余弦定理

余弦定理とは、三角形の3辺と1つの角の余弦について成立する関係式です。
(英:cosine rule)

特別な場合として余弦定理を直角に対して適用すると三平方の定理の形になります。
(ただし、余弦定理一般を証明するには普通は三平方の定理を使います。)

三角比の余弦(コサイン)と三角関数の余弦関数については別途に述べています。

定理の内容

余弦定理の内容は次のようなものです。

余弦定理

三角形ABCの辺の長さをBC=a、AC=b、AB=cとして、
∠BAC=θ(長さaの辺BCの対角)とする時、次の関係式が成立します。 $$a^2=b^2+c^2-2bc\cos \theta$$ θは鋭角でも鈍角でも成立し、
θ が直角の時には三平方の定理a=b+cになります。
また、θ=0、\(\pi\)の場合は3点が1直線上に並んでいる場合であり、
座標上などで角度に向きをつけている場合には負の角度を代入しても正しい関係式を表します。

三角形のある1辺の具体的な値を知りたい時には「2辺の長さと1つの角度の『余弦』の値が分かれば計算は可能である」という事が、余弦定理の意味と使い方です。

定理の内容

余弦定理を証明する一番シンプルな方法は三平方の定理を使う方法です。(三平方の定理は相似条件・合同条件といった条件だけで証明できます。)

ここでは、対象の角の大きさが鋭角か鈍角で場合分けをして証明します。
式変形も含めてやや詳しく説明していますが、要するに三平方の定理を適切に適用すると関係式を導出できるというのが証明の流れになります。

証明①:鋭角の場合

まず対象の角度の大きさが鋭角の場合です。

この場合、もう1つの角についても鋭角か鈍角かで場合分けしますが、得られる結果は同じになります。どちらの場合でも、三角比の関係を使って上手に直角三角形の辺の関係を作ります。

下図で、∠BAC=θが鋭角のもとで、∠ABCが鋭角か鈍角かを見ます。

∠ABCが鋭角の場合(図の上側)、直角三角形を作るように線分ABを延長して点Hをとります。この時、直角三角形である△ACHの底辺部分AHの長さは余弦を使ってbcosθで表せます。

鋭角の場合の証明

他方、高さ部分もCH=hは正弦を使ってh=bsinθと表せますが、単純にこれに三平方の定理を適用してもじつはうまくいきません。そこで、△ACHだけでなく、△BHCも直角三角形である事に注目します。すると、BH=bcosθ-cになる事に注するとうまくいきます。

BH+h=a ⇔ (bcosθ-c)+h=a

他方、△ACHについてAH=bcosθ 、CH=hのもとで三平方の定理を適用します。

(bcosθ)+h=b ⇔ h=b-bcosθ

つまり、未知数のhは代入して消す事ができます。

(bcosθ-c)+h=a に h=b-bcosθを代入すると、bcosθ-2bccosθ+c+b-bcosθ=a
⇔ a=b+c-2bccosθ 【bcosθの項が消えてあとは順番だけ整理しただけです。】

つまりこの場合では余弦定理が確かに成立する事になります。

次に∠BAC=θと∠ABCが両方とも鋭角の場合(図の下側)には、点Cから辺ABに垂線を下ろせます。その垂線の足をHとおきます。この場合も先ほどとやり方自体は同じで、△AHCと△CHBの2つが直角三角形になり、CH=hとして余弦と組み合わせて三平方の定理で関係式を作ります。

AH=bcosθ、CH=h、BH=c-AH=c-bcosθ のもとで、

(bcosθ)+h=b かつ (c-bcosθ)+h=a 

前者のほうの式を後者のほうの式にhを代入して消します。
(c-bcosθ)+b-(bcosθ)=a ⇔ a=b+c-2bccosθ

よって、この場合でも余弦定理が確かに成立する事になります。

証明②:鈍角の場合

では、∠BACが鈍角の場合はどうするかというと、この場合には余弦に鈍角を入れる必要があるので三角関数として余弦を考える必要があります。結論を先に言うとcos(x+\(\pi\)/2)=-sinxの公式を使います。この関係を認めるうえで、余弦定理の形で辺の長さの関係を表せるという事です。

この時、鋭角である角度 φ を使って、θ = φ+90°と表すとこの時の証明はしやすいです。ただ、三角関数を使うので、ここで角度は弧度法で表してθ = φ+\(\pi\)/2と書く事にします。

この時、図のように△ABPが直角三角形になるように便宜上の点PをBC上において、∠ABPが直角、∠PBC=φ(鋭角)であると捉えます。(図の位置関係はθが鋭角の場合と少し変えて描いています。)

鈍角の場合の証明

ここで、θ=∠PBC+∠ABP=φ+\(\pi\)/2です。この時、ABを延長しCからその延長線に垂線を下ろして垂線の足をHとします。

平行線の錯角の関係により∠BHC=∠PBC=φである事に注意し、△BHCは直角三角形なのでBH=bsinφ、CH=bcosφと表せます。ここで△AHCも直角三角形なので三平方の定理で関係式を作ると次のようになります。

(c+bsinφ)+(bcosφ)=a ⇔ c+2bcsinφ+bsinφ+bcosφ=a

ここでまず、sinφ+cosφ=1の公式により
sinφ+bcosφ=b(sinφ+cosφ)=b

すると、c+2bcsinφ+b=a

「余弦」定理の証明なのに正弦が出てきてしまったという話ですが、cosθ = cos(φ+\(\pi\)/2)=-sinφ つまりsinφ=-cosθとなるので、a=b+c-2bccosθ となり、この場合も余弦定理が成立します。

これは三角関数の定義に従って余弦の値を決める時に成り立つもので、具体的な鈍角の値を余弦関数に入れると必ず負の値ですから、符号は必ず反転してプラスになる事に注意する必要もあります。

例えば120°(2\(\pi\)/3 [rad]) を角度として代入するなら、
=b+c-2bc・(-1/2)=b+c+bc のようになります。

理解の仕方としては、θが鋭角であろうと鈍角であろうと、三角関数の定義に従って余弦の値を考える限りは気にせずに余弦定理を使って計算をしてよい、という事になります。

角度の範囲が実数全体の場合

三角関数の定義域(実数全体)を当てはめるのであれば、上記以外の場合にはどうなるでしょう?

まず鋭角でも鈍角でもない角度として「直角」がありますが、これは冒頭でも触れた通り三平方の定理そのものになりますので、別途に証明できて成立します。

次に、0と180°(\(\pi\))の場合ですが、仮に成立するとすると次のような式になります。

θ=0とき、a=b+c-2bc=(b-c) より、a=b-cまたはc-b

θ=\(\pi\)のとき、a=b+c+2bc=(b+c) より、a=b+c

(もちろん、a≧0、b≧0、c≧0という条件のもとでこうなります。)

問題はこれに図形的な意味があるかという事ですが、じつは確かにあります。これらはいずれも、3点A、B,Cが一直線上に並んだ時にあり得る関係式です。そのため、これらの角度においては「三角形はできない」という図形的な意味付けをするのであれば、各点間の距離を表す式として余弦定理は確かに成立すると言えます。

一般の角度の場合
余弦定理を使う時には、通常の平面幾何的な意味では0°<θ<180°の範囲だけを考えればよいのですが、図形的な意味を拡張してそれ以外の値を代入する事も可能です。

では、180°(\(\pi\))を超える場合はどのように考えられるでしょう。この場合、三角関数の考え方では負の角度が0~-\(\pi\)の場合と同じなので負の角度の場合を考えると、余弦関数の値はマイナス符号をつけない正の値の時と同じ値です。cos(-θ)=cosθと、三角関数では定義されます。

このような場合に図形上での意味としては、座標やベクトルの関係において角度に反時計回り・時計回りの区別をつける時の事が想定できます。しかしその場合でも「2点間の距離」自体は正の値として考えます。例えば座標上でx軸に平行な直線に関して図形を反転させた場合に、座標の符号が変わる事はあっても各点を結ぶ辺の「長さ」自体は変わりません。

この事が、負の値を角度として適用した場合の図形的な意味になります。0≦θ≦\(\pi\) の場合には余弦定理は適用可能ですから、-θを考えた時には cos(-θ)=cosθ により角度が正の値の時と全く同じ辺の長さの関係式になります。これが、「底辺を軸として三角形を反転させた時にも辺の『長さ』自体については変わらない」事に対応するのです。この意味において、座標上などで角度に向きをつける場合でも、辺の長さの関係だけを問題にする時には余弦定理に負の角度を入れても正しく関係式を作れるという事です。

★言い換えると、余弦定理だけからは「正負の符号も含めた」意味での座標の位置関係を確定させる事はできず、基本的には長さについてのみ計算可能な関係式であるとも言えます。これは三平方の定理と同様の性質です。

\(\pi\)を超える角度の図形的な意味は負の角度の場合と同じとすると、これも余弦定理の角度部分に代入しても三角形の辺の長さの関係は正しく表されている事になります。

三角関数の周期性により、360°(2\(\pi\))を超える角度では1周して全く同じ点に戻るという図形的な解釈のもとでは、それらの角度を代入したとしても同じく三角形の辺の長さの関係は同じく正しく表されます。

以上から、余弦定理は一般的な鋭角、鈍角、直角の三角形を考える場合にも、図形上の適切な意味付けを与える限りにおいては実数全体を余弦の角度として代入しても成立する関係式である、という事になります。

正弦定理

正弦定理は、三角形の辺の長さおよび外接円の半径(あるいは直径)と、三角比の正弦の間に成立する関係式です。(英:sine rule)

三角比を使うという事で高校で教えられる事が多いですが、内容としてはどちらかというと平面の図形問題の色彩が濃く、中学校で教わる平面幾何の内容に近いかもしれません。

定理の内容

定理の内容は次の通りです。

正弦定理

三角形ABCでBC=a、AC=b、AB=cとして、
それらの対角の大きさについて∠BAC=A、∠ABC=C、∠ACB=Cとします。
また、△ABCの外接円の半径をRとすると、次の関係式が成立します: $$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}=2R$$

このように1つの式で表されていますが、2つのグループに分かれていると考える事もできます。1つは辺の長さと正弦の関係、もう1つは辺の長さと正弦と外接円の半径の関係です。(後者については証明を見ると分かるように図形上の意味として肝心なのは「直径」との関係です。)

ここでは2つの部分に分けますが、2つ目のほうを使って最初から全て証明する事も可能です。

証明①:三角形の辺と正弦に関する部分

まず、1つ目の辺の長さと正弦の関係です。
定理の中で言うと、とりあえず外接円の部分は無視した次の部分になります。

$$まずこれを証明します:\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}$$

2つの等号に関して一度に示す事はできないので、1つずつ証明して最後に全部を結ぶという形になります。

これは、一言で言うと、三角形ABCの「面積」を3通りの方法で表してみると成立する事が分かる関係式です。本来の「面積」の形の等号関係は次のようになります。

$$\frac{bc\sin A}{2}=\frac{ac\sin B}{2}=\frac{ab\sin C}{2}$$

発想はじつに単純で、三角形の面積「底辺×高さ÷2」において、底辺を辺AB、BC、ACのそれぞれとした場合に面積の計算をしてみようという、それだけのものです。

★細かい事を言いますと、厳密にはその場合に「どの辺を底辺にとったとしても1つの三角形の『面積』は1つの値しかとらない」という事も自明ではなく要証明です。
しかしその事は平面幾何で証明済のものとして、ここでは話を進めます。
(三角形の相似関係を使えばよく、証明するとしてもそれほど難しくはありません。)
また、証明の順番は逆になってしまいますが、正弦定理の後半部分を先に証明すればこの面積に関する事項も証明する事はできます。どの方法でも間違いではありません。

