせの式もnとmを使った階乗で表される形になります。

この式を使えば、例えば7個から3つ選ぶ場合の組み合わせの総数は、次のようになります。

$$_7C_3=\frac{7\cdot 6\cdot 5}{3!}=\frac{7\cdot 6\cdot 5}{3\cdot2\cdot1}=35$$

このように「35通り」という結果が比較的簡単に分かるわけです。尚、これが順列であれば6倍の210通りですから、並び替えずに組み合わせにすると大きな数に比較的なりにくい傾向がある事も分かります。

ここで、同じ組み合わせを階乗だけの形で書くと、

$$_7C_3=\frac{7!}{(7-3)!3!}
=\frac{7!}{4!3!}$$

他方、7つから4つ選ぶ組み合わせの総数は、

$$_7C_4=\frac{7!}{(7-4)!4!}
=\frac{7!}{3!4!}$$

であり、これらは同じ数ですね。7個から3つ選ぶ場合も4つ選ぶ場合も、同じく35通りです。これは、3つ選んだら残り4つも必然的に決まるのだから同じ総数になって当然であると考えてもよいですし、一般のnとmに対する式変形で示す事も可能です。

式で示す場合、n個から(n-m)個を選ぶ組み合わせの式を作ってみればよいのです。

$$_nC_{n-m}=\frac{n!}{\{n-(n-m)\}!(n-m)!}=\frac{n!}{m!(n-m)!}= _nC_m$$

分母のところの掛け算が順番を入れ替えても同じになる事から、この関係が成り立ちます。つまり、7個から2個選ぶ組み合わせの総数が分かったら、7個から5個選ぶ組み合わせの総数も同じであるので計算不要という事です。(順列の場合は、そのようにする事はできません。)

必ず自然数になる?

さてここで、言われると確かにそのように納得できるかもしれないが、順列の総数を「m!」で割る時に「自然数になる」保証はあるのか?と思うかもしれません。

これは「理解」する方法としては、「組み合わせの総数が1.5通りとか2/3通りになる事はあり得ないので、必ず自然数であるに決まっている」・・と、捉えても支障はありません。
実際、どうやっても自然数にしかならないからです。

他方で、順列とか組み合わせとかを離れて、単に自然数nとmを持ってきて次式が自然数になるか否かという問題が提示された時に「組み合わせだから自然数」と言うのは数学的な証明には、もちろんなりません。

次の式は必ず自然数になる?

n、mを自然数(n≧m)として $$\frac{n!}{(n-m)!m!}=\frac{n(n-1)(n-2)\cdots (n-m+1)}{m!}$$ (これが「組み合わせの総数」を表す前提はないものとして)

結論は、この式は必ず自然数になります。分子は分母で必ず割り切れて余りはでないという事です。

そのようになる事に対する一番簡単な証明は、「順番にn個並んだ自然数の中には、nの倍数が少なくとも1つ必ず含まれている」という事を根拠にするものです。

例えば、順番ずつ3つ並んだ自然数の中には、3の倍数が少なくとも必ず含まれています。これは、どんなでたらめな自然数を持ってきても、それに+1、+2する形(あるいは-1、-2)する形で並べてあげると3の倍数が必ず含まれるという事です。

214というてきとうな自然数をもってきて、{214、215、216}と並べれば、この場合は真ん中の数が3の倍数ですね。この理屈の意味自体は簡単で、1,2,3,4,5,6,7,8,9,・・・と、並べたとき、どこでもいいから数が3つ含まれるように区切ると、どうやっても3の倍数は1個以上含まれるという事です。

3でなくても、5でも6でも7でも、任意の自然数でそのようになります。
もう少し一般的に言うと、例えば3の倍数なら、任意の自然数は3n, 3n+1, 3n+2 のいずれかで表されるので1を加えていくか引いていく形で3個並べれば、その必ず3nの形のものが存在するという事です。

$$_nC_m=\frac{n(n-1)(n-2)\cdots (n-m+1)}{m!}$$

の形で見るのが一番分かりやすいかと思いますが、式の分子の(積の)項数はm個です。他方、分母はm!=m(m-1)(m-2)・・・3・2・1ですから、m以下の自然数しか含まれません。そのため、分子に含まれる任意の自然数の倍数は、必ず分母に存在するという事です。これが基本的な考え方です。

話が少しややこしくなるのは、組み合わせの式の場合では分子に複数の自然数があるためです。仮に自然数pとqの倍数が共通する数として分母に含まれていたら、必ず割り切って全体として自然数になるかが怪しくなる可能性もあるとも言えるわけです。

