中学数学で特に重要な定理や公式は何か

試験というものを度外視して、中学校を卒業した後も(勉強を続けるなら)必要になるという意味で、中学数学において特に重要な公式等を3つ厳選してみたいと思います。

もちろん、それ以外のものは一切知らなくてもよいという意味ではありません。
ここでは、「特に重要なものを敢えて挙げるとしたら?」という事で挙げてみます。

また、「重要か・重要でないか」という事はどうしても主観的な面があります。「重要な公式」を集めたものは、じつは「数学的な意味での集合」ではない(!)という事が実は言えます。何が重要で何が重要でないかは人によって意味が異なる場合があり、正しいか正しくないかという事を絶対的に決められないからです。ここでは、高校や大学に進学して学習を続けた場合に欠かせないという意味での重要さを考えてみたいと思います。

BGM:MUSMUS CV:CeVIOさとうささら
中学数学で特に重要な公式等を3つ挙げるとしたら?

①三平方の定理(ピタゴラスの定理)

三平方の定理は直角三角形の辺の長さに対して成立する公式で、内容的にはそれほど複雑ではないので比較的分かりやすい公式かと思います。

$$直角三角形の斜辺cと、残り2辺a,bに対してa^2+b^2=c^2$$

基本的には図形に対して成立する公式であるわけですが、三角関数を考えるうえでの基本となる公式であり、直交座標上の2点間の距離を算出するのにも使う公式でもあります。複素数の極形式やベクトルの大きさの定義にも直結している公式であり、数学だけでなく物理学等でも頻繁に使う式になります。

三平方の定理が直接的に関わる事項
  • 三角比 および 三角関数の定義と公式
  • 直交座標上の2点間距離の算出(平面、空間の両方)
  • 極座標の式
  • 複素数の極形式(→微分方程式の解法として重要な場合あり)
  • ベクトルの大きさの算出(→力ベクトル、速度ベクトルなど、物理学で使用)

また、間接的に関わる事項として「平方根」の考え方も、三平方の定理を使って2点間の距離を算出するうえで特に必要になるものとなります。数学的にも、「無理数」に属する実数のうち初歩的なものとして2や3などの平方根を挙げる事ができます。

直角三角形と三平方の定理は、三角比と三角関数の考え方のおおもとになっています。
直交座標上の2点間の距離は三平方の定理によって算出します。
直交座標上の円の式なども三平方の定理を適用しています、

②因数分解と式の展開

2番目に挙げたいのは、もしかすると最も「役に立たないもの」として挙げられる事も多いかもしれない因数分解と、その逆の操作である式の展開です。

$$因数分解(例):x^2 – x=x(x-1)$$

$$式の展開(例):x(x+1)=x^2+x$$

因数分解とは要するに数や式を積(掛け算)の形に直すというだけのものですが、「実数(および複素数)に掛け算して0になる数は『0しかない』」という性質を使って方程式を解く基本的な方法として使われます。また、一見複雑な式を整理するためにも使いますので、数学の理論でも、物理学や工学の理論で数式を扱う際にも、因数分解と式の展開は計算の手法として必須です。

$$方程式の解法(例):x^3-3x^2+2x=0\Leftrightarrow x(x-2)(x-1)=0 \Leftrightarrow x=0,1,2$$

また、物理学等への数学の応用では微積分が重要ですが、微分および積分の初歩的な理論でも因数分解と式の展開は計算を進めるうえで必ず必要になります。

微積分を学ぶうえでも因数分解と式の展開の考え方は必要になります。

もちろん、因数分解の計算ができる事以上に重要な事として、ここで挙げたいずれの例においても「因数分解の計算」自体は目的ではないのが基本です。数学自体の理論でも、数学を応用する理論でも、基本的に因数分解や式の展開はあくまで計算の手段の1つです。従って、学習の目的を忘れてひたすら「因数分解の計算問題を解く」という事に没頭してしまうと(あるいは没頭させてしまうと)、「役に立たない」という事に繋がってしまうというのは確かに事実でしょう。

③マイナス×マイナス=プラス

3つ目として、因数分解等にも関連しますが、「マイナスとマイナスを掛け算するとプラスになる」という関係式を挙げておきたいと思います。

$$(-1)×(-1)=+1$$

$$計算例:(x-1)(x-2)=x^2-x-2x+2=x^2-3x+2\hspace{10pt}【(-1)×(-2)=+2】$$

この計算は、プラスの値の範囲の計算(例えば個数や金額の計算)ではそれほど重要ではないと言えます。しかし「向き」が関わる計算では重要である場合があり、とりわけ物理学では重要です。

あるベクトルの向きが逆向きである事を表すためにもマイナス符号は使われ、「2回反転させるともとの向きに戻る」といった事も、「マイナスとマイナスを掛け算するとプラスになる」という計算規則と調和するわけです。

また、複素数を構成する虚数単位はi=-1を満たす「数」として定義されますが、(-1)=1という計算のもとで、虚数単位iは1とー1以外の数で「4乗すると1になる数」という見方もできるわけです。この事は、より一般的な形で複素数の掛け算についての規則としてまとめられています(「ド・モアブルの定理」)。

そういった理論の考察をする基礎となる事から、(-1)×(-1)=+1という関係式は一見すると奇怪に思う人も多いかと思いますが、特に重要なものとしてここで挙げておきたいと思います。

直感的な説明の一例:7-3=4という引き算を、敢えて7-(5-2)=4と書いてみましょう。
この時、7から5を引いたら2で、元々の7-3=4から見ると多く「引き過ぎ」です。そこで、引き過ぎている分である2を加える、つまりプラスの値として加算すると正しい計算結果になります。
式と計算規則に対して、このような意味付けをする事は可能です。
この他に、マイナスの符号をプラス符号の「逆向き」として捉える例などもあります。

立体の体積

体積の意味と考え方、柱体や錐体などの立体の体積の計算の仕方などについて説明します。

このページでは、「高さ」と言ったら断りのない限りは、底面から見た「立体的な意味での高さ」の事を意味しています。

立方体と柱体の体積

基本的には、1辺の長さが1の立方体の体積を1として、これが何個分あるかで立体の体積とします。それが2個分あれば体積は2、半分であれば1/2という具合です。面積が「広さ」を表す量であるのに対し、体積は大きさを表します。この時、1つの辺の長さが何倍かになれば、同じ割合で体積も増加します。

体積とは? ■ 体積の単位 ■ 柱体の体積の考え方 

体積とは?

その意味で、1辺の長さがaの立方体の体積は、a3になります。例えば1辺が2であれば2×2×2=8が体積で、「1辺が1の立方体」の8個分の大きさであるという事です。

また、直方体の体積は互いに垂直な方向に伸びた3つの辺の長さの積になります。底面が辺の長さaとbの長方形で、立体的な高さがcである直方体の体積はa×b×c(=abc)となります。

体積の単位

3つの辺の長さが掛けられるので、その意味で辺の長さに単位がついている場合には、例えばセンチメートルcmに対しては体積の単位はcmと書き、「立方センチメートル」と読みます。
単位がメートルであれば体積の単位はmと書き「立方メートル」と読みます。

この時の単位の換算は、1m=(100cm)と考えて、1m=1000000cm(=10cm)というふうにします。1立方メートルの体積は、100万立方センチメートルの体積に等しいという事です。これは、計算上の見かけはそうなるという事ではなくて、実際に立方メートルの体積の箱には1立方センチメートルのサイコロが100万個入る大きさであるという事です。

「え、そんなにたくさん入りますか・・?」

数字だけ見ると、確かにそんなに数が大きくなるだろうか?と、思ってしまいますね。しかし、100が100個あれば1万で、1万が100個あれば100万ですから、確かにそのような事になるのです。1cmのサイコロを1mの中に並べると、100個です。1mの長さの正方形には、それが100列ありますから1万個入ります。1mの長さの立方体には、それが100段ですから100万個になるという事です。身近な例で、計算してみると「意外と」大きくなるという例かもしれません。箱などの入れ物の体積を、特に「容積」と呼ぶ場合もありますが、数値として扱う時には体積と全く同じ単位や計算法を使います。