面積による証明

まず。底辺をAC=aとした時です。面積を出すには高さが必要ですが、これを三角比の関係を使って表します。AB=cの斜辺と∠ABC=Bの正弦によって、高さはcsinBになります。これで、面積の1つが表されるわけです。

$$S=\frac{ac\sin B}{2}$$

この時、∠ABC=Bとは逆側の角度を使って、高さの部分をbsinCと表す事もできます。
これは、あとで使います。
最初からそちらのほうだけで面積を表すとどうなってしまうのかというと、じつはa(bsinC)÷2=b(asinC)÷2の関係により、「bを底辺とした場合に表わした三角形の面積」に等しい事になります。そのため、最初からこちらの式を使って進めても結局証明はできます。

底辺をAC=bの部分とみなす場合には、高さがcsinAになります。これで面積の2つ目の表し方です。

$$S=\frac{bc\sin A}{2}$$

ここで、いったん2つの式を等号で結びます。
もちろん、同じ面積Sを表すので等号で結べます。

$$\frac{ac\sin B}{2}=\frac{bc\sin A}{2}$$

この式で、両辺でcと1/2は共通しているので掛け算割り算で「消せる」事になり、さらに正弦の部分を両辺で割ると正弦定理の関係式の1つになります。

$$\frac{ac\sin B}{2}=\frac{bc\sin A}{2}\Leftrightarrow a\sin B=b\sin A$$

$$\Leftrightarrow\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}$$

ここでもう1つ関係式がほしいわけですが、∠ACB=Cに関する正弦が足りないので、再びBC=aを底辺とする場合に戻って、高さを今度はbsinCと考えます。

$$するとS=\frac{ab\sin C}{2}とも表せる事により、\frac{ab\sin C}{2}=\frac{bc\sin A}{2}$$

$$\Leftrightarrow\frac{a}{\sin A}=\frac{c}{\sin C}$$

これで2つの等号関係を結べます。

$$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}【証明終り】$$

理解の仕方としては、図を見てもっと単純に直観的にという事でもよいと思います。

証明②:外接円に関わる部分

次に、正弦定理の内容のうち、外接円の半径を含むほうの部分です。

一体どこから円が関係するのかと思われるかもしれませんが、じつはこの後半部分のほうが、図形的な特徴に気付くと直ちに証明されるので簡単なのです。

この場合には面積を考える必要はなく、三角比の関係だけを使います。

まず外接円を考えるのですが、この時に三角形の1つの頂点から「円の中心を通るように」直線を引きます。それが円周の向かい側とぶつかる点に注目します。

図では、点Cから中心に向かって直線を引き、円周との交点をA’ としています。

円周角の定理による証明
△ABCの外接円の半径をRとしています。補助線を引いて点A’ を円周上にとります。

すると、まず円周角の定理により、新しくできた図の∠CA’Bの大きさは∠CAB=Aと同じ大きさです。(弧CBの円周角なので。)よって∠CA’B=Aです。

また、図のCA’ は円の直径ですから、その円周角について∠A’BC=90° となります。(これも本質的には円周角の定理によるものです。)

という事は、Aという大きさの角を含む直角三角形を考える事ができます。斜辺は円の直径(2R)で、辺BCの長さがaですから両者を三角比の関係で結べます。じつは、これで1つの関係の証明が終りです。

$$三角比の関係により、2R\sin A=a\Leftrightarrow \frac{a}{\sin A}=2R$$

同様にして、頂点Aや頂点Bからも補助線を中心に向かって引く事で残り2つの関係式も得られますが、a/(sinA)=b/(sinB)=C/(sinC)を既に証明しているので、これで正弦定理の証明完了としても可です。

$$\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}と合わせて、\frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}=2R【証明終り】$$

★こちらのほうの定理の後半の内容について最初に証明する事で前半部分も一度に証明する事もできます。
その場合には頂点と中心を通る補助線を3パターン全て作って、
a/(sinA)=2Rかつb/(sinB)=2RかつC/(sinC)=2Rよりa/(sinA)=b/(sinB)=C/(sinC)であるとして、定理の前半部分もまとめて証明できます。
手間としては、どちらの方法でもあまり変わらないと思います。

この記事では証明を詳しく記しましたが、理解としてはもっと直感的でよいと思います。

さてこの「正弦定理」、別途に「余弦定理」というものがあるので対として教科書の中で教えられる事も多いのですが、大学入試での出題の可能性を除くと重要度はやや低いものがあるかもしれません。

証明の方法から見ても分かる通り、正弦定理とは本質的には三角形の面積に関する平面幾何の基本事項や、円周角の定理から直結する関係式です。そのためこの定理は直接的というよりは、三角形に関わる多くの事項と間接的に関わっているものと言えるかもしれません。

弧度法とラジアン

弧度法とは、半径1の円の円弧の長さ(扇形の周部分)によって角度を表す方法を言います。
基本的には、円周率の有理数倍によって使って表す事が多いです。

弧度法で表した角度には単位をつけない事も多いですが、「ラジアン」[rad]という単位を記す事もあります。(英:radian)

定義・考え方と重要ポイント

弧度法は次のように定義され、度数法との換算の仕方も合わせて記すと次のようになります。

弧度法とラジアン

半径1の円の円弧の長さが Y 、その円弧を得る扇形の中心角の大きさが度数法で X ° である時、
円弧の長さ Y を角度そのものとして扱う方法を弧度法と言い、
特に単位をつける場合には rad (ラジアン)を使う。
Y [rad] と X [°]の換算については次の関係が成立する:
$$Y=\frac{\pi X}{180}=\frac{2\pi X}{360}$$

この角度の表し方の詳しい意味と、換算の式の出し方についての易しい説明を以下にしていきます。

円周の長さは直径と円周率の積です。この時に半径(および直径)が一定であれば円周の長さも一定です。

円周と半径の関係 円の半径をrとすれば円周の長さは2\(\pi\)r
(円周の長さ)=(直径)×(円周率)という事です。

まず、簡単な例として「半円」を考えてみましょう。これの「弧」の長さを考えます。
当然ながら、半円の弧の長さは「全体の円周の長さの半分」です。
1/3円であれば弧の長さも1/3です。1/n円であれば弧の長さは全体の1/nです。

ところで一般の扇形の面積や円弧部分の周の長さを考える時は、例えば中心角が60°の扇形は、
全体に対して60/360=1/6 の割合の面積や弧の長さを持つと判定するのでした。
全体を360°として、60°という部分を考えています。
これは、角度が分かっているので円弧の長さも分かるというわけです。

そこで、弧度法の基本的な考え方は次のようなものです。

「逆に、『弧の長さ』が仮に分かってるとすれば『角度』も確定するではないか?」

半径1の円の60°の扇形の弧の長さは\(\pi\)/3ですが、言い換えると弧の長さが\(\pi\)/3であれば
角度も「全体を6分割する」大きさである事は確定しているというわけです。

度数法の場合は360°に対して何度を比較しますが、弧度法では半径1の円の全体の円周の長さ2\(\pi\)に対して、扇形の弧の長さを比較するのです。

この観点では角度を「全体の何割なのか」という視点だけで考えているとも言えます。

考え方の説明図

換算の式の考え方と導出

弧度法と度数法の換算については、冒頭で記しましたように一応の「公式」はありますが、
基本的には部分が全体の何割かという事を考えているだけなのです。

例えば直角であれば全体の1/4ですから度数法であれば90°、
弧度法なら2\(\pi\)の1/4の\(\pi\)/2であるというわけです。
360/4=90、2\(\pi\)/4=\(\pi\)/2という計算です。
(あるいは半円の半分と考えて180/2、\(\pi\)÷2)

そもそも度数法にしても360という数字について、数学的に絶対にこの値でないと支障があるのかというとそうではありません。例えば極端な話、倍の数字の720を全体としてもよいのです。角度を測るツールとしては何でもよいわけです。その事に気付くと、弧度法というのは全然難しいものではないのです。

とすると、弧度法と度数法の換算も、全体の何割かを把握している事が本質であるわけです。この時、必要に応じて直角や2直角の何割かという事を考えたほうが計算は早い場合はあります。

例えば30°であれば、2直角180°の1/6ですから、弧度法だと半径1の半円の弧の1/6、つまり\(\pi\)/6に等しい角度という事です。

同じく45°なら2直角の1/4なので、弧度法だと\(\pi\)/4です。
前述の90°なら直角ですから弧度法では\(\pi\)/2と直ちに考える事もできます。

120°のような場合は、2直角の2/3ですから(60°の2倍)、弧度法では2\(\pi\)/3なのです。

このように考えると、じつに簡単なものである事に気付くと思います。

37°のような半端な角度の場合も考え方は同じなのです。要するに、全体の何割かを考えればよいのです。90°未満の角度の場合は180°に対する割合を考えたほうが簡単でしょう。
すると、この角度を弧度法で表すなら \(\pi\) の37/180倍です。$$37°は、弧度法では\pi\cdot\frac{37}{180}=\frac{37\pi}{180}になります。$$

これが、弧度法と度数法の換算の式の意味です。改めて記すと次のようになります。

弧度法と度数法の換算の公式 度数法で X ° の角度を弧度法の Y [rad] で表す場合、関係は次式になります。
$$Y=\pi\cdot \frac{X}{180}=\frac{\pi X}{180} $$ $$もちろんこれは Y=\frac{2\pi X}{360}としても同じです。$$ 逆に弧度法で表された角度 Y [rad] によって度数法の X ° は次のように表されます。
$$X=180\cdot \frac{Y}{\pi}=\frac{180Y}{\pi}$$ $$これはX=360\cdot \frac{Y}{2\pi}=\frac{360Y}{2\pi}としても同じです。$$
角度の換算の式の説明図

この考え方が分かっていると、仮に次のような意地の悪い問題が大学入試(センター試験等)で仮に問われたとしても迷わないでしょう。

■問い:「弧度法の1ラジアンを度数法で表すならいくらか。」

そもそも円周率は無理数なのだから弧度法の角度をわざわざ有理数である「1」で表す意味があまり無いとも言えるのですが、この手の問題では理解度を試すためにわざと問うているという事でしょう。

1ラジアンですから、2直角に対する割合は1/\(\pi\)です。
したがって解答は、180×(1/\(\pi\))=180÷\(\pi\) ≒ 57.3 [°] です。【解答】

考え方としては\(\pi\)/4ラジアンが2直角\(\pi\)に対する1/4、
あるいは直角の半分だから「45°」と判定する事と同じなのです。

一般の円の円弧の長さ・扇形の面積との関係

さて、弧度法で表した角度は「半径1」の円の円弧の長さです。

あくまで半径1の場合ですから、別の半径であれば円周の長さも面積も変わります。

しかし、円周の長さは「半径(あるいは直径)に比例する」のでしたから、
仮に弧度法で表された角度が分かっているのであれば、一般の扇形の円弧の長さは「弧度法の角度[rad]を半径倍したもの」という事になります。

これは、「半径Rの扇形の円弧の長さ」=「『半径1の扇形の円弧の長さ』× R」という簡単な関係なのです。

この意味において、次の公式が成立します。

一般の扇形の円弧の長さ 半径 R の扇形の中心角について弧度法での角度 θ [rad] が分かっている時、
円弧の長さ L は次のように表されます。
$$L=R\theta$$ ★基本的には角度 θ [rad] は、例えば\(\pi\)/4のような形で判明しているという事に注意しましょう。
つまり、決して「円周率が消えている」という事ではありません。
弧度法での角度があらかじめ分かっているとは、基本的には、あくまで全体に対する何割の扇形であるかが判明しているという意味です。確かに仮に弧度法の角度を無理やり有理数で表せば見かけ上円弧の長さから円周率が消えますが、これは円周全体に占める比を有理数で表せないという「長さ」になってしまうのです。

面積についても考え方は同様です。

半径1の円の面積は1×1×\(\pi\)=\(\pi\)で、
弧度法の角度が θ であれば θ/(2\(\pi\)) の割合が扇形の面積です。

$$半径1の扇形の面積:\pi\cdot\frac{\theta}{2\pi}=\frac{\theta}{2}$$

ここで1/2というのが出てくるのは、円周の長さは直径と円周率との積、円の面積は半径の2乗と円周率との積で、弧度法の角度は円周と円弧の関係を表すものなので直径と半径のずれがあるためです。

