ベクトルとスカラー

矢印で表される「ベクトル」と通常の数(スカラー)との違いについて説明します。

■関連サイト内記事(ベクトルに関する記事)

■物理学へのベクトルの応用
これらの他にも、力学・電磁気学等でベクトルによる考え方は多く使えます。

べクトルの考え方とイメージ

基本的には、ベクトルとは「方向」と「大きさ」の2つの合わせ持つ量として考えられます。通常の正の実数や自然数などは「大きさ」しか持ちません。

◆プラスとマイナスを「互いに逆の方向」とみなせば通常の実数等も「互いに逆向きの2つの方向」を持っているとも言えますが、ベクトルは平面や空間のあらゆる向きの方向を考えます。

イメージとしては、平面上の線分が向きを持っているという感じです。
(空間内の線分でも同じです。平面上のベクトルを特に平面ベクトル、空間内のベクトルを特に空間ベクトルと呼ぶ事もあります。数学的には、より「次元の高い」ベクトルも定義できます。)

平面に点Aと点Bを結ぶ線分があった時、その線分は長さ(大きさ)を持ちます。その線分に対して、「AからBに向かうのか」「BからAに向かうのか」という事も決めたものが「ベクトル」であるというのが基本的なイメージです。

ベクトルは図形的に見れば点と点をつなぐ「矢印」として表されます。
この図では空間ベクトルの色々な表記法・計算などを図示しています。
ベクトルの矢印の始まりの点を「始点」、矢印の先端の点を「終点」と言います。ベクトルは、座標の成分でも表す事ができます。数学的には、座標成分で表す方法のほうが色々な計算で便利です。ただし、物理でベクトルを用いる場合は、図形的な考察も重要となる場合があります。

この考え方は、例えば力学の「速度ベクトル」で使います。

例えば点Aから点Bの間で物体が移動しているという時に、
「AからBに向かっているのか」「BからAに向かっているのか」で、運動の性質は当然異なります。
それを数式としてはベクトルで表現するのです。

◆より詳細に言うと、
ベクトルとは「向きと大きさを持ち、加算、減算、定数倍、内積といった演算が定義できる」ものである事も重要です。それらの演算もまた、物理学等への応用でも使います。

動画声優担当ステ♪様 http://sute.tabigeinin.com/
BGM:音楽の卵

ベクトルの表記方法

ベクトルの表記方法はいくつかあります。

図形的に矢印で図示する方法、平面上または空間内の点を使って表す方法、原点を基準にした座標で表現する方法、などがあります。

①図形的に矢印で図示する方法
(始点と終点を明記する方法)

ベクトルは図形的に図示して表現する事ができます。この場合には、方向を持つ事を明確にするために、ただの線では無く「矢印」を用いるのが通例です。

この時には、向きが例えば「点Aから点B」の場合には矢印の先(矢の部分)を点Bの部分に書きます。

逆に、「点Bから点A」の向きであれば、
大きさは同じで逆向きのベクトルという意味で矢印の先を点Aに書くわけです。

点Aと点Bのどちらを始点に選ぶかで、異なるベクトルになります。

「点Xから点Y」に向かうベクトルがある時(この時に大きさも確定していますが)、
点Xをベクトルの始点、点Yをベクトルの終点と言う場合があります。

平面上だけでなく、空間内でも考える事ができます。

②平面上または空間内の点を使って表す方法

平面上または空間内において、原点Oから点Aへの向きと大きさを持つベクトルを、$$\overrightarrow{OA}$$と書く表記方法があります。

線分OA の上に「矢印」をつけるわけです。
点Oから点Aに向かう「方向付きの線分」ですよ、という意味合いです。

また、原点を基準とする事が明らかである場合は、次のようにも書きます。 $$\overrightarrow{a}$$
この場合には、点Pや点Qといった点の名称を使うよりは、何か適当な小文字(a, b, p, q, x, y, ・・・)を使う事が比較的多いように思います。

普通は \(\overrightarrow{OA}に対して\overrightarrow{a}、\overrightarrow{OB}に対して\overrightarrow{b}\) のようにアルファベットを対応させますが、これはあくまで分かり易くするためです。
「このベクトルをこの文字で表す」と明示しておけば、対応させなくても間違いではありません。

原点を基準としないベクトルも考える事ができます。
例えば、点Aから点Bに向かうベクトルは\(\overrightarrow{AB}\)と書くことができ、
逆に、点Bから点Aに向かうベクトルは\(\overrightarrow{BA}\)と書くことができます。

◆ベクトルに定数倍(スカラー倍)、加算、減算などの演算を定義すると、$$\overrightarrow{AB} =-\overrightarrow{BA}$$ という関係式が必ず成立します。(※厳密には、演算の定義が無いとマイナスの符号をつけるといった事自体に数学的な意味が発生しない事には注意。)この関係は、次に見る座標によるベクトルの表現を見る事でもイメージしやすくなります。

③座標を使った表記方法

直交座標上の原点(0, 0)を基準とする事を前提に、ベクトルを座標で表す方法があります。

この場合、「原点から特定の点まで」という「大きさ」と「方向」を定めているわけです。

例えば(1, 1)という座標は平面の直交座標において
「斜め右上45°方向の大きさ \(\sqrt{2}\) 」というベクトルを表す事ができるのです。

このようにベクトルを座標で表したとき、通常の座標のようにx成分、y成分といった言葉を使います。「あるベクトルのx成分、y成分はともに1」といった具合です。

原点を始点にするという前提で、ベクトルを座標で表す事ができます。

この方法でベクトルを考えると、(1,1) というベクトルと( -1, -1) というベクトルは、大きさは同じで向きは逆向きである事がわかります。(図示でも、計算でも示せます。)

一般的に(x,y)(-x,-y)という2つのベクトルは
同じ大きさで逆向き」のベクトルです。
【例外は図形的な意味では向きが無いゼロベクトル (0,0)】

「逆向き」である事を、ベクトルにおいてもマイナス符号で表現します。
例えば\(\overrightarrow{A}=(x,y)\) であるなら、\(-\overrightarrow{A}=(-x,-y)\) です。
これは、1つのベクトルに対して
-1というスカラーを乗じたと考えても同じ事です。
【この計算はゼロベクトル (0,0)に対しても統一的に行う事ができます。】

なお、ベクトルの大きさを計算する方法は座標上の2点間距離を計算する方法と同じであり、三平方の定理を使います。

ベクトルを、始点と終点を明記して矢印で表す表記と、原点を基準にして座標で表す表記は、実は原則としては「向き」と「大きさ」を表現する方法としては同一視できるものです。ただし、ベクトルをどういうものとして考えるかの前提が必要にもなります。
■参考サイト内記事:ベクトルの相等:自由ベクトルと束縛ベクトル

④ボールド体表記(主に書籍等で使用)

通常の文字 a, b, x 等に対して、それらを「ボールド体」a, b, x 表記にする事でベクトルを表す場合もあります。

この表記は書籍では多用されますが、慣れてないと通常のスカラー変数なのかベクトルなのか、紛らわしいかもしれません。
ウェブ上だとさらに分かりにくい事があるので、
当サイトでは敢えてベクトルは全て「矢印」の表記にしています。

  • 矢印表記:\(\overrightarrow{a} \)
  • ボールド体表記 a・・これでベクトルを表す (通常の表記 a )
    ボールド体表記は、当サイトではベクトルの表記としては使用しません。

スカラーとは?ベクトルとの違い

ある量がベクトルであるか通常の数であるのか区別が必要な時には、
ベクトルに対して通常の数(実数など)をスカラーと呼びます。
(※言葉としては「ベクトル量」「スカラー量」といった言い方もします。それぞれ、「ベクトル」「スカラー」と同じです。)

また、対象が関数である場合にはベクトル関数スカラー関数と呼んで区別もします。変数、定数といった語にも同様にベクトル・スカラーの名称をつけて呼ぶ事があります。

\(F(x), x, a\)スカラー関数
スカラー変数
スカラー定数
\(\overrightarrow{F}(x),\overrightarrow{x},\overrightarrow{a}\)ベクトル関数
ベクトル変数
ベクトル定数(定ベクトル
ベクトル関数のうち、座標変数x,y,zを変数とするスカラー関数を
「成分として」持つものを特に「ベクトル場」と呼ぶ事もあります。

ベクトル変数については、例えばスカラー関数をf\((\overrightarrow{x})\) のように表す事もあります。これはx,y,zの座標によって関数の値が定まるという意味なので3変数のスカラー関数f(x,y,z)として扱っても同じものを表します。

定ベクトルのうち、(0,0)を表すベクトルは
特にゼロベクトルと呼んで\(\overrightarrow{0}\)と表記する事もあります。
ただしこのサイトでは表記の簡略化のため、
ゼロベクトルはスカラー同様に0として表記をします

ゼロベクトルは、図形上は向きがどこに向いているというわけでもなく、大きさも0であるベクトルという事になります。

ベクトル関数については座標成分で表す表記が分かりやすいかと思われます。
例えば変数xに対するてきとうな(x+1, x2)といったベクトルを考えると、このベクトルはxの値によってただ1つ定まります。そのようなベクトルをベクトル関数と呼ぶわけです。

いずれの場合も、「スカラー」という語を使う時には
「ベクトルではなくスカラー」という意味合いが強いです。
言い換えると、ベクトルを使わない議論をしている時にスカラーという語を敢えて使う事は少ないと言えます。

ベクトルには通常の数つまりスカラーを掛け算する事ができ、それは図形的にはベクトルの大きさだけを変化させる操作です。その事をベクトルの定数倍、あるいはスカラー倍とも言います。

$$ベクトルのスカラー倍:例えば\hspace{5pt}2\overrightarrow{AB},\hspace{5pt}-4\overrightarrow{AB},\hspace{5pt}\sqrt{3}\overrightarrow{AB}$$

関数の場合、「多変数のスカラー関数」と、ベクトル関数の違いに注意。
ベクトル関数にも1変数のもの、多変数のものがあります。
関数と区別する場合、成分が定数で構成されるベクトルを特に「定ベクトル」と呼ぶ事があります。

物理学等への応用も含めて、ベクトルに関して成立する定理、スカラー関数に関して言及している関係式などがあります。演算を組み合わせてベクトルとスカラーの関係が混じる事もあります。そういった時に、問題にしている対象がベクトルなのか「通常の実数等=スカラー」なのかが数学的な議論の際に重要となるのです。