実用上の体積の単位として、「リットル」があります。記号ではℓ(「エル」の筆記体)を使います。【Lやl(小文字の「エル」)なども使われます。】これは牛乳などにも書いてある事もあるのでなじみがある人も多いかと思います。

実際、これは基本的には液体の体積を表すのに使われる事が多いものです。1リットルは、1000cmに等しい体積です。液体の体積や、液体を入れる容器の体積を特に「容量」と言う場合もあります。

化学などでは「ミリリットル」という単位もよく使います。記号は、mℓもしくはmlのように書きます。この「ミリ」は、「1ミリメートル【mm】」のミリと同じで、千分の1という意味です。【10mmは1cmですが、本来は1m=1000mmという換算です。】

つまり、1000mℓ=1ℓですが、1ℓ=1000cmでしたから、じつのところ1mℓと1cmは、体積としては全く同じです。ただ、ミリリットルのほうは液体の容量を指す事が多いという点が実用上の違いです。

柱体の体積の考え方

面積の場合、三角形の面積は
三角形→平行四辺形→長方形→「正方形が何個分詰まっている広さか」
という考え方のもとで計算していました。立体の体積も、基本的に同じ考え方です。

まず、三角柱を考えると、これは2個合わせれば底面が平行四辺形である四角柱になります。その四角柱は、出っ張っている部分を切り取って反対側にくっつければ、直方体になります。

つまり、底面の三角形の面積を出して、立体的な意味での高さを掛ければ、体積1の立方体が何個分あるかという意味での体積に等しくなります。

さらに、任意の多角柱は、三角柱に分割できます。という事は、角柱の場合には
「底面の図形の面積(=底面積)」×「立体的な意味での高さ」
によって体積が計算できるという事を意味します。

円柱や、さらには任意の閉曲面を底面とする柱体でも考え方は同じで、無数の細かい三角柱の体積の和の極限を考えます。一般に柱体の体積は「底面積」×「立体的な意味での高さ」で計算します。

平行6面体のような立体の体積も、「底面×立体的な意味での高さ」で計算できます。底面に平行な平面で各高さの断面を見ると平行四辺形である事によります。【そのような薄い四角柱の合計の極限・積分として考えると導出は楽です。】

錐体の体積

三角錐、多角錐、円錐の体積の場合は、底面積×高さ÷3で計算します。(これを使った計算は、中学校の数学や高校入試の問題でも問われる事があります。)

角錐や円錐の体積の公式

体積=底面積×高さ÷3

この「÷3」あるいは「×1/3」は一体どこから出てくるのかというと、一番簡単な導出方法は積分を使う方法ですが、それを使わないでも導出は可能です。

まず、三角錐からです。三角柱を考えて、これを体積が等しくなるように3分割する方法を考えます。この時に三角柱を、ちょうど体積が等しい三角錐3つで分割できます。三角柱の体積は「底面積×立体的な高さ」ですから、それを3で割って三角錐の体積になるというわけです。あるいは、三角錐を基準に考えるのであれば、「底面を共有し高さが等しく、かつ3倍の体積を持つ三角柱」を必ず考える事ができるので3で割ればよいというわけです。

三角錐の体積については、底面積と立体的な意味の高さが分かっていれば、三角錐である限りどんな形状であっても公式を使えます。また、三角錐には4つの面がありますが、どの面を底面としても、そこから高さを測れば体積の公式を使えます。

四角錐以上の多角錐は、全て底面を三角形の和として考える事ができます。そのため、多角錐の体積も同じく「底面積×立体的な高さ÷3」で計算できます。円も多角形で近似できるので、円錐の体積も同様になります。

柱体の時と同じ考え方で、多角錐と円錐についても同じく底面を三角形に分割して考えます。ただし四角錐以上の場合は、公式を使う時にどの面を底面として考えてもよいわけではなく、四角錐であれば四角形の面を、円錐であれば円の面を底面として、そこから高さを測ります。

球の体積については、図形だけから考えるのはかなり難しいので、積分によって体積の公式を出すのが普通です。結果は、半径をRとして(4/3)×R×円周率になります。

立体の図形【空間図形】

球・立方体・三角柱・三角錐などの立体的な図形です。
基本的な「立体」(りったい)の図形の名称や、用語について説明します。

平面図形をいくつか立体的に組み合わせる事で、箱やボールのような、高さや奥行きのある図形を作れます。平面図形では線が図形を構成しますが、立体では線で構成される「面」によって全体が構成される形になります。立体の図形では面が平面状になっているものだけでなく、曲がった「曲面」である事もあり得ます。

柱体と錐体

三角形の各頂点に、柱を立てるように「平面に対して垂直に」3本の線を引いて、下の三角形(「底面」)と平行になるように同じ三角形を屋根のようにおいたものを「三角柱」(さんかくちゅう)と言います。
壁のようになってる面(「側面」)は長方形または正方形になります。底面が正三角形の場合、「正三角柱」のように呼ぶ場合もあります。

同様に四角形に対して柱状に底面に垂直に線を引き、底面に平行になるように四角形の屋根をつけたものは四角柱とも言いますが、底面と側面のいずれかが長方形(正方形であってもいい)のものを特に「直方体」と呼び、サイコロのように全ての面が正方形であるものを「立方体」と呼ぶ事が多いです。

底面が5角形、6角形、・・の場合は5角柱、6角柱、n角柱のように呼びますが、それらは実際問題としてはそれほど多く使う語ではないかもしれません。
これらの、多角形を底面とする柱状の立体は「角柱」という名称で分類される事もあります。それらの底面が正多角形の場合は、三角柱の場合と同様に「正n角柱」「正多角柱」のように呼ぶ場合もあります。

底面が円の場合は、筒のような立体で「円柱」と呼ばれます。

角柱と角錐、円柱、円錐
いわゆるピラミッド型の立体は四角錐です。真上から見ると四角形になります。
1~6の目が出るサイコロは立方体です。

角柱のようにまっすぐ立っていなくて底面から斜めに向かって線分が伸びている図形も、もちろん一般的にはありえます。それらのうち、向かい合う面が1つの方向に平行であるものを特に「平行n面体」と呼ぶ事があります。角柱も平行n面体の特別な場合という事になります。特定の分野でたまに扱われるものとしては、平行6面体があります。

他方で底面の図形の各頂点から、立体的な意味で上下の方向に向かって1点に線が引かれて尖った立体になる場合は、底面の図形の種類によって「三角錐」(さんかくすい)「四角錐」「五角錐」「六角錐」「n角錐」「円錐」のように呼びます。これらはまとめて「錐体」と呼ばれる部類の立体です。そのうち底面が多角形のものは「角錐」として分類される事もあります。
「錐」という漢字は「すい」と呼ぶほかに「きり」とも呼んで、これは工具類の穴を開けるキリの事です。

角錐の底面が正多角形である場合で、底面の各頂点から1点に向かう線分の長さが全て等しい場合、角柱の時と同じように「正三角錐」「正四角錐」「正5角錐」・・・などと呼ぶ事もあります。

これらの三角柱や四角錐などの立体を、「面」の数に着目して呼ぶ言い方もあります。例えば、三角錐は底面1つと側面が3つで4つの面があるので「四面体」になります。三角柱であれば5つ面があるので「五面体」、直方体や立方体は6つの面があるので「六面体」になります。

この時、全ての面が同一の正多角形で構成されている立体を「正多面体」と言い、面の数に応じて「正n面体」のように呼びます。例えば、正三角形だけで構成されている三角錐は「正四面体」であり、正三角錐の特別な場合です。立方体は「正六面体」です。しかし、平面上の正多角形や、空間での正多角錐・正多角柱ではn≧3に対してあらゆるものを考える事ができるのに対して、正多面体としてあり得るものは、じつは立体的な構造により有限個に制限されます。
そのあり得る個数は意外と少なく、正多面体には正4面体・正6面体・正8面体・正12面体・正20面体だけがあります。これはじつは、角度が満たす関係から比較的容易に証明ができます。