扇形の半径がRに変わった時には面積はさらにR倍になります。

その意味において次の関係式が成立します。

一般の扇形の面積 半径 R の扇形の中心角について弧度法での角度 θ [rad] が分かっている時、
扇形の面積 S は次のように表されます。
$$S=\frac{R^2\theta}{2}$$ ★ここで再び、円周率は基本的には弧度法で表された角度に含まれているのです。
分母の2がつくのかつかないのか分からなくなった時には、半径1の2\(\pi\) [rad] を考えてみるとよいでしょう。この時の扇形は円そのものですから、面積は\(\pi\)です。上記の式に代入しても同じ結果になる事が分かります。

三角関数の変数としての角度は弧度法で表すのが基本です。特に三角関数の微積分を考える時には、度数法を使うと問題が発生するので必ず弧度法の角度を変数として扱います。

一般角の定義と使い方

三角関数とは、図形上の三角比である正弦、余弦、正接の角度部分を拡張して定義域を実数全体に広げた正弦関数余弦関数正接関数を言います。(正接関数は \(\pi\)/2の奇数倍を定義域から除きます。 )
三角関数の変数は「実数値」であり、度数法ではなく弧度法で表します。(※度数法のまま三角関数を扱っても支障はない場合も多くあります。ただし微積分を扱う時には特に問題が発生するので注意も必要です。)

表記方法自体は三角比の場合と同じで、変数部分の記号としてxを使う事が多いです。
正弦関数 y=sinx 余弦関数 y=cosx 正接関数 y=tanx

三角関数は、代表的な周期関数の1つでもあります。これは、同じ関数の値が等間隔の変数ごとに繰り返し現れるというもので、「1回転」\(2\pi\) ごとの周期性を示します。(比例係数を使う事で、その他の値の周期とする事もできます。)

指数関数や対数関数と同じく、高校で扱われる重要な関数である初等関数の1つです。

三角比との違いは、数学的に厳密な違いが定義されているわけではありませんが、三角比というのはどちらかというと平面の図形に対して0°~180°の範囲で適用するものであって、三角関数は図形問題というよりは周期関数としての性質を強調して使う事が多いです。

定義域の拡張・・角度を拡張する

三角関数の考え方は大体において三角比と同じ考え方を適用できますが、正弦関数等の変数は実数全体です。この場合、単純な直角三角形の角度としては変になる場合はどのように解釈するのか?を説明します。
基本となるのは正弦関数と余弦関数なので、まずはそれらについて見ていきます。
(正接関数についてはそれらの割り算で表されます。)

「0度」と負の角度 ■ \(\pi\)/2【90°】以上の角度 ■ 2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】 

「0度」と負の角度

直角三角形の直角以外の部分の角度は、「もちろん0°より大きく90°より小さい範囲」です。
弧度法だと 0 < x < \(\pi\)/2です。そうでないと三角形ができないためです。
しかし三角関数では、この変数の範囲(定義域)を拡張していきます。

まず変数が0以下の場合はどうするのでしょうか?結論を言うと次のようにします。

変数が0以下の場合の三角関数
  1. sin 0 = 0, sin(-x)=-sinx と定義する。
  2. cos 0 = 1, cos(-x)= cosx と定義する。
  3. tan 0 = 0, tan(-x)=-tanx となる。【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】

ここでx>0であれば-xは負の値で、x<0であれば-xは正の値です。
後述しますがどちらの場合でも統一的にこれらの関係式を適用できます。

これは図で言うと、三角形を底辺に関して対照的にひっくり返したものを考えて「負の角度」としています。角度の方向にも向きを付けて、反時計回りをプラス、時計回りにはマイナスの符号をつけるという意味です。
そのうえで正弦については「下向き」の高さ、余弦については変わらず同じ値と決めています。

負の角度

まずx=0の場合には次のようにしていす。

角度0の場合の定義

x=0とした時の y=sin x と y=cosx の値の定義です。

  • 正弦関数の場合:sin 0 =0 と定義する。
  • 余弦関数の場合:cos 0 =1 と定義する。

これらは「定義」であるとしか言いようがない面もありますが、「なめらかな形の連続関数」になるような定義としての1つの要請であるとも言えるのです。
三角比の範囲においても、角度を0に近づけると正弦の値は0に近づき、余弦の値は1に近づいていくのでx=0において sin 0 = 0, cos 0 = 1 であれば、その「点」において関数は「連続」になるという事です。さらにそこから、なめらかな形で負の部分に続いていく事も考えます。(微分可能になるように。)

また、周期関数になるという要請も加えると、定義の仕方も段々と限定されてくるわけです。意味としては、三角関数における「角度」の拡張の定義にはそのような意味があると捉える事ができるのです。
直交座標上にxを変数とした三角関数のグラフを描くと、ちょうどx=0で正弦関数は原点に対して点対称、余弦関数はy軸に関して軸対称の形になります。

負の角度

ここでは表記としてはxがプラス符号であるとして、それにマイナスをつけた「-x」を負の数として扱っています。

  • 正弦関数の場合:sin(-x)= -sinx【0から始まり-1に向けて関数の値は減少していく】
  • 余弦関数の場合:cos(-x)= cosx【1から始まり0に向けて関数の値は減少していく】

$$例えば\hspace{10pt}\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\frac{\pi}{4}=-\frac{1}{\sqrt{2}},\hspace{10pt}\cos\left(-\frac{\pi}{4}\right)=\cos\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}$$ 正弦の場合と余弦の場合ともに、符号の関係にだけ注意すればよいという事になります。
値の絶対値については変数がプラスの場合のものをそのまま流用するという定義であるからです。
正弦の場合「0から減少していく」、余弦の場合「(最大値)1から減少していく」事を考えると理解はしやすいと思います。

尚、ここでは sin(-x)= -sinx において「xは正の値」を考えて変数が負の場合の説明をしましたが、
そこでx自体に「負の値」・・例えば-\(\pi\)/4を入れたとすると$$\sin\left\{-\left(-\frac{\pi}{4}\right)\right\}=\sin\frac{\pi}{4}=-\left(-\sin\frac{\pi}{4}\right)=-\sin\left(-\frac{\pi}{4}\right)$$となり、式の整合性はとれています。余弦関数の場合も同様に整合性がとれます。つまり一般的に、変数部分にマイナス符号がついている時には、上記の定義式の関係を使って機械的に計算してもよいという事です。

\(\pi\)/2【90°】以上の角度

では、変数がプラスの値の時に戻って、変数が\(\pi\)/2以上の場合はどうするのでしょう?
通常の図形問題でも90°以上の角度は考えますが、直角三角形の直角にはそのままでは適用できません。

三角関数において、定義域を\(\pi\)/2以上に拡張する場合は次のようにします。

変数が\(\pi\)/2以上の場合の三角関数
  1. sin(\(\pi\)/2) = 1, sin(x+\(\pi\)/2)=cosx と定義する。
    【sin\(\pi\)=0, sin(3\(\pi\)/2)=-1, sin 2\(\pi\)=0 になる。】
  2. cos(\(\pi\)/2) = 0, cos(x+\(\pi\)/2)=-sinx と定義する。
    【cos\(\pi\)=-1, cos(3\(\pi\)/2)=0, cos 2\(\pi\)=1 になる。】
  3. tan \(\pi\) = 0, tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) となる。
    【tanx=(sinx)/(cosx)と定義するため。】
    mを整数として tan(\(\pi\)/2+m)は、定義しない!【無限大を避けるためです。】

ここで正弦と余弦についてはxは実数のうち何の値でもよく、負の数や直角を超える値を入れたとしても整合性がとれた定義式になっています。
正接のほうについては、余弦関数の値がゼロになる変数の値は全て「穴」になるような形で定義域から除外する形で考えるという事です。ですから例えば tan(x+\(\pi\)/2)=-1/(tanx) においてはxの値として\(\pi\)の整数倍の時は除外する、という具合に考えます。

また、正弦関数と余弦関数については次式も成立し、これを使うと計算上便利です。

公式
  1. sin(x+\(\pi\))=-sinx, sin(\(\pi\)-x)=sinx
  2. cos(x+\(\pi\))= -cosx, cos(\(\pi\)-x)=-cosx

これらは式としては統一的にまとめる事もできますが、図形的な意味としては別々に捉える事も1つの方法として便利である場合があります。正接関数についても同様の式を作る事は可能です。

さて、この定義を見ると角度が負の場合と比較して、かなり複雑であるようにも見えます。
この場合もやはり式だけで考えるのではなく、図形的に考えたものを式で表現するなら上記のようになると理解すべきでしょう。

変数が直角を考える場合には、今度は直角三角形の高さ部分の辺に関して対照的になるようにひっくり返すのです。この場合も、関数の値の絶対値は直角未満の場合の三角比の値を流用して符号だけをいじるという定義の仕方をします。

90°を超えて180°未満の「鈍角」の範囲における三角関数の具体的な値を調べる時には、鈍角を「180°-鋭角」と考えるか、「90°+鋭角」と考えるかの2通りの計算で便利なほうを使うのが普通です。

鈍角の場合①
鈍角を「180°-鋭角」と捉える場合の三角関数の値の計算方法です。
鈍角の場合②
鈍角を「鋭角+90°」と捉えた場合の三角関数の値の計算方法です。こちらは、通常の三角比の場合に成立する公式を利用して式変形で考える事も可能です。

尚、式として考える場合、「90°+鋭角」の鋭角部分をマイナスにしてさらに90°加算する事で
「180°-鋭角」の三角関数の値の式を導出する事も一応可能です。次のようにします。

$$\sin\left(\pi-\theta\right)=\sin\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin(-\theta)=\sin\theta$$

$$\cos\left(\pi-\theta\right)=\cos\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\sin\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=-\cos(-\theta)=-\cos\theta$$

変数の値が2直角、つまり\(\pi\)の時には正弦関数の値は0、余弦関数の値は-1です。これは定義として捉えてもよいですし、上記の sin(x+\(\pi\))=-sinxから導出するという形でも同じです。これらも、意味としては関数の増減との対応・周期性・なめらかな連続性を満たす要件として考える事ができます。

さらに変数が\(\pi\)を超える場合には負の角度の時のように底辺に関して対照的にひっくり返します。この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式を使うと把握しやすいでしょう。図を見ながら、図形的に捉えましょう。

点対称になる場合と周期性
角度が2直角を超える場合には、座標上で言う第3・第4象限に三角形を配置する形になります。この時には原点に対して点対称になる三角形を考えて符号を反転するだけと考えると計算が簡単な場合が多いでしょう。

さらに角度の値を大きくすると、今度は再び高さ部分に関してひっくり返り、座標軸上で言うと第4象限の位置に配置された三角形を考える事になります。

2\(\pi\)【360°】以上の角度【周期性】

角度を増やして、4直角、つまり360°に達し、それを超えた場合はどうなるでしょう。

この場合は、sin(x+\(\pi\))=-sinx, cos(x+\(\pi\))= -cosx の関係式の変数にもう一度 \(\pi\) を加えるのです。

すると、再度符号が反転して sin(x+2\(\pi\))=sinx, cos(x+\(\pi\))= cosx となり、
もとの sinx および cosxになる事を導出できます。

これが三角関数の周期性と呼ばれる性質で、以降、角度をどれだけ増やしても延々と周期的に値を繰り返すという事です。これは正接関数についても成立します。

三角関数の周期性 次のように、三角関数は2\(\pi\)ごとに同じ値を繰り返します。
  1. sin(x+2\(\pi\))= sinx
  2. cos(x+2\(\pi\))= cosx
  3. tan(x+2\(\pi\))= tanx

この周期性は、マイナスの向きに角度を減らした場合にも適用できます。つまりマイナス方向にもプラス方向にも、実数全体にわたって2\(\pi\)の周期性があるという事です。

sin(x+2\(\pi\))=sinxの関係から、sin(2\(\pi\)-x)=sin(-x) となり、余弦関数の場合も同様です。これは図形的に見ると、同一の頂点に相当する部分に至る角度を反時計回り(プラス)で測っても時計回り(マイナス)で測っても三角関数の値は同じである事を意味します。