例として、ベクトルに対して「内積」という演算をすると通常の数、つまりスカラーになります。

逆に、微積分も含んだ込み入った例ですが3変数のスカラー関数に対して「勾配」という演算をするとベクトル関数になります。

参考までにそのような「ベクトルなのかスカラーなのか」が特に重要になるものをいくつか整理して列挙すると次のようになります。

数学的・物理的な量表記ベクトルか
スカラーか
定義の対象
内積(スカラー積)\(\overrightarrow{A}\cdot\overrightarrow{B}\)スカラー2つのベクトル
外積(ベクトル積)\(\overrightarrow{A}\times\overrightarrow{B}\)ベクトル2つ以上の
ベクトル
勾配
(グレーディエント)
\(\mathrm{grad}\varphi\)
\(\nabla\varphi\)
ベクトル3変数の
スカラー関数
発散
(ダイバージェンス)
\(\mathrm{div}\overrightarrow{A}\)
\(\nabla\cdot\overrightarrow{A}\)
スカラー1つのベクトル
※収束に対する
発散とは別物です。
回転
(ローテーション)
\(\mathrm{rot}\overrightarrow{A}\)
\(\nabla\times\overrightarrow{A}\)
ベクトル1つのベクトル
∇の記号はナブラと言って、表記法は内積と外積の計算規則に関連付けられています。

平行四辺形の面積【ベクトルでの公式】

平行四辺形の面積は「底辺×高さ」です。(参考:台形の面積公式と同じ考え方)
他方で、「直交座標上の2つのベクトルが作る平行四辺形」の面積を、
「ベクトルの大きさと内積」あるいは「ベクトルの成分」で表す方法と公式があります。

(ベクトルが作る「三角形」の面積については、単純に平行四辺形の面積を半分個を考えます。)

ベクトルが作る平行四辺形の面積

原点を始点とする2つのベクトル\(\overrightarrow{a}=(a_1,a_2)\) と \(\overrightarrow{b}=(b_1,b_2)\) があり、なす角度がθであるという。
その時に、2つのベクトルを組み合わせて作られる平行四辺形の面積Sは次の公式で計算できます: $$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}=|a_1b_2-a_2b_1|$$

後述するように、考え方は3次元での2つの空間ベクトルが作る平行四辺形にも適用できます。

平面ベクトルの場合

まず、考え方としては単純に「底辺×高さ」で行きます。

そして、「底辺」の長さについては1つのベクトルの大きさを使います。

次に、もう1つのベクトルの大きさの正弦が「高さ」になるのです。

そこで、三角比の公式 sinθ+cosθ=1を使って正弦を余弦で表します。
(この公式は三角関数の範囲の一般角でも成立します。)

$$底辺:|\overrightarrow{a}|$$

$$高さ:|\overrightarrow{b}|\sin\theta$$

$$公式から【0<\theta <\piの時】:\sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}$$

$$\left(-\pi<\theta <0の時は\sin\theta=-\sqrt{1-\cos^2\theta}ですが、面積を考える時はその絶対値を考えます\right)$$

平面ベクトルが作る平行四辺形の面積

さらに余弦をベクトルの内積と大きさで表せる事に注意すると、
平行四辺形の面積を「ベクトルの大きさと内積」だけで表せます。ここで、もし2ベクトルが成す角が直角であれば直ちに長方形で面積は確定するので、直角でない時を考えます。

$$\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta$$

$$\cos\theta=\frac{\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}}{|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|}$$

以上の事を代入しながら繋げていって、平行四辺形の面積を計算できるわけです。
一見すると無理やり計算しても滅茶苦茶な式になってしまいそうですが、実は分母と分子がうまく噛み合って比較的単純な形になります。(sinθが負になる場合も考慮して絶対値の|sinθ|を考えますが、要するにプラスの値だけ考えるという意味になります。)

$$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\sqrt{1-\cos^2\theta}$$

$$=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\sqrt{1-\frac{(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2}}=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2\left(1-\frac{(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2}\right)}$$

$$=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}$$

平方根の根号(√)の中にベクトルの大きさを2乗の形で入れてしまう事で、このようになるわけです。
この式は、平面でも3次元の空間でも成立します。

ここで、さらにベクトルの成分を使うと別の公式を導出できます。

$$\overrightarrow{a}=(a_1,a_2)\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=(b_1,b_2)のもとで、$$

$$|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2=(a_1\hspace{2pt}^2+a_2\hspace{2pt}^2)(b_1\hspace{2pt}^2+b_2\hspace{2pt}^2)=(a_1b_1)^2+(a_1b_2)^2+(a_2b_1)^2+(a_2b_2)^2$$

$$(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2=(a_1b_1+a_2b_2)^2=(a_1b_1)^2+(a_2b_2)^2+2a_1b_1a_2b_2$$

一見ちょっと面倒な形になっていますが、引き算するとなくなる項が出てきます。

$$|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2=(a_1b_1)^2+(a_2b_1)^2-2a_1b_1a_2b_2=(a_1b_2-a_2b_1)^2$$

このように上手く2乗の形になるので、平行四辺形の面積は次のようにも書けるわけです。

$$S=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}=\sqrt{(a_1b_2-a_2b_1)^2}=|a_1b_2-a_2b_1|$$

最後に絶対値記号をつけているのはabーabという値がプラスかマイナスかはその時々によって違うので、どちらにせよ絶対値を考えれば面積になるという意味です。

この公式は、重積分の変数変換の公式の中で使ったりもします。

空間ベクトルの場合

3次元の空間ベクトルの場合でも、同じくベクトルの成分で平行四辺形の面積を表せます。
この場合にはまとめ方がちょっと面倒で、2乗の形の3つの式の和が平方根の中に入る形になります。

$$S=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}||\sin\theta|が空間ベクトルでも成立する事に注意して、$$

$$\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3)\hspace{10pt}\overrightarrow{b}=(b_1,b_2,b_3)のもとでは、$$

$$S=\sqrt{|\overrightarrow{a}|^2|\overrightarrow{b}|^2-(\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b})^2}$$

$$=\sqrt{(a_1b_2)^2+(b_1a_2)^2+(a_1b_3)^2+(b_3a_1)^2+(a_2b_3)^2+(a_3b_2)^2-2(a_1b_1a_2b_2+a_1b_1a_3b_3+a_2b_2a_3b_3)}$$

$$=\sqrt{(a_1b_2-b_1a_2)^2+(a_1b_3-b_3a_1)^2+(a_2b_3-a_3b_2)^2}$$

この表示は、3次元ベクトルの外積(ベクトル積、クロス積)を使用する時に使う場合もあります。

◆外積の計算で使う場合には、上記の面積の式は$$S=\sqrt{(a_2b_3-a_3b_2)^2+(a_1b_3-b_3a_1)^2+(a_1b_2-b_1a_2)^2}$$のように順番だけ並び替えたほうが外積ベクトルの成分との対応が明確になります。
平方根の中の2乗になっているそれぞれの項が、実は2次元平面上の「平行四辺形」の形になっている事に注意。これは、3次元空間の中でのちゃんとした幾何的な意味も持っていて、外積ベクトルを使う計算で重要になります。

3次元空間での平行四辺形の面積

極座標と球面座標【考え方と変換方法】

座標変換のうち、理論面でも応用面でも良く使われる極座標と、その3次元版である球面座標について述べます。(※3次元の球面座標の事も極座標と呼ぶ事もあります。)
また合わせて、時々使われる円柱座標についても述べます。

極座標(polar coordinates)の「極」とは英語で言うと pole 、
北極とか南極で使う意味での「極」(「一方の果て」「端、両端」)になります。
尚、球面座標は英語だと spherical polar coordinates です。

関連事項のリンク(サイト内)

基本の考え方:三角関数を使う

極座標の発想自体は簡単で、
「平面座標のある点と原点とを結ぶと、必ず『長さと角度(x軸から測った角度)』で表せるはず」
という事なのです。

例えば、(1,1)という点は原点からの距離が\(\sqrt{2}\)で角度は\(\pi\)/4(あるいは45°)です。

(-1,1)という点であれば原点からの距離が\(\sqrt{2}\)で角度は3\(\pi\)/4(あるいは135°)です。
図で見ると単純で分かりやすいでしょう。

三角関数と極座標の関係
点(x,y)と原点との距離と、x軸から測った角度を考えます。角度は三角関数の定義を使う限りは度数法でも構いませんが、微積分を使う場合には弧度法で扱う必要があります。

極座標は、原点を中心とする円と原点を通る直線から構成される曲線座標でもあります。曲線座標のうち、最も簡単で便利でもあるものの1つです。

3次元で球面上の点と見なす場合には、後述しますように、原点からの長さに加えて角度を2つ使用します。

物理学での応用

極座標や球面座標を使う事によって、曲線の概形の把握が容易になる事や、微分方程式の解法が容易になる事があります。例えば、力学では等速円運動の分析において極座標を使うと簡単に中心力が働く事を導出できます。
また、万有引力が働くと軌道として楕円があり得るという理屈は、運動方程式を極座標変換する事で手計算で導出可能です。この時、軌道は条件によって円や放物線でもあり得る事が分かります。
(※運動方程式も含めて、微分方程式を座標変換する時はちょっとした面倒な計算が必要です。)
その他に、量子力学で水素原子の電子軌道の式を導出する時にも、基本の方程式で球面座標への変換が行われる事で手計算が可能となり、相対性理論でも時空の歪みが方向には依存しない(等方である)事を条件に課す時に座標の空間成分の一部が極座標・球面座標の形であると考えて理論が組み立てられます。

それらの微分方程式等を考える時に、強引にxyzの座標で考える事も不可能ではないのですが、手計算で計算を進める事は非常に困難になるのです。

変換方法:極座標

実際に変換をする時には、三角関数(図で直感的に考えるなら三角比)を使用します。図を描いてみると次の三点で必ず直角三角形を作れる事に起因します:

  1. ある座標の点
  2. その点からx軸に降ろした垂線の足
  3. 原点

そこで、原点からある点までの長さをr、x軸から測った角度をθとすると、
三角比の計算というか定義通りに、次の関係が成立します。

極座標変換の式
  • x=rcosθ
  • y=rsinθ

※この時に、θの範囲は全実数ですが、rは0以上の実数という事になります。

この時に、座標が負の値であっても正弦と余弦を三角関数として考えれば、正しく関係が満たされるのです。

極座標変換の式
直角三角形を作って考えます。xy平面の座標は、プラスマイナスの符号もそのままつけて考えます。

また、xとyの値からrとθを表す事もできます。

  • \(r=\sqrt{x^2+y^2}\)
  • \(\cos \theta=\Large{\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}} }\)\(\hspace{10pt}\sin \theta=\Large{\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}}}\)