立体の断面がどのような平面図形になるかという事も、立体の幾何学としてよく扱われるものです。

断面

曲面からなる立体・図形

算数や中学校では問題としてはあまり扱わないと思いますが、もっとまるまった形の「曲面」で構成される立体もあります。(上記の錐体の中でも、円錐は曲面を持つ立体です。)

ボールのような立体は数学では「」(きゅう)と呼びます。球の断面は円になります。

球に関しては、3次元の空間上で「中心からの距離が一定である点の集まり」として定義もされます。これは、平面で円を定義する時と全く同じ考え方です。

他方で、楕円を立体にしたような立体(断面は楕円)は、「扁球」(へんきゅう)あるいは「楕円体」などと呼ばれます。

また、浮き輪のような真ん中に穴があいた立体を「トーラス」と呼ぶ事もあります。このように、曲線・曲面で構成された立体というものも多く考える事ができます。球、楕円体、トーラスのように全体が包まれるようになっている空間上の立体を一般的に「閉曲面」と総称する事もあります。

球・楕円体・トーラス

高校で扱うもので多いのは「軸を中心に曲線を回転させたような立体」で、主に積分で体積計算の一例として扱われます。そういったものは「回転体」とも呼ばれます。球、楕円体、円柱、円錐などもその部類の立体として見る事もできます。

特殊なものとして、曲面がねじれて厳密には裏も表もない「メビウスの輪」のような図形も考えれます。これは、帯のような曲面を考えて(平面上ではなく空間上で)、1つの端の「表」をもう片方の端の「裏」にくっつける事で簡単に紙で工作もできる図形です。最初「表」と思われる箇所からたどって1周すると、端を「裏」に接着していましたから最初の位置の裏に来てしまうというものです。もちろん、2周すればもとの位置に戻るという事になります。

閉曲面、回転体、メビウスの輪

色々な平面図形

算数や数学ではいろいろな図形について学びます。

算数や数学という「数」を扱う勉強でなぜ「図形」の事を学ぶのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、基本的には算数や数学で扱うのは「図形の長さ」「広さ」「角度」・・といった、数量の計算として扱える部分です。

つまり図形に関して、長いとか短い、広いとか狭い、角ばっている、丸まっているなどといった特徴を数の大小として扱ったり計算したりする事を、算数や数学において学びます。あるいは、高校数学以降で教えられる内容ですが、例えば円と楕円の違いは何かといった事を数量によって特徴づけるという事をしたりします。

平面の図形を構成するもの

「形」あるいは「図形」には、丸(「円」【えん】)、三角形、四角形、六角形、楕円など色々なものがあります。これらは紙の上に描けるような平面図形です。あるいは、放物線や双曲線などのように、平面上で一定の形を持ちながらも延々と果てしなく続くものも図形と呼ぶのが普通です。

平面図形を構成するパーツとして、「」と「」があります。
「線」の中には「直線」と「曲線」があります。
いくつかの線や1つの曲線で囲まれる(「閉じている」)部分は「領域」と言ったりします。

平面図形を構成する部品
  1. 点・・1つだけポチっと平面上に打たれる「点」。長さがゼロ。
  2. 線・・無数の点の集まりで、長さを持ち、面積はゼロのもの
    • 直線・・まっすぐな線。【平面上で2点間が最短距離になる】
      直線上の2点間だけで構成される部分を特に「線分」(せんぶん)と言います。
    • 曲線・・曲がった線。無数の細かい直線の集まりともみなせる。
  3. 領域・・平面上で面積を持つ部分。線で区切られる・囲まれる場合が多い。
    無数の点・線の集まりともみなせる。
    ※領域の面積は必ずしも有限ではなく無限大でも可です。例えば平面全体、直線で区切られた平面の半分などを領域として考える事もできます。

これらは平面だけでなく、空間の図形を構成する部品でもあります。

直線で作られる平面図形

平行でない3本以上の直線を用意すると、領域を持つ図形を作れます。これが三角形、四角形、五角形、六角形、n角形・・などと呼ばれるもので、一般に「多角形」とも言います。
【3本以上の直線を用意しても、それらが「同じ1点で交わってしまう」場合には多角形はできません。】

多角形の、角ばっているところに対応する点(2直線が交わっている点)を「頂点」と言い、頂点同士を結ぶ線分を「」と言います。

図形ですから、図で見たほうが早いでしょう。
ただし、何かを計算したり証明したりする時には言葉で説明・表現できる事も重要である場合もあります。

正六角形は平面にすき間なく、しき詰める事ができます。

辺の長さが全て等しく、それぞれの内側の角度(内角)の大きさも等しい多角形を、特に「正三角形」「正四角形(=正方形)」「正五角形」「正六角形」「正n角形」・・のように呼び、これらを一般的にまとめた「正多角形」という表現も使います。

■多角形を考える時には、基本的に「へこんでる部分」がないように考えます。これは、辺同士のなす角のうち図形の内側にあるもの(「内角」)の大きさが180°未満であるとも表現できます。
ですから例えば星形の「☆」の図形などは、辺同士の交点が10個ありますが、これは10角形とは呼ばない事にするという決まりにしています。へこんでいる部分を含むためです。
へこんでいる事を凹(おう)、角ばっている事を凸(とつ)の漢字で表す事もあります。この凹・凸というのは数学独自の記号ではなく、一般にも一応使われる漢字です。

■三角形については辺の長さが等しいという時点で角度も全て等しくなります。しかし、四角形の場合だと辺の長さは等しく、角度は全て同じわけではないという場合(ひし形)があり得ます。同様に他の多角形でも、各辺の長さは全て等しいけれど内角の大きさが異なる場合はあり得ます。

三角形と四角形に関しては、特別な性質を持つものに別途名前をつけています。

三角形の名前 △
  • 正三角形・・3辺の長さが全て等しい三角形
  • 二等辺三角形・・2辺の長さが等しい三角形
    【その意味で正三角形も二等辺三角形に含まれます。】
  • 直角三角形・・1つの角度の大きさが直角(90°)である三角形
  • 鋭角三角形・・3つの角度の大きさ全てが、それぞれ90°未満である三角形
    【鋭角は「えいかく」と読みます。】
  • 鈍角三角形・・1つの角度の大きさが90°を超える三角形
    【鈍角は「どんかく」と読みます。】
  • 直角二等辺三角形・・二等辺三角形のうち、1つの角度の大きさが直角である三角形
四角形の名前 □
  • 正方形・・「正四角形」の通称。4つの辺の長さが全て等しく、内角の大きさが直角。
  • 長方形・・向かい合う辺(対辺)の長さが等しく、内角の大きさが直角である四角形
    正方形も長方形に含まれます。
  • 平行四辺形・・向かい合う辺が互いに平行である(この時、長さも等しくなる)四角形。
    正方形、長方形も平行四辺形に含まれます。
  • ひしがた【菱形】・・平行四辺形のうち、辺の長さが全て等しいもの。
    (※内角は等しくなくても可。ただし、対角は必ず等しくなる。)
    正方形は、ひし形に含まれます。
「辺の長さがそれぞれ等しいが、内角の大きさは必ずしも等しくない」多角形についての補足図です。
ひし形については、4つの合同な直角三角形で構成できる事から、平行四辺形でもある事や、対角線が直交する事などが分かります。
五角形については正方形に正三角形をつなぎ合わせたもの、六角形については三角形を軸対称に反転させながら作ったものなどが例として挙げられます。

三角形については多くの平面幾何の性質があります。

曲線による平面図形

曲線で作られる図形については、一番簡単なものが「円」です。円は「中心からの距離が等しくなる」図形(点の集まり)で、何かを固定してその周りを回転させると得られるものなので身の回りにもボール・何か巻いてある芯の断面、車輪や水車などで広く見られる形です。

他方、円を1つ以上の方向にだけ引き延ばす、あるいは縮小した「楕円」もあります。(定義は「2定点からの距離の和が等しい点の集まり」です。これは中学校では数学としては扱いません。)