尚、sin2xのような関数を考える場合には、周期性は sin(2x+2\(\pi\))=sin2xのようになります。
するとこの場合には、xに着目するとsin(2x+2\(\pi\))=sin2(x+\(\pi\))のようになりますから、xの変化としては周期は\(\pi\)ごとに発生する事になるのです。xは\(\pi\)だけ変化すれば三角関数の変数全体では2\(\pi\)の変化になるので、それだけで周期が1サイクルしてしまうという事です。
グラフ上では通常の正弦関数よりも「密」になった波の形になります。

単位円による定義方法

さて、以上の三角関数の定義と性質を見ると、式だけで覚えるのは大変複雑で、図形的に見るとそれほど難しい理屈ではない事が分かると思います。

上記の図でもところどころに描いていますが、じつは三角関数を把握するには円を描くと便利です。(三角関数の別名を「円関数」とも言います。)

この円は、原点を中心とした半径を1にした円で、単位円と呼ばれます。

すると、斜辺の長さに相当する「半径」が1ですから、角度の取り方は前述の方法と同じであるとすると、
円周上の点のx座標は余弦関数の値、y座標は正弦関数の値になるのです。

この単位円による方法でも適切に三角関数の値を出せるので、これを定義にしてしまうやり方もあります。

単位円による三角関数の定義

直交座標上の原点を中心とする半径1の円周上の点(X,Y)を考えて、
(1,0)から測った円周の長さ(弧度法の角度に等しい)をxとします。この時、

  1. X=cosx すなわち余弦関数と定義する
  2. Y=sinx すなわち正弦関数と定義する
  3. 正接関数は tanx=(sinx)/(cosx) で定義する

各三角関数には2\(\pi\)の周期性があり、
角度は反時計回りをプラス符号、時計回りをマイナス符号として区別するものとします。

単純な覚えやすさと使いやすさに関しては、この単位円による方法は非常に優れています。

欠点があるとすれば、三角比の拡張として唐突に「円」を持ち出すと、やはり少しばかり飛躍を感じさせるのも事実だと思います。最初から単位円による定義で教え込まれてしまうと結局「わけもわからずに」暗記するだけ・・という事になりがちです。

単位円による定義
単位円を使った三角関数の定義は、覚え方や計算の便宜としては非常に優れています。

重要な公式まとめ

三角関数の公式としては、簡単に4つのグループに分けると次のようなものがあります。

  1. 三角比についても適用できる公式
  2. 定義域を拡張した三角関数に特有なもの(例えば周期性)
  3. 正弦定理と余弦定理
  4. 加法定理と、それから派生する公式

まず、三角比についても成立するいくつかの公式は、三角関数でも成立します。これは三角比範囲の角度でのみ成立するのではなく、負の角度や直角以上の角度を代入してもきちんと成立するところが便利です。

三角関数の公式①

次式は三角比について成立しますが、
定義域を実数全体とする三角関数においても成立します。 $$\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}$$ $$\cos^2 x+\sin^2 x=1$$ $$\cos \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\cos x$$ $$\tan \left(\frac{\pi}{2}- x\right)=\frac{1}{\tan x}$$ 角度についてはここでは弧度法で記しましたが、単純な図形問題にこれらを適用する際には角度を度数法で記しても大きな問題は普通は起きません。

これらの証明は三角比の説明のところで詳しく記しています。

周期性も含めて、三角関数特有の公式・性質も整理しておきましょう。
前述の通り、式だけで覚えるのではなく図形的に理解して覚えるとよいと思います。

三角関数の公式②

これらは特に三角関数において成立する関係式です。 $$\cos \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=-\sin x$$ $$\sin \left(\frac{\pi}{2}+ x\right)=\cos x$$ $$\sin(-x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(-x)=\cos x$$ $$\sin(\pi +x)=-\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi +x)=-\cos x$$ $$\sin(\pi -x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(\pi -x)=-\cos x$$ $$\sin(2\pi +x)=\sin x\hspace{20pt}\cos(2\pi +x)=\cos x$$ 最後の関係式については周期性と呼ばれる事は前述した通りです。
正接関数については、全てtanx=(sinx)/(cosx) の関係から公式を作る事ができます。

図形的に三角形に対して成立する公式で三角関数を使うものには、正弦定理余弦定理というものがあります。(余弦定理のほうがどちらかというと重要かと思います。)それらは基本的には三角比に対して成立しますが、角度として鈍角や直角を適用する場合には三角関数の定義を使用すると図形的な対応もうまくとれるという具合になります。図形的な対応さえきちんとつけるなら、余弦定理に関しては全実数の範囲の角度を適用しても成立します。

三角関数の公式③ 図形的な定理
  1. 正弦定理:三角形の辺a、b、cの対角の大きさをそれぞれA,B、C、三角形に外接する円の半径をRとすると
    a/sinA=b/sinB=c/sinC=2R
  2. 余弦定理:三角形の辺a、b、cと、辺aの対角の大きさAについて次の関係が成立する。
    a=b+c-2bccosA
    【特にAが直角の時は三平方の定理そのもの】

また、三角関数の加法定理というものがあって、これは複素数の理論の一部を構成しており、微積分のほうで計算を進めるために使う事もあるので三角関数の公式の中では重要な部類に入ります。
また、この加法定理から派生するいくつかの小さなグループの公式として積和の公式・和積の公式・倍角の公式と呼ばれるものもあります。それらは本質的にはもともと加法定理そのもので、少し式変形をして形を変えたものになります。

三角関数の公式④ 加法定理

2つの角度の大きさ A, B に関して次式が成立します。

  1. sin(A+B)=sinAcosB+cosAsinB
  2. sin(A-B)=sinAcosB-cosAsinB
  3. cos(A+B)=cosAcosB-sinAsinB
  4. cos(A-B)=cosAcosB+sinAsinB
sinAcosB などは、sinA と cosB の積です。
正接関数についても、tan(A+B)=sin(A+B)/cos(A+B) の計算によって加法定理の公式を作る事が可能です。

この他に、高校数学では必要ありませんが、三角関数を使った無限級数によって周期関数を解析する技法があります。そこでも三角関数の基本的な性質や公式は前提として話が進められる事も多いので、基礎事項をよく知っておくと後々の学習が進めやすい事もあろうかと思います。

三角比と三角関数の定義および公式

三角比とは直角三角形の2つの辺の比の事で、どの2つの辺を考えるかによって
正弦(「せいげん」)、余弦(「よげん」)正接(「せいせつ」)の基本的な3種類があり、記号ではそれぞれ sin(サイン), cos(コーサイン), tan(タンジェント)で表します。また、その逆数として「余割」「正割」「余接」をもし必要があれば使う事もあります。三角比は図形問題を考える時にも使えますがベクトルを考えるうえでも重要で、ベクトルを力学等で活用する時にも使用されます。

三角形の角の角度は基本的には0度より大きく180度未満ですが、それを拡張して三角比に対して変数を任意の実数としたものは特に三角関数と呼ばれます。三角関数は周期関数として代表的なものであり、数学的にも物理的にも応用の範囲が広い初等関数の1つです。

角度を表す記号は何でも良いのですが
特に多く使われるのがθ(「シータ」あるいは「テータ」英語で言うthの音を表すとされるギリシャ文字)であり、ここでも一般的な角度を表す記号として多く使用します。
三角関数はxy平面の座標上で原点を中心とした単位円周上の座標としても考える事ができる事などから円関数と呼ばれる事もあります。ただしこのサイトでは三角関数の名称を使用します。

■サイト内関連記事:

三角比(正弦・余弦・正接)の図形的な定義

三角比は直角三角形の辺の比であり、角度を変数として表されます。

三角形の各辺の比は相似である別の三角形でも同じ値ですから、三角比は直角三角形の大きさにはよらず角度によってのみ確定する値になります。角度によって1つの値が決まる事を意味します。

斜辺と底辺と高さの部分(直角以外の2つの角度のどちらを考えるかで底辺と高さは入れ替わります)を使用し、「sin(サイン)」「cos(コーサイン、コサイン)」「tan(タンジェント)」の記号を使って角度の関数として表します。

直角三角形の斜辺以外の1つの辺を底辺とした時に、斜辺と底辺のなす角度をθとします。斜辺の長さをc斜辺と共に角をなす辺の長さをa(図では底辺)もう1つの辺の長さ(図では高さ)をbとする時、三角比の基本となる正弦余弦正接角度θの関数としてそれぞれ次のように表されます。

三角比表記辺の比で表した時具体例
正弦sinθb/csin60°=\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)
余弦cosθa/ccos60°=\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)
余弦tanθb/atan45°=1
公式としてtanθ=(sinθ)/(cosθ)が成立しています。
正弦、余弦、正接の定義

考えているのが直角三角形なので三平方の定理によりa+b=cですが、これは必要がある場合には三角比を表すのにも使用します。例えば斜辺の長さcを使わずにaとbだけで正弦と余弦を表すなら次のように書けます。

$$\sin\theta=\frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\hspace{15pt}\cos\theta=\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}$$

30°、45°、60°の三角比の出し方
三平方の定理を使えば直角三角形の斜辺とその他の辺の長さの関係が分かるので、三角比の値を計算する事ができます。

30°、45°、60°の三角比の具体的な値は図形的な考察から導出する事ができて、整理すると次のようになります。

三角比の値30°45°60°
正弦 sinθ\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)
余弦 cosθ\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large1}{\Large 2}\)
正接 tanθ\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)\(\sqrt{3}\)
sin30°=cos60°となっている事や
sin45°=cos45°となっている事などは偶然の一致ではなく図形的な関係から成立します。

図形的にこれらの値を導出するには次のようにします。

60°の場合は1辺の長さが「2」の正三角形を考えると分かりやすく、
真っ二つにすると斜辺が2、底辺が1、高さが\(\sqrt{3}\)の直角三角形ができます。
するとまず、余弦についてcos60°=1/2が分かります。
次に高さ部分については三平方の定理を使って \(\sqrt{2^2-1^2}=\sqrt{4-1}=\sqrt{3}\) と計算します。
それによってsin60°=\(\sqrt{3}\)/2およびtan60°=\(\sqrt{3}\)を導出できます。

30°の場合は、直角三角形の残りの角度が90°-60°=30°である事を使います。すると底辺と高さの関係が変わるので、正弦と余弦に関しては60°の時の値を入れ換えた形になり、正接に関しては60°の時とは逆数の関係になるわけです。三角形の向きを変えて考えてみても同じ事になります。

45°の場合には直角二等辺三角形を考えて、底辺と高さをそれぞれ1とすれば、まず正接について tan45°=1が分かります。次に斜辺の長さは\(\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{1+1}=\sqrt{2}\) となるので正弦と余弦の値も導出できます。

角度を0°より大きく90°未満とした時の三角比の取り得る範囲は次のようになります。

  • 0<sinθ<1【θに対して単調増加】
  • 0<cosθ<1【θに対して単調減少】
  • 0<tanθ  【θに対して単調増加で、90°に近付くにつれて無限に増加】

その他の角度についての三角比の値を知るには加法定理によって一部の値を計算できるほか、正弦についての無限級数展開(マクローリン展開)を使います。$$\sin \theta=\theta – \frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\frac{\theta^7}{7!}+\cdots$$ただし、この式を使う時には角度は弧度法で表したものでなければなりません。
例として、10° は弧度法で\(\pi\)/18【rad】なので、式に代入して四捨五入で小数点第3位まで計算すると sin10° ≒ 0.1735 です。
角度が弧度法で0に近い値の時はsinθ≒tanθ≒θの近似式を使えます。(上記の展開式で第2項以降をほぼ0と考える事により得られます。)
10°に相当する弧度法の角度を小数で表すと\(\pi\)/18≒0.1744なので、10°の場合は概算的にはその近似式を使ってもよいと言えます。