※逆三角関数を使えば強引に θ=・・・の形にもできますが、一般にはあまりメリットがありません。

高校生の方であれば、これらの関係式は暗記するのではなく、xとyの式を2乗して加えるか、図の三角形の関係から直ちに理解できるように努める事が勧められます。

尚、これらの考え方は複素数の極形式の考え方に直結するものとなります。座標の原点回りの回転を考える時には複素数の極形式を使ったほうが良い場合もあります。(※回転に関しては、特にそれを群と見なす時には行列で考えたほうが良い事もあります。いずれの場合も、回転で基本となっているのは加法定理です。)

特定の関数で表された曲線を、極座標で表された点の集まりとして表示する事もできます。

例えばy=xを強引に極座標で表すには、x=rcosθとy=rsinθをそのまま代入すればよいのです。

すると、rsinθ=rcosθ ⇔ sinθ=r(1-sinθ) のような関係になります。
そのような関係式を満たすrとθの組み合わせの点の集まりが、y=xで表される放物線と全く同じものを表すという事です。

尚、半径Rの円の式に極座標変換を当てはめると、r=Rという形の式になります。
(rは座標の目盛で、Rは何かしらの定数です。r=一定の値という事です。)

+y=Rにx=rcosθとy=rsinθを代入すると
cosθ+rsinθ=R
⇔ r(cosθ+sinθ)=R
⇔ r=R ⇔ (r-R)(r+R)=0
rとRは正の数だからr=R

このように極座標で表す利点があるかないかは、その時々によって異なります。一般的には、円とか球とか、そういったぐるりと1周回るものを考える時や、周期性のあるものを考える時に極座標を使う計算上の利点がある場合が多いかとは思います。

球面座標

次に、球面座標を考えてみましょう。考え方自体は、2次元平面での極座標と同じなのです。

球面座標への変換の式
  • x=rsinφ cosθ
  • y=rsinφ sinθ
  • z=rcosφ

半径rは「球の半径」である事と、角度φの取り方に注意。
「sinφ cosθ」は、sinφ と cosθ との掛け算です。

θとφという2つの角度を使いますが、まずz座標から考えてみる事がポイントです。

まず「z軸」「原点」「点(x,y,z)」が作る角度をφとします。
そして、z座標をz=rcosφと表すのです。

球面座標
球面上の点を(x,y,z)とおいて、最初にz座標から考えます。次に、球面上の点からz=0のxy平面上に垂線を下ろします。この時の「垂線の足」となる点は、球面上ではなく球面の内側に位置します。(rsinφ < r の関係に注意。)

次に、xy平面上で測った角度も必要になります。z=0での平面を考えて、この面でのx軸から測る角度をθとします。「x軸」「原点」「球面上の点からの垂線の足(x,y)」が成す角をθとするという事です。

ここで、先ほどのφを使うと、原点から垂線の足までの距離はrsinφになります。(余弦ではなく正弦になります。)

すると、xとyは、「半径をrsinφと見なした時」の平面の極座標と全く同じ考え方で表す事ができるというわけです。つまり、半径であるrsinφに、それぞれcosθとsinθを掛ければよいという事です。

x=(rsinφ) cosθ =rsinφ cosθ, y=(rsinφ) sinθ =rsinφ sinθ という事になり、球面座標への変換の式が完成するわけです。暗記しようと思うといかにも面倒な式ですが、図で見ると非常に単純なものを意味する式である事が分かるかと思います。

円柱座標

最後に、円柱座標についても見ておきます。これは、3次元空間の点を円柱の側面として座標を考えるという事ですが、実は発想は非常に単純です。

まず、円柱には必ず底面となる円がありますから、底面がxy平面上にあるとすればxとyについては極座標と全く同じ式を使えます。

ではz座標はどうするのかというと、実は「何も変換しないでそのままzの値を使う」というふうにします。z=zとするのです。この単純な発想を受け入れると、円柱座標は次のようになります。

円柱座標への変換式
  • x=rcosθ
  • y=rsinθ
  • z=z

z座標を無視すると、普通の平面での極座標と全く同じ形です。
場合によってはz=hなどのように置き換えはしますが、意味は同じです。

実に単純である事が分かると思います。

円柱座標

このように、図も使ってシンプルに捉えれば難しいものではない事が理解できるでしょう。

微積分の問題の例【高校・大学入試】

高校・大学入試レベルの微積分の問題例です。その中ではやや易しめで、その代わりなるべく「速く・正確に」解けるとよいでしょう。

問題の特徴
  1. 対象となる関数は2次関数か3次関数。
    1つの大問の中に微分と積分がどちらもある事が多い。
  2. 変数以外にaとかbとかの未知の定数がある問題が多い。
  3. 定積分は基本的に面積計算が多い。2つ以上の関数が関わる事が多い。

「問題を解く事自体」は最終的には計算の作業になるので、重要な事は問題を解くのに使う公式や定理を覚えているかどうかという事と、それらの公式や定理の意味を知っているかどうか、具体的に数値を当てはめる計算ではどのように使えばいいのかがある程度分かっているかどうかという事であると言えます。

微積分の問題で言うと、次の事が重要です。

  • 微分と積分は逆演算の関係にある事
  • 微分係数は図形的には「接線の傾き」である事
  • 定積分は図形的には「面積」を表す事
  • 微分係数が0になる点では、その点の前後で微分係数の符号が入れ替わるなら関数は極大値か極小値をとり(これは必ず)、それが最大値あるいは最小値である事もある(これは必ずではありません)

また、グラフ上での直線が直交する条件であるとか(傾きの積が-1になる)、グラフを平行移動をした時の関数の形(xのプラス方向なら f(x)→f(x-c))など、知っておくべき事項もいくつか出てくるでしょう。

次の模擬問題のように、言ってる事自体はじつは何ら難しくないのですが、
ちょっと面倒なものを「手早く」解く必要に迫られるタイプの問題などがあります。

■模擬問題①

2つの放物線f(x)=ax-4axとg(x)=-ax+4axとがあり、aは正の実数、
f(x)とg(x)のそれぞれの原点における接線は直交しているという。
この時に、y=f(x)の原点における接線とy=g(x)とで囲まれた部分の面積はいくらですか。

まず、微分します。
fのほう:2ax-4a →原点で-4a【x=0】
gのほう:-2ax+4a →原点で4a
直交するので傾きの積が-1】 ∴-16a=-1 【a>0に注意して】∴a=1/2
fの原点での接線:y=-4ax=-x
g(x)の式:g=-x/4+x 【条件の式にa=1/2を代入】
【交点が必要なので】g=-xとおいて、-x/4+x=-x
⇔x-8x=x(x-8)=0 ∴交点はx=0と8
【g(x)が原点を通る事は計算しなくても分かりますが】

【面積がほしいので定積分します。放物線のほうが上です。一応概形だけさっと描くとよいでしょう。】
積分:-x/4+2x【-x/4+x-(-x)】を0から8まで

$$\left[-\frac{x^3}{12}+x^2\right]_0^8 =-\frac{8^3}{12}+64=\frac{-128+192}{3}=\frac{64}{3}【解答】$$

このように解答があまりきれいに約分できない場合というのは結構多くあります。
実際の試験では、例えば途中の交点の計算が小問として穴埋めになっていたりします。

実際の試験ではあまり丁寧に図を描く時間はないと思うので、なるべく必要な箇所だけ手早く描く事も大事です。しかしあまり雑に描き過ぎてもかえってミスにつながるので、加減が難しいところです。

★積分の計算のところで、記述式であればきちんと定積分の記号から書かないとまずいですが、穴埋め形式でしかもほぼ2次関数・3次関数のみ扱われる事を考慮し、ここでは「対象の関数」→「定積分の計算は不定積分に値を代入」という感じで敢えて計算を記しています。
また、ここで記した解答の中で【直交するので掛けて-1】のような部分も、記述式であればきちんと書いたほうがよいですが、穴埋め問題であれば頭の中だけで考えて(考えれるようにして)計算だけ紙に書けば時間短縮になります。

グラフ上の適当な点のx座標をaなどとおいて、そこでの接線の方程式を計算させるタイプの問題も多く見られます。次の例を見てみましょう。

■模擬問題②

■放物線y=x上に点P(a,a) があり、0≦a≦2であるという。
この時にaを動かせるとすると、
点Pにおける接線、x軸、直線x=2、y=xで囲まれる面積の最大値と最小値はいくらですか。

【微分します。】2x → 2a【点Pでの接線の傾き】
Pでの接線:y=2a(x-a)+a=2ax-a
【特定の点を通る1次関数の式です。y-aをx-aで割ったものが「傾き」2aという式です。】
0=2ax-aとおくとx=a/2【接線とx軸の交点。次の面積計算で使います。】

【次に面積計算に移ります。このとき、必要な面積は2つの部分に分けたほうが簡単です。
0からaまでは、「放物線-x軸」面積から「a/2~aと接線」の三角形面積を引くのが簡単です。
aから2までは放物線から接線を引いた部分の普通の定積分です。図を簡易的に描くとよいでしょう。】

積分区間を[0,a/2]、[a/2,a]、[a,2]の3箇所に区切っても計算できますが、なるべく簡単に計算する方法を見つけるように普段から練習しておくとよいと思います。

【面積】
①:0からaまで 【放物線・x軸の面積から三角形を引き算】

$$\left[\frac{x^3}{3}\right]_0^a-\frac{1}{2}\cdot\frac{a}{2}\cdot a^2=\frac{a^3}{3}-\frac{a^3}{4}=\frac{a^3}{12}$$

②:x-2ax+aを積分:aから2まで 【放物線から接線を引いて積分。a≦2の条件にも注意】

$$\left[\frac{x^3}{3}-ax^2+ax\right]_a^2=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}+a^3-a^3=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}$$

$$合計:\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{3}+a^3-a^3=\frac{8}{3}-4a+2a^2-\frac{a^3}{4}$$