身の回りで楕円が見られる簡単な例としては、円状の物を真正面からではなく斜めから見た時に見られる見かけ上の形です。当然ながら円を斜めから見れば1つの方向につぶれて細長く見えるわけですが、もとが円であればそれが楕円の形になります。

これは、正方形を斜めから見ると長方形にも見える、長方形を特定の斜めから見ると平行四辺形に見えるというのと同じ理屈です。

1つの平面の真上から見て図形の影を見るようにして作る図形を、数学の用語ではその図形の「射影」と言います。

円や楕円のように平面上で曲線が丸まって「閉じた」領域を持つ図形は一般的には「閉曲線」と呼ばれます。

これに対して、放物線や双曲線のように閉曲線ではない曲線もあります(「開曲線」とも言います)。

◆参考:接線線積分の定義と考え方(微積分を含みますが、曲線を対象とする積分理論の1つの例です。)

開曲線・閉曲線という考え方は、微積分の理論や物理学への応用の理論において重要となります。

関数で言うと、2次関数y=xは放物線、
反比例の関数y=1/x(とy=-1/x)は双曲線に該当します。

円に関しては平面幾何上の種々の性質や、円周・面積に関する種々の性質が成立します。

三角形の合同

2つの三角形が合同であるとは、形も大きさも全く同じである事を言います。
形も大きさも同じという事は、面積も等しくなります。

合同な三角形であっても、向きなどが別々の方向を向いていて「見た目」が異なってる場合もあります。2つの三角形が合同であるかを調べるには次の3つの条件を満たしているかを調べます:

三角形の合同条件

次のいずれか1つを満たせば2つの三角形は合同です。

  1. 3辺の長さがそれぞれ等しい
  2. 2辺の長さとそのはさむ角の大きさが等しい
  3. 1辺の長さと両端の角の大きさがそれぞれ等しい

2つの三角形が合同である事は「3本線」の記号を使って△ABC≡△DEFのように書きます。この時、角度が等しい頂点が対応するようにします。例えば△ABC≡△DEFと書いている場合には∠BCA=∠EFDである事も表しています。

合同である三角形は、この3つの条件全てを満たします。つまり、1つの条件を満たせば他の2つの条件も同時に満たされるという事です。合同である事を証明するには1つの条件が満たされている事を示せば十分という事になります。

三角形の合同条件
2つの三角形が合同である事の証明においては例えば「2辺とそのはさむ角」の条件を使う場合には、①AC=A’C’ ②BC=B’C’ ③∠ACB=∠A’C’B’ の3つを明らかにする事で△ABCと△A’B’C’ は合同である事を証明できます。

図を見ると分かりやすいと思うのですが、ある三角形に対して合同な別の三角形とは、1つの三角形を回転や反転させたものであると言う事もできます。イメージとしてそのように捉えるとよいでしょう。
回転や反転は角度や辺の長さを「不変」に保つ操作であるとも言えます。

合同の関係と似ているものとして、相似の関係があります。相似とは「形だけが同じで大きさは違う」というものです。

形も大きさも同じである場合が合同の関係であり、2つの三角形が合同である場合は相似である条件も満たしています。つまり、合同と相似は無関係なものではなくて、形も大きさも等しくなるためのやや厳しい条件が課されるのが合同で、形だけが等しい緩い条件だけが課されているのが相似というわけです。

一見すると合同にはみえないけれどよく見ると合同であるという例は、例えば三平方の定理の証明の1つで見られます。この例では形も大きさも全く同じ三角形が存在するのですが、向いている方向が全く異なるうえに他の様々な線が入り乱れているので気付きにくいのです。

合同な三角形の例
右側の図には互いに合同な三角形が2つあります。

しかし、丁寧に辺の長さや角度を調べると確かに合同である事を示せます。この場合では「2辺とその挟む角が等しい」という条件を使っています。

図の3つの四角形は「正方形」であるという条件があるので、
AC=AC’ AB=AB’ という長さの関係がまずあります。
次に、∠BAC=∠CAB+∠CAC’=∠CAB+90°ですが、
他方で∠B’AC’=∠CAB+∠B’AB=∠CAB+90°なので
∠BAC=∠B’AC’になります。
ゆえに、△ABC≡△AB’C’ である、と証明されます。

こういう具合に、合同である事を示すわけです。
尚、この例の場合では、「合同ゆえに面積も等しい」と話が続いていきます。

このように「見ただけでは分かりにくい」場合であっても、辺の長さや角度を調べて合同である事を確かに示せる場合があるわけです。数学的に論証するという事を学ぶ1つの意味がここにあります。単に論理的な思考をするというだけでなくて、事実関係の検証をする1つのツールとしての意味があるという事です。

3辺が全て等しいという条件を使う場合も、たまにあります。例えば、円に外接する三角形の頂点と円の中心で構成される2つの三角形です。

合同な三角形の例②
右側の図の小さな三角形2つは互いに合同です。

上図において、△AOCと△BOCに注目します。
まず、同じ円の半径なのでOA=OBです。
また、辺OCは共有されているのでもちろん長さは2つの三角形で等しいのです。
さらにここで、∠OAC=∠OBC=90°なので、三平方の定理によりAC=BCになります。
よって2つの三角形の3つの辺の長さはそれぞれ等しく、確かに△AOC≡△BOCというわけです。

☆この場合について細かい事を言うと、∠OAC=∠OBCであっても、90°でなければ、この部分の角の大きさが等しいというだけで合同とは言えないのです。
これは、式で示すのであれば余弦定理を使います。すると、90°以外でこの部分の角の大きさが等しい場合には、ACの長さとして「2つ」の解が得られる事があります。つまり、合同である場合とそうでない場合が生じ得るのです。
そのため、2辺の長さと「どれでもいいから1つの角」が等しいというだけでは、それだけで必ず合同であるとは断定できないのです。他方、その角度が90°であれば余弦定理において解は1つだけなので合同であると言えます。もちろん、直角三角形において余弦定理は三平方の定理そのものです。
詳しく言うと、「2つの三角形が合同である」⇒『2辺の長さとどれか1つの角が互いに等しい』
という関係式は正しいのですが、その逆は言えないという事です。『2辺の長さとどれか1つの角が互いに等しい』という事は、2つの三角形が合同である事の必要条件ではあるけれども十分条件ではない、という事です。(この考え方は中学校では必要ありません。)

合同条件に関する注意点
2辺とその「はさむ角」がそれぞれ等しい場合に2つの三角形は合同になりますが、2辺が「はさんでいるわけではない」角度が等しい場合はどうなるのかを図で説明しています。

逆に、見た感じ同じ形・大きさに見えるけれどもきちんと調べるとじつは合同ではないというパターンもあり得ます。描かれた図ではいかにもそれらしく見えるけれども、条件を整理すると合同の3条件のいずれにも当てはまらず「じつは形も大きさも違う」という事が判明する場合もあります。

ここでは、あくまで図形問題に限定してという話ではありますが、「見た目」で判断するのではなく論拠を備えて検証するという事が三角形の合同条件や相似条件の学習において重要なポイントの1つです。これは試験問題を解くという話の中でも重要なので、おさえておきたいところです。

三角形の相似

三角形の相似条件は高校入試を始めとして中学数学では重要事項の1つです。

図形問題を解くために必要という事でもありますが、三平方の定理などの重要な定理が成立するための根拠の1つになっている事なども重要と言えるでしょう。

平面において2つの三角形が「相似【そうじ】」であるとは、
ごく簡単に言うと「大きさは違うが形は同じ」であるという事です。

★これに対して、「大きさも形も同じ」なのが三角形の合同です。
意味する事と、成立する条件の違いに注意しましょう。
合同と相似は一見似ていますが扱い方が違うものなので、気を付けましょう。
「2つの三角形が互いに合同」ならば「2つの三角形は互いに相似でもある」と、確かに言えます。 しかしこの逆は成り立ちません。「相似であるから合同でもある」と言ったら、それは間違いです。
【※中学数学の範囲外になりますが詳しくは必要条件と十分条件の関係から把握する事になります。合同である事は相似である事を含んでいるという包含関係になります。】
そのため、合同と相似をごっちゃにしてはならず、関係を意識しながらも丁寧に別々に整理する事が必要であり、重要でもあるのです。