三角関数の定義と考え方

三角比に対して適用する角度の範囲を0°以下や90°以上の値を考えた関数を三角関数と呼びます。三角関数の角度は基本的に弧度法を使って表記しますが、ここでは分かりやすさのために変数を度数法で記しておきます。また、三角関数を使う時には変数をxとする事も多いですが、ここでは変数をθで表すとします。

任意の実数値を取り得る角度(「一般角」)は図形的には直角三角形を反転させた時に意味を持ち得ると同時に、向きも含めた回転の意味も持ちます。直交座標上で原点を中心にして見た時に反時計回りの回転がプラスの方向への角度の増加、時計回りの回転がマイナス方向への角度の減少としての意味を持ちます。

360°に達した時は「1周」とみなします。三角関数は360°を経過するごとに0°の時と同じ値になると定義します。つまり周期的に同じ値を繰り返す周期関数となるわけです。

三角関数の値は、xy直交座標上の原点を中心とした半径1の円(単位円)の円周上の点の座標として表されます。より具体的にはx軸のプラスの部分を0°として、角度θになる直線を円に向かって引いた時の円との交点のx座標を余弦関数 cosθの値として、y座標を正弦関数 sinθの値とします。この時に、角度の範囲が0°より大きくて90°未満の時には三角比と全く同じ値をとるわけです。

sin0°=0,cos0°=1,sin90°=1,cos90°=1のように定義します。このような定義をするのは数学的な拡張として自然であるからというのもありますが、物理的に単位円周上の等速運動に対応する単振動などを考えてみるとそれを表現する関数として適切であるといった見方もできます。

正接関数はtanθ=(sinθ)/(cosθ)として定義します。ただし、正接関数においては cosθ=0となるθの値においては無限大になってしまい「定義できない」とします。より具体的にはθ=±90°,±270°等は正接関数の定義域から除外する事になります。

三角関数の具体的な値を、三角比の範囲も含めて挙げてみると次のようになります。

一般角(度数表記)正弦関数 sinθ余弦関数 cosθ正接関数 tanθ
0°
30°\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
45°\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)
60°\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\sqrt{3}\)
90°定義しない
120°\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
135°\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)-1
150°\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
180°-1
210°【-150°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
225°【-135°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)
240°【-120°と同じ】\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
270°【-90°と同じ】-1定義しない
300°【-60°と同じ】\(-\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(-\sqrt{3}\)
315°【-45°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)\(\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{2}}\)-1
330°【-30°と同じ】\(-\frac{\Large 1}{\Large 2}\)\(\frac{\Large \sqrt{3}}{\Large 2}\)\(-\frac{\Large 1}{\Large \sqrt{3}}\)
360°【0°と同じ】
もちろんこれらの値は暗記するものではなく、
座標上の単位円から判断するか三角比の値をもとに公式から計算するものになります。

基本的には三角比の値を使う事ができて、それがx軸対称やy軸対称の形で符号が入れ替わったり角度を180°から引いた形で扱うといった計算をしている事になります。

三角比と三角関数の公式

基本公式としては次のようなものがあります。三角比と三角関数とで同じ公式を適用する事ができて、違いは定義域(角度の範囲)だけになります。三角関数で統一的に考えて、三角比は範囲を限定した特別な場合と考えても同じです。

三角比の公式

正弦、余弦、正接について次式が成立します: $$\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$$ $$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=1$$ $$【\cos^2\theta+\sin^2\theta=1と一般的に書きます。】$$ $$\cos (90°-\theta)=\sin \theta$$ $$\sin (90°-\theta)=\cos \theta$$ $$\tan (90°-\theta)=\frac{1}{\tan\theta}$$

三角比のベキ乗の表記

三角比の2乗については、次のように書く習慣があります。 $$\sin^2\theta\hspace{15pt}\cos^2\theta\hspace{15pt}\tan^2\theta$$ また2乗だけでなく、3乗、4乗等でも同じようにします。
これは一応「ある角度の2乗」θの三角比 sin(θ)と区別するためです。

公式

上記の公式の第1式である正接を正弦と余弦で表す関係は、単純に正弦を余弦で割ると出ます。斜辺の部分は消えてしまうわけです。

$$\frac{\sin\theta}{\cos\theta}=\frac{b}{c}\cdot\frac{c}{a}=\frac{b}{a}=\tan\theta$$

2番目の、正弦と余弦のそれぞれの2乗の和が1になるという式は、三平方の定理により分かります。

$$(\cos\theta)^2+(\sin\theta)^2=\frac{a^2+b^2}{c^2}=\frac{c^2}{c^2}=1$$

90°-θ の角度を考えている関係式は、図を見ると分かりやすいかと思います。直角三角形の θ とは別の角度の三角比は、正弦と余弦の関係をちょうどひっくり返して表せるという事を意味します。

正接の公式tan(90°-θ)については最初の関係式 tanθ=(sinθ)/(cosθ) も使って
{sin(90°-θ)} / {cos(90°-θ)} によって出しています。
正接の公式についてはいずれも同じように導出する事ができます。

特に三角関数に対しては次の式が成立する、あるいは定義が行われます。

特に三角関数に対する定義と公式
定義・公式正弦関数 sinθ余弦関数 cosθ正接関数 tanθ
0°
90°定義せず
マイナス
の角度
sin(-θ)
=-sinθ
cos(-θ)
=-cosθ
tan(-θ)
=-tanθ
180°-θsin(180°-θ)
=sinθ
cos(180°-θ)
=-cosθ
tan(180°-θ)
=-tanθ
180°+θsin(180°+θ)
=-sinθ
cos(180°+θ)
=-cosθ
tan(180°+θ)
=tanθ
360°+θsin(360°+θ)
=-sinθ
cos(360°+θ)
=-cosθ
tan(360°+θ)
=tanθ
90°+θsin(90°+θ)
=cosθ
cos(90°+θ)
=-sinθ
tan(90°+θ)
=-(1/tanθ)

その他、重要となる(他の色々な場面で使う)主な公式や定理には次のようなものがあります。

定理・公式等主な内容備考
余弦定理=a+b-2abcosθθはaとbの長さの辺のなす角
θ=90°の時は三平方の定理
加法定理sin(θ+θ)=sinθcosθ+sinθcosθ2
cos(θ+θ)=sinθsinθ-cosθcosθ2
正接の加法定理も存在
倍角の公式sin(2θ)=2sinθcosθ
cos(2θ)=sinθ-cosθ
加法定理から導出
和積の公式sinθ+sinθ=\(2\sin\frac{\Large \theta_1+\theta_2}{\Large 2}\cos\frac{\Large \theta_1-\theta_2}{\Large 2}\)
cosθ+cosθ=\(2\cos\frac{\Large \theta_1+\theta_2}{\Large 2}\cos\frac{\Large \theta_1-\theta_2}{\Large 2}\)
加法定理から導出
積和の公式もあり
三角間数の
微分公式
(d/dθ)sinθ=cosθ
(d/dθ)cosθ=-sinθ
微分の定義式より
積分にも使用可
極座標変換x=rcosθ
y=rsinθ
図から導出
複素数の
指数関数表示
eiθ=cosθ+isinθi は虚数単位
オイラーの式とも
マクローリン
展開
sinθ=θ-θ/(3!)+θ/(5!)-・・・
cosθ=1-θ/(2!)+θ/(4!)-・・・
正接に関しては
逆正接関数のほうが簡単
内積の定義\(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}|\hspace{2pt}|\overrightarrow{b}|\cos\theta\)θは2つのベクトルのなす角

初等関数の仲間達【高校数学の関数】

初等関数(英:elementary function)とは、大雑把に言うと「高校までに教わる関数」の事です。要するに、具体的には高校数学で扱っている関数が該当するのです。

例えば2次関数や、三角関数、それと指数関数と対数関数などが該当します。

★もう少し詳しく言うと「初等関数」とは、いわゆる高校で教わる関数の「加減乗除の組み合わせ」およびそれらの「合成関数」「逆関数」を指すとされますが、これはあまり気にしなくてよいでしょう。(ただし高校数学でも微積分までやる時は気にしてください。合成関数の微分や、逆関数の微分に対して特定の公式が成立するからです。)

初等関数は「特殊関数」に対する語でもあります。特殊関数とは具体的にはガンマ関数、ベータ関数、ゼータ関数のように積分や極限によって定義される関数が該当し、初等関数では表せない事を1つの特徴とします。

高校で教わる関数まとめ

さて、初等関数とは高校数学での関数と言い換えてもそんなに間違いはないので、初等関数とはどういうものかを見ると高校で教わる関数というものが見えてきます。

高校で教わる初等関数
  1. 単項式と多項式:xで表される関数。1次関数、2次関数、3次関数など。
    反比例関数1/xや変数の平方根を考えた \(\sqrt{x}\) も含みます。
  2. 指数関数 実数等の「x乗」の形の関数。特に自然対数の底を使ったeが重要。
  3. 対数関数 ある数を何乗するとxになるかを表したもの。指数関数の逆関数でもある。
  4. 三角関数 直角三角形の辺の比をもとにした関数。代表的な周期関数としても使用。
  5. 逆三角関数 その名の通り三角関数の逆関数で、最近の高校ではあまり扱わない。微積分の理論においてむしろ使う事がある。

※他に例えば「双曲線関数」というものもありますが、これは指数関数の組み合わせで作る関数です。その他にも、初等関数を組み合わせて便宜上特別な名称をつける場合があります。ただし、高校数学ではそれらはさほど重要でない場合が多いです。

初等関数というものは、じつはまとめるとこれだけしかないのです。
もちろん、これらの組み合わせも初等関数であり、例えば1次関数と三角関数の組み合わせの xsin x なども該当します。また、高校ではこれらの関数の他に数列やベクトルや微積分や順列・確率等も教えますので、これら初等関数の一覧が高校数学の内容全てを網羅しているという意味ではありません。

しかしそれでも、高校で教わる具体的な関数というのは大別すると「じつはこれだけ」であるというのは少し意外であるという人もいるのではないでしょうか。高校数学でも、大学入試などでは確かに初見で時間内に正確に解くのはなかなか難しい「難問」や複雑な計算は存在しますが、それらも原則としてはじつは「基礎事項」の組み合わせなのです。

つまり学ぶべき基礎事項をしっかり整理して把握したうえで、それらを組み合わせて問題を解く練習をしてみる事が高校数学を得意にする鍵になります。

単項式と多項式

単項式とはxのa乗の形、つまりxの単独の形です。
これらが和や差で組み合わさったx+x+1などが多項式です。
のaを「指数」とも言います。単項式や多項式での指数の値は、高校数学では実数全体を取り得ます。

★高校数学および大学入試では、1次関数および2次関数について、図形上の性質と式による表現を組み合わせた出題がなされます。3次関数については微分によりグラフの形を考察するので、基本的には微積分での出題になります。
他方これらに対して、多項方程式を解くという作業は(中学校での)2次方程式の解法まででじゅうぶんです。3次方程式の解法や、4次方程式の解法は高校数学では原則として問われません。(ただしそれらを高校数学の範囲の知識で解く事は可能です。)

=1で、つまり定数関数は単項式に含めている形になります。

のaが負の値の時は分母に関数を持っていき反比例の形にしたものです。この時、x=0を定義域(変数xの値の範囲の事)から必ず除外して考えます。

$$x^{-1}=\frac{1}{x},\hspace{5pt}x^{-2}=\frac{1}{x^2}$$

のaが分数になる時は、自然数nを使って1/nの形になる時は「n乗根」(の正の値)を表します。この場合には、aがm/nのような形の時は、「xのm乗とxのn乗根の掛け算」であると考えます。

$$x^{\frac{1}{2}}=\sqrt{x},\hspace{10pt}x^{\frac{1}{3}}=^3\sqrt{x}$$

また、高校数学ではあまり気にする必要はないですがxのaは無理数でもよくて、じつはさらに別途にaが複素数の場合も定義可能です。

こうしてみるとxの「何乗」の部分が自然数、負の数、有理数・・の場合があって複雑に見えるかもしれませんが、重要なのはそれらをxという形で統一的な演算が可能であるという事です。