この問題ではまだここで終わらず、面積の「最大・最小」の計算が続きます。
aで微分:-4+4a-3a/4=-(3a-16a+16)/4=-(3a-4)(a-4)/4
【aに関して3次関数なので微分して極大・極小を調べます。】

符号に注意して、a=4/3の時に最小【極小でもあります。2次関数のグラフで考えると多少簡単。】

$$最小値:\frac{8}{3}-\frac{16}{3}+\frac{32}{9}-\frac{16}{27}=-\frac{8}{3}+\frac{32}{9}-\frac{16}{27}=\frac{-72+96-16}{27}=\frac{8}{27}【解答1】$$
【こういった分数計算は時間がない中では少し面倒ですが、丁寧・確実に計算する必要があります。】

【最大値も問われてるので調べます。】
aが4まで動ければそこが極大値になりそう? →しかし0以上2以下という条件がある
→ 端点である0と2の値を比べて最大値を見つけます。
【a=4/3で極小という事により、そこから0と2のどちらの方向に向けても増大するので。】

a=0だと8/3、
a=2だと8/3-8+8-2=2/3【これはa=0の時の8/3より小さいので最大値にならず】

∴a=0の時最大、値は8/3【解答2】

この問いは微積の大問と大体同じ分量があるので、10分程度で解答できるとうれしいという感じです。

微分した後の導関数が2次関数の形なら、グラフを描いたほうが導関数の符号を把握しやすい場合もあります。

数列って何だろう

数列(「すうれつ」)とは、自然数や整数を代入する事で決定する種類の関数の事です。

考え方:関数と数列

普通の関数y=xなどを考えて、変数の値を自然数に限定しy=nと考えると、
n=1,2,3,4,・・に対してy=1,4,9,16,・・と決定していきます。これが数列の例です。

要するに考え方は1次関数や2次関数などの普通の関数と同じで、変数を自然数や整数に限定したものを特に「数列」と呼びます。

この時に番号nに対して決まる関数の値(数列の値)のことを、
てきとうな文字と番号を組み合わせてyのように書きます。これはy=f(x)と書くのと同じような使い方です。添えてある番号を式に代入しますよ、という意味です。

例えばy=nを数列と考えてyと書いたときには
「y=nにおいてn=2とした場合」の事を意味し、y=2=4のようになります。

一般の関数と区別して「数列」である事を明示するために数列を{y}のようにも表記します。文章の中での表記のされ方としては「自然数nに対して数列{y}があり、y=nである」といった具合です。

一般的には、数列を表す文字はa、b、c・・を使ったa、b、cなどを優先して使う事が多いですが、本質的には番号を下に添えてあればどんな文字でも数列として表記できます。

数列{a}があったときに、一番最初の値を「初項」(しょこう)と言います。
nが自然数であれば、aが初項として該当します。a=1/nであれば、初項はa=1/1=1です。2番目の値は「第2項」のように言います。この時、ものによっては番号を0から始める場合もあり、その時には初項はaです。あくまで、一番最初の項を初項と呼ぶという事です。

漸化式と初歩的な数列

数列を扱う時の一般の関数との違いは、「漸化式」(ぜんかしき)というものを考える事が多いという点です。これは、an+1=2+aのように、n+1番目とn番目などの数列の項の間に成立する関係式を指します。

★「漸」(ぜん)とは、「次第に進む」とか「徐々に進む」といった意味の漢字です。

この場合、例えばa=2+aで、
さらにa=2+aなのでa=2+a=2+(2+a)=4+aのようにもなります。
n+1=2+aのような関係であれば、a=2+an-1としてもよいという事です。この考え方は漸化式を扱ううえで重要です。(番号が1から始まっているような場合には、この漸化式a=2+an-1を適用できるのはaまでであり、aには適用不可です。)

漸化式の性質 $$a_{n+1}=f(a_n)のとき、a_{n}=f(a_{n-1})でもある。$$ $$例えばa_{n+1}=3a_nなら、n≧2に対してa_{n}=3a_{n-1}でもある。$$

より一般的には漸化式とは数列の項同士のかなり広い関係全般を差します。
例えばan+1=aとか、複数の項を考えたan+3=an+2+an+1+aなども漸化式です。
「n+1とn」のように数列の異なる2項についての漸化式を特に言う場合は「2項間漸化式」、「n+2とn+1とn」のように異なる3項についての漸化式を特に言う場合は「3項間漸化式」と言う事もあります。より一般的には「m項間漸化式」も考えれるという事です。
番号が1つではなく2つ飛んでいる場合もあり得ます。例えばan+2=2+aなどです。
このようにあらゆるものが当てはまりますが、普通は漸化式の関係から具体的な数列の形を導出したり、あるいは和や極限を計算するために漸化式を使うので、実際問題として理論で扱われる漸化式はある程度の扱いやすい規則性を持つものに限られます。

高校数学では、特に3つの初歩的な数列を扱います。これらは意味としては簡単なものですが、いずれも漸化式によって特徴付けられます。

高校数学で特に扱う数列
  1. 等差数列
    n+1=c+a で表されます。
    cは定数で、「公差」(こうさ)と言います。
    =a+c(n-1) とも直接的に表せます。
  2. 等比数列
    n+1=ar で表され ます。
    rは定数で、「公比」(こうひ)と言います。
    =an-1 とも直接的に表せます。
  3. 階差数列
    =a-an-1 で表されます。
    -an-1を数列{a}の「階差」(かいさ)と言います。
    =a-an-1は「{a}の階差数列」であるとも言います。
漸化式、等差数列。等比数列、階差数列

等差数列とは、1つの項に決まった定数を加える(あるいは減じる)事で次の項が確定するというタイプの数列です。例えばan+1=3+aを考え、a=2とします。この時、a=3+a=3+2=5、a=3+a=3+5=8、a=3+a=3+8=11、・・・のように次々と計算できます。
これを繰り返して一般的に、a=3+2(n-1)とも表せます。例えばa=3+2(4-1)=11と計算してもいいわけです。

等比数列とは、1つの項に決まった定数を掛ける(あるいは割る)事で次の項が確定するというタイプの数列です。例えばan+1=3aでa=2であるとき、a=3a=3×2=6、a=3a=3×6=18、a=3×a=54、・・・といった感じです。これを繰り返して、a=an-1とも書けます。

等比数列に関しては、和を計算する公式が重要です。

階差数列とは、上記の通りb=a-an-1といった形の漸化式で表される数列です。これの具体的な形は、階差数列の和を考えてみる事で計算できるという特徴があります。

特定の{a}について階差数列bを考える時には例えば次のようにします。a=nのとき、「階差」を計算するとn-(n-1)=2n-1なのでb=2n-1と書けます。
この時、nが整数ならこの形で整合性がとれますが、もし{a}のnが自然数といった制限を課しているならbについては別途に「b=-1とする」などとする必要があります。

いろいろな数列

関数には様々なものが想定できるのと同じように、数列も非常に幅広いものを指します。

例えば、数列{a}の和を考えてa+a+a+・・・+a=Sとして、
それ自体を数列{S}と考える事ができます。
尚、この時Snー1=a+a+a+・・・+an-1ですから、{S}の階差はS-Snー1=aです。この関係自体は、当然といえば当然のものですが結構よく使います。

微積分学で重要な「自然対数の底」eは、ある数列を考えて、そのn→∞における極限値として定義されます。そのように、数列は極限と合わせて考えられる事も多いのです。

$$e=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n\hspace{10pt}として定義されます。$$

また、極限値として円周率が存在する事を式で証明する時にも、図形上の辺の関係を漸化式で表しています。この場合に考えるのは、正n角形と正2n角形を考えてa2nとaの関係を出すという、少し特殊な漸化式です。

その他に、高校ではあまり扱いませんが「関数列」というものもあります。
これは、nによって関数自体の形が決まる数列{f(x)}を考えるという意味です。1つ1つのf(x)は定義域内のxによる関数であるという事です。
例を考えると意味としては難しくなくて、例えばf(x)=xやg(x)=sin(nx)などを数列として考える場合には関数列であるということになります。
数列として見る場合、x,x,x,・・,xのようにn個の関数があると見るわけです。

ベクトルなどでも、n次元に対してn+1次元を考えるというふうにすると諸量を数列的に見る事もできます。そのようにすると、何かの証明を行う際に数列的な計算が使えるので利点があったりします。

数列の和の公式

数列などについて成立する和の公式についてまとめました。

nの1乗、2乗、3乗に関する和

1+2+3+4+5+6+7=28です。
これは直接足し算をしてもよいのですが、じつは7×8÷2=28のようにも計算できます。
これは偶然ではなくて必然であるというのが、数列の和に関する公式です。
1から100までの自然数の和も、100×101÷2=5050のように計算できます。

同様に1からnまでの自然数の「2乗」や「3乗」を全て加えた時に成立する公式があります。

数列の和に関する公式
  1. 1~nまでの自然数の和 $$\sum_{j=1}^nj=\frac{n(n+1)}{2}$$
  2. 1~nまでの自然数のそれぞれの「2乗」の和 $$\sum_{j=1}^nj^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}{6}$$
  3. 1~nまでの自然数のそれぞれの「3乗」の和$$\sum_{j=1}^nj^3=\frac{n^2(n+1)^2}{4}$$

4乗の和以降の公式も理論的には作れますが、複雑になるので公式として使われる事は基本的にはありません。Σ(シグマ)は和を表す記号です。

これらのうち、特に1+2+3+・・+nを表す公式は何かの個数の数え上げの際に(突然)使う時があるので、知っておくと便利な公式です。

ここで、もし1から「n-1」まで加えるといった場合には、単純に上記公式でnのところをn-1に置き換えれば計算可能です。例えば1~n-1までの和は次のようになります。

$$\sum_{j=1}^{n-1}j=\frac{n(n-1)}{2}$$

n→n-1と、n+1→(n-1)+1=n の置き換えで、
結果的にn(n-1)のように書けるという事です。

証明については高校で「証明せよ」という形で問われる事はほとんどないと思いますが、一応どういう根拠であるのかを知っておき、また計算問題の練習としてやってみるのもよいと思います。