2つの三角形が合同であるならば、相似でもあるとは言えます。相似であっても合同ではない場合があります。

もっとも、単に見た目が似ているというだけでは相似であるとは言わず、きちんと数学的な条件があります。

相似条件と証明での使い方

次の3つの条件の「いずれか」を満たす2つの三角形は互いに相似であると言います。「いずれか」という事は、「1つでも当てはまればよい」という事です。

2つの三角形が相似であるための条件

次のいずれか1つが成立するならば2つの三角形は互いに相似です。

  1. 2組の角の大きさがそれぞれ等しい
  2. 2組の辺の長さの比と、その挟む角の大きさがそれぞれ等しい
  3. 3組の辺の長さの比がそれぞれ等しい

この時「△ABCと△DEFは(互いに)相似である」などと言い、△ABC∽△DEFとも書きます。(無限大の記号に似てますが別物です。)この時、「同じ形」として対応する角が順番通りになるように書きます。
相似な2つの三角形の互いの「辺の長さの比」を相似比と言います。例えば1:2とか1:3という関係が成立します。場合によっては整数比とは限らず、1:\(\sqrt{2}\) とか2:\(\sqrt{3}\) などの相似比もあり得ます。

三角形同士が相似である事がひとたび判明すれば、これら3つの条件は全て成立します。つまり、例えば2組の角度が等しいという条件が成立すれば、3組の辺の長さの比もそれぞれ等しいという事です。

ただし、相似である事を証明するためにはどれか1つだけ判明していればよいという事です。

★比較する2つの三角形が直角三角形であれば、その時点で「対応する1つの角がそれぞれ等しい(90°で等しい)」事は言えているので、もう1つだけ等しい角度を見つければよいといった作業になります。

繰り返しますが合同条件と似ていますが違うもの(相似条件のほうが制約が緩い)なので注意しましょう。
例えば、辺の長さが分からないけれど角度だけで比較できるのは相似条件のほうであって、合同条件にはそのような条件はないのです。(暗記するのではなく意味を考えてみると分かりやすいと思います。角度だけが分かっている場合、形は同じであっても辺の長さは伸び縮み可能なのです。)

合同である場合は「相似比」が1:1であると言う事もできます。それが「大きさも同じ」という意味であって、大きさが異なる場合には相似比が1:2とか2:3とかになるわけでそのような場合も含めた「形は同じだが大きさは異なる」関係を相似と呼ぶわけです。

2つの三角形が相似である事を正確に見るには、「証明」が必要です。これは、見た感じ「同じ形」に見えるけれど実際は違う(辺の比が一定にならない、角度が異なる)という事があるからです。

高校入試の出題として多いのは「2組の角の大きさがそれぞれ等しい」事を使うパターンです。これは、同じ大きさの角度である部分が2つ見つかればよいという事です。
より具体的には、対頂角の関係、平行線の同位角・錯角の関係、円周角の定理などを使って「角度の大きさが等しい」事を示します。また、共有する角がある場合にはもちろんその角度は2つの三角形で等しいのです。

証明のパターン
中学数学・高校入試で問われるパターンはこういったものが多いです。あらかじめ直角三角形という条件が与えられる事で残り1つの角の大きさだけを調べればよい場合もあります。

残りの2条件は証明の時に使う事もありますが、むしろ相似である事が証明された後に辺の比や面積比を計算させる問いで使われる事が多いように思います。

相似な三角形の面積比

三角形の相似比(辺の長さの比)が1:nの場合、面積比は1:nになります。
これは、例えば1つの三角についての底辺がn倍、高さについてもn倍になるためです。

高校入試ではよく問われる事項です。

相似な2つの三角形の面積比

辺の長さの比が1:nの相似な三角形の面積比は1:nになります。
(辺の長さの比がa:bなら、面積比はa:b

例えば底辺が2、高さが3の三角形の面積は2×3÷2=3ですが、
各辺の長さが2倍になったとすると、高さも2倍になる事に注意して
面積は(2×2)×(3×2)÷2=12
つまり2×2=4倍になるという事です。

これは公式として関係式を暗記するのではなく、図に描いてイメージしながら練習してみたほうがよいと思います。

この図の場合、相似な三角形の辺の長さの比は1:3です。相似比が整数のようにきれいな値の場合は図に描いてみて何倍になるのかというイメージをつかむのもよいと思います。平行線の補助線を引く事で図の大きな三角形を9分割できます。三角形の高さも確かに相似比倍になる事については、垂線を補助線として描けば直角三角形についても相似関係が成立する事から分かります。

辺の長さの比が1:3ではなく2:3のような場合は面積比は2:3=4:9です。

$$辺の長さの比が2:3であれば大きい三角形の面積は小さい三角形の\left(\frac{3}{2}\right)^2=\frac{9}{4}倍$$

辺の比に関する補足説明

相似な三角形の辺の比に関して、補足的な説明をします。

三角形同士が相似である場合に「対応する辺同士の比」は等しくこれを相似比と言うのは前述の通りです。

他方で「同じ三角形の中の辺同士の比」も、相似な2つの三角形で等しくなるのです。これは1つの三角形の中で3通りの比がありますからもちろん一定ではなく、一般的に相似比とも異なる値になります。

しかし、例えば△ABCでAB:BC=1:3であったとすると、それに相似な三角形△DEFがあったときにDE:EF=1:3という事も同じく言えるという意味です。
この時、AC:AB=2:5であれば同様にDF:DE=2:5という事です。
(※この場合、この条件だけから具体的な相似比は分からない事には注意。互いの対応する辺の長さの比に関して、相似比という一定の比がある事だけ分かります。)

式で書くと、△ABC∽△DEFであれば、
AB/DE=AC/DFという比の関係(この一定の比が相似比)に加えて
AB/AC=DE/DF という関係も成り立つという事です。

これは、じつは結構単純な話です。
AB/DE=AC/DF の両辺をACで割り、両辺にDEをかける事で得られます。
式変形をしなくても相似関係にあるという事は同じ形で大きさだけが異なると意味を考えれば分かりやすいかと思います。

「形は同じでサイズだけが違う」というイメージをつかむと難しさが消えるでしょう。
辺の長さの関係を丁寧に整理する必要がある場合もある事にだけ注意。

証明問題も含めて、図形問題が得意になるコツはあまり難しく考えない事です。
意味を考えながら図を描いてみましょう。

他に図形問題として関連が深いのは角の二等分線と三角形の辺の比の関係などで、これは三角形の相似を根拠として成立します。三角形の相似についてじゅうぶん理解していれば、関係式を暗記せずにその場で導出する事も可能なのです。

「形」さえ同じであれば、三角形の中の2辺の「比」が一定であるという事は、三角比の考え方の基礎となっています。これは、直角三角形に限定して、特定の角度に対しては2つの辺の長さは一定になる事を利用して決められるものです。高校数学で教えられるものですが、考え方としては三角形の相似の考え方が分かっていれば理解できる内容になります。

円の接線と内接・外接

図形問題としての円に対する接線の考え方と、それとセットになる内接・外接の考え方を説明します。

学校で教わる内容としては中学数学・高校入試の範囲ですが、一部はそれ以降の話にもつながる重要事項も含んでいます。なぜかというと微積分での微分係数は関数をグラフ上で図形的に見た場合の「接線」の傾きだからです。また、高校数学では直線を一次関数とみなして種々の考察をして問題を解かせる場合も多いので、円と関わりを持たせた接線の話は中学校以降でも出てくるのです。

円に対する接線の性質

まず「接線」とは何かと言いますと、
「ぴったりくっつくように1点のみで交点を持つ直線」の事を言います。

また、そのよう形で図形同士が交わる時に「接する」という言葉を使います。「直線 L は円Oに接する、接している」といった具合です。(「接線」は必ず直線を指しますが、「接する」という言葉は曲線同士に対しても使います。例えば円と円が「接する」場合というのもあり得ます。)