しかし実際はそのような事は起きないので大丈夫であるというのが結論です。

まずnは固定したうえで、mまでは確かに割り切れて全体が自然数になるとしましょう。

次のm+1が素数であったら、mまでの数のいずれでもないし倍数でもないので、分子のm+1個の中にm+1の倍数が存在し、割り切れる事になります。

m+1が素数でない場合で、m以下の自然数pの倍数になっている時であっても、例えばpq個の中には、pの倍数が少なくとも「q個」含まれています。これは、p個の塊で区切れるところがq個あるためです。
そのうえで、pqの倍数も1個以上あるので、分母の1つのpの倍数を既に割って使ってしまったあとでも別のpの倍数が必ず残っています。それで、m+1=pqの倍数も分母に必ずあるので、再び全体として割り切って自然数になるというわけです。

具体例では、=8・7・6/(3・2・1) は確かに自然数になりますが、続いてを考えた時に、=8・7・6・5/(4・3・2・1)の分母に新たに入った4=2について、すでに分母にある2については、分母の項数が4つなので、2の倍数は2個以上あります。(この場合、見れば分かる通り6と8です。)分母の4項の中で、4の倍数は必ず1個以上ある事は確定しています。

A,B,C,Dと並べたところの1つが4の倍数だと考えると分かりやすいかと思いますが、例えばBの位置にあったとき、C、Dは使用しませんが、2の倍数は2個ずつ区切ったA,BとC,Dのどちらにも1個ずつ含まれます。このようにして、分母にすでに2がある事で4で割り切れなくなってしまう心配はないという事です。

4つの続く自然数には2の倍数と4の倍数がどちらも必ず含まれ、同様に8つの続く自然数には2の倍数、4の倍数、8の倍数がそれぞれ必ず含まれます。
9個の続く自然数には3の倍数と9の倍数がどちらも必ず含まれます。

少しややこしい理屈である事は間違いありませんが、基本的な考え方は一般のnとmに対しても同じ事です。

このようにして、組み合わせの総数を表す式はきちんと「割り切れて」自然数になる事が式の形からも保証されます。

別の方法はある?

「組み合わせを順列を使って表せるのは分かったが、別の方法はないのか」

あります。場合の数を考える時には考え方は1つとは限らず、複数の考え方で同じ結論になる事はよくあります。ただし、組み合わせに関して言えば順列を階乗で割る表し方が一番簡単ではないかと思います。

別のやり方としては、1つの例として次のように組み合わせを考える事もできます。

A,B,C,D,E,F,Gの7つから4つ選ぶ場合、まず「Aを含む場合」、残り3つを6つから選びます。次に、Aを含まずBを含む場合、A,Bを含まない5つから3つを選びます。
こういう具合に考えても組み合わせの総数を表す事ができて、次の関係が成立します。

$$_nC_m=_{n-1}C_{m-1}+_{n-2}C_{m-1}+_{n-3}C_{m-1}+\cdots +_{m}C_{m-1}+_{m-1}C_{m-1}$$

6つから3つを選ぶ組み合わせは、さらに5つから2つを選ぶ場合・4つから2つを選ぶ場合・・に分割できます。数が少なくなれば「明らかに」分かる組み合わせの場合にたどり着きます。
7つから4つ選ぶ時に実際にこれが正しいのかを見てみると、

$$_7C_4=_{6}C_{3}+_{5}C_{3}+_{4}C_{3}+_{3}C_{3}=20+10+4+1=35$$

通常の組み合わせの公式で計算すると、

$$_7C_4=\frac{7\cdot 6\cdot 5\cdot 4}{4\cdot 3 \cdot 2 \cdot 1}=35$$

この通り一致するわけですが、これは次の理由になります。
まず分母の7を(4+3)の形に書きます。

$$_7C_4=\frac{(4+3)\cdot 6\cdot 5\cdot 4}{4!}=\frac{4\cdot 6\cdot 5\cdot 4+3\cdot 6\cdot 5\cdot 4}{4!}=\frac{6\cdot 5\cdot 4}{3!}+\frac{3\cdot 6\cdot 5\cdot 4}{4!}$$

$$=_6C_3+\frac{3\cdot (4+2)\cdot 5\cdot 4}{4!}=_6C_3+\frac{4\cdot 5\cdot 4\cdot 3+2\cdot 5\cdot 4\cdot 3}{4!}=_6C_3+_5C_3+\frac{2\cdot 5\cdot 4\cdot 3}{4!}$$

$$=_6C_3+_5C_3+\frac{2\cdot (4+1)\cdot 4\cdot 3}{4!}=_6C_3+_5C_3+_4C_3+\frac{ 3\cdot 2\cdot 1}{3!}=_6C_3+_5C_3+_4C_3+_3C_3$$

一般のnとmの場合も同じで、分母の一番大きい項を(m+p)の形にして分離していくとこの形になります。

しかし言い換えると、この考え方でやったとしても結果は同じでnCm=(nm)/(m!) と同じ式になるのです。