図を使う方法も含めて複数の証明方法がありますが、例えば次のように考えます。

1+2+3+4+・・・+n-1+n=Sとした時、
全く同じ式を「和の順番だけ入れ替えた」ものを考えます。

つまり、n+(n-1)+(n-2)+(n-3)+(n-4)+・・・+2+1=Sを考えます。

2つ並べて、左辺と右辺をそれぞれについて加えます。

1+2+3+4+・・・+n-1+n=S
n+(n-1)+(n-2)+(n-3)+(n-4)+・・・+2+1=S

この時、左辺については左から見て何番目の項であるかを合わせて加えます。
例えば、左から3番目にある項は3とn-2なのでこれらを足し合わせる形にします。
すると、次のようになります。
(1+n)+(1+n)+(1+n)+・・・+(1+n)=2s

(1+n)という項はn個ある事に注意すると、
n×(1+n)=2S ⇔ S=n(n+1)/2となり、和の公式を得ます。

ここでどの項も必ず(1+n)になるという事は、
左からm番目の項についてm+(n-m+1)=n+1となるので保証されるというわけです。
【例えばn=3なら3+(n-3+1)=3+(nー2)=n+1です。】

では、2乗の和についてはどうでしょう。考え方は似ているのですが、少し工夫が必要です。

まず、1+2+3+・・・+nを考えます。
この時、最初から2乗を考えずに1乗を考えるところがポイントです。

これについては公式が得られているので1+2+3+・・・+n=n(1+n)/2

続いて、2+3+・・+nを考えます。
これは全体から1を引いただけなので2+3+・・+n=n(1+n)/2-1です。

さらに、3+4+5+・・・+nなどを考えていきます。

1+2+3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2
2+3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1
3+4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2
4+5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2-3
5+・・・+n=n(1+n)/2-1-2-3-4
・・・
n=n(1+n)/2-1-2-3-4-・・・-(n-1)
を考えます。

これらn個の式の両辺を全部加えて等号でつなぐと、
左辺については1が1個、2が2個、3が3個、4が4個、・・・nがn個ある事が分かります。
3が3個という事は3×3=3ですから、これで「2乗」の和ができるわけです。
右辺については、まずn(1+n)/2がn個ですからn(1+n)/2という項があります。(これが公式で「nの3乗」がある理由です。)
続いて引き算の部分は、1乗の和で表されるものをさらに1~n-1について和をとる事になります。
1~n-1までの和としてΣ{j(1+j)/2}を考えるという事です。
この時に「2乗の和」が発生しますが、これは左辺にもありますので移項できます。
ただし、右辺で生じるのは「1からn-1までの」2乗の和なので、「1からnまでの2乗の和」からnを引いたものになります。

+2+3+4+・・・+n=Sとして、

$$S=n\cdot\frac{n(n+1)}{2}-\sum_{j=1}^{n-1}\frac{j(j+1)}{2}=\frac{n^2(n+1)}{2}-\frac{(S-n^2)}{2}-\frac{n(n-1)}{4}$$

⇔3S/2=n(n+1)/2+n/2-n(n-1)/4
=(2n+3n+n)/4
=n(n+1)(2n+1)/4 【うまい具合に因数分解できます。】
⇔S=n(n+1)(2n+1)/6

3乗の和の公式も同じようにできて、今度は2乗の和から1つずつ項を引いたn個の式を加えます。

1+2+3+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6
+3+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1
+4+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2
+5+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3
+・・・+n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3-4
・・・
n=n(n+1)(2n+1)/6-1-2-3-4-・・・-(n-1)

が3個あれば3×3=3、mがm個あればm×m=mですから、
左辺の合計は3乗の和になります。
右辺は、n(n+1)(2n+1)/6がn個と、「2乗の和」の形の数列をさらに1~n-1まで和をとったものを引いたものになります。j(j+1)(2j+1)/6=(2j+3j+1)/6なので、これについて1~n-1まで和をとり、引き算するという事です。
少し長ったらしいですが式を整理すると次のようになります。

1+2+3+4+・・・+n=Sとして、

$$S=\frac{n^2(n+1)(2n+1)}{6}-\frac{S-n^3}{3}-\frac{n(n-1)(2n-1)}{12}-\frac{n(n-1)}{12}$$

$$\Leftrightarrow \frac{4S}{3}=\frac{4n^4+8n^3+4n^2}{12}=\frac{n^2(n+1)^2}{3}$$

$$\Leftrightarrow S=\frac{n^2(n+1)^2}{4}$$

等比数列の和

何かと重要になるのは「等比数列の和」です。これは次のようにします。

S=a+ar+ar+ar+・・・+arn-1

これの両辺にrを掛けます。

rS=ar+ar+ar+・・・+arn-1+ar

SとrSは、項数は同じで、途中のar+ar+ar+・・・+arn-1が共通しています。
共通する項は差し引けばもちろん0になるので、
S-rS=a+ar ⇔ S(1-r)=a+ar

r=1の時は単にn個のaの和なのでS=naで、r≠1のときはS=(a+ar)/(1-r)です。

等比数列の和 $$r\neq 1のとき、\sum_{j=1}^nar^{j-1}=\frac{a-ar^n}{1-r}$$ $$r=1のとき、\sum_{j=1}^nar^{j-1}=\sum_{j=1}^na=na$$

これは、r=1/2のときなど、n→∞のときにr→0となる場合が特に重要です。そのように項数を無限個にした場合の等比数列の和は、等比級数あるいは幾何級数と言います。

階差数列の和

n+1=an+1-aのような形の数列(「階差数列」)の和を考えるとき、
n+2=an+2-an+1のようになりますから、
n+2+bn+1=an+2-aになります。
中間の項がプラスマイナスでちょうど消えるという事です。

さらにbn+3=an+3-an+2を加えれば、
n+2が消えてbn+3+bn+2+bn+1=an+3-aになります。

このような形で、階差数列の和を計算する事ができます。具体的に書きだすと、多少分かりやすいでしょう。

=a-a,
=a-a,
=a-a,
n-1=an-2-an-3,
=an-1-an-2

=aとすると、
+b+b+・・・+b
=a
+(a-a)
+(a-a)
+(a-a)
+(a-a)
+・・・
+(an-2-an-3)
+(an-1-an-2)
=an-1

階差数列および類似の形の数列には色々なパターンがあるので、公式を覚えるというよりは、和をとる事で度の項が消えてどの項が残るのかを個々の計算ごとに把握するとよいでしょう。

一般の和について成立する公式

特定の形の数列に限らず、一般に和に関して成立する公式というか関係式には次のようなものがあります。

公式
  1. 「和」の定数倍 $$\sum_{\large{j=1}}^n(ca_n)=c\sum_{\large{j=1}}^na_n$$
  2. 「和」同士の和と差 $$\sum_{\large{j=1}}^n(a_n\pm b_n)=\left(\sum_{\large{j=1}}^na_n\right)\pm \left(\sum_{\large{j=1}}^nb_n\right)$$
  3. 「和」同士の「積」に関する性質$$\sum_{\large{i,j=1}}^{n}\large{(a_ib_j)}=\left(\sum_{\large{i=1}}^n\large{a_i}\right)\left(\sum_{\large{j=1}}^n\large{b_j}\right)$$ $$= (a_1+a_2+\cdots +a_n)(b_1+b_2+\cdots +b_n) $$ $$\sum_{\large{i=1}}^{n}\sum_{\large{j=1}}^{m}\large{(a_ib_j)}=\left(\sum_{\large{i=1}}^n\large{a_i}\right)\left(\sum_{\large{j=1}}^m\large{b_j}\right)$$ $$=(a_1+a_2+\cdots +a_n)(b_1+b_2+\cdots +b_m)$$ ここで、\(\large{a_ib_j}\)は\(\large{a_iとb_j}\)との積です。数列の変数が2つ以上ある場合のシグマ記号を使っています。

これらのうち、最初の2つは通常の足し算の性質を式の形で書いてあるだけなのであまり公式としては認識する必要はないですが、3番目の式は注意する必要があり、しかも重要です。

「和同士の積」の計算の場合は、nとmのうちまずnだけ全部足してmは変数扱いにしておき、
その後でさらにmを動かして全体の合計の和を計算してもよいという事です。

これは、次の計算を考えると式の展開の計算通りにすると(n,m)=(1,1), (1,2), (1,3), (2,1), (2,2), (2,3),・・・の全ての組が\(\large{a_ib_j}\)の項の中に出てくる事によります。

$$(a_1+a_2+a_3+\cdots +a_n)(b_1+b_2+b_3+\cdots +b_n)$$

$$=a_1b_1+a_1b_2+a_1b_3+\cdots+a_2b_1+a_2b_2+a_2b_3+\cdots +a_3b_1+a_3b_2+a_3b_3+\cdots$$

高校数学ではほとんど扱いませんが、変数が複数ある時にシグマ記号をやたらと多く組み合わせる場合には、この「和同士の積」に関する性質を把握しておく事は結構重要になります。

幾何級数(等比級数)

等比数列の和を無限個で考えたものを、「等比級数」または「幾何級数」と言います。
【有限の項数の和のものを同じ名称で呼ぶ事もありますが、ここでは無限級数の場合を扱います。】

収束・発散の条件と計算の仕方

等比数列の和を考え、項数を無限大にしたものはどのようになるかをまとめると次のようになります。

幾何級数あるいは等比級数とは?