図形同士が接する点を、「接点」と言います。

接線と法線

同じ1点で交わる場合でも、突き抜けるように交わる直線は接線とは言わないのです。その場合は単純に、1点で交わる交点です。

「接する」という事は数学的に厳密にはどのような条件を要請する事なのか?という事についてはここで触れないで置きますが、図で見れば分かると思います。中学校の範囲では、見て分かるという程度でじゅうぶんです。それで図形問題は解けるからです。

円に対する接線の重要な性質の1つとして、「接点と中心を通る直線は接線と垂直になる」というものがあります。接点を通り接線に垂直な線を法線と言うので「円に対する法線は中心を必ず通る」とも言えます。

法線

接点を通り、かつ接線に対して垂直である直線の事。
円の場合、法線は必ず円の中心を通ります。

★この事実を使って図形問題を解けと言われるのは中学校と一部高校においてだけでですが、この円に対する接線と法線の性質自体は物理学への応用などでも使ったりします。そのため、内容的には結構重要です。

どういう理由で1つの接点を通る法線は中心を通るのかというと、図形的には次の通りです。

証明の説明図

まず、円周上の2点A、Bと円の中心Oからなる三角形は二等辺三角形なので∠AOBが直角になる事はあり得ても、残りの2角は直角にはなり得ません。(三角形の内角の和は180°、つまり2直角であるため。)

すると、点Aに直線が接するには、その直線と線分AOは直角でなければなりません。もし直角でなかったら、その直線上で点A以外にOまでの距離が等しい点、つまり円周上の点が存在する事になり接線ではなくなってしまいます。

という事は、接線に垂直で接点を通る法線は、接点と中心の両方を通る事になるので題意は示されます。

簡単に言うと、円周上のある点を通る直線は、その点と中心を通る線分に対して垂直である場合に限りその1点のみで交わり、垂直以外の角度の場合には別の円周上の点と必ず交わってしまう(そのような円周上の点が必ず存在する)という事です。

☆この事は、高校数学での図形を式で表す方法でも証明できます。考え方自体は二次方程式の解が重解になる条件を出すだけなので難しくはありません。

内接と外接

また、図形問題でよく取り上げられますが、円に内接する図形、外接する図形というものがあります。ここで、「外接」の場合は特定の図形が必ず円に「接している」事が要求されますが、「内接」の場合は必ずしも接していなくてもよくて頂点などが全て円を突き抜けない形で触れていれば要請を満たします。

図で見ると分かりやすいでしょう。例えば内接三角形と外接三角形の違いを見てみましょう。

内接と外接

円以外の図形側から見た時、言葉の使い方として内接と外接は逆になります。

つまり、円に内接する三角形側から見れば「円は外接」しています。

三角形に対して円が内接していると言う場合は、円に対しては三角形は外接しているのです。

これらの内接・外接の関係は、図形問題として出題される場合には別の事項と組み合わされる事がほとんどです。例えば、円に内接する三角形・四角形は円周角の定理と組み合わせて問われる事が多いです。円に外接する三角形を考える場合には、中心から接点に向けての線分が接線と直角になる事実を使わせる事が多いです。

ひねったパターンだと、角の二等分線の事項も絡めて三角形の面積比などを問う出題もあります。

複雑にしようと思えばいくらでも問題をひねれるのが内接・外接に関する図形問題の厄介なところですが、必要な定理や数学的事実は限られているという事を押さえる事が重要です。前述した事の中で言えば、「円に対する接線がある時、法線は中心を必ず通る」といった事項です。

そういった、限られた数の基礎事項を確実に押さえたうえで、いろいろなパターンの問題を解いてみる事が中学校でのこの分野を攻略する鍵と言えるでしょう。複雑な定理や人があまり知らないような定理を暗記する必要はないのです。

円周率の値はなぜ3.14なの?

円周率はなぜ3.14なのか、なぜ「3」ではいけないかの易しい説明です。円や球に対しては「円周率」が常につきまといますが、それについての話をしましょう。

そもそも円周率の定義は? ■ 正確な証明の話 

そもそも「円周率」の定義は?


円周率とは、「円の直径円周の長さの比」の事であり、値は約3.14です。
直径が1メートルの車輪の円周の長さは、円周率を用いて
1×3.14=約3.14メートルと計算できます。
円周率の正確な値は3.14159265・・・という、循環しない無限小数であり、「無理数」です。
【無理数である事は、背理法で示します。円周率に限らず、特定の数が無理数である事を示す方法は基本的には背理法です。】

円周率の特徴
  1. 「円周の長さ」÷「直径」の値の事を円周率と呼ぶ
  2. 任意の円において値は一定であり、3.141592・・・・
  3. 循環しない無限小数であり、無理数である

円周率を使って円の面積も計算できますが、元々は「円周」と直径の比です。
記号は、ギリシャ文字の「パイ」\(\pi\) を使います。

説明図①
正六角形は6つの「正三角形」で構成される事に気付くと、「直径×3」が円周ではなくて正六角形の周の長さである事が簡単に分かります。


この「約3.14」という半端な数はどこから出てくるのでしょう?
円に内接する正6角形を考えてみてください
じつは、簡単な計算により、「円の直径×3」は、ちょうど「円に内接する正6角形の周の長さ」なのです。
この事実が、円周率を「約3」と教える事が、数学的に見て決して良いと言えない理由の一つです。

【多角形の円に対する内接・外接の考え方は別途にまとめています。】

★本当に大雑把な計算(例えば100くらいになるのか、1000くらいになるのかといった)であれば円周の長さを「大体3」の計算でやってもよいと思いますが、正確な計算にはならない事は踏まえておく必要があるという事です。実際の値よりも小さくなってしまうからです。


次に、円に内接する正12角形の周の長さを計算してみると、おおよそ、円の直径×3.1058になります。
この「円周率に相当するような定数」は、円に内接する正24角形の場合は約3.1326、
正48角形の場合は約3.1393です。正96角形まで考えると、3.14が出てきます。
じつは、角をもっと増やしていくと、その値は正確な「円周率」の値に限りなく近づくのです。

動画声優担当ステ♪様 http://sute.tabigeinin.com/

この動画は極限値としての円周率の存在証明の記事にも載せています。

正確な証明の話

☆ここから先の内容は高校数学、さらに詳しくはそれ以上の数学の範囲です。

極限値として円周率が確かに存在する事の証明は少し面倒ですが、平面幾何と極限の基礎知識さえ知っていれば証明は可能です。
円に内接する正n角形と、円に外接する正n角形を考えます。
その中で、2つの頂点と円の中心で作られる三角形に注目します。
ここでじつは少し工夫が必要で、nに対してn+1ではなく、2nを考えます。

説明図②
通常の数学的帰納法だとnに対してn+1を考えますが、ここでは2nを考えます。
それによって、考察はかなり簡単になるのです。


すると、内接する正2n角形の周の長さは
「内接する正n角形の周の長さより必ず大きい事」と、
「外接する正n角形の周の長さよりは必ず小さい事」が、比較的容易に示せるのです。


これは、内接する正n角形の周の長さを数列として見た時、「単調増加で上に有界」である数列になっている事を示しています。
そして、そのような数列は必ず極限値を持つという定理があるので、
円に内接する正n角形の周の長さは「nを無限大にした時に極限値を持つ」事が示されます。


同様に、円に外接する正n角形の周の長さも極限値を持つ事が示せます。
ここで、証明の中で導出している関係式の一つを用いると、2つの極限値は
一致する事を示せます。その値が、円周率と呼ばれる定数です。

円周の長さが直径と円周率の積で表されるという事実は、三角関数の微分公式が成立する根拠でもあるので、理論上、かなり重要な位置にあると言えます。

三角関数の微分公式の導出には sin x < x < tan x という不等式を用います。
これは実質的には、「内接正n角形の周の長さ<円周の長さ【極限値】<外接正n角形の周の長さ」という関係式と同等です。
円周や円弧の長さは極限値なので、解析学(微積分学)的には本来は多少詳しい考察や証明が必要になるというわけです。