指数関数

指数関数とは、2次関数や3次関数などとは異なり、「2のx乗」2などの関数です。基本的な考え方はxの場合と同じで、指数関数2などの変数xの定義域は実数全体とする事ができます。

指数関数のグラフの形は、関数自体にマイナス符号がついていなければ正の値を常にとるという特徴があります。これは単項式や多項式で表される関数との大きな違いです。具体的な値を代入してみたりグラフに描いてみたりすると分かりやすいでしょう。

指数関数と対数関数
指数関数のy軸との交点は(0,1)であり、対数関数はx軸と(1,0)で交わります。

指数関数で重要なのは、e=2.718・・という無理数のx乗、eです。ただし、これが重要なのは微積分においてなので、もしも高校数学の範囲で微積分を除いて考えるのであればあまり気にしなくてよい事です。

対数関数

対数関数とは、指数関数の逆関数であり、logxという記号で(正の数)aを「何乗するとxになるか」という値を関数とするものです。ここでのaの事を対数の「底」と言います。この時、x=aであれば logx=1, x=aであればlogx=2です。

logxにおいて、a=10の時を特に常用対数と言い、a=e=2.718・・の時を特に自然対数と言います。高校数学ではあまり気にしなくてよいのですが、常用対数を log x、自然対数を ln x(こちらをlog xとする人も)で記す場合があります。対数関数の場合、関数の値自体は負の数でもあり得ますが、変数の範囲は「正の数」という点がひとつ注意点です。

対数関数も指数関数と同じく、高校数学ではどちらかというと微積分との関連のほうが重要になってきます。

三角関数

三角関数は、弧度法で表した三角形の角度を変数とした辺の比(三角比)を基本とする関数で、正弦関数(sin x)、余弦関数(cos x)、正接関数(tan x)の3つが基本です。角度を0から直角までに限定した場合して平面図形に使うなどには特に三角比と呼ぶ場合もあります。

必要に応じてこれらの逆数(例えば余接関数 cot x=1/(tanx))を考える事もありますが、高校数学では重要ではないでしょう。まず初めに学習すべき事を絞る事も大事である場合もあります。高校数学での基本は sin, cos, tan の3つだと思ってよいです。

三角関数は基本的には「角度」を変数とするのですが、プラスマイナスの値と対称性を考えて三角関数の変数の範囲は実数全体とします。(tan xだけは\(\pi\)/2 の奇数倍を定義域から除きます。)

三角関数
三角関数は三角比を基本としながら、定義域を実数全体に拡張した周期関数です。ただし正接関数については、値が無限大になってしまう「90°」の部分を定義域から除きます。

前述の通り、逆三角関数については最近の高校ではほとんど問われないので、原則として気にする必要はありません。大学数学で扱う微積分の特定の計算で、逆三角関数を使う事が有用である場合があります。

以上、初等関数の一覧と重要な点を列挙しましたが、①:まずは学習すべき内容を整理し全体像をつかむ → ②:各関数についての細かい規定や計算方法を知る → ③:それらを組み合わせた問題(主に大学入試問題)を解く練習を積んでみる という手順が高校数学を得意にする勉強のやり方の1つです。

球に関する公式

球の表面積と体積の公式はセットになっています。微分と積分の関係で結ばれています。
微分の公式積分の理論については別途に詳しくまとめています。

直接的な問いとして出題されるのは高校数学の範囲ですが、球の表面積や体積を種々の理論で「使う」事は大学数学と物理学でも引き続き行われます。特に物理学で円や球がモデルとしてよく使われますが、これは単純に、半径が等しいと性質が理論を組み立てる際に非常に便利であるからです。

公式

球の表面積と体積の公式は次のようになります。

公式:球の表面積と体積

$$S=4\pi r^2【球の表面積】$$ $$V=\frac{4}{3}\pi r^3【球の体積】$$ ★覚え方としては、面積は2乗、体積は3乗という点は四角形と立方体の関係と同じと考える事ができます。比例係数については微分・積分の関係にあり、円が関わりますから円周率もくっついてくるというわけです。

公式の導出については、じつは
円周の長さ → 円の面積 → 球の体積 → 球の表面積 という順番です。
しかも、基本的には微分と積分の関係で結ばれているのです。ただし微積分による導出では、順番としては体積が先でその次が表面積という事になります。

体積と表面積

表面積公式の導出

球の体積のほうの公式の「4/3」という係数が不可解で覚えにくいという人もいるかもしれませんが、微積分を考えてみてください。球の体積公式をrで微分すると球の表面積になるのです。

これはそう考えると単に覚えやすいという事ではなくて、数学の理論としても本質的な事なのです。

$$rで微分する:\frac{d}{dr}\left(\frac{4}{3}\pi r^3\right)=4\pi r^2$$

このように、初歩的な微分の公式で体積と表面積の関係が結ばれています。

逆に表面積の公式をrで積分すれば体積の公式になりますが、これはより正確には「0からrまで」の定積分になります。しかし0の部分は代入すると消えるので、公式を覚えるという意味では結果的に考えなくてもよい事になります。

面積と体積の公式
円と球についてのこれらの公式は、rに関する微積分の関係で結ばれています。

尚、積分を使えば最初に円の「面積」をいきなり出す事も計算上は可能ですが、この計算ではじつは三角関数への置換積分を利用します。そこで三角関数の微分公式を使うわけですが、肝心のこの三角関数の微分公式は、円周率が極限値として存在する事を前提としています。
そのため、この積分による面積計算は円周率という値の存在の「証明」としては、通常は使いません。ただし「理解」する方法としては有用です。また円周率の正確な数値3.14159265・・を直接計算するための手法としては、じつは周の長さよりも円の面積のほうを利用する事が多いのです。

体積公式の導出

しかし、球の体積と表面積が微積分の関係にあるとすれば、平面の円の面積と球の体積はどうつながるのか?という話になります。

微積分の関係である事は同じです。ただし、この場合は [-r,r] の積分区間での定積分になります。また、積分の設定をする際に1つだけ注意が必要です。そのため、定積分の結果である球の体積のほうから円の面積を推測するのは少々難しいでしょう。

基本的には、「断面の面積が分かっている立体」の体積を計算する要領で定積分を行って導出するのです。
直交座標上に立体をおいて、x軸に垂直な断面積をxで定積分します。

体積の計算

計算を簡単にするため、球の中心を原点におきます。すると、x軸に垂直な部分の断面の円の半径が分かれば、円の面積を-rから+rまで積分すれば球の体積となるのです。

その時に、xy平面の断面で一度考える必要があります。
注意点は、この時の球の、各x座標に対する断面積(円になります)と半径の考え方です。
これは、球をちょうど半分に切った時の円に対するx+y=rの関係式を踏まえて、
x座標における「yの値の絶対値を半径とする」円の面積を断面積として考える必要があるのです。この設定を間違えると正しく計算されないので注意が必要です。

すると、円の式におけるyの値という事は「平方根が出てきてしまうではないか!」という事になり面倒に思えるかもしれませんが、円の面積はその2乗を考えればよいのですから、y=r-xだけ分かればじゅうぶんです。

定積分の計算は次のようにします。計算は難しくありませんが、ここでの積分変数はxであり、rは定数扱いという点に少し気を付ける必要があります。

$$\int_{-r}^r\pi y^2dx=\int_{-r}^r\pi (r^2-x^2)dx=\left[r^2x-\frac{1}{3}\pi x^3\right]_{-r}^r$$

$$=r^3-\frac{1}{3}\pi r^3-\left(-r^3-\frac{-r^3}{3}\pi\right)=2r^3-\frac{2}{3}\pi r^3=\frac{4}{3}\pi r^3$$

途中の符号が入り乱れていて分かりにくい場合は、0から+rまで定積分して2倍しても同じです。

$$2\int_0^r\pi y^2dx=2\int_0^r\pi (r^2-x^2)dx=2\left[r^2x-\frac{1}{3}\pi x^3\right]_0^r$$

$$=2\left(r^3-\frac{1}{3}\pi r^3\right)=2\cdot\frac{2}{3}\pi r^3=\frac{4}{3}\pi r^3$$

この計算の仕方は球だけではなくて他の任意の立体の体積でも同じ事です。(もちろん、手計算でやる場合は原始関数を計算で出せるならの話ですが。)

物理学や工学の理論で球の表面積や体積を考える時には、特定の力等の大きさの関係と組み合わせて理論が組み立てられます。特に、距離の逆2乗に比例する(2乗に反比例する)関数と表面積の組み合わせは理論上重要な役目を果たす事になります。

円周率の値はなぜ3.14なの?

円周率はなぜ3.14なのか、なぜ「3」ではいけないかの易しい説明です。円や球に対しては「円周率」が常につきまといますが、それについての話をしましょう。

そもそも円周率の定義は? ■ 正確な証明の話 

そもそも「円周率」の定義は?


円周率とは、「円の直径円周の長さの比」の事であり、値は約3.14です。
直径が1メートルの車輪の円周の長さは、円周率を用いて
1×3.14=約3.14メートルと計算できます。
円周率の正確な値は3.14159265・・・という、循環しない無限小数であり、「無理数」です。
【無理数である事は、背理法で示します。円周率に限らず、特定の数が無理数である事を示す方法は基本的には背理法です。】

円周率の特徴
  1. 「円周の長さ」÷「直径」の値の事を円周率と呼ぶ
  2. 任意の円において値は一定であり、3.141592・・・・
  3. 循環しない無限小数であり、無理数である

円周率を使って円の面積も計算できますが、元々は「円周」と直径の比です。
記号は、ギリシャ文字の「パイ」\(\pi\) を使います。

説明図①
正六角形は6つの「正三角形」で構成される事に気付くと、「直径×3」が円周ではなくて正六角形の周の長さである事が簡単に分かります。


この「約3.14」という半端な数はどこから出てくるのでしょう?
円に内接する正6角形を考えてみてください
じつは、簡単な計算により、「円の直径×3」は、ちょうど「円に内接する正6角形の周の長さ」なのです。
この事実が、円周率を「約3」と教える事が、数学的に見て決して良いと言えない理由の一つです。

【多角形の円に対する内接・外接の考え方は別途にまとめています。】

★本当に大雑把な計算(例えば100くらいになるのか、1000くらいになるのかといった)であれば円周の長さを「大体3」の計算でやってもよいと思いますが、正確な計算にはならない事は踏まえておく必要があるという事です。実際の値よりも小さくなってしまうからです。


次に、円に内接する正12角形の周の長さを計算してみると、おおよそ、円の直径×3.1058になります。
この「円周率に相当するような定数」は、円に内接する正24角形の場合は約3.1326、
正48角形の場合は約3.1393です。正96角形まで考えると、3.14が出てきます。
じつは、角をもっと増やしていくと、その値は正確な「円周率」の値に限りなく近づくのです。

動画声優担当ステ♪様 http://sute.tabigeinin.com/

この動画は極限値としての円周率の存在証明の記事にも載せています。

正確な証明の話

☆ここから先の内容は高校数学、さらに詳しくはそれ以上の数学の範囲です。

極限値として円周率が確かに存在する事の証明は少し面倒ですが、平面幾何と極限の基礎知識さえ知っていれば証明は可能です。
円に内接する正n角形と、円に外接する正n角形を考えます。
その中で、2つの頂点と円の中心で作られる三角形に注目します。
ここでじつは少し工夫が必要で、nに対してn+1ではなく、2nを考えます。

説明図②
通常の数学的帰納法だとnに対してn+1を考えますが、ここでは2nを考えます。
それによって、考察はかなり簡単になるのです。


すると、内接する正2n角形の周の長さは
「内接する正n角形の周の長さより必ず大きい事」と、
「外接する正n角形の周の長さよりは必ず小さい事」が、比較的容易に示せるのです。


これは、内接する正n角形の周の長さを数列として見た時、「単調増加で上に有界」である数列になっている事を示しています。
そして、そのような数列は必ず極限値を持つという定理があるので、
円に内接する正n角形の周の長さは「nを無限大にした時に極限値を持つ」事が示されます。


同様に、円に外接する正n角形の周の長さも極限値を持つ事が示せます。
ここで、証明の中で導出している関係式の一つを用いると、2つの極限値は
一致する事を示せます。その値が、円周率と呼ばれる定数です。

円周の長さが直径と円周率の積で表されるという事実は、三角関数の微分公式が成立する根拠でもあるので、理論上、かなり重要な位置にあると言えます。

三角関数の微分公式の導出には sin x < x < tan x という不等式を用います。
これは実質的には、「内接正n角形の周の長さ<円周の長さ【極限値】<外接正n角形の周の長さ」という関係式と同等です。
円周や円弧の長さは極限値なので、解析学(微積分学)的には本来は多少詳しい考察や証明が必要になるというわけです。

サイト内関連記事【円に関する数学】

絶対値記号に関する問題

実数に関する絶対値の意味と、高校数学の範囲で想定される問題について説明します。

絶対値とは?