次の形の無限級数を「幾何級数」あるいは「等比級数」と言います。 $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=a\lim_{n\to \infty}(1+x+x^2+x^3+x^4+x^5+\cdots+x^n)$$ $$=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}\hspace{20pt}(r\neq 1)$$ これの収束・発散は次のようになります。

  1. 公比の絶対値が1未満【|x|<1】のとき収束する $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\frac{a}{1-x}$$
  2. 公比の絶対値が1以上【|x|≧1】のとき無限大に発散する
    (r=1のとき、nまでの和はna → ∞) $$\sum_{n=1}^{\infty}ax^{n-1}=\lim_{n\to \infty}\frac{a-ax^n}{1-x}=\infty$$

この「等比数列の和のn→無限大の極限をとったもの」を「等比級数」と言い、
幾何級数(geometric series)」という呼び方をする時もあります。
【高校ではこの幾何級数という呼び名はあまり使わないのですが、物理などでは使用する場合もあります。】

具体的に、a=(1/2)n-1で表されるような等比数列の和はn→∞の時に収束し、
=3で表される等比数列の和はn→∞の時に無限大に発散します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{2}}}=2$$

$$\sum_{n=1}^{\infty}3^n=+\infty$$

この時に指数の部分がn-1ではなくnで表されている場合には注意が必要で、例えばc=(1/3)などと表されている時には計算にn=1の時の「初項」が必要ですので、c=(1/3)・(1/3)n-1のように考える必要があります。(あるいは、初項c=1/3である事をきちんと把握して計算します。)

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{\large{\frac{1}{3}}}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{1}{3-1}=\frac{1}{2}$$

シグマ記号を使って表す場合には、n=1ではなくてn=0から始めて表記する事も可能なので、
その場合にはn=0を代入したものが初項になります。式の形そのものだけを暗記するというよりは、「初項」と「公比」は何なのかを把握する事が大事になります。$$\sum_{n=0}^{\infty}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}=\frac{1}{1-\large{\frac{1}{3}}}=\frac{3}{3-1}=\frac{3}{2}$$n=0から始まっているので初項は1であり、c’=(1/3)n-1に対する幾何級数の場合と同じ値に収束します。

公比が負の数である場合にも、公比の絶対値が1未満であれば同じ公式を使えます。
例えば公比が-1/2などの場合にも和を無限大にとったものは収束します。各項はプラスとマイナスが次々と入れ替わりますが、全体の和は一定値に近づいていくという事です。この場合、上記公式の公比の部分にマイナス符号の公比をそのまま代入します。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}=\frac{1}{1+\large{\frac{1}{2}}}=\frac{1}{\large{\frac{3}{2}}}=\frac{2}{3}$$

ところで、これらの無限級数を「幾何級数」とも呼ぶと上述しましたが、「幾何」に何か関係あるのかという話になります。一応、式に平面幾何的な意味を持たせる事は可能です。

適当な図形・・例えば長方形を考えた時に、図形の面積の1/2倍、そのさらに1/2倍、
そしてそのさらに1/2倍、・・の図形を加えていくと、全体の面積は無限には大きくならずに一定の範囲内で収まる事を確認できます。

=(1/2)n-1の各項はa=1,a=1/2,a=1/4,a=1/8,a=1/16,・・
のようになりますが、これらの項の和は平面図形で言うと、1つの長方形などの面積に対しておおもとの面積の1倍、1/2倍、1/4倍、1/8倍、1/16倍、・・を加え合わせていく事に対応します。
この時、項数を増やしても全体の面積は必ず「2未満」におさまり、無限個に増やした場合は収束値である「2」に限りなく近づく事になります。

他方、a’=(1/2)に対する幾何級数を考えた時は収束値は1になる事は上述しましたが、これは平面図形ではa=(1/2)n-1に対する幾何級数の収束値2から1を引いた場合に等しく、平面図形では図形の面積の1倍を除いた部分に相当します。

無限小数の級数としての扱い

循環小数を和で表すと?

1÷9=0.111111111・・・や、1÷3=0.33333333・・・などの
無限循環小数は、幾何級数により表す事ができます。

0.1とは1/10の事であり、0.01とは1/100の事、
そして0.11とは0.1+0.01である事を考えると分かりやすいと思います。

循環小数は幾何級数で表せる

小数0.99999999・・・・などは、0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・のように考える事で、$$a+ar+ar^2+ar^3+ar^4+ar^5+\cdots$$ の形、つまり幾何級数の形をしています。
等比数列で言うと、初項が0.9、公比が0.1であるものの幾何級数になっているという事です。
公比の絶対値が1未満なので、これは無限級数として収束します。

無限循環小数には、0.123123123123・・・のように、「123」のような複数の番号の組み合わせが繰り返されるものも含まれるわけですが、このようなものも同様に考える事ができます。

0.123123123=0.123+0.123×0.001+0.123×(0.001)
のようになるので、この場合は公比を0.001と考えればよいわけです。このようにして、小数が循環する限りは、無限小数は幾何級数とみなす事が可能です。

無理数のように循環しない無限小数は、小数点ごとに項を分けて無限級数で表す事は可能ですが幾何級数として表す事はできません。

0.999999・・・は、「1に等しい」?

「無限級数展開」が意外と身近にある例として、ちょっとしたクイズを考えてみます。

クイズ:「無限小数0.99999999・・・・は『1に等しい』ですか?」

もしかすると、意見が割れるかも・・しれませんね。結論を先に言いますと、答えは「1に等しい」、です。

・・すると、「いや、1ではないやろ!???」と、怒られるかもしれません。
では、同じ質問を、表現だけ変えてみます:

$$「無限級数 0.9+0.09+0.009+0.0009+・・・=\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.9)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}は『1に等しい』ですか」 $$

これだと、幾何級数ですね。
これは、明確に答えは「1」なのです。

どういう事かというと、「1に『収束する』」「『極限値と』して1に等しい」という意味において等しくなるという事です。0.99999999・・・は、1に限りなく近づくという意味です。

0.99999999・・・が1に等しいか・等しくないかで意見が割れてしまうのは、小学校でも教わる無限小数が数学的にはどのような意味を持つかが曖昧な形で教えられている事によります。
前述のように無限小数は正確には無限級数であり、無限循環小数であれば公比の絶対値が1未満の幾何級数になるので1つの値に収束する事になります。

ところで、では例えば1/3=1÷3=0.333333・・・・について、この左辺の分数・割り算の形は本当に幾何級数の公式を使って出てくるでしょうか?試してみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.3)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.3}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{3}{10-1}=\frac{3}{9}=\frac{1}{3}$$

このように、無事に1/3(=1÷3)に収束する結果となります。

1÷9=0.1111111・・・についてもやってみると次のようになります。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\left\{(0.1)\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{n-1}\right\}=\frac{0.1}{1-\large{\frac{1}{10}}}=\frac{1}{10-1}=\frac{1}{9}$$

無限級数展開としての位置付け

幾何級数は、数学的には1/(x-1)という関数のマクローリン展開と、本質的に同じ無限級数です。
(|x|<1の範囲でのみ収束するという点まで、本質的に同じです。)

|x|<1の公比、初項が1の幾何級数を考えると、

$$\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)=\frac{1}{1-x}$$

これを逆手にとるというか、逆に1/(1-x)という関数を|x|<1の範囲に限定するという条件付きで無限級数として表すのが、「幾何級数展開」です。本質的には幾何級数の計算と全く同じもので、使い方による名称の違いです。

$$\frac{1}{1-x}=\lim_{n\to\infty}(1+x+x^2+x^3+\cdots+x^n)$$

$$無限大まで和をとる事を前提に、\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdotsと書く事も多いです。$$

これは無限級数展開の中では非常に簡単に理解できるものの1つです。にもかかわらず、大学範囲の数学や物理でも要所で使用します。知っておくと、学習がスムーズになり便利です。

幾何級数展開は、数学の複素関数論で用いられたり、物理では黒体放射の理論で「エネルギーが離散的な値をとること」(つまり量子的である事)の根拠のひとつとして用いられたりもします。他にも、使われ方は色々あります。割と重要なところで突然出てくるのが特徴かもしれません。

ただしそれらは教科書等の中では「幾何級数」「等比級数」である事の説明なしに、唐突に「1/(1-x)=1+x+x+x+x+・・・と『展開』すると・・」などと書かれる事が結構多くあるので、その点だけ注意しましょう。

幾何級数は、|x|<1のもとで1/(1-x)という特定の関数のマクローリン展開に一致し、本質的に同じ無限級数です。

シグマ記号の使い方(和を表す記号)

和(足し算)を表すのに使うシグマ記号について説明します。

$$英:\sum_{j=1}^n \hspace{10pt}\mathrm{summation\hspace{3pt}notation}$$

記号の意味と使い方

数学で、いくつかの項の和(足し算、合計)を表す時に次の記号を使う事があります。

$$\Large{\Sigma}$$

これはギリシャ文字の「シグマ」の大文字で、英語のアルファベットのSに相当します。
【ギリシャ語だと実際に「s」の発音らしいです。】
和を表す語(英語だと sum)の頭文字として使っていると言われます。

シグマ記号というものは、数学の教科書や本の中でも使われますが、
表計算ソフトの Excel で見た事がある人もいるかもしれません。
使い方はまさしく指定した範囲の数の「合計」の値を計算するというものです。

数学でこの記号を使う時には、もう少しごちゃごちゃと書いてある事が多いです。

$$\sum_{\large{n=1}}^5\frac{1}{n}$$

これは、記号の次に書かれた1/nに「n=1,2,3,4,5を代入して全部足しますよ」という意味です。
各項の和を具体的に書き下すと次のようになります。

$$\sum_{\large{n=1}}^5\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}$$

変数部分はnの代わりにi、j、kなどのてきとうな別の文字を使っても表記できます。
(iを使う場合、虚数という事では無くてあくまで変数の番号を表します。)

数列の和を表したり、何かの数のべき乗の和を表したり、様々な和を表すのに使えます。

$$\sum_{\large{i=1}}^7\large{a_i}=\large{a_1+a_2+a_3+ a_4+a_5+a_6+a_7}$$

$$\sum_{\large{j=1}}^7\large{{e^j}}=\large{e+e^2+e^3+ e^4+e^5+e^6+e^7}$$

$$\sum_{\large{m=1}}^5\frac{1}{m^2}=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{4^2}+\frac{1}{5^2}=1+\frac{1}{4}+\frac{1}{9}+\frac{1}{16}+\frac{1}{25}$$

「1から始まってnまで」の和を表す時には、シグマ記号の上のところの番号のところにnと書きます。

$$\sum_{\large{i=1}}^n\large{A_i}=\large{A_1+A_2+A_3+\cdots +A_{n-2}+A_{n-1}+A_n}$$

$$\sum_{\large{j=1}}^n\large{{e^j}}=\large{e+e^2+e^3+ \cdots +e^{n-2}+e^{n-1}+e^n}$$

略記号的な書き方で、nなどのてきとうなところで区切る事を前提としてシグマ記号の上のところを略して書く場合もあります。表記が煩雑なときなどに使われます。どの番号までの和なのか明示したい場合には省略せずに上の番号も書きます。

$$\sum_jF_j(x)\hspace{10pt}\left(\sum_{j=1}^nF_j(x)の略記\right)$$

【※この略記法は一般の教科書などでよく使われますが、試験や入試では使わないほうがいいと思います。】

無限級数を考える場合にはシグマ記号の上のところに無限大の記号(∞)を書きますが、これはより正確に言えばまずてきとうな番号nまで和に対して、n→∞の極限を考えたものです。

$$\sum_{\large{n=1}}^{\infty}\frac{1}{n}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}=\lim_{n\to \infty}\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots +\frac{1}{1-n}+\frac{1}{n}\right)$$