サイト内関連記事【円に関する数学】

円周角の定理

円周角の定理とは、円の1つの弧に対する円周角の大きさは必ず等しく、しかも中心角の半分の大きさであるというものです。言葉よりも図で見ると分かりやすいでしょう。

この定理は、高校入試(特に公立)では非常に出題頻度が高いものです。しかし逆に高校数学では重要度が減り、大学数学や物理学では基本的には使わないと言ってもよいほどその重要度が下がります。

これは、高校数学以降の話では「円に内接する三角形」よりも「円その物」のほうが対象とする図形として重要である事が大きく関わっていると思います。そのため、円周角の定理とは中学数学というか「円に内接する三角形」という話に限定する範囲においては重要な定理である、という位置付けで理解するとよいかもしれません。

定理の内容と意味

まず、「円周角」とは、円に内接する三角形の1つの角の事で、「その対辺を弦とする円弧のうち長い方(優弧)」に着目して呼ばれるものです。例えば「円弧ABに対する円周角」のように使われます。図で見ましょう。一目で分かると思います。

また、「中心角」とは、ある円弧の弦の両端の点のそれぞれと円の中心を結ぶ線分によって構成される角の事です。これも、図を見ましょう。

定理の内容

円周角の定理の内容は、1つの円弧が固定されている時、その円弧に対する任意の円周角の大きさは等しく、しかもその円弧に対する中心角の大きさの半分であるというものです。

円周角の定理

円周上に異なる2点ABがあり、円の中心をOとすると次の2つの事が成立します:

  1. 優弧AB上のA、Bとは異なる任意の点Cに対し、
    円周角∠ACBの大きさは互いに等しい。
  2. 2∠ACB=∠AOBが成立する。

尚、円弧のうち短い方(劣弧)側の弦と結んでできる角も、大きさは互いに必ず等しくなります。ただし中心角との大きさの関係は2:1にはなりません。(中心角の半分を180°から引いた大きさになります。)

高校入試を含めて中学数学では、円周角に関する問いは三角形の相似・合同・面積比に関する事項と組み合わされる事が圧倒的に多いです。

また、円周角が直角になる場合とその条件に関しても好まれて出題がなされる傾向があるようです。

「円周角の大きさは必ず中心角の大きさの半分である」という事が定理の主張の1つですが、これを円弧が半円の場合・弦が直径の場合に適用すると円周角は必ず直角であるという事です。

これは、半円の弧の両端を直線で結ぶと必ず円の中心を通るので中心角=180°とみなせる事によります。すると、その円周角はその半分の大きさで90°つまり直角になるというわけです。後述するように証明する時にはこの事項自体を場合分けで示す必要がありますが、理屈はじつに簡単です。)

証明

円に内接する三角形が内部に中心を含むかそうでないかで場合分けします。

①内接三角形が内部に円の中心を含む場合

円に対する内接三角形が内部に円の中心を含む時、まず最初に分かるのがじつは「円周角は中心角の半分」というほうの事実です。

これは、内接三角形の1つの辺の両端と円の中心で構成される三角形が、必ず二等辺三角形になる事によるのです。

そして、1つの円弧を固定する時、もう1つの円周上の点を動かしても中心角は同じである事に注意します。これは、この条件のもとで1つの円弧に対する任意の円周角は必ず等しい事を意味し、円周角の定理の主張そのものです。

下図で言うと、次のようになります:

$$(180°-2\alpha)+(180°-2\beta)+(180°-2\gamma)=360°\Leftrightarrow 180°-2\alpha=2\beta+2\gamma$$

$$\Leftrightarrow 180°-2\alpha=2(\beta+\gamma)$$

最後の式は「中心角=円周角の2倍」を表しています。これはこの条件下で点AとBを固定しておけば、点Cが移動しても \(\alpha\) の値は変わらないので円周角の定理の内容が成立するのです。

証明の説明図
いずれの場合でも、半径を2辺とする二等辺三角形を3つ考える事が証明のポイントです。

②内接三角形が内部に円の中心を含む場合

次に、内接三角形が内部に円の中心を含まない場合です。この時も、中心角を構成する二等辺三角形をもとにして証明をします。この場合においても二等辺三角形を3つ作ります。

じつは相似関係などを使う必要は特になく、
「三角形の内角の和は180°」「四角形の内角の和は360°」という、より初歩的な事実関係だけでじゅうぶんなのです。

図で言うと、中心角は \(180°-2\alpha\) で、そこと隣り合う二等辺三角形の中心角に相当する角は \(180°-2\beta\) です。これらを合わせると、\(360°-2\alpha-2\beta\) となります。

しかし、その角度はよく見ると \(180°-2\gamma\) に等しいのです。よって、次の関係が成立しています。

$$180°-2\gamma=360°-2\alpha-2\beta\Leftrightarrow 2(\beta -\gamma)=180°-2\alpha$$

ここで、式に出てくる \(\beta -\gamma\) は何かというと、これはじつは図の円弧ABの円周角です。つまり、この場合でも「中心角=円周角の2倍」が成立します。

そして、上記2つの場合において点AとBは固定したままでよいという事に注意しましょう。移動するのは、円周角をなす点Cだけなのです。中心角は変化しません。という事は、上記2つの場合の円周角は、いずれも中心角の大きさの半分であり、ともに一致するのです。

ゆえに、内接三角形が円の中心を内部に含むかどうかは気にしなくてよい(その事が示された)という事です。

③内接三角形の1辺上に円の中心がある場合

さて、このように場合分けすると、「だったら三角形の1つの辺が『中心を通る場合』も考えなければだめではないか?」という話になります。実際その通りです。

ただし、この第3の場合が、じつは最も簡単なのです。

直径に対する円周角

円周角をつくる頂点から中心に向かって線分を引きます。すると、二等辺三角形が2つできます。ここで、円周角をなす頂点と直径からなる三角形は、2つの二等辺三角形の角だけから構成されるのです。

すると、三角形の内角の和が180°である事から、この場合の円周角の大きさは90°である事が分かるという計算です。

それゆえ、このような場合でも定理の内容は成立しているので、上記2つの場合と合わせてまとめてよいという事になります。

関連事項:円に内接する四角形

同じく中学数学と高校入試で問われる内容として、
「円に内接する四角形の対角線上で向かい合う角の和は180°である」というものがあります。

この理由については、円周角の定理を使うとすぐに分かります。

図のように、補助線として対角線を引きます。この時、内接四角形の1つの角が2つの部分から構成されていると考えます。図で言うと xとyで表しています。

$$\alpha=x+yとおきます。$$

円に内接する四角形

それらxとyについて、それぞれ異なる円周角であるとみなす事ができるので、それぞれについて定理を適用します。すると、対角線上で向かい合う内接四角形の角の大きさは、180°-(x+y)という事になります。(「三角形の内角の和は180°」を使用。)

しかし \(\alpha=x+y\) でしたから、\(\alpha+180°-(x+y)=\alpha+180°-\alpha =180°\) です。これで題意は示された事になります。

円周角の定理は、高校数学での正弦定理を証明するために使われたりもします。

三平方の定理およびその逆【証明】

三平方の定理は平面の直角三角形の辺の長さに関して成立する関係式です。(曲面に対して拡張したものも存在します。)別名をピタゴラスの定理とも言います。

中学で教わる数学公式の中でも重要度が高いものの1つだと思います。

定理の内容

直角三角形の斜辺の長さの2乗は、残りの2つの辺のそれぞれの2乗の合計に等しいというのが三平方の定理の内容です。「平方(つまり2乗)」が3つある事が「三平方」の意味です。

図による説明
三平方の定理

直角三角形の斜辺の長さをc、残りの辺の長さをそれぞれa、bとすると次の関係が必ず成立する:$$c^2=a^2+b^2$$

これは一般の鋭角三角形、鈍角三角形も含めた余弦定理の特別な場合です。
【余弦定理は、普通は高校数学で学習します。】

余弦定理の特別な場合が三平方の定理

$$c^2=a^2+b^2 -2ab\cos \theta$$ θ=90°の時 cosθ=0であり、余弦定理は三平方の定理に一致します。
ただし、余弦定理の証明には三平方の定理が必要です。