実数の「絶対値」の意味
文字式に対する絶対値
絶対値記号がついた関数のグラフ 

実数の「絶対値」の意味

絶対値とは、意味としては向きに関わらず正の値として特徴づけられる「大きさ」のようなものです。

実数の場合、正の数の絶対値はその値そのもの負の数の絶対値は符号を取り除いて正の数に直したものを指します。記号は、数を2本の縦棒||で挟んだようなものを使います。例えば次の通りです。

$$実数+3の絶対値\hspace{10pt}|3|=3$$

$$実数-3の絶対値\hspace{10pt}|-3|=3$$

後述もしますが、負の数の「絶対値」は、-1を掛ける事で正の数にしたものでもあります。文字式や関数の絶対値を考える場合は、こちらの考え方のほうが重要になります。

尚、複素数に関しても絶対値というものもあり、ベクトルの場合は絶対値ではなく「大きさ」とか「距離」とか言いますが、記号は実数に関する絶対値と同じ記号を使います。

$$参考:複素数の絶対値\hspace{5pt}|1+2i|\hspace{15pt}ベクトルの「大きさ」|\overrightarrow{AB}|$$

実数に関する絶対値
高校数学での絶対値記号は、意味としては簡単ですが問題を解く時には注意すべき点もあります。

文字式に対する絶対値

さて、という事は実数に関する絶対値というのは要するに正の数だろうが負の数であろうがとにかく符号はプラスにするというものですので、「大した意味を持つものではなく簡単ではないか」という話にもなります。実際、意味自体は簡単である事は事実です。

ただ、高校数学の場合、くせものなのは文字式や関数に絶対値記号をつける場合なのです。

例えば、実数変数xに絶対値記号をつけた |x| については次のように処理せねばなりません。

$$①x≧0 の時、 |x|=x,\hspace{10pt}②x<0 の時、 |x|=-x$$

注意が必要なのは、変数xが「負の数」の範囲にある場合で、絶対値記号を「外す」時にはマイナス記号を添えねばなりません。これは、xが負の数であるのだから、反転して正の数にするためには数学的な操作としてはマイナスを掛ける必要があるという事です。

$$x<0 の時,|x|=-x\hspace{10pt}例えばx=-2なら、|x|=-x=-(-2)=2$$

人間が自分の感覚でやる時には「マイナス記号を取り払う」事で負の数を正の数にできますが、数学的な演算としては負の数を正の数にするには「-1を掛ける」操作が必要であるという事なのです。

より複雑な文字式に絶対値記号をつける場合も考え方は同じで、不等式に関する問題も絡んできます。

$$|A-2B|=A-2B【A≧2B】\hspace{10pt}|A-2B|=-(A-2B)=-A+2B【A<2B】$$

関数に絶対値記号をつける場合は、その関数がどの変数の領域(「定義域」)で正の数になるのか、負の数になるのかという問題が直接的に絡みます。

$$|x^2-3x-4|=|(x-4)(x+1)|から、x^2-3x-4の正負の状況が分かる。$$

$$x≦-1またはx≧4の時、|x^2-3x-4|=x^2-3x-4$$

$$-1<x<4の時、|x^2-3x-4|=-x^2+3x+4$$

このように、絶対値記号とは意味自体は簡単なのですが、出題する問題として話を複雑にしようと思えばいくらでもできるような性質のものでもあるので、いくらか慣れておく必要もあると思います。

絶対値記号がついた関数のグラフ

上記のように関数に絶対値記号をつける事もできるわけですが、この時にグラフを描くと、関数が0の値をとる点を境にx軸に反射するように折れ曲がるグラフになります。

例えば、次の3つの絶対値記号がついた関数のグラフは図のようになります。

$$y=|x|, \hspace{10pt}y=|x-1|, \hspace{10pt}y=|x^2-1|$$

絶対値記号がついた関数のグラフ①
絶対値記号がついた関数をグラフに描くと、このように本来は関数の値がマイナスになる部分がx軸で折り返され反転したような形のグラフになるのです。

2次関数に絶対値符号をつけた関数に関しては、因数分解する(本質的には解を計算する)事でグラフの形が分かります。

$$x^2-1=(x+1)(x-1)から、もとの2次関数の正負の範囲が分かります。$$

高校数学で問われる事は少ないと思いますが、三角関数に絶対値記号をつけた形の波形のグラフというものも想定できます。通常は負の数の部分が反転して周期的に山がいくつも連なるようなグラフになります。

参考までに、この類の波形は、電圧や電流として正弦関数等を考える時には実際に作れるもので、交流を直流に変換するための古典的な技術の1つです。半導体素子を上手に回路に組み合わせると実現可能となります。

応用:どういった出題があるのでしょう?

直線との交点の問題など ■ 微積分との複合問題

直線との交点の問題など

上述の通り、関数に絶対値記号をつけると、グラフ上では形が変わってしまう場合があります。

そうすると、例えば同じ「2次関数と直線の交点の状況を調べる」という問題であっても、関数部分に絶対値記号をつける事で計算の手間が1つ増えてランクが少しだけ上がるわけです。

$$■問い:直線y=x+Cと図形y=|x^2-5x+4|が3点で交わるCの値は何ですか。$$

こういった問いの場合、少し引っかけどころがあって、x軸に対して反転した部分に「接する」ことで3点で交わるパターンと、ちょうどx軸で反転する1点と、突き破るように関数と交わる他の2点と合わせて3点という場合があります。仮にこういう問題が出題された時には、どちらの場合も述べないと完全な正答にならないところがくせものです。

この問いに関しては、図に描いてみると状況を把握しやすいと思います。

絶対値記号がついた関数のグラフ②
直線との交点は0~4個の範囲があり得ます。図に描くと分かりやすいです。

A.まず、2点および接点によって3点で交わるパターンです。

この場合には、接する部分は2次関数の部分が反転していますから、

$$y=x+Cと、y=-(x^2-5x+4)=-x^2+5x-4が接する状況を考えます。$$

$$x+C=-x^2+5x-4\Leftrightarrow -x^2+4x-4-C=0$$

$$\Leftrightarrow -(x-2)^2-C=0$$

よって、ちょうどC=0であればそのような状況になります。これがまず1つです。

B.もう1つの場合。この場合、絶対値記号の中の2次関数が0になる部分の片側(値が小さいほう)を直線が通る事になります。

$$x^2-5x+4=(x-1)(x-4)なのでx^2-5x+4=0\Leftrightarrow x=1またはx=4$$

直線のほうのy=x+Cが、点(1,0)を通ればよいわけです。この場合、y切片であるCを知るのは簡単で、C=-1です。(分かりにくければ図を見てください。)

よって、題意を満たすCの値はC=0,-1です。【解答】

この問いの場合は直線のほうの傾きが固定されているので比較的状況を把握しやすく、逆に傾きのほうが変化する場合には状況はやや複雑になります。さらに、直線の式のほうに絶対値記号がつく場合も同様に複雑になります。いずれにしても、グラフの図形的状況を丁寧・正確に把握する事がポイントとなります。

この問いと同じ部類で、より平易なパターンはx軸に平行なy=Cのような直線と、2次関数が一部反転した関数との交点を調べさせる問題です。その場合、反転した頂点部分より上とx軸で2交点、頂点の座標では3点、x軸から頂点までの間では4点、y座標が負の部分では0点で交わるという事になります。

微積分との複合問題

微積分の問題で、絶対値記号がついた関数の微分や積分を問うという出題も一応あり得るものではあります。いずれの場合も、絶対値記号がついたままでは微分も積分もできません。

まず絶対値の中身の正負の状況を正確に把握して、絶対値記号を外すという操作が必要になります。それから、微積分の操作をします。

上記の2次関数に絶対値記号をつけた関数に直線が接する条件を微分で出す場合には、x軸に対して反転した部分で接するため、マイナスをつけて絶対値記号をはずした2次関数を微分する事になります。微分の場合は、関数の正負が反転する部分は導関数の正負も反転するだけという性質をうまく使える場合もあります。

定積分であれば積分区間を分割する事になります。本来マイナスになる部分の定積分がプラスに転じるので全体の値も当然変わってきます。

いずれにしても、通常の形の関数を微積分するよりも一手間かかる問題になりやすいのです。

参考までに、絶対値記号がついた関数がx軸で反射するように折れ曲がる点は、微積分学では関数が「連続であるけれども微分不可能である」点の例の1つとしてよく取り上げられます。これは、その点に変数xを近づける時に、大きい側から近づける場合と、小さい側から近づける場合とで微分係数に相当する極限値が異なる値になってしまうためです。

2次関数を表す式と放物線【図形と式】

高校数学での、直交座標上での図形的な性質と関連させた2次関数の式、および問題を解くコツについて説明します。

およそ、センター試験の出題範囲レベルに対応できる程度の問題について解説します。

2次関数と放物線の関係

2次関数を表す図形と高校数学での考察点
2次関数の「頂点」
参考:頂点を調べる別の方法・・2次方程式の解、微分 

2次関数を表す図形と高校数学での考察点

2次関数自体は中学校でも教わるかと思いますが、高校数学だとより自由自在に平面の中での図形的な考察を、式によって(手計算で)進める事が行われます。

2次関数が直交座標上で表す形は「放物線」です。最大値と最小値のどちらか1つを必ず持ち、x軸の無限遠方では必ず+側に無限大になるか-無限大になるのかのどちらかになります。

$$2次関数\hspace{5pt}Ax^2+Bx+C\hspace{5pt}が表す図形:「放物線」$$

この式で、Aの値がプラスであれば「下に凸【とつ】」の形、逆にAがマイナスであれば逆さまの「上に凸」の形になります。

尚、A=0であれば1次関数になってしまうので、その場合に限っては図形は放物線にならず直線になります。

このように、式の中での性質や特徴が、図形的にはどのような意味を持つのかを理解しておく事が問題を解くうえでのポイントになります。

2次関数と放物線①

2次関数の「頂点」

2次関数が、直交座標上でどのような場所にあるかを見るには、「頂点」の位置を調べます。

そのために、2次の項と1次の項を2乗の形に変形します。

★尚これは2次関数であるから必ず、しかも簡単にできる操作で、3次式以上だと一般的にはそううまくはいきません。3次式の場合は高校数学の手計算では多くの場合、微分を用いて調べます。簡単に後述しますように、2次関数でも微分の手法を使う事は可能です。

例えば次のような具体的な2次関数については次のようになります。

$$x^2+4x-6=(x+2)^2-4-6=(x+2)^2-10$$

この時関数はx=-2を代入すると最小値-10を持ちます。これは最後の式にそれを代入して直ちに最小値を得るのですが、間違いのないようにもとの式に代入してみるのもよいでしょう。
(-2)・(-2)+4・(-2)-6=4-8-6=-10ですから確かに合っています。