(なお、この無限級数は収束せず無限大に発散します。)

他に、最初の番号が1ではなくて、別の番号から始める事も表記できます。
その場合は、シグマ記号の下の部分で「n=1」ではなくて例えば「n=2」と書けばn=2,3,4,・・について項を加えるという意味になります。

$$\sum_{\large{n=2}}^5\frac{1}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}$$

$$\sum_{\large{n=3}}^7\frac{1}{n}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}$$

★番号を1ではなく他の数で始める場合の表記法を使うと、例えば次のような計算もできます。$$\sum_{\large{n=1}}^{10}\frac{1}{n}-\sum_{\large{n=1}}^{5}\frac{1}{n}=\sum_{\large{n=6}}^{10}\frac{1}{n}=\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+\frac{1}{9}+\frac{1}{10}$$ この例では、同じ対象の1/nについて1~5までの番号の項の和を取り去ってしまうので、6から始めた和の形として表す事も可能であるという事です。
より一般的には次のような関係が成立します。 $$n>mのとき、 \sum_{\large{j=1}}^{n}\large{a_j}- \sum_{\large{j=1}}^{m}\large{a_j}=\sum_{\large{j=n-m+1}}^{n}\large{a_j}$$

普通は番号として自然数(正の整数)を使いますが、0も含めた負の数も含めた整数の範囲にする事もあります。その場合は、例えば-2,-1,0,1,2,・・・を順番に対象の関数などに代入して加えていきます。
(数列の場合は、aといった一般的な形の場合にはnとして自然数と0を使うのが普通なので、nのようなn=・・を直接代入できる形の時に負の整数も代入する表記を使えます。また、1/nのように0を代入できないものについては番号として0を含むシグマ記号は使えません。)

$$\sum_{\large{n=0}}^5\frac{1}{n+2}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}$$

また、高校ではあまり使わないと思いますが、整数を要素とする集合の番号を足し上げるという表記も使われる事があります。例えば、説明のためのごく簡単な例としてA={2,3,7,8,10}のとき、この番号にわたって和をとる事は次のように書く場合があります。

$$\sum_{\large{n\in A}}^5\frac{1}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+\frac{1}{10}$$

代入する番号は整数であるという前提で、不等式で範囲を指定する表記法も一部あります。

$$\sum_{\large{1≦ i≦ 7}}\large{a_i}=\sum_{\large{ i=1}}^7\large{a_i}=\large{a_1+a_2+a_3+ a_4+a_5+a_6+a_7}$$

変数が複数ある時

やや複雑な例として、変数を2つ含む和を考える事もあります。

$$\sum_{\large{n,m=1}}^3\frac{m}{n}=\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{2}+\frac{2}{3}+\frac{3}{1}+\frac{3}{2}+\frac{3}{3}$$

これは、n=1,2,3とm=1,2,3の「組」にわたって和をとるという意味になります。
つまり、(n,m)=(1,1), (1,2), (1,3), (2,1), (2,2), (2,3), (3,1), (3,2), (3,3) の9通りについて、
9項の足し算を考えるという時です。

この時に、n=mとなる場合を除いた(n,m)=(1,2), (1,3), (2,1), (2,3), (3,1), (3,2)の6通りだけの和を考えたいという場合には、シグマ記号の下のところにn≠mといった表記をして表現する事があります。

$$\sum_{\large{n\neq m\hspace{3pt}n,m=1}}^3\frac{m}{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{3}+\frac{3}{1}+\frac{3}{2}$$

nとmのうちnは3まで、mは2までという場合は、
次のようにシグマ記号を2つ並べて表記する場合が多いです。$$\sum_{\large{n=1}}^{3}\sum_{\large{m=1}}^{2}\frac{m}{n}=\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{2}{1}+\frac{2}{2}+\frac{2}{3}$$この表記で、(n,m)=(1,1),(1,2), (2,1), (2,2), (3,1), (3,2)の組の和という意味です。
同様に、3変数について別々の番号までの和である場合はシグマ記号を3つ並べたりします。 $$\sum_{\large{i=1}}^{l}\sum_{\large{j=1}}^{n}\sum_{\large{k=1}}^{m}\large{a_{ijk}}$$ ※いずれの変数も同じ番号までの和をとるときも、このように複数のシグマ記号を並べて表記する場合もあります。

対数関数

対数【たいすう】関数 y= logx について説明します。
関数ではなく、何か1つの値logbについて考えた時は単に「対数」と呼びます。

英:対数関数・・logarithmic function  
対数・・logarithm【「比」と「数」を意味するギリシャ語から作った造語と言われる】

定義と表記

対数関数とは、ある正の数aを「何乗したら」xになるのかを、xの関数として表したものです。
logxと表記し、対数関数と呼びます。これは、指数関数の逆関数になります。

対数関数の定義

指数関数の逆関数、すなわち「ある正の数a【≠1】をy乗したらxになる」という意味になる関数を
対数関数と言い、y=logxと書きます。 $$a>0\hspace{3pt}かつ\hspace{3pt}a≠1のもとで$$ $$\large{x=a^y\Leftrightarrow y=\log _a x}$$ この時、1でない正の数aの事を「」【てい】と言います。
y=logx の定義域はx>0です。
特定の数bに対する対数 logbを考える時には「aを底としてbの対数を取る」という表現をする事があります。また、logbにおけるbを「真数」【しんすう】と呼ぶ事もあります。

例として「10という数を何乗したらxになるか」を考えた時、
その値が 「10を底とする対数関数」であり、log10xと書きます。10が対数関数の底【てい】です。

数学の応用や、理論の多くの場合でも「底」として使われる数は大体決まっている事が多く、
それは10とe(≒2.718・・) と2です。
(もちろん必要があれば他の値を底として考える事ができます。)

これらのうち、10を底とする対数を常用対数 (common logarithm)と言い、
log10xを略記して logxと書く事があります。桁数がやたらと大きい場合に使われる事が多いようです。

また、eを底とする対数を自然対数(natural logarithm)と言い、
logxを略記して lnxと書く事があります。(「ログ・ナチュラル」と読む事があります。)
これはeの指数関数とともに微積分の理論で重要です。

他方、情報理論などでは2を底とする対数を使う事があります。
これは、0と1の2進数を扱う事と関連があります。

logxという略表記はじつは意味が一貫してないところがあり、常用対数を表す事が多いのですが、人によって自然対数を表したり、2を底とする対数として表す事もあります。
そのため「以下、log10x= logxと表記する」といったように、普通は断り書きをつけて使われます。

logax の底aは「正の数」で「1ではない」値を考えるというルールがあります。
もし底が1の場合には、1を何乗しても1になってしまうためで、0の場合も同様です。
またもし底が負の数の場合を考えると、ところどころで「穴」が生じます。
例えば-2の2乗は4ですが、3乗すると-8になります。
という事は実数の範囲で考えれば(-2)=8になるyは存在しないという事になり、関数として見た時にx=8のところが存在しない事になってしまいます。
そのため、負の数のxが取り得る範囲からは除外するという考え方をします。

少しややこしいですが、次に具体例でも示すように対数関数自体の値は0や負の数もとり得ます。y=logxについてx>0で、yは実数全域の値をとり得るという事です。

対数関数における値の範囲の整理

y=logxの、a, x, y のとり得る値の範囲を整理すると次のようになります。

  • a:特定の数で、1以外の正の実数。a>0かつa≠1
  • x:変数で、0より大きい数。x>0
  • y:対数関数の値。範囲は実数全域。0や負の数も含め、任意の実数であり得る。

具体例とグラフ

2を底とした時、
x=2は「2の1乗」
x=4は「2の2乗」x=8は「2の3乗」
x=1は「2の0乗」
x=1/2は「2の『-1乗』」
x=1/4は「2の『-2乗』」

これら「○乗」の部分が対数関数の値となり、logxの表記で書くと次のようになります。

log2=1
log4=2
log8=3
log1=0
log(1/2)=log(2-1)=-1
log(1/4)=log(2-2)=-2

点を座標上にプロットしてy=logxのグラフを描くと次のようになります。

特に断りがない時は、対数関数の定義域はx>0であり、値域(yの範囲)は実数全域です。

この時、2は正の数ですから、x=0やx=-1のような場合、2を何乗してもそれらの値にならないので、x≦0については考えない・・対数関数の定義域から除外するという考え方をします。

10を底にして考えた時は
x=10は「10の1乗」
x=100は「10の2乗」
x=1000は「10の3乗」
x=1は「10の0乗」
x=0.1(=1/10)は「10の『-1乗』」
x=0.01(=1/100)は「10の『-2乗』」
x=\(\sqrt{10}\)(≒3.162)は「10の『1/2乗』」

これらを log10xの表記を使って書くと、次のように表現できます。

log1010=1
log10100=2
log101000=3
log1010000=4
log101=0
log100.1=-1
log100.01=-2
log10\(\sqrt{10}\)=1/2

基本公式

対数関数に関して成立する基本公式には次のようなものがあります。

対数と対数関数の公式
  1. logax+logaz=loga(xz) 
  2. loga(1/x)=-loga
  3. logax-logaz=loga(x/z)
  4. logab=bloga
  5. 底の変換公式:$$\log _bx=\frac{\log \large{_a}x}{\log \large{_a}b}$$ 

①対数の和に関する公式:
=x, a=zとすると、xz=a=au+wなので、log(xz)=u+wで、
=x ⇔ logx=u, a=z ⇔ logz=w なので
log(xz)=u+w=logx+logzとなります。
もっと直感的には、例えば2×2=2となるので底を2としたときには
log(2・2)=log+log=3+4=7と計算してよいという事です。

②逆数に関する対数の公式:
y=log(1/x) とすると、a=1/x
⇔ 1/(a)=x ⇔ a-y=x ⇔ logax=-y=-log(1/x)
もっと直感的には、2の3乗は8で、2の「-3乗」は1/8なので
log(1/8)=-log8=-3と計算してよいという事です。

③対数の差に関する公式:
上記2つの公式を組み合わせると、
logx-logz=logx+log(1/z)=log(x/z)となります。

④ベキ乗に対する対数の公式:
y=logx, z=log(x) とすると、a=x, a=x=(a)yb なので
z=yb つまりlog(x)=blogxです。
ここで(2)=4=2のような計算をしています。
log{(2)}=3log(2)=3・2=6のようになるという事です。