具体的な適用例としては、直角を挟む2辺がそれぞれ3、4である直角三角形の斜辺の長さは5になります。

+4=25=5 という計算になるわけです。

また、1つの角度が45°、60°といった特別な三角形の斜辺の長さの計算にも三平方の定理を使います。

1つの角度が45°の場合・・2つの辺の長さがそれぞれ1の時、
+1=2 より、斜辺の長さは\(\sqrt{2}\)

1つの角度が60°の直角三角形の場合は、2つ合わせると正三角形になる事を組み合わせて、斜辺と1つの辺から、もう1つの辺の長さを三平方の定理で計算するという流れになります。

$$c^2=a^2+b^2\Leftrightarrow b^2=c^2-a^2\hspace{5pt}の関係を使います。$$

斜辺の長さを2とすると、もう1つの辺の長さは1であるので、残る1辺の長さは\(\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt{3}\)

ちなみにこれが三角比・三角関数における、角度が特別な時の値の正弦や余弦の意味に直接関連します。

$$ \cos 45°=\frac{1}{\sqrt{2}}$$

$$\cos 60°=\frac{1}{2},\hspace{10pt}\cos 30°=\frac{\sqrt{3}}{2}$$

証明

証明の方法は1つではなく複数ありますがここでは2つ紹介します。

※上記でも触れた余弦定理の証明には三平方の定理が必要なので、余弦定理の特別な場合として三平方の定理が成立するという事は、証明としては使用できないのです。

①三角形の相似関係を使う方法

この方法は、直角三角形の中には別の小さな直角三角形が必ずある事に注目して、三角形の相似関係から辺の長さを計算すると三平方の定理の内容が得られるというものです。

三角形の相似を使う方法は、アインシュタインが12歳ほどの時に自ら証明したと、のちに語ったと言われているものです。これは、彼が「発見」したというよりは、どのように証明ができるのか自ら考え、自力で見出す事ができてとても嬉しかった、というエピソードですね。彼曰く、謙遜してかもしれませんが「苦労」したとのことです。

まず、直角の部分の頂点から、斜辺に向けて垂線を引きます。その垂線の足で斜辺の長さを分割するのです。

図のように長さを変数でおき、三角形の相似関係で式を組み立てます。

相似関係を使う証明

c=(c-h)+h となるように辺ABを分割します。
∠AHC=∠BHC=90°となるようにします。(そのようにできる点Hが必ずAB上に存在。)

この時、もとの三角形と相似関係にある小さな三角形は2つある事がポイントです。
すると、三角形の相似関係により辺同士の長さの比は次のようになります。

$$\frac{c}{a}=\frac{a}{c-h}\Leftrightarrow c^2-ch=a^2$$

$$\frac{c}{b}=\frac{b}{h}\Leftrightarrow ch=b^2$$

$$2式を合わせると、c^2-b^2=a^2\Leftrightarrow c^2=a^2+b^2【証明終り】$$

どの辺がどの辺に対応するか分かりにくい場合には、図のように相似関係が明らかに成立すると分かるように図を描き直して整理すると見やすいと思います。

②三角形の合同関係と面積を使う方法

この方法はユークリッドの『原論』における証明方法として古くから知られ、3つの「平方」とは正方形の面積であるという考え方によります。(※「ピタゴラス」によるものではないのです。)

直角三角形の各辺を1辺とする正方形を3つ作り、三角形の合同関係から斜辺の長さの正方形の面積は、残る2つの正方形の面積の合計に確かに等しい事を示せるのです。

補助線を1本引きますが、じつはこれは上記の相似関係で使ったものと同じです。ただしこちらの証明では、補助線は斜辺を突き抜けて正方形のもう1辺にまで伸ばす事になります。

ユークリッドによる証明

合同関係は、図で言うと△AA’Cと△ABC’について成立します。合同という事は面積も等しい事がポイントで、図をよく見ると、この細長い三角形の面積は正方形の半分、つまりb÷2です。底辺、高さともに長さはbであることによります。

合同条件は「2辺とそのはさむ角が等しい」です。
図で言うと次のようになります。
AC=AC’ AA’=AB ∠CAA’=∠C’AB=90°+∠BAC となります。

同様に、図の△BB’Cと△BB”Aについても合同関係が成立し、こちらの面積はa÷2です。

ここで、補助線によって分割される大きな四角形の長方形部分の面積は、細長い三角形の面積の2倍である事に注目します。(底辺と高さの値が三角形のものと等しいため。)

長方形の面積の合計は正方形の面積cに等しいですから、c=a+bが成立するというわけです。

証明の補助図
こちらは証明の補足です。四角形と細長い三角形の面積は一見すると共通点があるようには見えないかもしれませんが、底辺と高さを考えると確かに三角形と四角形の面積比は1:2になっています。

定理の「逆」も成立する

上記での証明は、正確には次の命題の証明になっています:
三角形の斜辺の長さがc、残りの2辺の長さがa、bのもとで
三角形ABCは直角三角形 ⇒ c=a+b

では逆に、
=a+b ⇒ 三角形ABCは直角三角形
という命題は成立するのかというと、じつは成立します。

この証明は次のようにします。(これもユークリッドの方法です。)

=a+b が成立している三角形と1辺を共有する直角三角形を考えます。この直角三角形の1つの辺は、もとの三角形の別の1辺と同じ長さのものを考える事が必ず可能です。

この時点で、最初の三角形と別途に作った直角三角形は、2つの辺の長さが等しいわけです。

ここで、
命題:三角形ABCは直角三角形 ⇒ c=a+bは直角三角形
は上述の証明方法により真であると言えますから、新しく作った直角三角形についてこれを適用できます。

すると、2つの三角形は2辺が等しいですから、辺の長さについて「三平方」の関係がともに成立する条件になるので、残りの1辺の長さも等しくなるのです。

これによって、もとの三角形は新しく作った直角三角形と合同です。(合同条件は『3組の辺の長さがそれぞれ等しい』。)という事は、もとの三角形も直角三角形であるという事です。もちろん、斜辺に対応する角が直角になります。

よって、命題:c=a+b ⇒ 三角形ABCは直角三角形
も成立しますから、三平方の定理は「必要十分条件」の形という事になるのです。

三平方の定理は「必要十分条件」である事を明示する場合

三角形の斜辺の長さがc、残りの2辺の長さがa、bのもとで
三角形ABCは直角三角形 ⇔ c=a+b

他の分野との関連

上記で三角比および三角関数との関連に少し触れましたが、他の数学的事項や物理学・種々の工学とも密接に関連します。

三平方の定理は様々な場面で「距離」を計算する計算のツールとして使われます。直交座標を考えた時、斜めの線の長さは2点間の距離になります。この時、座標さえ分かっていれば三平方の定理から距離を必ず計算できるというわけです。

この「距離」という考え方はもちろん理論の中だけではなくて現実の距離の計算にも適用できるので、物理学でもじつに頻繁に使用され、また測量のような、より実務的な事項にも間接的に利用されます。

数学の図形的な平面幾何以外の分野でも、ベクトル複素数の理論において三平方の定理をもとに定義が成されます。ベクトルの「大きさ」や複素数の「絶対値」の考え方自体は、三平方の定理そのものです。

$$\overrightarrow{X}=(x,y)のとき、|\overrightarrow{X}|^2=x^2+y^2$$

$$z=x+iyのとき、|z|^2=x^2+y^2$$

三平方の定理の考え方は、直交座標、複素数、ベクトル、物理学、測量と、幅広く計算に使われます。

上記で少しアインシュタインに関するエピソードを紹介しましたが、彼の特殊相対性理論の考察においても三平方の定理は使用され、一般相対性理論では平面ではなくて曲面(4次元)において三平方の定理を拡張した考え方の一部が使用されています。なお、平面から曲面に拡張を行ったときには必ずしも「三平方」ではなくなってしまうので、その観点から「ピタゴラスの定理」のほうの名称を優先して使うべきではという考え方をする人もいます。