この時、2次関数が最小値をとる座標である(-2,-10)をこの2次関数の「頂点」と呼ぶのです。

2次の項がマイナスでも同じ操作をします。

$$-x^2+4x-5=-(x-2)^2+4-5=-(x-2)^2-1$$

この時は、2次関数はx=2で最大値-1を取ります。この最大値をとる座標(2,-1)がこの2次関数の「頂点」です。

関数の中の係数が未知数である場合も同様です。

$$x^2+(A-2)x+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{(A-2)^2}{4}+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2-4A+4}{4}+1$$

$$=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2}{4}+A$$

この例の場合、最小値の値もAに関する「2次式」ですから、問題の形式によってはさらに計算が続きます。高校数学だと、この手のタイプの問題のほうが問われやすいかもしれません。応用問題についても後述しているので必要に応じて参照してください。

参考:頂点を調べる別の方法・・2次方程式の解、微分

2次関数で、x軸との交点が2つある場合に限って言えば、x軸との2交点の中点のx座標が頂点のx座標に等しくなります。そのため、ものによっては、2交点を先に出してしまって中点を考えて頂点を出す事もできます。例えば次のような感じです。

$$x^2+2x=x(x+2)より、x=0,-2でx軸(y=0直線)と交わる。よって、頂点のx座標は-1$$

解けるなら何の手法を使ってもよいのですが、複数の手法を知っているとチェックとして使えるでしょう。

参考までに、2次関数の頂点の位置を調べるには、微分を使う事もできます。センター試験では微分を使わなくても問題を解けるように必ず作ってあるので微分を使う必要はないですが、解答が合っているかどうかのチェックなどに使う事ができます。

上記の例だと例えば次のようになります。 $$(x^2+4x-6)^{\prime}=2x+4$$ $$(-x^2+4x-5)^{\prime}=-2x+4$$ $$\{x^2+(A-2)x+1\}^{\prime}=2x+A-2$$ $$(x^2+2x)^{\prime}=2x+2$$ これらの「導関数」が0になる値が、2次関数の場合では最大値あるいは最小値をとるxの値、すなわち放物線の頂点のx座標になります。(他の関数の場合には直ちに最大または最小となる値とは言えないので注意。)
本質的には、2次関数の頂点は手計算では平方完成によっても微分によっても、本来はどちらの方法でも調べる事ができるのです。

2次関数と放物線に関する応用問題

2次関数の最大値・最小値に関連させた問題
定義域が限定された場合の最大・最小
直線と放物線の交点問題
2つの放物線同士の交点 

2次関数の最大値・最小値に関連させた問題

$$■問い:2次関数y= x^2-4x+5はx軸と何個の交点を持ちますか。$$

こういった問題の場合には、式変形して図形の様子を見て調べます。

$$x^2-4x+5=(x-2)^2+1$$

であり、最小値は1です。という事は、x軸(直線y=0)との交点は存在しません。交点の数は0個です。【解答】

こんな具合です。

ただし、大学入試等での問題では、こういったシンプルな問題はあまり出してくれません。もう少し計算の手順が必要な形で出題されると考えるべきでしょう。

例えば、2次関数の係数も未知数である場合には計算はさらに続き得ます。上記でも例に挙げた2次関数を使って見てみましょう。

$$■問い:2次関数y=x^2+(A-2)x+1はx軸と何個の交点を持ちますか。(Aは実数とします。)$$

$$x^2+(A-2)x+1=\left(x+\frac{A-2}{2}\right)^2-\frac{A^2}{4}+A$$

このように最小値自体がAの値によって変化し、しかもAに関する2次式ですので今度は2次方程式を解く作業になります。

$$-\frac{A^2}{4}+A=-A\left(\frac{A}{4}-1\right)$$

この場合はあっさり因数分解できるので、0と置いた時の解が分かります。A=0または4の場合に、「もとの2次関数の最小値」が0になるわけです。その時、もとの2次関数とx軸との交点は1つだけです。頂点がx軸に接する形になります。

また、0<A<4の時には「もとの2次関数の最小値」がプラスの値になってしまいますから、もとの2次関数とx軸の交点は存在しません。

A<0またはA>4の時には「もとの2次関数の最小値」はマイナスで、xの値を増やすあるいは減らす事で関数の値は大きくなっていきますからx軸と確実にぶつかります。ですからもとの2次関数とx軸との交点は2個です。

ですので、A<0またはA>4のとき交点は2個、A=0またはA=4のとき交点は1個、0<A<4のとき交点は0個という、場合分けを含んだ答えになります。【解答】

2次関数と放物線②
A<0またはA>0の時、最小値がマイナスの値になり、もとの2次関数は下に凸の形の放物線ですから必ずyの値が0になる点が2つ存在する、すなわちx軸と2点で交わるという事です。

この例での2次関数の場合、最小値がAに関する上に凸の2関数なので、「最小値が取り得る値の中にも最大値がある」という性質のものになります。具体的にはA=2の時に「最小値の」最大値が1になり、Aが全実数の中のどの値であってももとの2次関数の頂点に相当する最小値は1を超えない事を意味します。これは1次の項の係数が0の時です。

定義域が限定された場合の最大・最小

もう1つ重要な出題として、定義域(xの範囲)を限定した範囲での最大値や最小値を問うタイプのものがあります。

これはどういうものかというと、例えば下に凸である2次関数の最小値は通常は頂点のy座標ですが、そのx座標が定義域に含まれていない時には定義域の端点で最小値をとります。

■問い:0≦x≦2の範囲で、y=x-2px+4について
①:x=2で最小値をとるためのpの範囲はどのようになりますか。
②:x=2で最大値をとるためのpの範囲はどのようになりますか。

この手の問題における2次関数の性質自体は正直、大学以降の数学であまり重要とは言えないと思いますが、2次関数のグラフの性質の理解度を問う出題という事でしょう。

まず、1次の項に未知の係数pがありますから頂点のx座標もy座標も変化するパターンです。

y=x-2px+4=(x-p)+4-p

①:ここで、通常であればx=pで最小値をとるという事になりますが、「x=2で最小値をとる」という条件があり、さらに0≦x≦2というxの範囲の指定もあるのでp≧2であれば、常に対象の2次関数は定義域の端点であるx=2で最小値をとります。なのでp≧2です。【①の解答】

これは、式だけでは分かりにくいのでグラフを見ながら様子を把握したほうがよいでしょう。

②:次に所定の場所で最大値をとる場合です。通常であれば下に凸の2次関数は無限に大きくなるので最大値はそもそもありませんが、ここでは閉区間としてxの範囲が指定されているので最大値を持つという事です。

頂点の座標x=pが動き、定義域が閉区間[0,2]、x=2で最大値をとるという条件です。

この場合には、逆にp≦2であれば済む話かというとそうでない事が「ひっかけ」です。
頂点が閉区間[0,2]の中点よりも右半分側に来ると、今度は区間の反対側の端点であるx=0でyが最大値になってしまいます。頂点の座標がp=1の時にx=0,2の両方で最大値になります。つまり、x=2で最大値になるにはp≦1という事です。【②の解答】

このように、高校数学だと多少ひねりを入れた計算をさせる場合があります。やっている事自体は難しくないのですが、慣れていないと突然問われた時にとまどってしまうでしょう。

直線と放物線の交点問題

1次関数である直線と、2次関数である放物線の交点を計算させるような問題は、センター試験レベルだと問われる事があります。

考え方は難しくありません。

1次関数と2次関数を等号で結んで方程式を作り、2次方程式の解を出せばよいのです。

解が重解の場合には交点は1つだけで、直線は放物線の接線になります。また、解が複素数解になる場合には交点はないという事に対応します。

$$■問い:直線y=x+2と放物線y=x^2-x-3の交点はいくつありますか。$$

まず、等式で結びます。それから、解の様子が分かるように変形します。

$$x+2=x^2-x-3\Leftrightarrow x^2-2x-5=0$$

$$\Leftrightarrow (x-1)^2-1-5=0\Leftrightarrow (x-1)^2=6$$

のようになるので、これは異なる実数解を2つ持ちますね。したがって、交点は2つ存在します。【解答】

「2乗=正の数」となる事で異なる2つの実数解が存在する事が分かります。「2乗=0」であるなら重解を持ち、「2乗=負の数」であるなら2つの異なる複素数解です。

尚、本当に単に交点の数だけを問う問題であれば2つの図形のグラフを描いてみる事でも答えが分かる場合もあります。上記の例だと2点で交わるので、グラフを描く方法でも分かるでしょう。
ただし、その方法だと交点が1個だけで直線が放物線に「接する」時や、交点を持つのか持たないのか微妙な時の判定が難しい事に注意が必要です。

この手の問題も、式の中の係数に未知数を入れて、「2つの交点を持つ条件は何か」とか「直線が放物線に接するための条件を述べなさい」とか、そういった形でひねった出題がなされる事も多いと思います。やる事は基本的に同じです。

例えば、直線のy切片が変化し得る条件で、直線が放物線に接する条件を考えてみましょうか。

$$■問い:直線y=x+Cが放物線y=x^2-x-3に接するためのCの値は何ですか。$$

ここでもやる事は同じです。2式を等号で結びます。

$$x+C=x^2-x-3\Leftrightarrow x^2-2x-3-C=0$$

$$\Leftrightarrow (x-1)^2-4-C=0$$

ここで、4+C=0になれば重解を持ちますのでC=-4の時に直線は放物線に接します。【解答】

■参考:この問題に関しても、微分を使う事もできます。 $$(x^2-x-3)^{\prime}=2x-1$$ であり、この導関数の値が接線の傾きですから、
2x-1=1⇔x=1
これが、もとの2次関数に対して「傾きが1である接線」が接する点のx座標です。これを2次関数の式に代入するとy座標も得られます。
その点の座標は(1,-3)です。 y=x+Cがこの点を通るとすると、
-3=1+C⇔C=-4【解答】
さらに、x-2x-3-C=0が重解を持つための条件を出す場合にも微分を使えます。左辺を関数とした時にx軸に接する、つまり極小値をとるy座標の値が0であるので、導関数2x-2=0としてx=1、その値を方程式に代入して1-2-3-C=0 ⇔ C=4ともできます。
これらの方法はセンター試験等では不要ですが(出題範囲外なので)、知っていると計算のチェック用に使える事もあります。

2つの放物線同士の交点

出題頻度は低いですが、あり得るパターンとして放物線同士の交点を考える問題もあります。

$$■問い:y=2x^2+2x+1とy=x^2-2x+Cが1点だけで交わるためのCの値は何ですか。$$

等号で2式を結びましょう。

$$2x^2+2x+1=x^2-2x+C\Leftrightarrow x^2+4x+1-C=0$$

$$\Leftrightarrow -(x+2)^2-3-C=0$$

これが重解を持つためにはC=-3です。【解答】

この場合には、1点だけで交わるには接するしかない事が、式からも分かります。仮に、1点で「突き破るように」交点を持った時、別のもう1点で必ず交わってしまうためです。

しかし、放物線同士の場合には、1点だけで「突き破るように」交点を持つ場合もあり得ます。それは、2次の項が等しい場合です。

$$y=x^2+2x+1, y=x^2+x$$

を等号で結んでみましょう。

$$x^2+2x+1=x^2+x\Leftrightarrow x+1=0$$

この場合にx=-1という解が得られますが、2次方程式の重解ではなくて1次方程式の解になっています。これが「突き破って」1点だけで交わっている交点であり、xの値をどれだけ増やしても減らしても、その先の別の点で交わる事はないという事です。

2次関数と放物線③

参考:放物線と円の交点の問題は?

また参考までに、放物線と円の交点を問う問題も高校数学の範囲で、一応あり得るものではあります。

$$放物線y=Ax^2+Bx+Cと円(x-S)^2+(y-T)^2=R^2$$

を考えるわけですが、放物線のyを円のほうの式に代入すると、一般的には4次方程式になってしまいます。

実際、円と放物線を考えると、4点や3点で交わる可能性がある事に対応しています。そのため手計算だと非常に複雑な計算になりがちで、出題する側も調整が面倒と思われるのであまり出ないと思います。

サイト内関連記事【高校数学で扱う関数】

★尚、大学入試では3次関数については、基本的に微積分(特に微分)での出題になります。