⑤「底の変換公式」:
これが最も分かりにくいかもしれませんが、使用頻度は少ないかもしれません。
理屈としては、次のように考えます。
logx=y, logx=zとすると、a=x, b=x,
よってa=bで、a>0, b>0なのでb=ay/zです。
これは「aのy/z乗がbになる」という事になり
logb=y/z=(logx)/(logx)
⇔ logx=(logx)/(logb) という底の変換公式になります。
例えば、log5=(log5)/(log3)という計算が可能であるという意味です。

途中の式でa=bz/yと考えると、logx=(logx)(loga)という関係式になります。
これら2式の両辺の比を考えると、(logb)(loga)=1という関係も得られます。
logb=yつまりaのy乗がbである時、
bのy乗根(のうち正の数)がaなのでbを1/y乗すればaになる・・
つまりloga=1/yとなるという事です。
具体的には、log8=3, log82=1/3より、(log8)(log82)=1といった計算です。

円を表す式【直交座標】

直交座標上で円を表す式について説明します。

基本となるのは図形としての円の定義と、三平方の定理(2点の距離)です。

1点からの距離が等しい点の集合:円

y=2xなどの1次関数は直交座標上で「直線」になり、y=xなどの2次関数は「放物線」になります。

では具体的に他の特定の図形、
例えば「円」の形になるように直交座標上での式を考えるとしたらどのようになるでしょうか。

結論を言うと次のようにします:

直交座標上で円を表す式

点(a,b)を中心とする半径rの円は、
(x-a)+(y-b)=r で表される。

これは何を言ってるのかというと「点(a,b)から点(x,y)までの距離がrですよ」という事です。これを満たす点(x,y)は点(a,b)を中心とする半径rの「円周上」に必ずありますよ、という意味です。

平面幾何での円の定義を思い出してみると、円とは「1点からの距離が等しい点の集まりで構成される図形」でしたから、これは適切という事になります。

そして2点間の距離は三平方の定理を使って出せばよいので、上記のような2乗を含んだ式になるわけです。特に原点を中心とする場合はx+y=rという形になります。

この時、(x-1)+(y-2)=4のような形で、右辺が2乗の形として明示しなくても円の式を表します。この場合には4=2のように書けるので、(1,2)を中心とする半径「2」の円という事です。

理屈自体は以上で終わりで、意味さえ理解すれば難しいものではないと思います。

そのうえで、高校数学でさらに問われる内容をいくつか挙げます。

まず1つは、関数y=f(x)の形で円を表すとどうなるかという事です。

上記のx+y=rのような形も、一応関数の仲間ですがこのようなF(x,y)=0の形の式を「陰関数表現」と言ったり、その中のyを「陰関数」と言ったりします。逆にy=f(x)の形になっている事は「陽」に表わされていると言う事があります。

円の式の場合は、式を変形してy=f(x)の形にする事は比較的容易です。次のようになります。

$$原点中心の場合:x^2+y^2=r^2\Leftrightarrow y=\pm \sqrt{r^2-x^2}$$

$$一般の場合:(x-a)^2+(y-b)^2=r^2\Leftrightarrow y-b=\pm \sqrt{r^2-(x-a)^2}\Leftrightarrow y=\pm \sqrt{r^2-(x-a)^2}+b$$

プラスマイナスの符号は、原点中心の円であればx軸を境にした円の上側か下側かであるかを言っています。積分で円の面積を計算する場合などは、この形の式を使います。

ただし、図形同士の交点を調べる場合などは、無理にy=・・の形にしないで2乗の形のままで計算したほうが楽である場合も多いです。

円と図形との交点問題

円x+y=2と直線y=x+1の交点の数を調べる場合、円の式のyに直接y=x+1を代入して2次方程式の形にして実数解がいくつあるか調べるといった形になります。

グラフを描くと「明らか」である場合もありますが、式で示すなら次のようになります。
+y=2にy=x+1を代入して、
+(x+1)=4
⇔2x+2x-3=0

ここで2次関数2x+2x-3はx軸と2交点を持つので(x=0で負の値なので)2次方程式の解は実解が2つあり、円と直線の交点は2つというわけです。もし2次方程式が重解を持てば円と直線は「接する」という事になります。この計算をよく見ると、計算方法自体は放物線の時とほぼ同じという事も分かります。

さて、では円同士の交点の場合はどうなるでしょうか。

この場合、直線と放物線との関係の場合と異なり、y=・・の形を代入しようとするとかなり面倒です。そのため、結論を言うと2乗を含んだままの形でまず処理し、1次式の形にする工夫をします。
具体例で見てみましょう。

■問い:2つの円(x+1)+(y-1)=3と(xー1)+(y+1)=7があるという。
これら2つの円の交点はいくつありますか。

この場合、どちらの式にもx、yの項とx、yの項がともにあります。
これらをどう処理すればよいかという話です。

まず、片方の円の式からx+y=・・の形にします。

(x+1)+(y-1)=3
⇔ x+2x+1+y-2y+1=3
⇔ x+y=2y-2x+1

これを、もう片方の式に代入します。
まず2乗部分を計算して、x+yの部分にまとめて代入するという事です。

(x-1)+(y+1)=7
⇔ x+y-2x+1+2y+1=7
これにx+y=2y-2x+1を代入して、
(2y-2x+1)-2x+1+2y+1=7
⇔ 4y-4x+3=7
⇔ y=x+1

ここで得られたyとxの1次式の関係は何を意味するかというと、特に「2交点を持つ場合」にはその2点を通る直線になります。このy=xの関係を、2つの円のどちらにでもいいので代入します。ここでは最初のほうの円に代入します。

(x+1)+(y-1)=3にy=x+1を代入して、
(x+1)+x=3
⇔ 2x+2x-2=0 ⇔ x+x-1=0
この2次方程式は異なる2実解を持つので、
2つの円は異なる2つの交点を持ちます。【解答】

尚、ここでもし交点を持たない(最後の2次方程式の形で実解を持たない)場合には、途中で得られる1次式の関係はもちろん2交点を結ぶという意味は持ちません。

また2交点を持つと分かった時の具体的な座標は、xが分かった時点でy=xの1次式のほうにxを代入すればyが分かるのですが、xをもしも円のほうに代入してyを出そうとするとさらに2つの解が出てくる場合があります。これは、直交座標上の円には端っこの2点を除いて、1つのx座標に対応する点が必ず2つ存在するからです。その時には片方の点だけが2交点の1つになります(2交点を結ぶ直線がx軸に垂直の場合を除きます。)

特定の点を通る円

少し面倒くさいタイプの高校数学の問題として、「ある1点を通る円」「ある2点を通る円」などが扱われる場合があります。

特定の点(A,B)を通る半径Rの円の場合、
中心の座標を(r,r)とすると (r-A)+(r-B)=Rという関係式ができますから、中心の座標を動かせるとすれば「軌跡は (A,B)を中心とした『半径R』の円」という事が言えます。

では「ある2点を通る円」ではどうなるかというと、半径が一定であれば図を描くとおそらく「2パターン」しかあり得ない事が予想できますが、実際そうなるのです。
(A,B)と(C,D)の2点を通り、半径がR、中心の座標を(r,r)とすると
(r-A)+(r-B)=R および
(r-C)+(r-D)=Rの2式ができます。

そこから先の計算は、まずr+r=・・の形の式に変形して、もう片方に代入します。すると、rとrの1次式の関係を作れます。これは、(A,B)と(C,D)の2点を通る直線の式です。要するに、円同士の交点を調べる時の計算と同じです。

さらにr=・・の形を円のどちらか片方の式に代入すれば2次方程式になりますから、半径一定のもとで実数解は多くても2つ、つまり中心の座標は2パターンだけで他はあり得ないという事が式でも示されます。
(ここで、半径が小さすぎてそもそも所定の2点を通りようがない場合には実解がない結果になります。また、重解になる場合は2点のちょうど中点に円の中心が来る場合です。)

この場合に途中の計算で出てくるxとyの1次式は、(A,B)と(C,D)を結ぶ線分に垂直で、線分の中点を通る直線になります。

定点を通る円

では、「3点を通る場合」はどうでしょう?この場合、中心と3点の関係を表す式が3つできます。いずれも、中心を動かせるとすると「円の式」の形になります。この時、まず1つを使ってr+rを残り2式のそれぞれに代入し、2乗を消して1次式の関係にします。

ところが、この場合は1次式の関係が2つできて「連立一次方程式」になってしまいますから、
とrが満たす解があるとすれば1つという事になります。

この時、異なる2点を通る場合と違うのは、rとrの値を計算する時に円の半径は必要ないという事です。異なる2点を通る場合には、最後の2次方程式に半径が必要です。

それに対して異なる3点を通る場合には半径が「消えた」状態でrとrの連立一次方程式が出てきます。

式で書くと、まず(r,r)と3点までの距離が等しいという3式を考えます。
(r-A)+(r-B)=R
(r-C)+(r-D)=R
(r-E)+(r-F)=R

第1式から
+r=2Ar-A+2Br-B+R であり、
これを第2式と第3式の両方に代入します。

すると、
2(A-C)r-A+C+2(B-D)r-B+D=0
2(A-E)r-A+E+2(B-F)r-B+F=0
という2つの式になりますが、この時点でRは消えているわけです。
これは最初の3式でともに「等しい距離R」を使ったためです。
(一見ごちゃごちゃした式ですが、rとrに関して見れば1次式です。)

そこで連立1次方程式からrとrを確定させると、もとの式に代入すると半径であるRもそれによって決まらないとおかしい話になります。つまりこの場合は、中心座標が1つに決まる事に加え、半径も1つに決まるという事です。

ここでじつはもう1つ細かい注意点があって、
それは連立1次方程式は「解を持たない」場合があるという事です。

「そんな場合ありましたっけ。」と思われるかもしれませんが、単純な話で、
x+y=2 かつ
x+y=3
のような場合の事です。
これは、ここでは異なる3点が「同一直線上」にある場合に発生します。ですので、その場合に限っては最後の連立1次方程式の解がないので、3式を満たすrとrは「存在しない」という事になります。

まとめると、「『同一直線上にない』異なる3点」を通る円はただ1つしかなく、しかも半径も1つに確定するという事になります。また、同一直線上にある異なる3点を通る円は存在しないという事にもなります。